六鎮の乱

六ろく鎮の乱らん（りくちんのらん）は、中国ちゅうごく北きた魏たかし末期まっきの523年ねん（正せい光ひかり4年ねん）より発生はっせいした反乱はんらんの歴史れきし的てきな呼称こしょう。沃野よくや鎮の破やぶ六ろく韓かん抜陵、柔やわら玄げん鎮の杜もり洛らく周しゅう、懐ふところ朔ついたち鎮の鮮于修おさむ礼れい・葛かずら栄さかえらが反乱はんらんの兵へいを起おこした。

六ろく鎮とは、

• 懐ふところ朔ついたち鎮
• 武川たけかわ鎮
• 撫なで冥めい鎮
• 柔やわら玄げん鎮
• 沃野よくや鎮
• 懐ふところ荒あら鎮

の6つをいい、北きた魏たかしの北方ほっぽうの辺境へんきょう地帯ちたいに置おかれた鎮のことである。北きた魏たかしは建国けんこく当初とうしょは各地かくちに数すう十じゅうの鎮をもうけていたが、孝文たかふみ帝みかどの即位そくいまでに六ろく鎮を除のぞく大だい部分ぶぶんは州しゅうや郡ぐんに変かえられていた。六ろく鎮は都との平城ひらじろ（現在げんざいの山西さんせい省しょう大だい同市どうし平城ひらじょう区く）の北方ほっぽうの至近しきん距離きょりにおかれ、ほぼ北緯ほくい41度ど線上せんじょうで東西とうざいに並ならぶ。

北きた魏たかしは、自みずからと同おなじ北方ほっぽうの民族みんぞくの侵入しんにゅうを防ふせぐために生命せいめい線せんともいうべき北方ほっぽうの守まもりを重要じゅうよう視しし、鮮卑や匈奴きょうどの有力ゆうりょく豪族ごうぞくを選えらびさらに漢かん族ぞくを加くわえて、六ろく鎮に代表だいひょうされる北方ほっぽう警備けいびの鎮民として移住いじゅうさせる政策せいさくをとった。鎮民たちは望もち族ぞく（名な族ぞく）としての特権とっけんを与あたえられていた。

しかしながら、孝文たかふみ帝みかどの漢かん化か政策せいさくによって都とが平城ひらじろより洛陽らくように遷都せんとされると、これらの北方ほっぽうの鎮民は、次第しだいに冷遇れいぐうされるようになっていった。やがて、「府ふ戸ど」という出世しゅっせの見込みこみを断たたれた戸とに編制へんせいされ、中央ちゅうおうから赴任ふにんしてきた長官ちょうかんである都と大将たいしょうに搾取さくしゅされる身みになり、一挙いっきょに不平ふへい不満ふまんが増大ぞうだいすることとなった。

このような背景はいけいのもと、その鬱積うっせきされた不満ふまんが爆発ばくはつしたのが523年ねんの沃野よくや鎮民の挙兵きょへいである。破やぶ六ろく韓かん抜陵を首領しゅりょうとした反乱はんらん兵へいたちは鎮将を殺害さつがいし、それがたちまちのうちにその他たの諸しょ鎮に伝播でんぱしていった。河北かほくでは定てい州しゅうを中心ちゅうしんに鮮于修おさむ礼れい・杜もり洛らく周しゅう・葛かずら栄さかえらが、関せき隴では高平たかひらを中心ちゅうしんに胡えびす琛・万まん俟醜奴やつらが反乱はんらんを指導しどうした。反乱はんらん自体じたいは530年ねん（永安えいあん3年ねん）に将軍しょうぐんの爾しか朱しゅ栄さかえらにより鎮圧ちんあつされたが、その間あいだに北きた魏たかしに対たいして南朝なんちょう梁はりの軍隊ぐんたいの侵攻しんこうがあり、また国内こくないでは爾しか朱しゅ氏しの専横せんおうが起おこって、北きた魏たかしが東西とうざいに分裂ぶんれつして滅亡めつぼうする遠因えんいんとなった。

六ろく鎮の有力ゆうりょく者しゃのうち、六ろく鎮の乱らんを経へて、北きた魏たかしの滅亡めつぼうの過程かていで権力けんりょく中枢ちゅうすうに登のぼりつめた者ものが続出ぞくしゅつした。東あずま魏たかしの実権じっけんを掌握しょうあくし北きた斉ひとしの基もととなった高こう歓は懐ふところ朔ついたち鎮の出身しゅっしんであり、当初とうしょは反乱はんらん軍ぐん側がわに与くみしたものの途中とちゅうで朝廷ちょうてい軍ぐんの爾なんじ朱しゅ栄さかえの下したに鞍替くらがえし、爾しか朱しゅ栄さかえの死後しごは爾しか朱しゅ一族いちぞくを滅ほろぼして権力けんりょくを得えた。また、武川たけかわ鎮出身しゅっしんの有力ゆうりょく者しゃは、武川たけかわ鎮軍閥ばつと呼よばれ、西にし魏たかし・北きた周あまね・隋ずいから唐とうに至いたる変遷へんせんの中なかで、各かく王朝おうちょうの中核ちゅうかくとなる権力けんりょく集団しゅうだんとして君臨くんりんした。北きた周しゅうの宇文うぶん泰たい・隋ずいの楊堅・唐とうの李り淵ふかしといった各かく王朝おうちょうの創始そうし者しゃはいずれも武川たけかわ鎮の有力ゆうりょく者しゃ一族いちぞくの出身しゅっしんである。