訴うったえの併合へいごう

訴うったえの併合へいごう(うったえのへいごう)とは、民事みんじ訴訟そしょうにおいて複数ふくすうの請求せいきゅうが結合けつごうされていることをいう。訴うったえの客観きゃっかん的てき併合へいごうと訴うったえの主観しゅかん的てき併合へいごうとを含ふくむ。複雑ふくざつ訴訟そしょう形態けいたいの一ひとつである（訴訟そしょうは、1原告げんこく1被告ひこく1請求せいきゅうを基本きほんとしており、それ以外いがいは全すべて複雑ふくざつ訴訟そしょうとなる。）。

実際じっさいの訴訟そしょうにおいては、同どう一いち訴状そじょう書面しょめんにおいて複数ふくすうの当事とうじ者しゃや請求せいきゅうについての記載きさいが行おこなわれている場合ばあい、訴うったえの併合へいごうの求もとめが暗黙あんもくに行おこなわれているものとして処理しょりされるのが通常つうじょうである。

訴うったえの主観しゅかん的てき併合へいごう

「訴うったえの主観しゅかん的てき併合へいごう」とは、複数ふくすうの原告げんこくが1つの訴うったえを提起ていきする場合ばあい、または、複数ふくすうの被告ひこくに対たいし1つの訴うったえを提起ていきする場合ばあいをいう。訴訟そしょうの当事とうじ者しゃ、すなわち「主体しゅたい」が、原則げんそく的てきな訴訟そしょう形態けいたいである1対たい1とは異ことなって、一方いっぽうまたは双方そうほうが複数ふくすう人じんとなる状態じょうたいを指さして「主観しゅかん的てき」な併合へいごうと呼よぶ。多数たすう当事とうじ者しゃ訴訟そしょうの一いち形態けいたいである。これを行おこなう事ことは、大雑把おおざっぱに言いって、請求せいきゅうにおける当事とうじ者しゃの追加ついかという意味合いみあいを持もつ。

訴うったえの主観しゅかん的てき単純たんじゅん併合へいごう

数すう人にんによる請求せいきゅう、または数すう人にんに対たいする請求せいきゅうが論理ろんり的てきに両立りょうりつしうる場合ばあいに、そのすべての請求せいきゅうについて判断はんだんを求もとめる場合ばあい。

訴うったえの主観しゅかん的てき選択せんたく的てき併合へいごう

数すう人にんによる請求せいきゅう、または数すう人にんに対たいする請求せいきゅうが論理ろんり的てきに両立りょうりつしうる場合ばあいに、一ひとつの請求せいきゅうが容認ようにんされることを解除かいじょ条件じょうけんとして、他たの請求せいきゅうを併合へいごうする場合ばあい。

訴うったえの主観しゅかん的てき予備よび的てき併合へいごう

数すう人にんによる請求せいきゅう、または数すう人にんに対たいする請求せいきゅうが論理ろんり的てきに両立りょうりつし合あえない関係かんけいにある場合ばあいに、原告げんこくがその一ひとつの認容にんようを優先ゆうせんして申立もうしたてて（第だい一いち次じ請求せいきゅうないし主位しゅい請求せいきゅう）、それが認みとめられることを解除かいじょ条件じょうけんとして、次じ順位じゅんいの請求せいきゅう（第だい二に次じ請求せいきゅうないし副ふく位い請求せいきゅう）を併合へいごうする場合ばあい。

この併合へいごう形態けいたいについては、後こう順位じゅんいの請求せいきゅうの被告ひこくは全まったく審理しんりや判断はんだんをしてもらえない可能かのう性せいがあり、非常ひじょうに不安定ふあんていな立場たちばにおかれるという不利益ふりえきを負おうことから、認みとめられるかについて争あらそいがある。しかし、現行げんこう民事みんじ訴訟そしょう法ほうが共同きょうどう訴訟そしょうにおける同時どうじ審判しんぱんの申出もうしでを認みとめており、訴うったえの主観しゅかん的てき予備よび的てき併合へいごうにかわる機能きのうを果はたしていることから、実質じっしつ的てきには問題もんだいとならなくなっている。

訴うったえの主観しゅかん的てき追加ついか的てき併合へいごう

訴訟そしょう係属けいぞく中ちゅうに主観しゅかん的てき併合へいごう状態じょうたいになること。共同きょうどう訴訟そしょう参加さんか、訴訟そしょう承継しょうけい、明文めいぶんにない主観しゅかん的てき追加ついか的てき併合へいごうがある。

訴うったえの客観きゃっかん的てき併合へいごう

「訴うったえの客観きゃっかん的てき併合へいごう」とは、同どう一いち原げん被告ひこく間あいだにおける複数ふくすうの請求せいきゅうを同一どういつの訴訟そしょう手続てつづきで審理しんりする場合ばあいをいう。訴訟そしょうの対象たいしょう、すなわち「客体かくたい」が、原則げんそく的てきな訴訟そしょう形態けいたいが1個いっこであるのに対たいして、複数個ふくすうこあわせた状態じょうたいを指さして「客観きゃっかん的てき」な併合へいごうと呼よぶ。複数ふくすう請求せいきゅう訴訟そしょうの典型てんけい的てきな例れいである。これを行おこなう事ことは、大雑把おおざっぱに言いって、請求せいきゅうにおける請求せいきゅう事項じこう（請求せいきゅうの趣旨しゅし（及および原因げんいん）で求もとめるもの）の追加ついかという意味合いみあいを持もつ。

訴うったえの客観きゃっかん的てき単純たんじゅん併合へいごう

両立りょうりつしうる複数ふくすうの請求せいきゅうを単純たんじゅんに併合へいごうし、すべての請求せいきゅうについて判決はんけつを求もとめる場合ばあい。

訴うったえの客観きゃっかん的てき選択せんたく的てき併合へいごう

同一どういつの目的もくてきを有ゆうし両立りょうりつしうる複数ふくすうの請求せいきゅうを一ひとつの請求せいきゅうが容認ようにんされることを解除かいじょ条件じょうけんとして、他たの請求せいきゅうを併合へいごうする場合ばあい。わかりやすくいうと、複数ふくすうの請求せいきゅうのうち、どれでもいいからどれか一ひとつを認みとめて欲ほしいという訴うったえのこと。選択せんたく的てき併合へいごうは、新しん訴訟そしょう物理ぶつり論ろんにおいては一ひとつの訴訟そしょう物ぶつであり、各かく主張しゅちょうは攻撃こうげき防御ぼうぎょ方法ほうほうの一ひとつと考かんがえられる場合ばあいであるため、旧きゅう訴訟そしょう物理ぶつり論ろんを採用さいようする場合ばあいにのみ問題もんだいとなる。

訴うったえの客観きゃっかん的てき予備よび的てき併合へいごう

両立りょうりつし得えない複数ふくすうに順位じゅんいをつけて、第だい一いち次じ請求せいきゅうが認容にんようされることを解除かいじょ条件じょうけんとして、次じ順位じゅんいの請求せいきゅうを併合へいごうする場合ばあい。売買ばいばい契約けいやくの無効むこうを主張しゅちょうして目的もくてき物ぶつの返還へんかんを第だい一いち次じ請求せいきゅうとして、それが認みとめられなかった場合ばあいのために、売買ばいばい代金だいきんの支払しはらい請求せいきゅうを第だい二に次じ請求せいきゅうとするような場合ばあいがあたる。

また、併合へいごう時期じきによる分類ぶんるいとして、訴うったえの提起ていき当初とうしょから併合へいごう状態じょうたいにある場合ばあいを固有こゆうの訴うったえの客観きゃっかん的てき併合へいごうといい、訴うったえの提起ていき後ごの訴訟そしょう係属けいぞく中ちゅうに併合へいごう状態じょうたいになることを訴うったえの客観きゃっかん的てき追加ついか的てき併合へいごうという。具体ぐたい的てきには、以下いかのものが訴うったえの客観きゃっかん的てき追加ついか的てき併合へいごうにあたる。

• 訴うったえの変更へんこう - 原告げんこくが主導しゅどうして、併合へいごう形態けいたいにする場合ばあい。請求せいきゅうの基礎きその同一どういつが必要ひつよう
  • 訴うったえの追加ついか的てき変更へんこう - 旧きゅう請求せいきゅうを維持いじしつつ、新しん請求せいきゅうを追加ついかする場合ばあい
  • 訴うったえの交換こうかん的てき変更へんこう - 新しん請求せいきゅうを追加ついかした後のち、旧きゅう請求せいきゅうを取とり下さげるか放棄ほうきする場合ばあい
• 反訴はんそ - 被告ひこくが主導しゅどうして、併合へいごう形態けいたいにする場合ばあい。請求せいきゅうに関連かんれん性せいが必要ひつよう。（民訴みんそ146条じょう）
• 中間ちゅうかん確認かくにんの訴うったえ - 訴うったえの変更へんこう・反訴はんその特別とくべつ類型るいけい。旧きゅう請求せいきゅうの先決せんけつ関係かんけいにある権利けんり･法律ほうりつ関係かんけいの確認かくにんを求もとめるもの。（民訴みんそ145条じょう）
• 弁論べんろんの併合へいごう - 裁判所さいばんしょが主導しゅどうして、併合へいごう形態けいたいにする場合ばあい。（本来ほんらい的てきには裁判所さいばんしょが職権しょっけんで行おこなうものであるが、当事とうじ者しゃはその職権しょっけん発動はつどうを求もとめるために、別べつの事件じけんの訴状そじょう提出ていしゅつ時じ等とうに上申じょうしん書しょによってその意思いしを裁判所さいばんしょに伝つたえる事ことが出来できる。）（民訴みんそ152条じょう）