アマルガスごう事件じけん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

アマルガスごう事件じけん(アマルガスごうじけん)は2001ねん1がつ台湾たいわん墾丁国家こっか公園こうえん地域ちいきない発生はっせいした貨物かもつせん座礁ざしょう起因きいんする環境かんきょう汚染おせん事件じけん2003ねん行政ぎょうせいいん環境かんきょう保護ほごしょたまきたもつしょ)はノルウェー裁判所さいばんしょたい損害そんがい賠償ばいしょう請求せいきゅう訴訟そしょうこし、台湾たいわんはじめての国際こくさい問題もんだいにまで発生はっせいした重油じゅうゆ流出りゅうしゅつ海洋かいよう汚染おせん事件じけんである。

事件じけん発生はっせい[編集へんしゅう]

2001ねん1がつ14にち台湾たいわん時間じかんUTC+8)、ギリシャ船籍せんせき貨物かもつせんアマルガスごうAmorgos、35000トン)が鉄鉱てっこうせき満載まんさいインドから中国ちゅうごく大陸たいりくけて台湾たいわん南部なんぶ海域かいいき航行こうこうちゅう、エンジントラブルに見舞みまわれ航行こうこう不能ふのうとなり、12あいだ漂流ひょうりゅうのち20ごろ墾丁海域かいいき座礁ざしょうした。事故じこ発生はっせい報告ほうこくけた台湾たいわん交通こうつう国軍こくぐんただちに救助きゅうじょ活動かつどう展開てんかいし、23船上せんじょうのこされた船員せんいん25めい全員ぜんいん救助きゅうじょした。よく15にちはなはちすこうつとむきょく災害さいがい対策たいさく本部ほんぶ設置せっちされ、あぶら対策たいさく準備じゅんび着手ちゃくしゅするととも船主せんしゅおよ保険ほけん会社かいしゃたい善後ぜんごさく要請ようせいおこなった。

18にち、アマルガスごう船体せんたい亀裂きれつ発生はっせい燃料ねんりょうれが発生はっせいした。たまきたもつしょただちに2000ねん10月に成立せいりつした『海洋かいよう汚染おせんぼうほう』の規定きていしたがはなはちすこうつとむはアマルガスごう船員せんいん出国しゅっこく制限せいげんした。

事件じけん経過けいか[編集へんしゅう]

海洋かいよう汚染おせん被害ひがいけたりゅうあな生態せいたい保護ほご交通こうつう便びんわるく、また珊瑚礁さんごしょう群生ぐんせいであったことから珊瑚礁さんごしょうおよ岩石がんせき重油じゅうゆはいみ、また東北とうほく季節風きせつふう時期じきあた海上かいじょう時化しけ模様もようであり、協力きょうりょくのため出港しゅっこうしたちゅうあぶら公司こうし船舶せんぱくがアマルガスごう接近せっきんできないなど海上かいじょうでの行動こうどうおおきな支障ししょうたした。そのためたまきしょぐん出動しゅつどう要請ようせいしたが、ぐん船舶せんぱく時化しけのため出港しゅっこうできず、わずかに海岸かいがん人力じんりきによる善後ぜんごさくこうじられるにぎなかった。そうしたなかでも船主せんしゅがチャーターしたすくい難船なんせんにより2がつ3にちまでに217.6トンの流出りゅうしゅつ重油じゅうゆ回収かいしゅうされた。

2がつ6にちたまきたもつしょ複数ふくすう行政ぎょうせい組織そしきによる対策たいさくチームを組織そしきし、内政ないせい交通こうつう国防こくぼううみじゅんしょのうかいへいひがしけん政府せいふちゅうあぶら公司こうしなどと協力きょうりょく対策たいさく計画けいかく関連かんれん協議きょうぎおこなった。

海岸かいがん重油じゅうゆ汚染おせんは2がつ16にちまで合計ごうけい1まんにん投入とうにゅうし462トンを除去じょきょした。2月17にちから3がつ24にちまでは2せんにん投入とうにゅうし礁岩の重油じゅうゆ除去じょきょおこない513トンを除去じょきょさらに3がつ25にちから5がつ18にちにかけて3まん5せんにん投入とうにゅうだかあつ放水ほうすいにより549トンを除去じょきょするなど、合計ごうけい3500トンの重油じゅうゆ除去じょきょおこなった。

船主せんしゅによる船舶せんぱくのこされた燃料ねんりょう除去じょきょ作業さぎょうは3がつ、5月、6がつおこなわれ、合計ごうけい148.8トンを撤去てっきょし6がつ12にち完了かんりょうした。燃料ねんりょう除去じょきょ作業さぎょう完了かんりょう以前いぜんへいひがしけん政府せいふふね会社かいしゃたいし1にちあたり150まんNT$罰金ばっきんし、それは98にちにもおよんだ。

重油じゅうゆ除去じょきょおよ燃料ねんりょう撤去てっきょ作業さぎょう完了かんりょう交通こうつうは7がつ2にち事故じこ海域かいいき事故じこ船舶せんぱく撤去てっきょチームを組織そしきした。積荷つみに鉄鉱てっこうせき除去じょきょし、10月16にちにアマルガスごう水深すいしん1000メートルの海域かいいき移動いどうさせたうえ沈没ちんぼつさせ作業さぎょう完成かんせいさせた。

汚染おせん状況じょうきょう[編集へんしゅう]

事件じけん発生はっせいしたりゅうあな生態せいたい保護ほご珊瑚礁さんごしょう群生ぐんせいし、そこに海草かいそうはじ各種かくしゅ魚類ぎょるい貝類かいるい甲殻こうかくるいゆたかな生態せいたいけい形成けいせいしていた。しかし重油じゅうゆ流出りゅうしゅつ事故じこにより海底かいてい生物せいぶつ死滅しめつし、付近ふきん生息せいそくしていた海鳥うみどり重油じゅうゆにまみれるなどおおきな環境かんきょう破壊はかいこした。とく絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅであるヤシガニりゅうあな主要しゅよう生息せいそくであったためその生態せいたいおおきな影響えいきょうあたえた。りゅうあな地区ちくではしろすなはなからあなないまでのやく3.5キロメートルの海岸かいがん汚染おせんされ、そのなかでも700から900メートルの海岸かいがんせん被害ひがいもっともひどく、汚染おせん海域かいいきは20ヘクタールにもおよんだ。また間接かんせつてき被害ひがいとして重油じゅうゆ除去じょきょ作業さぎょうちゅうおおくの作業さぎょういんによりみつけられた珊瑚礁さんごしょう被害ひがい無視むしできない被害ひがいをもたらした。

影響えいきょう[編集へんしゅう]

たまきたもつ署長しょちょう辞任じにん[編集へんしゅう]

アマルガスごう事件じけん発生はっせい各界かくかい世論せろん政府せいふ対応たいおうおくれが被害ひがい拡大かくだいまねいたとの批判ひはんおこない、またかん署長しょちょうはやししゅんよし発表はっぴょうした「人工じんこうじょけがれ計画けいかくおおきな批判ひはんにさらされた。2月8にちはやししゅん行政ぎょうせい院長いんちょうちょう俊雄としおたい口頭こうとう辞意じい表明ひょうめい(このとき慰留いりゅう)、2がつまつには交通こうつう部長ぶちょうきくらんより書面しょめんにより辞職じしょく勧告かんこく提出ていしゅつされるとはやししゅん環境かんきょう署長しょちょう辞任じにんふく署長しょちょうかい同時どうじ引責いんせき辞任じにんした。

船員せんいん拘束こうそく[編集へんしゅう]

重油じゅうゆ流出りゅうしゅつ事件じけん発生はっせいアマルガスごうすべての船員せんいん法律ほうりつにより出国しゅっこく制限せいげんされた。しかし除去じょきょ作業さぎょうおよ法的ほうてき手続てつづきの進行しんこうともなだい部分ぶぶん船員せんいん出国しゅっこく制限せいげん解除かいじょされギリシャへ帰国きこくしたが、ギリシャせき船長せんちょう機関きかんちょうふね会社かいしゃとの賠償ばいしょう協議きょうぎ遅々ちちとしてすすまない状況じょうきょう拘束こうそくつづいた。同年どうねん7がつ下旬げじゅん船長せんちょうおよ機関きかんちょう家族かぞくはギリシャの国会こっかい議員ぎいんおよびマスコミにたい陳情ちんじょうおこない、またギリシャ外務省がいむしょう台湾たいわんのギリシャ代表だいひょう閉鎖へいさする可能かのうせい示唆しさするなどをおこなった。8月14にちりょう出国しゅっこく禁止きんし解除かいじょされ、10月には船長せんちょう起訴きそ処分しょぶん決定けっていした。

国際こくさい賠償ばいしょう[編集へんしゅう]

環境かんきょうしょによれば重油じゅうゆ除去じょきょ作業さぎょうによる関係かんけい部門ぶもん支出ししゅつ合計ごうけいは9300まんNT$にたっした。ふね会社かいしゃとの協議きょうぎにより重油じゅうゆ除去じょきょかんする賠償ばいしょうとして6133まんNT$の金額きんがく決定けっていしたが、生態せいたいけいたいする賠償ばいしょう協議きょうぎ遅々ちちとしてすすまなかった。そのためたまきしょ2003ねん1がつ事件じけん発生はっせいしたへいひがし地方ちほうほういん提訴ていそし、同時どうじノルウェー裁判所さいばんしょにも3おく5,000まんNT$の損害そんがい賠償ばいしょうもとめるうったえをこした。2005ねん1がつ、ノルウェーの裁判所さいばんしょ台湾たいわん政府せいふうったえをみとめ、船主せんしゅたいし953まんNT$の生態せいたい観測かんそく費用ひよう支払しはらいをめいじた。しかし同時どうじ判決はんけつ台湾たいわん政府せいふは1687まんNT$の訴訟そしょう費用ひようすべての珊瑚さんご修復しゅうふく漁業ぎょぎょう修復しゅうふく観光かんこうおよぜい収入しゅうにゅう損失そんしつかんしてのうったえを退しりぞけた。たまきたもつしょはこれにたい不満ふまん表明ひょうめい、2がつ珊瑚さんご修復しゅうふくおよ観光かんこう損失そんしつ部分ぶぶん補償ほしょうもとめて上訴じょうそした。同年どうねんまつ証拠しょうこ不十分ふじゅうぶん自覚じかくしたたまきたもつしょ勝訴しょうそ見込みこめないと判断はんだん同時どうじ国際こくさい訴訟そしょう経費けいひ考慮こうりょ上訴じょうそ撤回てっかい協議きょうぎ和解わかいへと方針ほうしん転換てんかんした。2006ねん8がつ10日とおかたまきたもつしょ船主せんしゅ海域かいいき生態せいたい公的こうてき部門ぶもん損害そんがい賠償ばいしょうかんし3400まんNT$の賠償ばいしょう和解わかい成立せいりつし、半額はんがく生態せいたいけい復元ふくげんのため、半額はんがく弁護士べんごし費用ひようとすることで決着けっちゃくした。

漁業ぎょぎょう賠償ばいしょうは2004ねん6がつ合意ごういたっし、アマルガスごう船主せんしゅは1おく2000まんNT$の漁業ぎょぎょう補償ほしょう支払しはらうことで合意ごういし、7がつ交付こうふされた。その行政ぎょうせい課徴かちょうきん900まんNT$、林業りんぎょう補償ほしょう180まんNT$、貨物かもつ撤去てっきょ費用ひよう8,000まんNT$が船主せんしゅより支払しはらわれ、賠償金ばいしょうきん総額そうがくは2おく8000まんNT$にたっした。

その[編集へんしゅう]

  • 2002ねんたまきたもつしょは1がつ14にちを「台湾たいわん海域かいいき受難じゅなん」に制定せいていした。

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]