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RAID - Wikipedia

RAID

複数ふくすうのハードディスクを使用しようして冗長じょうちょうせい確保かくほする方式ほうしき

RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks、または Redundant Arrays of Independent Disks、レイド[1]は、複数ふくすうだいハードディスクわせることで仮想かそうてきな1だいのハードディスクとして運用うんよう冗長じょうちょうせい向上こうじょうさせる技術ぎじゅつ[2]ディスクアレイ代表だいひょうてき実装じっそう形態けいたいで、おも信頼しんらいせい可用性かようせい向上こうじょう目的もくてきとしてもちいられるものである。バックアップ混同こんどうされる場合ばあいもあるが、RAIDはあくまでも運用うんようたいしての冗長じょうちょうせい確保かくほするものでありバックアップとはことなるてん注意ちゅうい必要ひつよう

ほん記事きじにおいて、「装置そうち」という語句ごくもちいるが、これはRAIDがけられる機器きき(サーバ・ワークステーション・パソコンなど)の総称そうしょう意味いみする。

概要がいよう

編集へんしゅう

1988ねんカリフォルニア大学だいがくバークレーこうデイビッド・パターソン, Garth A. Gibson, Randy H. Katzによる論文ろんぶん「A Case for Redundant Arrays of Inexpensive Disks (RAID)」において提唱ていしょうされた[3]

この論文ろんぶんは、安価あんかてい容量ようりょう価格かかく相応そうおう信頼しんらいせいハードディスクドライブ (Inexpensive Disk) をもちい、だい容量ようりょう信頼しんらいせいたかいストレージ(補助ほじょ記憶きおく装置そうち)をいかに構築こうちくすべきかを提案ていあんしたものである。論文ろんぶんにはハードディスクの構成こうせいによって、RAID 1からRAID 5までの5種類しゅるい定義ていぎしている。

また、論文ろんぶんでは提案ていあんされていないが、ストライピングのみの場合ばあい一般いっぱんてきにはRAIDの一種いっしゅとみなされ、これは冗長じょうちょうせい確保かくほされないことからRAID 0とばれる[4]

はじめに定義ていぎされた6種類しゅるいのうち、RAID 2はほとんど利用りようされず、RAID 3,4もRAID全体ぜんたいなかでは少数しょうすうである[5]今日きょうではRAID 0・RAID 1・RAID 5、およびこれら3方式ほうしきわせがもちいられている。のちにRAID 5を拡張かくちょうしたRAID 6が定義ていぎされ、RAID 5よりたい障害しょうがいせい必要ひつよう場面ばめん利用りようされている。

導入どうにゅう検討けんとうするユーザにとっては、信頼しんらいせい速度そくど予算よさん(ハードディスクの利用りよう効率こうりつふくむ)のうちどれを重視じゅうしするかをかんがえ、実情じつじょうにあわせた導入どうにゅう方法ほうほう選択せんたくすることができる。3つを完全かんぜんたすのはむずかしいが、2つをたす現実げんじつてき方法ほうほう充分じゅうぶんにある。

RAIDの構成こうせいによっては、一部いちぶのハードディスクが故障こしょうしてもディスクアレイは稼動かどう継続けいぞくできる。その場合ばあい、ディスクを稼働かどうさせたまま故障こしょうしたハードディスクをはずしてわりのハードディスクに交換こうかんすることにより装置そうち停止ていしすることなく運用うんようつづけることができる。このように装置そうち稼働かどうちゅう接続せつぞくしなおして、即座そくざ利用りようできる機能きのうを「ホットスワップかつせん挿抜)」とぶ。ホットスワップ機能きのう使用しようするには装置そうちがわでハードウェアとして対応たいおうしていることが前提ぜんていとなる。サーバ用途ようとなど24あいだ連続れんぞく稼働かどうもとめられる装置そうちではホットスワップ対応たいおうのぞましい。

RAIDは、だい容量ようりょうデータの高速こうそく処理しょりたい障害しょうがいせい向上こうじょう必須ひっす要件ようけんとするだい規模きぼ業務ぎょうむようサーバワークステーション特定とくてい目的もくてき製造せいぞうされたコンピュータ機器ききとうもちいられていたが、近年きんねん小規模しょうきぼサーバやパソコンにも普及ふきゅうしつつある[よう出典しゅってん]

普及ふきゅう要因よういん

編集へんしゅう
  • デジタルデータの重要じゅうようせいたかまっているため
  • HDD(ハードディスクドライブ)がだい容量ようりょうし、一般いっぱんユーザにとっても故障こしょううしなわれるデータりょう無視むしできなくなったため
  • HDDやRAID関連かんれん製品せいひんてい価格かかく、RAID機能きのうのチップセットへの内蔵ないぞう(HDDさえあれば追加ついか投資とうししでRAIDが利用りようできる)がすすんでいるため

注意ちゅういてん

編集へんしゅう

RAIDは複数ふくすうのHDDをもちいて、ディスクアレイの可用性かようせいたかめる技術ぎじゅつである。そのため、ファイルのあやま消去しょうきょなど人為じんいてきなもの、コンピュータウイルスによるファイルの破壊はかいファイルシステム整合せいごうなど、ソフトウェアてき障害しょうがいには対応たいおうできない。またHDDがどう時期じき複数ふくすう故障こしょうする、リビルドのHDDが障害しょうがいこすひとし単体たんたいのHDDにくらべれば非常ひじょうひくいがディスクアレイも故障こしょう可能かのうせいつ。

バックアップは、データを静的せいてき状態じょうたいで、一定いってい期間きかん複数ふくすう世代せだい保存ほぞんするものであり、RAIDとは役割やくわりことなる。データはRAIDとバックアップの両者りょうしゃみあわせて運用うんようすることにより、サービスの継続けいぞくせい保証ほしょうしつつ、たか安全あんぜんせいって保全ほぜんすることができる。

RAIDの方式ほうしき

編集へんしゅう

RAIDを実装じっそうする方法ほうほうとしては、ハードウェア実現じつげんする方法ほうほう(ハードウェア方式ほうしき)とソフトウェア実現じつげんする方法ほうほう(ソフトウェア方式ほうしき)がある。この2方式ほうしき明確めいかく分類ぶんるいできるものではなく、中間ちゅうかんてき方式ほうしきがいくつか存在そんざいする。

ハードウェア方式ほうしき

編集へんしゅう

コントローラカード

編集へんしゅう
 
シリアルATA RAIDカード

この方式ほうしきは、RAIDコントローラとばれるカードを装置そうちけ、パリティ演算えんざんやディスクの管理かんりなどをまかせるものである。ドライバさえ用意よういすればハードウェアがわのマシンパワーに影響えいきょうあたえず、カード自体じたい専用せんようのキャッシュメモリを搭載とうさいしている場合ばあいはアクセスの高速こうそく見込みこめる。一部いちぶのマザーボードにはRAIDコントローラをあらかじめ実装じっそうしている製品せいひんがある[6]

純粋じゅんすいなハードウェア方式ほうしきでは、ホストがわずかな指示しじおくるだけでRAIDコントローラが具体ぐたいてき処理しょりすべおこなうため、CPUの負荷ふか低減ていげんされる[7]。しかし、コントローラごと制御せいぎょ方法ほうほうことなるため、OSがわかくRAIDコントローラカードへの対応たいおう必要ひつようであり、専用せんようのデバイスドライバが必要ひつようとなる。

一方いっぽう、RAIDコントローラカードのなかには、RAID機能きのうだい部分ぶぶんをソフトウェアで実現じつげんしているものもある[8]。この場合ばあい、OS起動きどうまえにある程度ていどのRAID機能きのう使用しよう可能かのうであるがCPUの負荷ふかはソフトウェア方式ほうしき大差たいさく、ハードウェア方式ほうしきくらべて対応たいおうOSが限定げんていされたり信頼しんらいせいとぼしい場合ばあいがあり、ソフトウェア方式ほうしき分類ぶんるいされる。

ディスクアレイユニット

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複数ふくすうのディスクを搭載とうさい出来できるケースにRAIDを搭載とうさいしたハードウェア。コンピュータやOSがわからはたんなるSCSIファイバーチャネルのドライブとしてえるため、特別とくべつなドライバが必要ひつようなく、CPUへの負荷ふかまったくない。ディスクアレイユニットを接続せつぞくしたい装置そうち必要ひつよう外部がいぶ接続せつぞくインタフェースがすでにあれば装置そうち筐体きょうたいけることもなく、ケーブルをつなぐだけで使つかえるようになる。

ソフトウェア方式ほうしき

編集へんしゅう

ソフトウェア方式ほうしきは、OS自身じしん普通ふつうのドライブコントローラ(IDESCSIFC など)をとおして複数ふくすうだいのディスクを管理かんりする。この方式ほうしきはハードウェア方式ほうしき比較ひかくし、CPUへの負荷ふかたかいが、特別とくべつなハードウェアを購入こうにゅうする必要ひつようがなく導入どうにゅうコストがひくいという利点りてんがある[7]。しかしながらアクセスコントロールの大半たいはんをOSやCPUに依存いぞんするためマシンパワーを消費しょうひすること、物理ぶつりてきなキャッシュが存在そんざいしないためハードてき障害しょうがいやソフトウェアがわ障害しょうがい発生はっせいともなってRAID情報じょうほう致命ちめいてき問題もんだいこす可能かのうせいがハードウェア方式ほうしきくらべてたかいという欠点けってん存在そんざいする。

Windowsは、RAID機能きのうをサポートしている[9]Linuxは、カーネル2.4けい以降いこうにてRAID0/1/4/5/6をサポートしている[10]FreeBSDは、gmirrorというソフトウェアにてサポートしている[11]。ファイルシステムのZFSはそれ自身じしんにRAID機能きのうをもち、RAID5またはRAID6相当そうとう機能きのうとしてそれぞれRAID-Z、RAID-Z2が実装じっそうされている。インテルチップセットでは、マトリックス・ストレージ・マネージャー機能きのうによりRAID機能きのうをサポートしている[12]。これはソフトウェアというよりはファームウェアでのRAIDである。Adaptecのてい価格かかくRAIDボードでは、HostRAIDによりソフトウェアRAIDをおこなっている[13]

近年きんねん、サーバけチップセットだけでなくメインストリームけのチップセットでもRAIDコントローラ機能きのう(0/1/0+1/5など)を集積しゅうせきしたものがひろ普及ふきゅうしつつある。マトリックス・ストレージ・マネージャー機能きのうはMUX(マルチプレクサ)/DEMUX(デマルチプレクサ)で構成こうせいされており、CPUが発行はっこうしたディスクI/O操作そうさ複数ふくすうのハードディスクへのディスクI/Oに分散ぶんさん・またディスクからのしの多重たじゅうおこなう(パリティ演算えんざん機能きのうつものとたないものがある)。信頼しんらいせいはもとより、ディスクI/O速度そくど高速こうそくする総合そうごうアクセラレータてき要素ようそつよい。このため、ソフトウェア方式ほうしき分類ぶんるいされる場合ばあいおおい。[よう出典しゅってん]

電源でんげん問題もんだい

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ハードディスクの必要ひつよう台数だいすうえるため、とくにRAIDコントローラカードをもちいて装置そうち内部ないぶにハードディスクをけている場合ばあい電源でんげんがハードディスク台数だいすうぶん負担ふたんえられるか注意ちゅういすべきである。

ハードディスクは突入とつにゅう電流でんりゅうひとしにより起動きどうもっと電力でんりょく必要ひつようとするため、スタッガードスピンアップ(かくディスクに時間じかんいて起動きどうする)機能きのう搭載とうさいしているRAIDコントローラもある[14]

ライトホール問題もんだい

編集へんしゅう

RAID 5の問題もんだいとして有名ゆうめいだが、複数ふくすうのHDDをたばねて1つのグループとなす、すべてのRAIDシステムでこりうる。 RAID 2以外いがいのRAIDはのエラー検出けんしゅつをHDDのエラー検出けんしゅつ依存いぞんしているので、RAIDシステムではエラー検出けんしゅつ出来できない。 物理ぶつりてき破損はそんとうでHDDから応答おうとうかった場合ばあいしエラーをHDDがかえした場合ばあいかぎり、RAIDシステムではエラーを検出けんしゅつできるが、まさしくせる場合ばあいはエラー検出けんしゅつ出来できない。

たとえば、2だいでのRAID 1の場合ばあい、RAIDコントローラからHDD AとHDD Bに同時どうじみリクエストは発生はっせいするが、HDDには処理しょりのタイムラグがあるため、HDD Aにはみが完了かんりょうしたがHDD Bにはみが発生はっせいしていないとうタイミングが存在そんざいする(ぎゃくもしかり)。 このタイミングで電源でんげんだんとうにより処理しょり中断ちゅうだんした場合ばあい、HDD Aにはあたらしくまれたデータ、HDD Bには上書うわがきされるまえふるいデータが記録きろくされており、HDD AとHDD Bのミラーとしてたいになるセクタの同一どういつではなくなる。 ブロックサイズがおおきい場合ばあいは、ブロック自体じたい複数ふくすうのセクタで構成こうせいされているため、どういちHDDのなかでも、ブロックを構成こうせいする一部いちぶのセクタのみ完了かんりょうしそれ以外いがいえられていないということも発生はっせいする。 このようにRAIDを構成こうせいするグループのHDDのブロックすべてにめずに、あなひらいたのようにまれるためライトホールとばれる。

HDDレベルではどちらも正常せいじょうなのでエラーせるが、HDDごとことなるされるようになる。 これはRAIDレベルでは整合せいごうこした状態じょうたいとなり、RAIDシステムではエラー検出けんしゅつ機能きのうっていないために、エラーがきていること検出けんしゅつすることが出来できない。

結果けっかとして、RAID 1の場合ばあいは、むHDDによってわる。上記じょうきれいではHDD BのみがされていないためにBからされた場合ばあいやHDD Aが破損はそんし、HDD BからHDD A'にリビルドされたさいにデータがこわれる。 RAID 3,4,5、6の場合ばあいは、あやまったパリティによりデータが破壊はかいされる。 これらを、サイレントクラッシュ(正確せいかくにはサイレントデータコラプション)とぶ。

バッテリバックアップされたNVRAMやフラッシュメモリとう不揮発ふきはつメモリをっているハードウェアRAIDでは、 HDDからみの完了かんりょう完了かんりょうとうのトランザクション管理かんりをしているためこの問題もんだい発生はっせいしないようになっているが、 ソフトウェアRAIDや、不揮発ふきはつメモリをたない安価あんかなハードウェアRAIDでは、この問題もんだい発生はっせいする。

RAID 2はそれ自体じたいがハミングコードによるエラー検出けんしゅつ機能きのうっているので、この問題もんだい発生はっせいしない。 RAID-Zもブロック単位たんいでのえがCopyOnWriteにより保証ほしょうされることとチェックサムがあるためにこの問題もんだい発生はっせいしない。

RAID 0からRAID 6まで7種類しゅるいのうち、よく利用りようされるのはRAID 0・RAID 1・RAID 5・RAID 6で、RAIDコントローラやソフトウェアによって使用しようできるレベルが限定げんていされている場合ばあいおおい。

かくRAIDレベルをわせて信頼しんらいせい速度そくど両立りょうりつさせることができる。

サーバ用途ようととしては、データの保全ほぜんせい重視じゅうしするためRAID 1またはRAID 5がおも利用りようされている。サーバ台数だいすうかぎられた環境かんきょうで、いちだいのサーバにかかる負担ふたんたか場合ばあいはこれらにRAID 0をんで高速こうそくねらうケースもある(もちろんサーバ自体じたい増設ぞうせつして、いちだいあたりの負担ふたん軽減けいげんすることも検討けんとうすべきであり、負荷ふか度合どあい・設置せっち場所ばしょ都合つごう予算よさんなどを多角たかくてき検討けんとうする必要ひつようがある。たんにRAID 0をかぶせて高速こうそくすることだけに過度かど期待きたいせるべきではない)。

RAIDの方式ほうしきによらず、サーバ用途ようと場合ばあいはトラブル発生はっせいすみやかなハードディスク交換こうかん実施じっしできる態勢たいせいるのが重要じゅうようであり、ホットスペアやホットスワップ対応たいおう製品せいひんもちいるのがのぞましい。

また、あるしゅのアプリケーションは、制御せいぎょ情報じょうほうはRAID 1またはRAID 5のファイルシステムに保存ほぞんし、マルチメディアデータはRAID 0に保存ほぞんするとともにテープやひかりメディアにバックアップしている。

 
RAID 0の概念がいねんひとつのファイルをA1からA8に分割ぶんかつして、これを複数ふくすうのディスクに同時どうじ分散ぶんさんしてむ。

RAID 0はデータを分割ぶんかつし、複数ふくすうだいのハードディスクに同時どうじ分散ぶんさんしてきする。高速こうそく可能かのうとなる。ストライピングともぶ。冗長じょうちょうせいがなくたい障害しょうがいせいもないが、実装じっそう要素ようそ(ハードウェアおよびソフトウェア)はRAIDのそれらを転用てんようできるため、のRAIDモードとともに実装じっそうしているコントローラがおおい。冗長じょうちょうせいたないことを明示めいじする意味いみで、表現ひょうげんするかずであるゼロされる。最低さいてい2だいのドライブが必要ひつようである。

1だいのドライブが故障こしょうしただけでアレイ全体ぜんたい故障こしょうとなるため、その故障こしょうりつ単体たんたいドライブにくらたかい。たとえば、単位たんい時間じかんあたりのドライブ故障こしょうりつが1%の場合ばあい、2だいでRAID 0を構成こうせいした場合ばあいのアレイの故障こしょうりつやく2% (1-0.99*0.99=0.0199) とやく2ばい上昇じょうしょうする。

単独たんどくのRAID 0では速度そくど向上こうじょうするものの故障こしょうりつ増加ぞうかすることから、後述こうじゅつのRAID 1や5とわせてもちいられることもおおい。

  • 長所ちょうしょ
    • ドライブすうえるほどシーケンシャルおよびランダムアクセス速度そくどがる。ただ後者こうしゃ向上こうじょうにはストライプサイズ(分割ぶんかつつぶ)、セクタサイズ、クラスタサイズ、ブロックサイズ、先読さきよ深度しんどなどを適切てきせつ設定せっていすること必要ひつようである。
  • 短所たんしょ
    • 冗長じょうちょうせいまったくない。
    • ドライブすうえるほどアレイの故障こしょうりつがる。
    • 適切てきせつなストライプサイズやコマンドキューの調整ちょうせい出来できない場合ばあい、ランダムアクセス速度そくどはあまり向上こうじょうしないかドライブすう増加ぞうかともな低下ていかする可能かのうせいがある。
 
RAID 1の概念がいねん。データをA1-4に分割ぶんかつしておなじデータを同時どうじむ。

RAID 1は複数ふくすうだいのハードディスクに、同時どうじおな内容ないようむ。これをミラーリングぶ。もっともシンプルな方式ほうしきであり、RAIDの弱点じゃくてんであるコントローラの故障こしょうにも対応たいおうしやすい。最低さいてい2だいのドライブが必要ひつようである。

すべてのディスクが同時どうじ故障こしょうする可能かのうせいひくいため、システムの安定あんていせいたかい。

たとえば、単位たんい時間じかんたりのドライブの故障こしょうりつを1%として2だいでRAID 1を構成こうせいする場合ばあい、アレイの故障こしょうりつは0.01% (0.01*0.01=0.0001) と1/100となる。

ただし、利用りよう可能かのう容量ようりょう単体たんたいのハードディスク容量ようりょうえない。台数だいすうえるほど容量ようりょう効率こうりつわるくなる。効率こうりつ重視じゅうしならばRAID 5のほうがよい。

本来ほんらいしは、ひとつのドライブからのみでそれ以外いがいはバックアップである。すべてのディスクからせば、理論りろんじょう高速こうそくせる。

初期しょきのネットワークOSであるNetware 2.x、3.xは、上記じょうきれており、コントローラが複数個ふくすうこある場合ばあいには、一方いっぽうのディスクにみながら他方たほうのディスクからみをおこなうなどの負荷ふか分散ぶんさんおこなっていた[よう出典しゅってん]したがって、ディスクあいだ記録きろくデータに不一致ふいっち発生はっせいする時間じかんがあり、ディスクの同期どうき完了かんりょうさせてから終了しゅうりょうする必要ひつようがあった。

しかし、つね性能せいのう重視じゅうしした実装じっそうおこなわれているわけではなく、Windows NTのソフトウェアRAID 1では、みはつねにひとつのディスクからのみおこなわれる。Windows Server 2003はてい負荷ふかには片方かたがたから、こう負荷ふかには負荷ふか分散ぶんさんおこな[よう出典しゅってん]

  • 長所ちょうしょ
    • OSやマザーボードに標準ひょうじゅん装備そうびされている場合ばあい、RAIDハード/ソフトウェアを別途べっと用意よういせずとも使用しようできる。
    • ドライブすうえるほどたい障害しょうがいせいがる。
  • 短所たんしょ
    • 容量ようりょう利用りよう効率こうりつわるい。N だいのドライブとしたとき容量ようりょう効率こうりつは1/Nとなる。
    • だい容量ようりょう目的もくてきとしていない。
    • 高速こうそく限定げんていてきである。

RAID 01 (0+1) および RAID 10 (1+0)

編集へんしゅう
 
RAID 0+1 (RAID 01)
 
RAID 1+0 (RAID 10)

RAID 0とRAID 1をわせた構成こうせい特別とくべつにRAID 0+1 (RAID 01) およびRAID 1+0 (RAID 10) とぶ。高速こうそくだい容量ようりょう目指めざしたRAID 0と高信頼こうしんらいせいもとめたRAID 1をわせることにより、速度そくど容量ようりょうたい障害しょうがいせい向上こうじょうはかることができる。最低さいてい4ドライブ必要ひつようである。

RAID 0とRAID 1は相性あいしょうがよく、 RAID 1の特性とくせいによりRAID 0の弱点じゃくてんであったランダムアクセスも高速こうそくできる。RAID 1を使用しようしているためコントローラの2じゅうにも対応たいおうできるので、容量ようりょう必要ひつようでなおかつ強力きょうりょくたい障害しょうがいせいもとめる場合ばあい採用さいようされることがおおい。

RAID 0とRAID 1、どちらを下層かそうおこなうかにより名前なまえわる。0または1は、下層かそうおこなわれる処理しょりさき表記ひょうきする。一見いっけんどちらもおなじようにえるがたい障害しょうがいせいめんことなる。

  • RAID 0+1 : ストライプされた領域りょういきをミラーリング
  • RAID 1+0 : ミラーセットをストライプ

ドライブ故障こしょうへのたいせいはRAID 1+0のほうがすぐれている。RAID 0+1ではRAID 1を構成こうせいするRAID 0領域りょういきのドライブそれぞれ1だいずつが故障こしょうした時点じてんでデータが破壊はかいされるが、RAID 1+0ではRAID 0を構成こうせいするRAID 1セットの構成こうせいドライブ2だいがどちらも故障こしょうしないかぎりデータは破壊はかいされない[15]台数だいすうえればえるほどRAID 1+0のほうがたい障害しょうがいせいがる[16]。コントローラ故障こしょうへのたいせいはRAID 0+1が上回うわまわ局面きょくめん存在そんざいしうるが[17]基本きほんてきにはRAID 1+0のほうがすぐれているとかんがえてよい。

RAID 2の冗長じょうちょう機構きこうハミング符号ふごうで、ストライプ単位たんいは1ビットである[5]。ハミングコードによるビット単位たんいのデータ修復しゅうふくつね必要ひつようなほどHDDの信頼しんらいせいひくくないので、RAID 2は実用じつようせいがなく、製品せいひん市販しはんされていない。

必要ひつようなドライブすうは、ハミングコードの訂正ていせい可能かのうビットすうによりことなるため一意いちい記述きじゅつできないが、最低さいていで5だいのドライブを必要ひつようとする。

  • 長所ちょうしょ
    • ぜんRAIDレベルのなか最高さいこうたい障害しょうがいせいつ。最小さいしょう構成こうせいの5だい場合ばあい、3だいのドライブの故障こしょうにもえられる[5]
  • 短所たんしょ
    • ハミングコード計算けいさんコストが莫大ばくだいである[18]
    • ディスクの使用しよう効率こうりつきわめてわるい。最小さいしょう構成こうせいの5だい利用りよう可能かのう容量ようりょうは2だいぶん[18]。7だい場合ばあいには4だいぶん、15だい場合ばあいには11だいぶん、31だい場合ばあいには26だいぶんとなる。ただ最小さいしょう構成こうせいのぞけばRAID 1よりも効率こうりつい。

RAID 3: ビット/バイト単位たんいでの専用せんようパリティドライブ

編集へんしゅう
 
RAID 3

RAID 3はRAID 2のあやま訂正ていせい符号ふごう排他はいたてき論理ろんりによるパリティに変更へんこうし、演算えんざんコストを低減ていげんしたものである。

最低さいてい3ドライブで構成こうせいされ、1だいあやま訂正ていせい符号ふごうあてて、のこりの複数ふくすうだいにデータを記録きろくする。

ビデオ編集へんしゅう機器ききにおいてはアクセスのほとんどがシーケンシャルアクセスであることから、現在げんざいでもRAID 3がもちいられている場合ばあいがあるが、パソコンやサーバでRAID 3をもちいるメリットは存在そんざいしない。

  • 長所ちょうしょ
    • パリティを訂正ていせい符号ふごうとしてもちいているためRAID 2に比較ひかくして計算けいさんコストがひくい。
    • 構成こうせいドライブすう-1個いっこ容量ようりょう確保かくほできるため、ディスク容量ようりょう無駄むだ最小限さいしょうげんさえられる。
  • 短所たんしょ
    • ビット/バイト単位たんいでアクセスをおこなうためI/Oの効率こうりつわるい。
    • パリティドライブが処理しょりのボトルネックとなる。

RAID 4: ブロック単位たんいでの専用せんようパリティドライブ

編集へんしゅう
 
RAID 4

RAID 4はRAID 3のI/O単位たんいをブロックに拡大かくだいし、I/O効率こうりつ改善かいぜんはかったものである。最低さいてい3だい構成こうせいされる。以下いか短所たんしょからRAID5へ移行いこうされ、RAID4は実質じっしつてき消滅しょうめつしている。

  • 長所ちょうしょ
    • アクセス単位たんいがブロックになっているため、RAID 3より高速こうそくなI/Oがのぞめる。
  • 短所たんしょ
    • パリティドライブは処理しょり常時じょうじアクセスがおこなわれるため負担ふたん集中しゅうちゅうする。性能せいのうじょうボトルネックとなるだけでなく、消耗しょうもうはげしく寿命じゅみょう低下ていかする。(これにたいするかいがRAID5)

RAID 5: ブロック単位たんいでのパリティ分散ぶんさん記録きろく

編集へんしゅう
 
RAID 5

RAID 5は水平すいへいパリティを使用しようして複数ふくすうのハードディスクにあやま訂正ていせい符号ふごうデータととも分散ぶんさんさせて記録きろくすることで、RAID 3、RAID 4のボトルネック回避かいひしている。最低さいてい3ドライブが必要ひつようである。RAID1やRAID1+0にくらべて使用しよう効率こうりつすぐれている。またRAID0のように複数ふくすうのディスクに分散ぶんさんしているため性能せいのうすぐれている。一方いっぽう場合ばあいにはパリティブロック作成さくせいしなおすために、ディスクからの既存きそんパリティしとパリティ演算えんざんともなうが、I/Oプロセッサを搭載とうさいしたこう価格かかくたい製品せいひんではパリティをだい容量ようりょうキャッシュに保存ほぞんしパリティ演算えんざんをI/Oプロセッサや専用せんよう演算えんざんにておこなこと速度そくど低下ていか回避かいひしている。

  • 長所ちょうしょ
    • ボトルネックとなる、RAID 3やRAID 4のような専用せんようのパリティドライブが存在そんざいしない。
    • ドライブの台数だいすうえるほど高速こうそく見込みこめる。
    • 1だいまでのドライブが故障こしょうしてもデータを復旧ふっきゅうできる
  • 短所たんしょ
    • パリティ演算えんざん必要ひつようなため、ソフトウェアRAIDに不向ふむき。ただしI/Oプロセッサを搭載とうさいしたこう価格かかくたい製品せいひんではだい容量ようりょうキャッシュメモリとI/Oプロセッサやパリティ演算えんざん搭載とうさいすることでRAID0みにきともに高速こうそくしている製品せいひんもある。
    • 停電ていでんやディスククラッシュにより部分ぶぶんてきみがおこなわれた状態じょうたいでの停止ていし発生はっせいした場合ばあい検出けんしゅつ困難こんなん整合せいごう発生はっせいするタイミングがあり、RAID 5みホールとばれる。ハードウェアRAIDではバッテリを搭載とうさいするなどして電源でんげん異常いじょう問題もんだい回避かいひするように構成こうせいされている場合ばあいおおいが、ソフトウェアRAIDでは一般いっぱん対応たいおう困難こんなんである(同様どうよう問題もんだいパリティもちいるRAID 4・RAID 6とうでも存在そんざいする)。RAID-Zはソフトウェアによるこの問題もんだい解法かいほうひとつ。
    • てい価格かかくひんてい性能せいのうひんでは(障害しょうがい発生はっせいの)復元ふくげん処理しょりおそい。
    • ドライブ1だい故障こしょうにパリティからデータを再生さいせいするため、性能せいのう低下ていかする。
    • 2つ以上いじょうのドライブが同時どうじ故障こしょうすると回復かいふくできない(RAID6では3つ同時どうじ故障こしょう回復かいふく不能ふのう)。
    • ドライブ1だい故障こしょうはRAID 0みに信頼しんらいせいひく状態じょうたいとなる。とく構成こうせい台数だいすうおお場合ばあい復元ふくげん作業さぎょうちゅうにもう1だい故障こしょうし、回復かいふく不可能ふかのうとなってしまうケースがある(これにたいするかいがRAID 6)。

水平すいへいパリティによる分散ぶんさん記録きろく

編集へんしゅう

RAID 5においてパリティはパリティよう領域りょういき使用しようされるディスク以外いがいのXORで水平すいへい方向ほうこうのパリティ (PH) をとる。水平すいへいパリティはそれぞれのディスクに格納かくのうされ、1だいのディスク障害しょうがいえることができる。ディスク障害しょうがい障害しょうがい発生はっせいしたディスクのXORによるさい計算けいさん復元ふくげん可能かのうである。 データにおけるパリティ計算けいさん方法ほうほういちれい下記かき掲載けいさいする(An、BnはA1 B1 A2 B2 A3 B3のじゅんならんだデータブロック)。

A1/B1/PH1/
A2/PH2/B2/
PH3/A3/B3/

PH1=A1+B1
PH2=A2+B2
PH3=A3+B3

RAID 5をもちいたわせ

編集へんしゅう

RAID 5に速度そくどめんたい障害しょうがいせいなどでの不満ふまんがある場合ばあい、RAID 0+1や1+0と同様どうように、のRAIDとわせることで弱点じゃくてんをカバーできる。

RAID 5+0とRAID 0+5

編集へんしゅう

RAID 5の速度そくど向上こうじょうさせたい場合ばあい使つかっている台数だいすう同数どうすうのハードディスクを追加ついかしてRAID 0とわせるか、サーバを増設ぞうせつ負荷ふか分散ぶんさんさせるのが有効ゆうこうである。RAID 5+0およびRAID 0+5を構成こうせいする場合ばあいは、最低さいてい6ドライブが必要ひつようである。

RAID 1+0や0+1と同様どうよう、RAID 5とRAID 0のどちらをさきおこなうかで名前なまえわる。RAID 5のセットによるストライピングをおこなうRAID 5+0のほうが、つぎ理由りゆうすぐれているといえる。

  • ドライブ故障こしょうへのたいせいすぐれる[19]
  • きの高速こうそくせい利点りてんとするRAID 0を外側そとがわにすることで、速度そくど向上こうじょう効果こうかがよりつよ期待きたいできる。

RAID 5+1とRAID 1+5

編集へんしゅう

RAID 6を上回うわまわ強力きょうりょくたい障害しょうがいせい要求ようきゅうされる場合ばあい、このわせが選択肢せんたくしとなる。RAID 5+0やRAID 0+5と同様どうよう最低さいてい6ドライブを必要ひつようとする。

RAID 5+1、RAID 1+5とも3ドライブまでの同時どうじ故障こしょうえられるが、RAID 1+5のほうがよりつよたい障害しょうがいせい[20]

メンテナンスせいにもすぐれる。なんらかの理由りゆうによりすべてのドライブを交換こうかんする必要ひつようしょうじた場合ばあい、ミラーの片方かたがたのディスクをいち交換こうかんし、リビルドのこりを交換こうかんしてさいリビルド、という簡便かんべん手順てじゅんで、装置そうちめることなく交換こうかん完了かんりょうでき、またこの作業さぎょうちゅうもRAID 5のたい障害しょうがいせいのこっている。

RAID 5によってRAID 5をむ、RAID 5+5もかんがえられる。この構成こうせいには最低さいてい9ドライブをようする。

RAID 5+1や1+5と同様どうよう同時どうじに3ドライブまでの故障こしょうえられ、またディスク利用りよう効率こうりつでそれらを上回うわまわる。たい障害しょうがいせいではRAID 5+1と1+5のなかあいだ程度ていどになる[21]

同様どうように、3次元じげんしたRAID 5+5+5、4次元じげんしたRAID 5+5+5+5などもかんがえられる。RAID 5+5+5は7だい、RAID 5+5+5+5は15だいまでの同時どうじ故障こしょうえられるが、必要ひつようとなるドライブすうおよびディスク効率こうりつめんから実用じつようてきではない[22]

RAID 6: ブロック単位たんい複数ふくすうパリティ分散ぶんさん記録きろく

編集へんしゅう
 
RAID 6

RAID 6は任意にんいの2つのハードディスクに障害しょうがい発生はっせいしてもデータが復元ふくげんできるRAIDである。冗長じょうちょうデータを2種類しゅるい作成さくせいし2つのディスクに記録きろくすることで、2じゅう障害しょうがい対応たいおうでき、同時どうじに2ドライブが故障こしょうしても復元ふくげんできる。最低さいてい4ドライブを必要ひつようとする。1つの冗長じょうちょうデータはRAID5とおなじようにパリティ符号ふごうもちいる。もう1つの冗長じょうちょうデータは、ことなるアドレスのデータからパリティを生成せいせいする方式ほうしき対角線たいかくせんパリティ)や、ことなる係数けいすう乗算じょうざんしてから生成せいせいする方式ほうしき(P+Qパリティ)など、複数ふくすう実装じっそう形態けいたいがある。RAID 1のミラーリングを3じゅうした場合ばあいも2つのハードディスク障害しょうがい対応たいおうできるが、これは通常つうじょうRAID 6とはばない。

  • 長所ちょうしょ
    • RAID 5と同等どうとう長所ちょうしょつ。
      • RAID 3やRAID 4のように、ボトルネックとなる、専用せんようのパリティドライブが存在そんざいしない。
      • ドライブの台数だいすうえるほど高速こうそく見込みこめる。
    • RAID 5よりさらにたかたい障害しょうがいせいがある。ドライブ1だい故障こしょうにおいてもRAID 5みの信頼しんらいせいたもっている。
  • 短所たんしょ
    • 初期しょき投資とうしおおきい(ただし、長期ちょうきてき運用うんようコストはRAID 5と大差たいさない)。
    • じゅうにパリティを生成せいせいするため、RAID 5よりもさらに速度そくど低下ていかする。
    • RAID 5と同様どうよう、ドライブ故障こしょう性能せいのう低下ていかする。
    • 3つ以上いじょうのドライブが同時どうじ故障こしょうすると回復かいふくできない。

EMC CLARiX/CLARiiON のRAID6では EVENODDアルゴリズムを使つかって、X86プロセッサのXOR命令めいれいでパリティの計算けいさん、データのリカバリをソフトウェアでおこなっている。

だい規模きぼなシステムでは、RAID 6をもちいた多重たじゅうRAIDも、RAID 5と同様どうようかんがえられる。

RAID 6+0とRAID 0+6
RAID 6単体たんたい比較ひかくしてアクセスが高速こうそくされる。最小さいしょう8ドライブをようし、2ドライブまでの故障こしょうえられる。
RAID 6+1とRAID 1+6
RAID 6単体たんたい比較ひかくしてたい障害しょうがいせい強化きょうかされる。最小さいしょう8ドライブをようし、5ドライブまでの故障こしょうえられる。
RAID 6+5とRAID 5+6
RAID 6単体たんたい比較ひかくしてたい障害しょうがいせい強化きょうかされ、たかいディスク利用りよう効率こうりつそなえる。最小さいしょう12ドライブをようし、5ドライブまでの故障こしょうえられる。
RAID 6+6
階層かいそうされたRAID 6であり、最強さいきょうたい障害しょうがいせいつ。最小さいしょう16ドライブをようし、8ドライブまでの故障こしょうえられる。堅牢けんろうさがさい重要じゅうようされる用途ようとく。

対角線たいかくせんパリティの計算けいさん方法ほうほう

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RAID 6ではRAID 5の水平すいへいパリティ (PH) にくわえ、対角線たいかくせんパリティ (PD) もパリティとして使用しようされる。

水平すいへいパリティとはことなり対角線たいかくせんパリティは専用せんようのディスクに格納かくのうされる。ディスク4だいでRAID6を構成こうせいしているとき、対角線たいかくせんパリティの配置はいち計算けいさん以下いかとおり。

PH1/B1 /C1 /PD1
A2 /PH2/C2 /PD2
A3 /B3 /PH3/PD3

PD1=PH1+C2+B3
PD2=B1+A2+PH3
PD3=C1+PH2+A3

P+Qパリティの計算けいさん方法ほうほう

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PパリティはRAID5とおなXORによるパリティであり、もうひとつの冗長じょうちょうデータであるQパリティはおもみつきのガロアたいGF(2) における剰余じょうよ、つまり8ビットのCRCもちいる。8ビットCRCの制限せいげんにより、この方式ほうしきもちいるかぎりデータディスクは255だい(+冗長じょうちょうディスク2だい)までしかサポートできない。

規格きかくのようなものがないため、生成せいせい多項式たこうしきおもみのつけかたが各社かくしゃことなる。また高速こうそくやハードウェアてき最適さいてきのためにあらかじめ定数ていすうをかけたテーブルが用意よういされているなど、単純たんじゅんなCRCにはえない場合ばあいもある。あるいは、これ以外いがい算出さんしゅつ方法ほうほうっている場合ばあいる。

具体ぐたいてき算出さんしゅつ方法ほうほう以下いかとおりである。

データディスクをA・B・C・Dとし、冗長じょうちょうディスクをP・Qとする。現実げんじつには冗長じょうちょうディスクは分散ぶんさんされているが、便宜上べんぎじょうこうしておく。

P=A+B+C+D (RAID5とおなじ)
Q=CRC(A+B*2+C*4+D*8)

ここで、AとはデータディスクAにある1バイトのデータであり、以下いかB・C・D・P・Qそれぞれ、対応たいおうするおな位置いちにある1バイトのデータをしめす。またCRC(x) は、xをビット列びっとれつとしたときのCRC符号ふごうである。このCRCは、生成せいせい多項式たこうしきすんでやくせいつ(==原始げんし多項式たこうしきである)必要ひつようがある。また上記じょうき加算かさん (+) およ乗算じょうざん (*) は、ともにガロアたいでの加算かさん乗算じょうざんである。

また回復かいふく方法ほうほう以下いかとおりである。

  • データディスクA・B・C・Dのいずれかひとつが破損はそんした場合ばあいは、RAID5とおなじ。また冗長じょうちょうディスクP・Qのいずれかひと乃至ないしふたつが破損はそんした場合ばあいは、データディスクA・B・C・Dからさい計算けいさんする。
  • A・B・C・DのいずれかひとつとQが破損はそんした場合ばあいは、Pと正常せいじょうなデータディスクとで破損はそんしたデーターディスクを(RAID5と同様どうように)回復かいふくし、Qをさい計算けいさんする。
  • A・B・C・DのいずれかひとつとPが破損はそんした場合ばあいは、Qから、破損はそんしたデータディスクの位置いちに8ビットのスト誤すとあやまりがあったものとして消失しょうしつ訂正ていせいすることで回復かいふくする。
  • A・B・C・Dのいずれかふたつが破損はそんした場合ばあいは、PとQにかんする連立れんりつ方程式ほうていしきいて回復かいふくする。

たとえばB・Dが破損はそんしたとする。

P=A+B+C+D
P-(A+C)=B+D
P+A+C=B+D (加算かさん減算げんざんともにXORで同一どういつなので)
Q=CRC(A+B*2+C*4+D*8)
Q=CRC(A+C*4)+CRC(B*2+D*8) (CRCは加算かさん (XOR) にかんして分配ぶんぱい法則ほうそくつ)
Q-CRC(A+C*4)=CRC(B*2+D*8)
Q+CRC(A+C*4)=CRC(B*2+D*8) (加算かさん減算げんざんともにXORで同一どういつなので)

となるので、この連立れんりつ方程式ほうていしきく。

P+A+C=B+D
P+A+C-B=D
P+A+C+B=D

これを代入だいにゅうして

Q+CRC(A+C*4)=CRC(B*2+D*8)
Q+CRC(A+C*4)=CRC(B*2+(P+A+C+B)*8)
Q+CRC(A+C*4)=CRC(B*2+(P+A+C)*8+B*8)
Q+CRC(A+C*4)=CRC(B*2+B*8+(P+A+C)*8)
Q+CRC(A+C*4)=CRC(B*(2+8)+(P+A+C)*8)
Q+CRC(A+C*4)=CRC(B*10+(P+A+C)*8)
Q+CRC(A+C*4)=CRC(B*10+(P+A+C)*8)
Q+CRC(A+C*4)=CRC(B*10)+CRC((P+A+C)*8)
Q+CRC(A+C*4)-CRC((P+A+C)*8)=CRC(B*10)
Q+CRC(A+C*4)+CRC((P+A+C)*8)=CRC(B*10)

ここで、CRCの生成せいせい多項式たこうしき原始げんし多項式たこうしきであるので、10とたがいにである。ここから中国ちゅうごく剰余じょうよ定理ていり利用りようしてBを算出さんしゅつする。つまり左辺さへんを10(二進法にしんほうで1010)でる。 それを

P+A+C+B=D

代入だいにゅうして D をもとめる。

RAID ZはRAID 5やRAID 6と機構きこうち、速度そくどたい障害しょうがいせい向上こうじょうさせたもの。 OracleしゃSolarisFreeBSDにおいて、ZFSとしてRAID Z1,Z2,Z3が実用じつようされている。

RAID 5やRAID 6ではパリティ更新こうしんなんらかの障害しょうがい発生はっせいするとデータとパリティが一致いっちしなくなり、システムじょうでは正常せいじょうえても内部ないぶではデータ破壊はかいすすんでいるという状態じょうたい(サイレントクラッシュ)におちいるという致命ちめいてき欠点けってんがある。またストライプはばよりちいさいデータをさいにも、全体ぜんたいのデータとパリティをんでさい計算けいさんをする必要ひつようがあるため、パフォーマンスがいちじるしく低下ていかするという弱点じゃくてんっている。

RAID Zではつねにストライプ全体ぜんたいへのみをおこない、コピーオンライトわせることでRAID 5やRAID 6がつサイレントクラッシュの問題もんだい完全かんぜん回避かいひできる。

計算けいさん方法ほうほう(RAID0, 1, 10, 5, 6)

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RAID容量ようりょう計算けいさんしき
RAIDの名前なまえ RAIDの計算けいさんしき RAIDの最低さいてい必要ひつよう台数だいすう
RAID0 HDDの台数だいすうxHDDの容量ようりょう 2だい以上いじょう
RAID1 HDDの台数だいすうxHDDの容量ようりょう/2 2だい
RAID10 HDDの台数だいすうxHDDの容量ようりょう/2 2だい以上いじょう
RAID5 (HDDの台数だいすう-1)xHDDの容量ようりょう 3だい以上いじょう
RAID6 (HDDの台数だいすう-2)xHDDの容量ようりょう 4だい以上いじょう
Option Explicit

Dim ans, m, p
Dim raid0, raid1, raid1e, raid10, raid5, raid50, raid6, gb

m = InputBox("HDD(SSD)の容量ようりょう入力にゅうりょくしてください。(GB)", "入力にゅうりょく")
p = InputBox("HDDの本数ほんすう入力にゅうりょくしてください。", "入力にゅうりょく")
MsgBox("RAIDの容量ようりょう計算けいさんできます。")

raid0 = Round(m * p)
raid1 = Round(m * p / 2)
raid1e = Round(m * p / 2)
raid10 = Round(m * p / 2)
raid5 = Round(m * p - m)
raid6 = Round(m * p - (m * 2))
gb = Round(m *p)

ans = "raid0:" & raid0 & "GB 1ほんから" & vbCr _
    & "raid1:" & raid1 & "GB 2ほんから2ほんまで" & vbCr _
    & "raid1E:" & raid1e & "GB 3ほんから" & vbCr _
    & "raid10:" & raid10 & "GB 2ほんから 偶数ぐうすうほん"&vbCr _
    & "raid5:" & raid5 & "GB 3ほんから"&vbCr _
    & "raid6:" & raid6 & "GB 4ほんから"&vbCr _
    & "最大さいだい容量ようりょう:" & gb & "GB"&vbCr _
    & "HDDの容量ようりょう:" & m & "GB"&vbCr _
    & "HDDの本数ほんすう:" & p & "ほん"
MsgBox ans, , "こたえ"

プログラムをコピーペーストして拡張子かくちょうしを(.vbs)してひらくとRAID容量ようりょう計算けいさんができる。

このプログラムではRAID0,1,1e,10,5,6が計算けいさんできる。

Defunct Disk Drive

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無効むこうディスクドライブ (DDDDefunct Disk Drive) とは、RAIDを構成こうせいするディスクにおいてなんらかの障害しょうがい発生はっせいし、RAIDの構成こうせいディスクからはずされたディスクないしその状態じょうたいしめ[23]

Spare Disk Drive

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予備よびディスクドライブ (Spare Disk Drive) (予備よびディスク)は、RAIDの構成こうせい普段ふだん使用しようされていないが、使用しようちゅうのいずれかのディスクに障害しょうがい発生はっせいしたときにそのディスクをえることにそなえて接続せつぞくされているハードディスク装置そうちである。ベンダーによって呼称こしょうことなるが、ホットスペア該当がいとうするものである。

たとえば、全部ぜんぶで4だいのディスクのうち3だいでRAID 5を構成こうせいするシステムをかんがえる。RAID 5ちゅうのいずれかいちだいのディスクが故障こしょうすると、予備よびディスクで故障こしょうディスクを自動的じどうてきえて元通もとどおりRAID 5を構成こうせいする。

これら4だいのディスクでRAID 6を構成こうせいしてもおな実効じっこうディスク容量ようりょうられるが、それと比較ひかくして予備よびディスクは以下いか利点りてん欠点けってんをもっている。

  • 利点りてん: RAID 5なのでRAID 6にくらべて書込かきこ速度そくどはやい。予備よびディスクは普段ふだん動作どうさしていない(ただし通電つうでん継続けいぞく)ので寿命じゅみょうながくなることが期待きたいされる。
  • 欠点けってん: 予備よびディスクで故障こしょうしたディスクをえてリシンク(resync、さい同期どうき)が終了しゅうりょうするまでのあいだ(2013ねん技術ぎじゅつで1TBあたり10ふん以上いじょう)はシステムは冗長じょうちょうせいっていないので、さらにもういちだいのディスクが故障こしょうするとシステム全体ぜんたい情報じょうほううしなわれる。

また、4だいのディスクのうち3だいでRAID 1を構成こうせいすると、上記じょうきのリシンクちゅう冗長じょうちょうせい欠如けつじょのリスクは大幅おおはば低減ていげんする。

RAIDちゅうまれたディスクはリアルタイム・オンラインで冗長じょうちょうせいつくしているのにたいして、予備よびディスクは実際じっさい故障こしょう発生はっせいにオフラインバッチ処理しょりでまとめて冗長じょうちょうせいつくしているとることもできる。

RAID設計せっけい

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一般いっぱんてき複数ふくすうのディスクを構成こうせいするさいにはRAIDが使用しようされるが、RAIDを使用しようしないディスク構成こうせい存在そんざいする。

  • JBOD (Just a Bunch Of Disks) は複数ふくすう物理ぶつりディスクをひとつのディスクとしてあつかいアクセスする[24]冗長じょうちょうせいはない。
  • スパニング (SPANNING) ともばれる[25]

参考さんこう文献ぶんけん

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 略称りゃくしょうでない名称めいしょうかんしては諸説しょせつある。後述こうじゅつのパターソンの論文ろんぶんではRedundant Arrays of Inexpensive Disksであるが、用語ようご辞典じてんによってRedundant Array of Inexpensive Disksであったり、Redundant Arrays of Independent Disksであったりする。出典しゅってん: カシオEX-word XD-SF6200収録しゅうろく日経にっけいパソコン用語ようご事典じてん、NE最新さいしん略語りゃくごしょう辞典じてん
  2. ^ パターソン&ヘネシー (した)p.530
  3. ^ Patterson(1988)
  4. ^ パターソン&ヘネシー (した) p.530
  5. ^ a b c あまり使用しようされないRAIDレベル”. 2018ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  6. ^ RAID – WHAT IS RAID? AND SETUP GUIDE FOR FIRST TIMERS”. 2018ねん1がつ8にち閲覧えつらん
  7. ^ a b ソフトウエアRAIDとハードウエアRAIDのちがいは?”. 2018ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  8. ^ DELLせい、PERC Sシリーズとう
  9. ^ ストライプ ボリューム (RAID 0) の作成さくせい方法ほうほう”. 2018ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  10. ^ The Software-RAID HOWTO”. 2018ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  11. ^ FreeBSD Manual Pages”. 2018ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  12. ^ Intel Matrix Storage Manager 8.x User's Manual”. 2018ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  13. ^ ハードウェアRAIDとHostRAIDのちがいはなにですか?(Adaptec Support Knowledgebase)[リンク]
  14. ^ Enabling and Setting Up Staggered Spin-up”. 2018ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  15. ^ RAID 0+1とRAID 1+0をそれぞれ4だいのドライブで構成こうせいし、ランダムにかく2だいのドライブが故障こしょうしたと仮定かていすると、RAID 0+1が破壊はかいされるかくりつは2/3、RAID 1+0が破壊はかいされるかくりつは1/3である。
  16. ^ 同様どうように16だい(8ストライプ・2ミラー)でRAID 0+1と1+0をみ、かく2だい故障こしょうした場合ばあい、RAID 0+1が破壊はかいされるかくりつは8/15、RAID 1+0が破壊はかいされるかくりつは1/15となる。
  17. ^ かくストライプ、かくミラーのコントローラがそれぞれべつとなっている場合ばあい、RAID 1+0はコントローラが1つでも故障こしょうすると破壊はかいされるが、RAID 0+1はRAID 0領域りょういきのコントローラ故障こしょうたいして、そのすべてが同時どうじ故障こしょうしないかぎえられる。
  18. ^ a b 2.RAID 2とRAID 3、RAID 4とは”. 2018ねん1がつ8にち閲覧えつらん
  19. ^ 8だいのドライブ(4だい構成こうせいRAID 5×2だい構成こうせいRAID 0)でRAID 0+5と5+0をみ、かく2だい故障こしょうした場合ばあい、RAID 0+5が破壊はかいされるかくりつは6/7、RAID 5+0が破壊はかいされるかくりつは3/7。
  20. ^ 8だいのドライブ(4だい構成こうせいRAID 5×2だい構成こうせいRAID 1)でRAID 1+5と5+1をみ、かく4だい故障こしょうした場合ばあい、RAID 1+5が破壊はかいされるかくりつは3/35、RAID 5+1が破壊はかいされるかくりつは18/35。
  21. ^ 16だいのドライブでRAID 1+5、5+1(8だい構成こうせいRAID 5×2だい構成こうせいRAID 1)およびRAID 5+5(4だい構成こうせいRAID 5×4だい構成こうせいRAID 5)をんだ場合ばあい、RAID 1+5と5+1は7だいぶん、5+5は9だいぶん容量ようりょう利用りよう可能かのうであり、それぞれランダムに4だい故障こしょうした場合ばあい、RAID 5+1は196/455、RAID 1+5は7/455、RAID 5+5は57/455のかくりつ破壊はかいされる。
  22. ^ RAID 6+6はRAID 5+5+5を上回うわまわる8だいまでの故障こしょうえられ、また一般いっぱんにディスク利用りよう効率こうりつでもすぐれる。たとえば64だいのドライブをもちいた、4だい構成こうせいRAID 5×4だい構成こうせいRAID 5×4だい構成こうせいRAID 5によるRAID 5+5+5の利用りよう可能かのう容量ようりょうは27だいぶんとなるのにたいし、8だい構成こうせいRAID 6×8だい構成こうせいRAID 6によるRAID 6+6では36だいぶん容量ようりょう利用りよう可能かのうである。
  23. ^ ServeRAID - Recovery Procedures for DDD Drives”. 2018ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  24. ^ RAIDレベルを理解りかいしよう (2/3)”. 2018ねん1がつ7にち閲覧えつらん
  25. ^ ハードディスクとRAIDの基礎きそまなぼう”. 2018ねん1がつ7にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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