お見立て

お見立みたてて（おみたて）は古典こてん落語らくごの演目えんもく。別べつ題だいに墓はか違ちがい（はかちがい）。上方かみがた落語らくごでは手向たむけ茶屋ちゃや（たむけぢゃや）の題だいで演えんじられる。

概要がいよう

吉原よしはら遊廓ゆうかくを舞台ぶたいにした、いわゆる「廓くるわ噺ばなし（くるわばなし）」のひとつ。原はら話ばなしは、1808年ねん（文化ぶんか5年ねん）に出版しゅっぱんされた笑話しょうわ本ほん『噺はなしの百ひゃく千鳥ちどり』の一いち編へん「手てくだの裏うら」。主おもな演者えんじゃに6代目だいめ春風しゅんぷう亭てい柳橋やなぎばし、3代目だいめ古今ここん亭てい志しん朝ちょう、桂歌丸かつらうたまる、古今ここん亭てい志こころざしん輔らが知しられる。

終盤しゅうばんに登場とうじょうする墓碑銘ぼひめいに書かかれた戒名かいみょうは演者えんじゃによって異ことなり、一般いっぱんにはふざけたダジャレが多おおい。

あらすじ

基本きほん的てきに演者えんじゃはまず、かつての吉原よしはら遊廓ゆうかくにおける「張はり見世みせ」の説明せつめいを行おこなう。これは遊女ゆうじょたちが、妓ぎ楼ろうの大おおきな格子こうし窓まどから、通とおりに向むかって姿すがたを見みせて客きゃくを呼よぶものであり、男性だんせい店員てんいんである妓夫ぎふ（俗ぞくに牛ぎゅう太郎たろう）が「よろしいのをお見立みたてて願ねがいます」と口上こうじょうを言いいながら通行人つうこうにんに声こえをかけ、客引きゃくひきを行おこなうのが一般いっぱん的てきであった。

ある富農ふのうで田舎いなか者しゃの客きゃく・杢もく兵衛ひょうえ（もくべえ）が、花魁おいらんの喜瀬きせ川がわに惚ほれ込こみ、通かよい詰つめるようになっていたが、彼女かのじょはその客きゃくが嫌きらいであり、次つぎ来きたら病気びょうきだといって断ことわるように店みせの妓夫ぎふ・喜助きすけに命めいじる。その杢もく兵衛ひょうえが来きたので喜助きすけは言いわれた通とおりにするが、彼かれはそれなら見舞みまいをしたいとい出いだす。困こまって喜瀬きせ川がわに相談そうだんしに行いくと、それなら亡なくなったことにしなさいと言いわれ、その通とおりにすると、今度こんどは墓参はかまいりがしたいとい出いだす。再ふたたび相談そうだんされた喜瀬きせ川がわは、適当てきとうな墓はかを自分じぶんの墓はかに見みせかけて済すましなさいと命めいじる。

喜助きすけは杢もく兵衛ひょうえを案内あんないして適当てきとうな寺てらに連つれていく。墓石はかいしに彫ほられた墓碑銘ぼひめいを誤魔化ごまかすため、大量たいりょうの仏ふつ花はなと線香せんこうを寺てら番ばんから買かい、適当てきとうな墓はかをここが喜瀬きせ川がわの墓はかですといってさっさと終おわらせようとする。しかし、うっかり墓碑銘ぼひめいを読よまれてしまい、喜瀬きせ川がわの墓はかではないと気きづかれてしまう。間違まちがえましたと別べつの墓はかに案内あんないするが、もはや杢もく兵衛ひょうえも最初さいしょから墓碑銘ぼひめいを確認かくにんするようになっており、騙だまされることはない。次々つぎつぎと違ちがう墓はかに案内あんないされて、業ごうを煮にやした杢もく兵衛ひょうえは「いったい本物ほんものの墓はかはどれだ」と問とい詰つめると、喜助きすけは言いう。

「よろしいのをお見立みたてて願ねがいます」

参考さんこう文献ぶんけん

• 東大とうだい落語らくご会かい (1969), 落語らくご事典じてん 増補ぞうほ (改訂かいてい版ばん（1994） ed.), 青蛙あおがえる房ぼう, ISBN 4-7905-0576-6 

関連かんれん項目こうもく

• 幕末ばくまつ太陽たいよう傳でん - 落語らくごを題材だいざいにした映画えいが（川島かわしま雄三ゆうぞう監督かんとく）。市村いちむら俊幸としゆきが杢もく兵衛ひょうえを演えんじた。
• 禁きん演えんじ落語らくご