ヴォノネス1世せい

ヴォノネス1世せい（英えい: Vonones I、コイン銘めい：ΟΝΩΝΗΣ、？ - 19年ねん、在位ざいい：西暦せいれき6年ねん - 12年ねん）は、アルサケス朝あさパルティアの王おう（諸王しょおうの王おう、バシレウス・バシレオン）。ローマに人質ひとじちとして送おくられ、後のちに帰国きこくして王位おういについたが「ローマの傀儡かいらい」と見みなされて国内こくないの支持しじを得えられず王座おうざを追おわれた。

来歴らいれき

ローマ時代じだい

フラーテス4世せいと妻つまの1人ひとりビステイバナプスの間あいだに生うまれた。父ちち王おうフラーテス4世せいはローマ皇帝こうていオクタヴィアヌスと講和こうわを結むすんだが、その際さいイタリア出身しゅっしんの女おんな奴隷どれいムサを新あらたに妃ひとして迎むかえた。そして人質ひとじちとしてヴォノネスは母ははビステイバナプスと3人にんの兄弟きょうだいとともにローマへ送おくられた。オクタヴィアヌスはヴォノネスらを客人きゃくじんとして迎むかえ、不自由ふじゆうない生活せいかつを送おくらせた。ローマで成長せいちょうしたヴォノネスはローマ風ふうの習慣しゅうかんや教養きょうようを身みに付つけていった。

パルティアではフラーテス4世せいが妻つまムサに暗殺あんさつされ、フラーテス4世せいとムサの間あいだの息子むすこ、フラーテス5世せい（フラータケス）が即位そくいした（西暦せいれき2年ねん）。しかしフラーテス5世せいは大だい貴族きぞく達たちの支持しじを受うけることができず西暦せいれき4年ねんに追放ついほうされ新あらたにオロデス3世せいが王位おういについた。しかし彼かれも国内こくないの支持しじを得える事ことに失敗しっぱいし、西暦せいれき6年ねんに暗殺あんさつされた。こうしたパルティア王位おうい継承けいしょうの混乱こんらんの中なかで、バビロニアでは反はんオロデス3世せい派はが蜂起ほうきしており、彼かれらはローマにヴォノネスを返還へんかんするように求もとめ、これを受うけたオクタヴィアヌスによってヴォノネスはパルティアに帰国きこくしヴォノネス1世せいとして即位そくいした（西暦せいれき6年ねん）。

パルティア内戦ないせん

ローマ風ふうの習慣しゅうかん、教養きょうようを身みに付つけていたヴォノネス1世せいは、パルティアに帰国きこくした後のちローマ風ふうの文化ぶんかをパルティアに持もち込こみ親おやローマ的てき政策せいさくを取とった。また国内こくないのギリシア人じんポリスに強つよく配慮はいりょし、ギリシア人じんの地位ちいを向上こうじょうさせた。このような政策せいさくはパルティアの伝統でんとう的てき大だい貴族きぞくから大おおきな反発はんぱつを買かうに十分じゅうぶんであり、東部とうぶ領土りょうどを拠点きょてんとした大だい貴族きぞく達たちはアルサケス氏族しぞくの母ははをもっていたアトロパテネ王おうアルタバヌス2世せいを担かつぎ上あげてヴォノネス1世せいに対たいして反乱はんらんを起おこした。

ヴォノネス1世せいはローマやギリシア人じんポリスを、アルタバヌス2世せいは大だい貴族きぞくや中央ちゅうおうアジアの遊牧民ゆうぼくみんをそれぞれ支持しじ基盤きばんとし、4年ねんにわたる内戦ないせんを戦たたかった。当初とうしょヴォノネス1世せいは優勢ゆうせいであり、バビロニア方面ほうめんの支配しはい権けんを固かためたが、東部とうぶ領土りょうどに逃にげ込こんだアルタバヌス2世せいの反撃はんげきを受うけて敗北はいぼくし、西暦せいれき12年ねん頃ころ、アルタバヌス2世せいに王位おういを奪うばわれた。ヴォノネス1世せいはアルメニア王国おうこくへ移うつってアルメニア王位おういを確保かくほしたが、アルタバヌス2世せいはアルメニアの有力ゆうりょく者しゃ達たちにヴォノネス1世せいを排除はいじょするように圧力あつりょくをかけた。ヴォノネス1世せいはローマの支援しえんを期待きたいしたが、ローマはゲルマニアでの敗北はいぼく以後いご対外たいがい消極しょうきょく策さくに転てんじており、ヴォノネスに援軍えんぐんを送おくることはなかった。こうして西暦せいれき15年ねんにはアルメニアからも追放ついほうされ、ローマ支配しはい下かのシリアに逃亡とうぼうした。しかしローマでは彼かれは囚人しゅうじんとして扱あつかわれた。後のちにキリキアへと移うつされたが、西暦せいれき19年ねんにそこで逃走とうそうを図はかって殺害さつがいされた。