アルベルト・フォン・シュレンク＝ノッチング

アルベルト・フォン・シュレンク＝ノッチング

アルベルト・フライヘル・フォン・シュレンク＝ノッチング男爵だんしゃく（ドイツ語ご: Albert Freiherr von Schrenck-Notzing、1862年ねん5月18日にち - 1929年ねん2月がつ12日にち）は、ドイツの神経しんけい科か医い、性せい心理しんり学者がくしゃ、催眠さいみん術じゅつ研究けんきゅう家か、心霊しんれい研究けんきゅう家か。20世紀せいき初頭しょとうにおける超ちょう心理しんり学がく研究けんきゅうの開拓かいたく者しゃの1人ひとりといえる人物じんぶつ。

人物じんぶつ歴れき

シュレンク＝ノッチング撮影さつえいによる、エヴァ・カリエールのエクトプラズムとされる写真しゃしん（1912年ねん）

フランスのナンシー大学だいがくを卒業そつぎょう後ご、1886年ねんから超ちょう心理しんり学がく、特とくにテレパシーや霊媒れいばいの研究けんきゅうに従事じゅうじし、ドイツ国内こくない・国外こくがいで霊媒れいばいを用もちいた実験じっけんを行おこなった。1909年ねんには霊媒れいばいとされるフランス人じん女性じょせいのエヴァ・カリエールを調査ちょうさ対象たいしょうとし、エヴァの起おこした物質ぶっしつ化か現象げんしょうを本物ほんものと認みとめた（エヴァ・カリエールも参照さんしょう）。

1914年ねんに著作ちょさく『物質ぶっしつ化か現象げんしょう、霊媒れいばいテレパシー研究けんきゅうのための寄与きよ』を発表はっぴょうするが、当時とうじはそのような研究けんきゅうが異端いたん視しされていたため、この著作ちょさくはドイツの医学いがく界かいに衝撃しょうげきを与あたえ、学会がっかいから総そう攻撃こうげきを浴あびた。しかし妻つまの実家じっかが裕福ゆうふくだったため、学会がっかいの反発はんぱつに逢あっても一向いっこうに生活せいかつに不自由ふじゆうすることはなく、むしろ超ちょう心理しんり学がく研究けんきゅうに没頭ぼっとうし続つづけた。ミュンヘンの彼かれの邸宅ていたくでは定期ていき的てきに交霊こうれい会かいが開催かいさいされ、後のちにはミュンヘン大学だいがく心理しんり学がく研究所けんきゅうじょの一室いっしつで公開こうかい実験じっけんが行おこなわれた。この実験じっけんに立たち会あった人物じんぶつにはジャーナリストたちに加くわえ、ハンス・ドリーシュやカール・フォン・クリンコフシュトレームといったドイツの著名ちょめいな学者がくしゃたちもいた。

1922年ねん12月20日にちから1923年ねん1月がつ24日にちにかけて3回かい行おこなわれた実験じっけんは、ドイツの小説しょうせつ家かであるトーマス・マンが参加さんかしたことでも知しられる。当時とうじのマンは著作ちょさく『ブッデンブローク家かの人々ひとびと』で大おおきな名声めいせいを得えていた上うえ、超ちょう常つね現象げんしょうを否定ひていする立場たちばにおり、名作めいさく家かとしての力量りきりょうでシュレンク＝ノッチングのペテンを暴あばくことを多おおくの人々ひとびとから期待きたいされた。しかしマンは実験じっけん後ご、自分じぶんが心霊しんれい主義しゅぎ者しゃでないとの立場たちばを貫つらぬきながらも、この実験じっけんに対たいしては後ごの書簡しょかんで、霊媒れいばいの中なかに別べつ人格じんかくが現あらわれたこと、霊れいのようなもので物体ぶったいが動うごいたことなどの現象げんしょうを述のべ、それらを事実じじつとして受うけ止とめ、トリックやペテンがなかったことを公言こうげんして大おおきな反響はんきょうを呼よんだ。後ごのマンのノーベル文学ぶんがく賞しょう受賞じゅしょう第だい1作さく『Mario und der Zauberer』（1930年ねん、邦題ほうだい『マーリオと魔術まじゅつ師し』）は、この実験じっけんがモデルとなった。

性せい心理しんり学者がくしゃとしては、ドイツの医学いがく者しゃであるリヒャルト・フォン・クラフト＝エビングが「サディズム」「マゾヒズム」という用語ようごを考案こうあんするのに先立さきだち、同様どうように性的せいてき感情かんじょうを伴ともなう加か虐しいたげ・被虐ひぎゃくの関係かんけいを「アルゴグラニア」という病名びょうめいで総括そうかつした業績ぎょうせきでも知しられている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 種村たねむら季き弘ひろし『詐欺さぎ師しの楽園らくえん』岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ現代げんだい文庫ぶんこ〉、2003年ねん（原著げんちょ1975年ねん）。ISBN 978-4-00-602066-8。 
• 種村たねむら季き弘ひろ他た 著ちょ、下中しもなか弘ひろし他た 編へん『世界せかい大だい百科ひゃっか事典じてん』 13巻かん、平凡社へいぼんしゃ、1988年ねん。 NCID BN02344720。 
• 羽仁はに礼あや『超ちょう常つね現象げんしょう大だい事典じてん 永久えいきゅう保存ほぞん版ばん』成なり甲かぶと書房しょぼう、2001年ねん。ISBN 978-4-88086-115-9。