アンホ爆薬ばくやく

耐水たいすい袋ぶくろ入いり25 kgの製品せいひん

穿孔せんこう部ぶにアンホ爆薬ばくやくを装填そうてんしているところ

アンホ爆薬ばくやく（アンホばくやく、Anmonium Nitrate Fuel Oil explosive : ANFO）は、爆薬ばくやくの一種いっしゅ。硝安油剤ゆざい爆薬ばくやくとも。

火薬かやく学会がっかい規格きかく (VI) によれば、硝酸しょうさんアンモニウム（硝安）と燃料ねんりょう油ゆ（引火いんか点てん50℃以上いじょう）からなり、他たの火薬かやく、爆薬ばくやく、金属きんぞく粉こな等とうを含ふくまない爆薬ばくやくで工業こうぎょう雷管らいかんまたは電気でんき雷管らいかんで起爆きばくしないものをいう。配合はいごう例れいは、硝安94%、燃料ねんりょう油ゆ6%。起爆きばくには他たの爆薬ばくやく（ダイナマイト等ひとし）を雷管らいかんとして起爆きばくし伝でん爆ばくする。発生はっせいガスの量りょうに比ひして発生はっせい熱量ねつりょうが少すくないためダイナマイトよりも安全あんぜんであり、かつ安価あんかなので砕石さいせきなどの坑あな外がい発破はっぱに急速きゅうそくに使用しようを広ひろげた。

組成そせい

主成分しゅせいぶんの硝安は軽油けいゆを良よく吸収きゅうしゅうするように多孔たこう質しつプリル状じょうのものを使用しようする。これは硝安製造せいぞう工場こうじょうで高たかい塔とう頂いただきから熱ねつ溶融ようゆう硝安をスプレーし、落下らっか中ちゅうに冷却れいきゃくして粒つぶ体たいにする。硝安は保存ほぞん中ちゅうに空気くうきから湿気しっけを吸すい固化こかする性質せいしつがあるので有機ゆうき防ぼう結ゆい剤ざいを添加てんかするが、法規ほうき上じょう0.2%以下いかと規定きていされている。有機物ゆうきぶつがあると硝安の爆発ばくはつ性せいが増まし危険きけんなためである。またアンホは雷管らいかんでは起爆きばくされないことが法規ほうき上じょうの絶対ぜったい条件じょうけんであるが、ある種しゅの有機ゆうき防ぼう結ゆい剤ざいは製品せいひんアンホの雷管らいかん感度かんどを上あげてしまう。

歴史れきし

アンホ爆薬ばくやくが発明はつめいされたのは1950年代ねんだい後半こうはんであるが、発明はつめい者しゃは不明ふめいで、製法せいほうの特許とっきょも存在そんざいしない。ただし当時とうじ北米ほくべいではロバート・アッカーやメルヴィン・クックが硝安と種々しゅじゅの物質ぶっしつを組くみ合あわせた安価あんかな爆薬ばくやくの特許とっきょを多数たすう取とっている。特とくにクックは硝安と水みず、鋭するど感かん剤ざいといった比較的ひかくてき入手にゅうしゅ性せいの高たかい原料げんりょうから作つくられるスラリー爆薬ばくやくをカナダの鉱山こうざんで実用じつようしていたこともあり、誰だれかがディーゼル燃料ねんりょうとして入手にゅうしゅ性せいの高たかい軽油けいゆと硝安を混まぜてみたのであろう。特許とっきょが無ないため北米ほくべいから世界せかいに急速きゅうそくに広ひろまった。日本にっぽんで製造せいぞうが始はじまったのは1964年ねんである。

ダイナマイトより安全あんぜんかつ安価あんかなので砕石さいせきなどの坑あな外がい発破はっぱに急速きゅうそくに使用しようを広ひろげた。最初さいしょは既存きそんのダイナマイト製造せいぞう者しゃがアンホを製造せいぞうし、ダイナマイトと同様どうように一本いっぽんずつ包装ほうそうしていた。しかし、それではアンホの利点りてんを利用りようできないので、発破はっぱ業界ぎょうかいで製造せいぞうし、袋ふくろ詰づめなどのバルクで発破はっぱ現場げんばに運搬うんぱんし、発破はっぱ孔あなに注入ちゅうにゅうするようになった。さらに火薬かやく類るい取締とりしまり法ほうの改正かいせいで移動いどう式しき製造せいぞう機きの使用しようが可能かのうになり、肥料ひりょう硝安と軽油けいゆから発破はっぱ現場げんばで製造せいぞうするようになったことで、アンホの利点りてんを完全かんぜんに享受きょうじゅできるようになった。

アンホがダイナマイトと製造せいぞう量りょうで比肩ひけんしたのは1973年ねんであり、最近さいきんではダイナマイトの約やく3倍ばい以上いじょうの量りょうが使用しようされている。地域ちいきによってはこれを使つかった密漁みつりょうが横行おうこうしており、材料ざいりょうがどこでも入手にゅうしゅ可能かのうなため取締とりしまりが困難こんなんである。

テロリストが用もちいる安価あんかな兵器へいきのひとつであり、車くるま爆ばく弾だんや即席そくせき爆発ばくはつ装置そうちと言いった攻撃こうげき手段しゅだんの主しゅたる爆薬ばくやくとして用もちいられる場合ばあいも多おおい。(ノルウェー連続れんぞくテロ事件じけんなど)