警察けいさつ手帳てちょう

警察けいさつ手帳てちょう（けいさつてちょう）は、警察官けいさつかん、皇宮こうぐう護衛ごえい官かん及および警察けいさつ職員しょくいんたる交通こうつう巡視じゅんし員いん、少年しょうねん補導ほどう員いんに装備そうび品ひんとして貸与たいよされる手帳てちょうである（警察けいさつ手帳てちょう規則きそく（昭和しょうわ29年ねん国家こっか公安こうあん委員いいん会かい規則きそく第だい4号ごう）、以下いか単たんに「規則きそく」）。身分みぶんを証明しょうめいするものとして使用しようされる。少年しょうねん補導ほどう員いんに関かんしては西日本にしにほん地区ちくの警察けいさつ本部ほんぶ（岡山おかやま県けん警察けいさつ・奈良なら県けん警察けいさつ等ひとし）においては交通こうつう巡視じゅんし員いんに準じゅんじて少年しょうねん補導ほどう員いんにも身分みぶんを証明しょうめいするものとして使用しようされる。

手帳てちょうと呼称こしょうされるが、2002年ねん（平成へいせい14年ねん）10月1日にちの規格きかく変更へんこう以降いこうは手帳てちょう機能きのうを持もたずに身分みぶん証明しょうめい書しょ機能きのうのみを有ゆうする。

機能きのう

警察けいさつ手帳てちょうは、証票しょうひょう、記章きしょう及およびそれを保護ほごしている本ほん革かわ部分ぶぶんの総称そうしょうである。証票しょうひょうは身分みぶん証明しょうめい書しょの機能きのうがあり、記章きしょうは一目いちもくで警察官けいさつかん等とうであることを示しめす機能きのうがあり、本ほん革かわ部分ぶぶんは証票しょうひょう及および記章きしょうを保護ほごする機能きのうがある。

警察けいさつ手帳てちょうは、警察官けいさつかんに採用さいようされ、警察けいさつ学校がっこうに入校にゅうこうした時点じてんで手錠てじょうと共ともに、司法しほう警察けいさつ職員しょくいんの象徴しょうちょうとして貸与たいよされ、その身分みぶんを証明しょうめいする役割やくわりを果はたす。退職たいしょく時じには、ただちに、これを返納へんのうする義務ぎむを負おう。

警察けいさつ手帳てちょうは、警察けいさつ法ほう第だい68条じょう1項こう及および同どう施行しこう令れい第だい9条じょう1項こうで警察官けいさつかんに貸与たいよすることが定さだめられ、その制式せいしきと取扱とりあつかいは前述ぜんじゅつ「規則きそく」で定さだめられている。同どう規則きそくによれば、警察けいさつ手帳てちょうは取扱とりあつかいを慎重しんちょうにし、特とくに指定していがなければ常時じょうじ携帯けいたい義務ぎむが課かされ、これは私服しふくの刑事けいじも例外れいがいではない。着きている衣服いふくに紛失ふんしつ防止ぼうし紐ひもで常つねに繋つないでおかなければならない。また、司法しほう警察けいさつ職員しょくいんとしての職務しょくむを行おこなうに当あたり、警察官けいさつかん、皇宮こうぐう護衛ごえい官かん又または交通こうつう巡視じゅんし員いんである事ことを示しめす必要ひつようがあるときは、証票しょうひょう及および記章きしょうを呈示ていじしなければならない（警察けいさつ手帳てちょう規則きそく第だい5条じょう）。

紛失ふんしつは大だい問題もんだいになる事ことや、勤務きんむ時間じかん外がいの私用しようでありながら捜査そうさ活動かつどう中ちゅうを装よそおって、警察けいさつ手帳てちょうを提示ていじし、有料ゆうりょう施設しせつ内ないや鉄道てつどうの料金りょうきん・運賃うんちんなどを不正ふせいに免まぬかれる事例じれいを防ふせぐため、普通ふつうは勤務きんむ中ちゅうのみの携帯けいたいで、職務しょくむ時間じかん外がいは所属しょぞく庁ちょう（勤務きんむしている警察けいさつ本部ほんぶや所轄しょかつの警察けいさつ署しょ）に戻もどす規則きそくが定さだめられている。出勤しゅっきん時じに装備そうび管理かんり部門ぶもんから受うけ取とり、退勤たいきん時じに返かえす。どの手帳てちょうが誰だれの携行けいこう品ひんか分わからなくなるので、個々人ここじんの名刺めいしを上うえに乗のせ、紛失ふんしつ防止ぼうし紐ひもで巻まいて留とめるため、名刺めいしを最低さいてい1枚まいは手帳てちょう内ないに常備じょうびしておく決きまりである。

例外れいがいとして、警視庁けいしちょう・千葉ちば県けん警察けいさつで2006年ねん8月がつから、兵庫ひょうご県けん警察けいさつで2008年ねん3月から、勤務きんむ時間じかん外がい（通勤つうきん中ちゅうなど）で法律ほうりつの執行しっこうを要ようする事態じたいに遭遇そうぐうした場合ばあいに備そなえ、自分じぶんの責任せきにんで厳重げんじゅうに管理かんりする（鞄かばんやバッグに入いれたりせず身みに着つける）事ことを条件じょうけんに、勤務きんむ時間じかん中ちゅう・時間じかん外がいを問とわず、手帳てちょうの携帯けいたいが常時じょうじ認みとめられる事ことになった。

形状けいじょう

前史ぜんし

日本にっぽんで警察けいさつ手帳てちょうの制度せいどが出来できたのは1875年ねん（明治めいじ8年ねん）3月がつ7日にちに公布こうふした行政ぎょうせい警察けいさつ規則きそく（明治めいじ8年ねん太政官だじょうかん第だい29号ごう達たち）であるがその規格きかくについては庁ちょう府県ふけんで統一とういつされておらず、他たの庁ちょう府県ふけんにおいて捜査そうさ活動かつどう等とうに支障ししょうが生しょうじた。そこで内務省ないむしょうは1935年ねん（昭和しょうわ10年ねん）11月26日にちに警察けいさつ手帳てちょう規程きてい（昭和しょうわ10年ねん内務省ないむしょう訓令くんれい第だい922号ごう）を制定せいていし全国ぜんこく統一とういつが計はかられた。

旧きゅう規格きかく手帳てちょう

新しん規則きそくにより様式ようしきが全国ぜんこく統一とういつされた警察けいさつ手帳てちょうは、従来じゅうらい、その名なの通とおり手帳てちょうの形状けいじょうをして実際じっさいに手帳てちょうとして書かき込こみが出来できるようになっていた。表紙ひょうしには旭日きょくじつ章あきらと、その下したにその警察官けいさつかんの所属しょぞくする警察けいさつ組織そしきの名称めいしょう（警察庁けいさつちょう、都道府県とどうふけん警察けいさつ名な）が共ともに金箔きんぱく捺おしで記しるされており、保護ほごの為ために透明とうめいエナメル塗料とりょうで表面ひょうめん処理しょりがされていた。表紙ひょうしを捲めくった1ページ目めに無む帽ぼう・両りょう襟えりの階級かいきゅう章しょうが見みえる冬ふゆ制服せいふく姿すがたの被ひ貸与たいよ者しゃ写真しゃしんが貼はられ、写真しゃしんと台紙だいしに跨またがるように、規定きていの浮うき出だし印しるし（エンボス印しるし）が捺おされ、氏名しめい、「警視庁けいしちょう警部補けいぶほ」などというように階級かいきゅう、所属しょぞく庁ちょう（警察庁けいさつちょう（皇宮こうぐう護衛ごえい官かんの場合ばあいはたとえば「皇宮こうぐう警部補けいぶほ」）、警視庁けいしちょう又または道府県どうふけん警察けいさつ本部ほんぶの事こと）、職員しょくいん番号ばんごうが記しるされていたここから数すうページを「恒久こうきゅう用紙ようし」と言いっていた。恒久こうきゅう用紙ようしの他ほかは普通ふつうのメモ帳ちょうが装填そうてんされていた。

規則きそく第だい5条じょうで手帳てちょうを開ひらいて身分みぶん証明しょうめい書しょを提示ていじする事ことが義務ぎむづけられていた。ただ現実げんじつには、表紙ひょうしの旭日きょくじつ章あきらと警察けいさつ名めいを見みせるだけで身分みぶん証しょう提示ていじが為なされない事ことが多おおく、旧きゅう規格きかく手帳てちょうの時代じだいを描えがいたテレビドラマや日本にっぽん映画えいがでも単たんに表紙ひょうしを提示ていじするだけで身分みぶんを示しめしているシーンが多おおかった。このため身分みぶん証明しょうめい書しょを提示ていじしないと警察官けいさつかんである事ことが証明しょうめいできない現行げんこう規格きかくへのデザイン変更へんこうに至いたる。

ちなみに、ドラマや映画えいがの小道具こどうぐでは、表紙ひょうしに旭日きょくじつ章あきら（または類似るいじした架空かくうの記章きしょう）と警察けいさつ名めいではなく「警察けいさつ手帳てちょう」の文字もじが書かかれたものが多おおく使用しようされていた。これは警察けいさつ関係かんけい者しゃに偽造ぎぞう・模造もぞうと判断はんだんされるような衝突しょうとつを避さける、盗難とうなん悪用あくようを防ふせぐ、劇げき中ちゅうで登場とうじょうする警察官けいさつかんの所属しょぞくに関かかわらず1種類しゅるいで済すませるなどの理由りゆうで作つくられた架空かくうのもので、このような装丁そうていは実在じつざいしない。

現行げんこう規格きかく手帳てちょう

新しんデザイン警察けいさつ手帳てちょうの形状けいじょう（警察けいさつ手帳てちょう規則きそく・別べつ図ず1より）

2000年ねん（平成へいせい12年ねん）3月がつ、当時とうじ続発ぞくはつしていた警察けいさつ不祥事ふしょうじへの対策たいさくを練ねるため、警察けいさつ刷新さっしん会議かいぎが設置せっちされた。同年どうねん7月がつに同どう会議かいぎが発表はっぴょうした緊急きんきゅう提言ていげんにおいて、警察官けいさつかんの「匿名とくめい性せい」が問題もんだい視しされ、警察官けいさつかんの責任せきにん所在しょざいの明確めいかく化かを求もとめられた。この提言ていげんを受うけ、名札なふだによる個人こじん認識にんしき番号ばんごうの明示めいじと共ともに、警察官けいさつかんの身分みぶん証しょうたる警察けいさつ手帳てちょうのデザイン変更へんこうが検討けんとうされ、2002年ねん10月1日にちから、新しんデザインの警察けいさつ手帳てちょうが使用しようされ始はじめた。

新しんデザインの警察けいさつ手帳てちょうは、2002年ねん7月がつ5日にちに公布こうふされた『警察けいさつ手帳てちょう規則きそくの一部いちぶを改正かいせいする規則きそく』により、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの警察けいさつの「バッジケース」に倣ならい、手帳てちょう機能きのうをなくして身分みぶん証しょう機能きのうのみに特とく化かした。手帳てちょう表面ひょうめんに文字もじやマークは一切いっさい無なく、内部ないぶの恒久こうきゅう用紙ようしとメモ帳ちょうも廃止はいしされることとなった。手帳てちょうとしての機能きのうは従前じゅうぜんから、警察けいさつ内ないでもあまり使用しようされていなかったという事情じじょうがあるという。

デザイン

手帳てちょうを開ひらくと、上面うわつらに冬ふゆ用よう制服せいふくを着き装そう、脱帽だつぼうで識別しきべつ章しょうが見みえる上半身じょうはんしんの写真しゃしんを貼付ちょうふまたは印刷いんさつし、階級かいきゅう・氏名しめい等とうを日本語にほんご、英語えいごで併記へいき、更さらに証票しょうひょう番号ばんごう（職員しょくいん番号ばんごう）を明記めいきし、ホログラム表示ひょうじされた直径ちょっけい29ミリの旭日きょくじつ章しょうを貼付ちょうふしたプラスチック製せいカード型がた身分みぶん証票しょうひょうなどが配はいされている。

下面かめんには、金属きんぞく製せいの記章きしょう（バッジ。逆ぎゃく三角形さんかっけいに近ちかい輪郭りんかく、上部じょうぶにスクロール入いり「英語えいご: POLICE」のアルファベット、下部かぶに警察庁けいさつちょう・皇宮警察こうぐうけいさつ・都道府県とどうふけん警察けいさつの名称めいしょう、中央ちゅうおうに後光ごこうを放はなつ旭日きょくじつ章あきら。色いろは金色きんいろと銀色ぎんいろのツートーン）が配はいされることとなった。

開陳かいちんが容易よういになることで、身分みぶんを証明しょうめいする証票しょうひょう部分ぶぶんを呈示ていじし易やすくなった。表紙ひょうしに警察官けいさつかんであることを示しめす文字もじがなくなったため、警察官けいさつかんである事ことを証明しょうめいするには表紙ひょうしを開ひらいて中なかを提示ていじする必要ひつようがあり、同時どうじに自身じしんの階級かいきゅう・氏名しめいも提示ていじしなければならなくなった。もっとも、アメリカの警察けいさつと違ちがい、バッジには個人こじん番号ばんごうは入いれられていない。

なお、あまり知しられていない手帳てちょう本体ほんたいの機能きのうとしては、上面うわつら部分ぶぶんに証票しょうひょう入いれの他ほか、名刺めいし入いれが装備そうびされている（最低さいてい1枚まい名刺めいしを入いれておかなければいけない）。

形状けいじょう・サイズ

手帳てちょう外がい被ひはドラマや映画えいが等とうでは黒くろであるが、実際じっさいの物ものは濃こい焦茶こげちゃ色しょく（チョコレート色しょく）で、革かわ製せいである。縦たて約やく11センチ、横よこ約やく7センチのサイズである。汚損おそん防止ぼうしにビニールカバーが嵌はめられている場合ばあいもある。なお、この形状けいじょう変更へんこうに伴ともない、被ひ指定してい者しゃに交付こうふされて手帳てちょうに貼はられた「司法しほう警察けいさつ員いんの証あかし」を廃止はいしした県警けんけいが多数たすうある。

その他た

また、交通こうつう巡視じゅんし員いん及および西日本にしにほんの一部いちぶの警察けいさつ本部ほんぶの少年しょうねん補導ほどう員いんにも同様どうよう式しきの少年しょうねん補導ほどう員いん、交通こうつう巡視じゅんし員いん手帳てちょうの貸与たいよが規定きていされているが、司法しほう警察けいさつ職員しょくいんである警察官けいさつかんが所持しょじする警察けいさつ手帳てちょうと区別くべつするため、記章きしょう装着そうちゃく部分ぶぶんの上部じょうぶに、『交通こうつう巡視じゅんし員いん』若もしくは『少年しょうねん補導ほどう員いん』の文字もじを金色きんいろにて表示ひょうじしている。

なお、身分みぶん証しょうは階級かいきゅうが変かわらない限かぎり更新こうしんされないので（これは旧きゅう形式けいしき当時とうじからである）、昇任しょうにん試験しけんを受うけなかったり、受験じゅけんしても不ふ合格ごうかくだったりすると、いつまでも交付こうふ当時とうじ（最低さいてい階級かいきゅうで巡査じゅんさ長ちょう・この階級かいきゅうは余程よほどの事ことがない限かぎり、誰だれでも勤続きんぞく11年ねん目めでほぼ自動的じどうてきに昇格しょうかくする）の証明しょうめい写真しゃしんのままである。

取扱とりあつかいに関かんする注意ちゅうい事項じこうおよび違反いはん行為こうい

• 警察けいさつ手帳てちょうは、職務しょくむ中ちゅうの警察官けいさつかん全すべてが常時じょうじ携帯けいたいしておくものであり、制服せいふく勤務きんむの者ものはもちろんのこと、私服しふく勤務きんむの者ものでも必かならず携帯けいたいしていなくてはならない。紛失ふんしつした場合ばあいは「戒告かいこく」となるなど厳重げんじゅうな処分しょぶんが下くだされる。失しつくさないように茄子なすび鐶（なすかん。留とめ金がね具ぐの一種いっしゅ）付つきの紐ひもが付つけられており、これを衣服いふくの一部いちぶに留とめておけば取とり落おとしても紐ひもでぶら下さがり、すぐに分わかるようになっている。また公務こうむ執行しっこう時じに身分みぶんを示しめす必要ひつようのある場合ばあいか、市民しみんから提示ていじを要求ようきゅうされた場合ばあい以外いがいには、出だして見みせたりなどしてはならない。他人たにんへの貸与たいよも厳禁げんきんで、発覚はっかくした場合ばあいはやはり厳重げんじゅうな処分しょぶんを受うける。
• 外そと革かわ、表紙ひょうしにシールなどを貼はってはならない。
• 警察けいさつ本部ほんぶや検察庁けんさつちょう等とう、私服しふく勤務きんむ員いんが通行つうこう証しょうを着き装そうしている施設しせつ内ないでは通行つうこう証しょうを貸与たいよされていない警察官けいさつかんは、手帳てちょうを折おり返かえして記章きしょう部分ぶぶんのみを露出ろしゅつさせることでこれに代かえることがある。

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんの警察けいさつ
• 身分みぶん証明しょうめい書しょ

外部がいぶリンク

• 警察けいさつ手帳てちょう規則きそく - e-Gov法令ほうれい検索けんさく