GADV仮説かせつ

GADV仮説かせつ（［GADV］-タンパク質たんぱくしつワールド仮説かせつ）は、生命せいめいの起源きげんに関かんする仮説かせつのひとつ。

生命せいめいは遺伝子いでんしが形成けいせいされるよりも前まえに、GNC（グアニン、任意にんい、シトシンからなるコドン）がコードする4つのアミノ酸あみのさん（グリシン、アラニン、アスパラギン酸さん、バリン。これらをアミノ酸あみのさんの一文字ひともじ記号きごうで表あらわしたものが、それぞれG、A、D、Vである）からなるGADVタンパク質たんぱくしつの擬似ぎじ複製ふくせいによって形成けいせいされたGADVタンパク質たんぱくしつワールドから生うまれたとの仮説かせつである。

生命せいめいの起源きげんに関かんする考かんがえ方かたの中なかで、現時点げんじてんでは主流しゅりゅうとなっているRNAワールド仮説かせつ（生命せいめいがRNAの自己じこ複製ふくせいによって形成けいせいされたRNAワールドから生うまれたとする考かんがえ）と一ひとつの対極たいきょくを成なす考かんがえとなっている。

概要がいよう

GADV仮説かせつは池原いけはら健二けんじ（当時とうじ奈良女子大学ならじょしだいがく教授きょうじゅ）によって提唱ていしょうされた。同おなじく池原いけはら健二けんじが提唱ていしょうするGNC-SNS原初げんしょ遺伝いでん暗号あんごう仮説かせつ（GNC仮説かせつ）を一ひとつの根拠こんきょとしている。

GNC仮説かせつでは、現在げんざいの普遍ふへん遺伝いでん暗号あんごう（標準ひょうじゅん遺伝いでん暗号あんごうともいう）は4つのGGC, GCC, GAC, GUC遺伝いでん暗号あんごうがそれぞれグリシン、アラニン、アスパラギン酸さん、バリンをコードするGNC原初げんしょ遺伝いでん暗号あんごうを起源きげんとし、16種しゅの遺伝いでん暗号あんごうが10種しゅのアミノ酸あみのさんをコードするSNS原始げんし遺伝いでん暗号あんごう（Sはグアニン（G）またはシトシン（C）を意味いみする）を経へて形成けいせいされたと考かんがえる。

また、GADV仮説かせつは以下いかのような事柄ことがらを主おもな根拠こんきょとしている。

• GADVアミノ酸あみのさんをほぼ均等きんとうに含ふくむタンパク質たんぱくしつは、現存げんそんのタンパク質たんぱくしつのアミノ酸あみのさん組成そせいと個々ここのアミノ酸あみのさんの持もつ因子いんしから計算けいさんによって求もとめられる4つのタンパク質たんぱくしつの構造こうぞう形成けいせい能力のうりょく（疎水そすい性せい/親水しんすい性せい度ど、αあるふぁ-ヘリックス形成けいせい能のう、βべーた-シート形成けいせい能のう、ターン（コイル）形成けいせい能のう）を満足まんぞくできること。
• したがって、GADVアミノ酸あみのさんをほぼ均等きんとうに含ふくむアミノ酸あみのさん組成そせいの中なかからランダムにアミノ酸あみのさんを選択せんたくし、重合じゅうごうすることによって得えられるGADVタンパク質たんぱくしつは高たかい確かく率りつで現存げんそんのタンパク質たんぱくしつと基本きほん的てきには良よく似にた水溶すいよう性せいで球状きゅうじょうのタンパク質たんぱくしつを形成けいせいできること。
• こうして遺伝子いでんし不在ふざい下かで形成けいせいされたGADVタンパク質たんぱくしつはアミノ酸あみのさん配列はいれつが異ことなっているためそれぞれのタンパク質たんぱくしつの構造こうぞうは互たがいに異ことなっているが、アミノ酸あみのさん組成そせいが単純たんじゅんであるため疎水そすい性せいの大おおきなバリンを高たかい確かく率りつでタンパク質たんぱくしつ内部ないぶに持もち、親水しんすい性せいの大おおきなアスパラギン酸さんを高たかい確かく率りつでタンパク質たんぱくしつ表面ひょうめんに持もつ水溶すいよう性せいで球状きゅうじょうの良よく似にたタンパク質たんぱくしつとなること。
• GADVアミノ酸あみのさんを均等きんとうに含ふくむ水溶液すいようえきを繰くり返かえし蒸発じょうはつ乾いぬい涸させることによって、ランダムに重合じゅうごうさせて得えられるGADVペプチド（それらの会合かいごう体たいはGADVタンパク質たんぱくしつとみなすことも可能かのう）にも、ウシ血清けっせいアルブミン内うちのペプチド結合けつごうを加水かすい分解ぶんかいする活性かっせいが存在そんざいすること。したがって、GADVタンパク質たんぱくしつはペプチド結合けつごう分解ぶんかい反応はんのうの逆ぎゃく反応はんのうによってペプチド結合けつごう形成けいせい反応はんのうを触媒しょくばいできる可能かのう性せいを持もつこと。
• 以上いじょうのようなGADVタンパク質たんぱくしつの性質せいしつを考慮こうりょすると、GADVタンパク質たんぱくしつは遺伝子いでんし不在ふざい下かでも擬似ぎじ複製ふくせいによって増殖ぞうしょくすることができる。

関連かんれん文献ぶんけん

定期ていき刊行かんこう物ぶつ

• Ikehara, Kenji (2005). “Possible steps to the emergence of life: The [GADV]-protein world hypothesis”. The Chemical Record (Wiley Subscription Services, Inc., A Wiley Company) 5: 107–118. doi:10.1002/tcr.20037. 
• Ikehara, Kenji (2014). “[GADV]-Protein World Hypothesis on the Origin of Life”. Origins of Life and Evolution of Biospheres (Netherlands: Springer) 44: 299–302. doi:10.1007/s11084-014-9383-4. 

書籍しょせき

• 池原いけはら健二けんじ『GADV仮説かせつ―生命せいめい起源きげんを問とい直なおす』京都大学きょうとだいがく学術がくじゅつ出版しゅっぱん会かい〈学術がくじゅつ選書せんしょ〉、2006年ねん4月がつ。ISBN 978-4876988105。 

外部がいぶリンク

• 池原いけはら健二けんじのホームページ（提唱ていしょう者しゃによるGADV仮説かせつの概要がいよう説明せつめい）