荒あらし

インターネットにおける荒あらし（あらし、英えい: Trolling、Vandalism）とは、ソーシャル・ネットワーキング・サービスや電子でんし掲示板けいじばん・レビューサイト・ウィキなどの、不ふ特定とくてい多数たすうの人間にんげんが参加さんかする形態けいたいのコンピュータネットワーク上うえのリソースに対たいして、不合理ふごうりなメッセージの送信そうしんや妨害ぼうがい行為こういなどを継続けいぞく的てきに行おこなう行為こういまたは当該とうがい行為こういを行おこなう者ものを指さす。賭博とばく用語ようご、博打ばくち用語ようごの場ばを荒あらすが由来ゆらい。

心理しんり学的がくてきには、荒あらしを行おこなう者ものは、社会しゃかい的てき孤立こりつとの統計とうけい学がく的てき相関そうかん関係かんけいが強つよいことが指摘してきされており、ダークテトラド（すなわち反はん社会しゃかい性せいパーソナリティ）との相関そうかんも強つよいとされる。また、セルフコントロール能力のうりょくが低ひくい者ものが荒あらしを行おこないやすいとされる。

増井ますい啓あきら太ふとし, 田村たむら紋もん女おんな & マーチ 2018, p. 608によれば、ネットいじめと共ともに、行為こうい者しゃの「攻撃こうげき性せいの個人こじん差さが反映はんえいされたインターネット上じょうの問題もんだい行動こうどう」の一ひとつである。

概要がいよう

インターネットにおける荒あらしとは、「インターネット上じょうで他人たにんを意図いと的てきに挑発ちょうはつし、争あらそいや感情かんじょう的てきな反応はんのう、コミュニケーションの分断ぶんだんを引ひき起おこす欺瞞ぎまん的てきで破壊はかい的てきな行為こうい」と定義ていぎされる。

英語えいごではVandal またはVandalism という。他たに、釣つり用語ようごのトローリングに引ひっかけて、「煽あおり」（参加さんか者しゃの感情かんじょうを逆撫さかなでするような発言はつげん）や「釣つり」（参加さんか者しゃの反応はんのうを誘さそうような発言はつげん）など暴言ぼうげんや詭弁きべんを吐はいて議論ぎろんを別べつ方向ほうこうにずらすことをTrollingと呼よぶ。なお、ウィキペディアにおける荒あらしは Vandalism（ヴァンダリズム） といい、多おおくの言語げんごでこれに準じゅんじる語かたりを用もちいている。

荒あらしの心理しんり的てき背景はいけい

ネット荒あらしが生しょうじる原因げんいんとしては、インターネット上じょうのコミュニケーションに匿名とくめい性せいがあり心理しんり学がく的てきに人ひとを凶暴きょうぼうにさせやすいこと、文字もじだけであり論理ろんりが強調きょうちょうされ感情かんじょうを和やわらげる要素ようそに乏とぼしいこと、送信そうしんボタンを押おせば簡単かんたんに送信そうしんできるため頭あたまを冷ひやしたり再さい検討けんとうする時間じかんが与あたえられないこと、「人間にんげんは自分じぶんが見みたいと思おもうものを見みる」という性質せいしつにより悪意あくいに取とってしまうことなどが指摘してきされている。

心理しんり学的がくてきには、ネット荒あらしを行おこなう者ものは、社会しゃかい的てき孤立こりつとの統計とうけい学がく的てき相関そうかん関係かんけいが強つよいことが指摘してきされており、他者たしゃへの加害かがい傾向けいこうやダークテトラドとの相関そうかんも強つよいとされる。すなわち、ダークテトラドに含ふくまれる4つの特性とくせい（マキャベリズム傾向けいこう・サイコパシー傾向けいこう・自己じこ愛あい性せい傾向けいこうおよびサディズム傾向けいこう）が強つよい者ものほどネット荒あらしを行おこないやすいとされ、かつ、社会しゃかい的てき孤立こりつの強つよさはこれらの各かく特性とくせい（ただし自己じこ愛あい性せい傾向けいこうは除のぞく。）と相互そうご作用さようを生しょうじさせ、荒あらしの行おこないやすい傾向けいこうを増幅ぞうふくさせる関係かんけいにある。

また、セルフコントロール能力のうりょくが低ひくい者ものが荒あらしを行おこないやすいとされる。

荒あらしの犯罪はんざい性せい

悪質あくしつ性せいが高たかいものと判断はんだんされた場合ばあいは、犯罪はんざい（電子でんし計算けいさん機き損壊そんかい等とう業務ぎょうむ妨害ぼうがい罪ざい・脅迫きょうはく罪ざい・名誉めいよ毀損きそん罪ざいなど）として刑事けいじ事件じけんに発展はってんする場合ばあいもある。

かつて掲示板けいじばん荒あらしの権化ごんげと呼よばれた「アリス・リデル」は自著じちょの中なかで、「最もっとも迷惑めいわくかつ最もっとも犯罪はんざいとなりにくい行為こうい」と呼よんでいる。

対処たいしょ法ほう

上述じょうじゅつのとおり、荒あらしは個人こじんの攻撃こうげき性せいを反映はんえいした問題もんだい行動こうどうの一種いっしゅであるため、攻撃こうげき行動こうどうの生起せいきメカニズムである、「敵意てきいの知覚ちかく」、「怒いかり」、「憎にくしみ」等とうの敵対てきたい的てき感情かんじょうの喚起かんきメカニズムを解明かいめいすることが荒あらしの防止ぼうしにつながる可能かのう性せいがある。また、性格せいかく特性とくせいのみならず、社会しゃかい経済けいざい的てき要因よういん等とうも含ふくめた対策たいさくが必要ひつようとなると考かんがえられている。

他方たほうで、個人こじんの生来せいらい的てきな性格せいかく的てき特性とくせいに関かかわらず、その時点じてんにおける機嫌きげんが荒あらし行動こうどうを招来しょうらいするとの研究けんきゅう報告ほうこくもある。したがって、荒あらしを抑制よくせいする方法ほうほうとしては、討論とうろんの状況じょうきょうを平穏へいおんに保たもつことが考かんがえられる。

一般いっぱん的てきな荒あらしに対たいしては、正面しょうめんから反応はんのうすることや、対策たいさくを取とった後のちで荒あらしを煽あおることは逆ぎゃく効果こうかとされる。掲示板けいじばんの管理かんり者しゃによる荒あらしの対応たいおう法ほうとしては、ログを保全ほぜんし、無言むごんで荒あらしを消去しょうきょし、特定とくていのリモートホストやプロキシサーバを経由けいゆした書かき込こみ、「NGワード」を含ふくむ投稿とうこうを一切いっさい禁止きんしするなどの対策たいさくを講こうじたうえで、一時いちじ的てきな掲示板けいじばんの停止ていしなどにより荒あらしが去さるのを待まつ方法ほうほうが取とられる。再開さいかい時じにURLを変更へんこうすることもある。スクリプトキディが繰くり返かえし荒あらしている場合ばあいには、よりセキュリティの高たかい掲示板けいじばんシステムへの変更へんこうが行おこなわれることもある。

電子でんし掲示板けいじばんなどでは、荒あらし対策たいさくのため、予あらかじめプログラムによって禁止きんし用語ようごの設定せってい、アクセス制限せいげん、連続れんぞく書かき込こみの禁止きんしなどの対策たいさくがとられる。

脚注きゃくちゅう

参考さんこう文献ぶんけん

学術がくじゅつ論文ろんぶん

• 増井ますい啓あきら太ふとし、田村たむら紋もん女おんな、マーチ, エヴィータ「日本語にほんご版ばんネット荒あらし尺度しゃくどの作成さくせい」『心理しんり学がく研究けんきゅう』第だい89巻かん第だい6号ごう、2018年ねん、602-610頁ぺーじ、NAID 130007604351。 
• 増井ますい啓あきら太ふとし「誰だれが，いつインターネットを荒あらすのか？ネット荒あらしに及およぼすDark Tetrad傾向けいこうと社会しゃかい的てき孤立こりつの影響えいきょう」『日本にっぽん心理しんり学会がっかい大会たいかい発表はっぴょう論ろん文集ぶんしゅう』2018年ねん、89頁ぺーじ、NAID 130007680545。 

一般いっぱん書籍しょせき

• ばるぼら『教科書きょうかしょには載のらないニッポンのインターネットの歴史れきし教科書きょうかしょ』翔しょう泳およげ社しゃ、2005年ねん。ISBN 4798106577。 。
• ショウ, ジュリア 著ちょ、服部はっとり由美ゆみ 訳やく『悪あくについて誰だれもが知しるべき１０の事実じじつ』講談社こうだんしゃ、2019年ねん。ASIN B07XFRG2W8。ISBN 978-4062207317。 

関連かんれん項目こうもく

• 嫌いやがらせ（迷惑めいわく行為こうい）
• DoS攻撃こうげき（F5アタックなど）
• 利益りえき誘導ゆうどう
• 詐取さしゅ
• ネチケット
• 炎上えんじょう (ネット用語ようご)
• 既得きとく権益けんえき
• バカッター
• ヴァンダリズム (Vandalism)
• Troll Factory
• 言論げんろんの自由じゆう
• Wikipedia:荒あらし