(Translated by https://www.hiragana.jp/)
エアロジェット - Wikipedia コンテンツにスキップ

エアロジェット

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
LR87ロケット・エンジン。タイタン IIもちいられた。(国立こくりつアメリカ空軍くうぐん博物館はくぶつかん所蔵しょぞう

エアロジェット(Aerojet)は、カリフォルニアしゅうサクラメント本社ほんしゃ大手おおてロケット・ミサイル推進すいしん機器ききメーカーである、主要しゅよう拠点きょてんワシントンしゅうレドモンドバージニアしゅうオレンジバージニアしゅうゲインズビルアーカンソーしゅうキャムデンにある。同社どうしゃは、固体こたい燃料ねんりょうロケット・エンジンと液体えきたい燃料ねんりょうロケット・エンジンの両方りょうほう提供ていきょうするアメリカ唯一ゆいいつ推進すいしん機器ききメーカーである。NASA機体きたい弾道だんどうミサイル使用しようされるメイン・エンジンから、宇宙うちゅう軌道きどう保持ほじ推進すいしん装置そうちまで、同社どうしゃ製品せいひん多岐たきにわたる。同社どうしゃ推進すいしん機器ききは、EELVアトラスV外部がいぶ取付とりつしきロケット・ブースター規模きぼ大型おおがたロケット・エンジンをもふくむ。エアロジェットは、アメリカ陸軍りくぐんのほぼすべての戦術せんじゅつミサイルのロケット・モーターを提供ていきょうし、広範囲こうはんいにわたるラムジェットおよスクラムジェット・エンジンを開発かいはつ製造せいぞうしている。また、帯電たいでんイオンとホール効果こうか反動はんどう推進すいしんエンジン分野ぶんや研究けんきゅうしている。エアロジェットは、アメリカでロケット・エンジン専業せんぎょうの3しゃのうちの1しゃであり、すなわちロケットダイン液体えきたい燃料ねんりょうロケット・エンジン)とATK固体こたい燃料ねんりょうロケット・エンジン)のライバル企業きぎょうであった。

2013ねん6がつにはライバル企業きぎょうであったロケットダインしゃがGenCorp Inc.に買収ばいしゅうされ、すでにGenCorp Inc.の傘下さんかにあったエアロジェットしゃ統合とうごうされてエアロジェット・ロケットダイン (Aerojet Rocketydyne)しゃとなった[1]

歴史れきし

[編集へんしゅう]
GALCITによるJATOの試験しけん。1941ねん8がつ16にち

エアロジェットは、セオドア・フォン・カルマン主催しゅさいかれ自宅じたく開催かいさいされた1936ねん会合かいごうから発展はってんした。当時とうじカリフォルニア工科こうか大学だいがくのグッゲンハイム航空こうくう研究所けんきゅうじょ (GALCIT) の責任せきにんしゃであったフォン・カルマンにくわえ、のカリフォルニア工科こうかだい教授きょうじゅたち学生がくせいだけでなく、独学どくがくのロケット工学こうがく専門せんもんジャック・パーソンズ (Jack Parsons) とエド・フォーマン (Ed Forman) も出席しゅっせきしており、かれ全員ぜんいん宇宙うちゅう飛行ひこう話題わだい興味きょうみがあった。グループはかえ会合かいごうったが、実験じっけん主義しゅぎとは対照たいしょうてき基本きほんてき議論ぎろんかぎられていた。しかし1938ねん、アメリカ陸軍りくぐんが2つの研究けんきゅうプロジェクトを依頼いらいしたことで変化へんかしょうじた。1つは航空機こうくうき風防ふうぼう氷結ひょうけつ防止ぼうし装置そうち、もう1つは今日きょうJATOとしてられている航空機こうくうき加速かそくして離陸りりく距離きょりみじかくするためのロケット・エンジンであった。マサチュまさちゅセッツ工科大学せっつこうかだいがく (MIT) のジェローム・ハンセーカー (Jerome Hunsaker) 博士はかせはロケット研究けんきゅうが「バック・ロジャーズ (Buck Rogers)」(1928ねん初出しょしゅつのアメリカのふるいSF漫画まんが)のようなプロジェクトであるとかんじたため前者ぜんしゃ選択せんたくし、のこりのロケット研究けんきゅうがカリフォルニア工科こうかだいチームにまわってきた。

かれらの最初さいしょ設計せっけいによる飛行機ひこうき底面ていめんけられたちいさな円筒えんとうがた固体こたい燃料ねんりょうモーターは、1941ねん8がつ16にちにテストされた。その結果けっか離陸りりく距離きょり半分はんぶん短縮たんしゅくされ、アメリカ陸軍りくぐん航空こうくうたい実験じっけんてき生産せいさん発注はっちゅうした。1942ねん3月19にちに、エアロジェット・エンジニアリングしゃがカリフォルニアしゅうアズサ公式こうしき設立せつりつされた。同社どうしゃ創設そうせつしゃとして、フランク・マリナ、フォン・カルマン、パーソンズ、フォーマン、マーティン・サマーフィールド (Martin Summerfield) 、アンドリュー・ハーレイ (Andrew Haley) がつらねた[2]。アメリカ陸軍りくぐん航空こうくうたい1943ねんについに正式せいしき注文ちゅうもんし、2,000年内ねんないおさめるよう要求ようきゅうした。同社どうしゃ純粋じゅんすいなロケット研究けんきゅうにも投資とうしし、液体えきたい燃料ねんりょう設計せっけいと、ジェネラル・タイヤと協力きょうりょくしてゴム結合けつごうざいもとづいたあたらしい固形こけい燃料ねんりょう設計せっけい両方りょうほう開発かいはつおこなった。だい世界せかい大戦たいせんわるとまもなく、エアロジェットは急速きゅうそく縮小しゅくしょうしたが、同社どうしゃのJATOユニットは、高温こうおん高空こうくう運用うんようされている商用しょうよう航空機こうくうき市場いちば販売はんばいつづけられた。

エアロジェットの初期しょき製品せいひんであるエアロビーの先端せんたん部分ぶぶん。(国立こくりつアメリカ空軍くうぐん博物館はくぶつかん所蔵しょぞう

1950ねんまでに、ゴム結合けつごうざいによる固体こたい燃料ねんりょうロケットの研究けんきゅうは、より大型おおがたのエンジンに、さらにエアロビー気象きしょう観測かんそくようロケットの開発かいはつにつながった。エアロビーは地球ちきゅう軌道きどうではあるが宇宙うちゅう到達とうたつするためにアメリカで設計せっけいされた最初さいしょのロケットであり、1985ねん引退いんたいするまでに、1,000以上いじょうげられた。アメリカ陸軍りくぐん航空こうくうたいのち新設しんせつされたアメリカ空軍くうぐんは、タイタンミニットマン・ミサイルなどの大陸たいりくあいだ弾道だんどうミサイル・プロジェクトにかんする主要しゅよう供給きょうきゅうもととして、エアロジェットを採用さいようした。アメリカ海軍かいぐん潜水艦せんすいかん発射はっしゃがたポラリス・ミサイルのためにも推進すいしん装置そうちシステムを納入のうにゅうした。最初さいしょのアズサ事業じぎょうしょしゅとして研究けんきゅう専念せんねんする一方いっぽう、サクラメントであたらしい工場こうじょうだい部分ぶぶんのロケット製造せいぞう事業じぎょういで建設けんせつされた。アズサの主要しゅようなプロジェクトのうちの1つはDSP衛星えいせい宇宙うちゅうからICBMの発射はっしゃつけるのにもちいられる赤外線せきがいせん検出けんしゅつ開発かいはつであった。あたらしい研究けんきゅう組織そしきはエアロジェット・エレクトロニクスとして独立どくりつする一方いっぽう、いくつかの兵器へいき会社かいしゃ買収ばいしゅうしたのち同様どうようにエアロジェット・オーディナンスが設立せつりつされた。あたらしい上部じょうぶ機構きこうエアロジェット・ジェネラルは、3つの主要しゅよう部門ぶもん監督かんとくした。

1960年代ねんだいすえまでに人類じんるいつきおくるというケネディ大統領だいとうりょう挑戦ちょうせんは、エアロジェットの民間みんかん事業じぎょう拡大かくだいにつながった。過去かこには、1950年代ねんだい後期こうき設計せっけいされたサターンとノヴァ・ブースターよう大型おおがたエンジンの契約けいやくをライバルのロケットダインにうばわれ、ことごとくしつしたが、最後さいごにはアポロ司令しれいせんモジュールのメイン・エンジンのメーカーに選定せんていされた。1962ねんに、同社どうしゃはサターンのだい2だん使つかわれた5のJ-2をもちいたクラスター・エンジンを、アポロ以後いご世代せだいようかわそうするための新型しんがた上段じょうだんエンジンの設計せっけいにも指名しめいされたが、その成果せいかとしてできあがるはずだったM-1の設計せっけい作業さぎょう巨大きょだい宇宙うちゅう計画けいかくたいする市民しみん支持しじよわまっていることがあきらかになったとき、1965ねんわりをむかえた。

1960年代ねんだいベトナム戦争せんそうのために増加ぞうかする要求ようきゅうによってふたた軍需ぐんじゅてんじ、様々さまざま兵器へいき供給きょうきゅうもととなり、エアロジェットは1950年代ねんだい後期こうき軍事ぐんじ事業じぎょう部門ぶもんけした。そうした仕事しごと1970年代ねんだいにもつづき、MXミサイルもちいだい2だんロケット・モーター、スペースシャトルよう反動はんどう推進すいしんエンジン・システムおよびアメリカではじめて設計せっけいされたクラスターばくだん納入のうにゅうした。A-10 サンダーボルト II ようの30 mmだん契約けいやくは、1978ねんあたらしいぶん工場こうじょうがダウニーとチーノーにてられたほどおおきな受注じゅちゅうだった。エアロジェットはこの時期じきのいくつかの会社かいしゃ買収ばいしゅうし、ジョーンズボロの工場こうじょうでTNは劣化れっかウラン兵器へいき開発かいはつおこなった。今日きょういたるも、同社どうしゃはこうした兵器へいき主要しゅよう供給きょうきゅうもとである。同社どうしゃ電子でんし機器きき部門ぶもん兵器へいき部門ぶもんは、SADARM 8たい装甲そうこう砲弾ほうだん開発かいはつにもかかわったが、これは生産せいさんにはいたらなかった。

1980年代ねんだいレーガン大統領だいとうりょう戦略せんりゃく防衛ぼうえい構想こうそう (SDI) プログラムの絶頂ぜっちょう航空こうくう宇宙うちゅうビジネスは一時いちじてき復活ふっかつたが、同社どうしゃ1980年代ねんだい後期こうきから1990年代ねんだいにかけて、縮小しゅくしょうつづけた。

環境かんきょう汚染おせん問題もんだい

[編集へんしゅう]

エアロジェットの製造せいぞう試験しけんおよ廃棄はいきによってランチョコードヴァ地域ちいき土壌どじょう地下水ちかすい汚染おせんまねき、スーパーファンド (Superfund site) の指定していいたった[3]1979ねんにエアロジェットの製造せいぞう拠点きょてんちかくの飲料いんりょうすいよう井戸いどトリクロロエチレン (TCE) とクロロホルムのような溶媒ようばいおよびN-ニトロソジメチルアミン (NDMA) と塩素えんそさんしおのようなロケット燃料ねんりょう生産せいさん過程かてい副産物ふくさんぶつ検出けんしゅつされた。それ以来いらい、2つの州立しゅうりつ部局ぶきょくアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく環境かんきょう保護ほごちょう (EPA) は、同社どうしゃがサイトでその活動かつどう起因きいんする汚染おせん確実かくじつ浄化じょうかするために、エアロジェットとともに活動かつどうつづけている。しゅうおよ連邦れんぽう施行しこうれいもとで、エアロジェットは汚染おせんされた地下水ちかすいし、処理しょりするためのシステムをその敷地しきち境界きょうかい設置せっちした。エアロジェットは現場げんば土壌どじょう液体えきたいとヘドロの除去じょきょ作業さぎょう実行じっこうしたが、2003ねん地下水ちかすいのサンプルデータは、北西ほくせいのカーマイケルの地下ちかまで汚染おせんひろがっていることをしめした[4]

現在げんざい

[編集へんしゅう]

エアロジェットの規模きぼ縮小しゅくしょうし、同社どうしゃ工業こうぎょうプラントのおおくは稼動かどう状態じょうたいになったため、同社どうしゃはそれらを資本しほんする方法ほうほう模索もさくした。固体こたい燃料ねんりょうロケットの製造せいぞうもちいられた化学かがく合成ごうせい設備せつびへのかれらの大型おおがた投資とうしは、エアロジェット・ファイン・ケミカルズ (Aerojet Fine Chemicals) のした第三者だいさんしゃとく製薬せいやく会社かいしゃ)に貸与たいよされ、当該とうがい部門ぶもんのち売却ばいきゃくされた。不動産ふどうさん部門ぶもんであるエアロジェット・リアル・エステート (Aerojet Real Estate) はより直接的ちょくせつてきに、建物たてもの賃貸ちんたいするか、開発かいはつ土地とち売却ばいきゃくしていた。同社どうしゃはサクラメント中心ちゅうしんからひがしに24 km(15 mi)に位置いちするおよそ51 km2 (12,600 ac) の土地とち所有しょゆうしている。

エアロジェットののこりの研究けんきゅう開発かいはつ部門ぶもん現在げんざい航空こうくう防衛ぼうえい部門ぶもん (Aerospace and Defense division、ADS) として組織そしきされている。この部門ぶもんは、ミサイル防衛ぼうえい必要ひつよう戦略せんりゃくミサイルおよ戦術せんじゅつミサイル、精密せいみつ攻撃こうげきミサイルと迎撃げいげきシステムよう液体えきたいロケット・エンジン、固体こたいロケット・エンジンおよ空気くうき吸入きゅうにゅうエンジンを開発かいはつし、生産せいさんつづけている。防衛ぼうえいシステムよう製品せいひんぐんは、戦略せんりゃくミサイルおよ戦術せんじゅつミサイルのロケット・モーター、動的どうてき推進すいしんりょくシステム、姿勢しせい制御せいぎょシステムおよ精度せいど誘導ゆうどう兵器へいきシステムとミサイル防衛ぼうえいにおいて使つかわれる弾頭だんとうアセンブリだけでなく、F-22 ラプター戦闘せんとうおよ軍用ぐんよう商用しょうよう火力かりょく抑制よくせいシステムで必要ひつようとなる機体きたい構造こうぞうまでふくまれる。宇宙うちゅう関連かんれん製品せいひんでは、使つかて、あるいはさい使用しよう可能かのうげロケットよう液体えきたいロケット・エンジン、上段じょうだんエンジン、人工じんこう衛星えいせい推進すいしん装置そうち大型おおがた固体こたいロケットブースタおよ統合とうごう推進すいしんサブシステムがふくまれる。

ごく最近さいきん、エアロジェットは、世界せかいもっと強力きょうりょく飛行ひこうてきしたホール効果こうか反動はんどう推進すいしんエンジン・システムである4.5 kWの電気でんき推進すいしんシステムを最適さいてきすることに成功せいこうした。当該とうがいシステムは手始てはじめに、大型おおがたこう出力しゅつりょく通信つうしん衛星えいせい使用しようされる予定よていである。軌道きどうじょう宇宙うちゅう効率こうりつ改善かいぜんするために注目ちゅうもくあつまっている電気でんき推進すいしんりょくシステムは、現在げんざい様々さまざま商用しょうようおよ政府せいふ計画けいかく飛行ひこう確実かくじつなものとしている。エアロジェットは、 空軍くうぐんプログラム次世代じせだいのAdvanced Extremely High Frequency(AEHF)システムようあたらしい反動はんどう推進すいしんエンジン・システムの最初さいしょの2セットを提供ていきょうするためにロッキード・マーチンと契約けいやくしている。

エアロジェットは現在げんざい以前いぜんジェネラル・タイヤ・アンド・ラバーしゃ (General Tire & Rubber Company) としてられていた企業きぎょう傘下さんかにあり、同社どうしゃ1984ねんにジェンコープ (GenCorp) に社名しゃめい変更へんこうした。ジェンコープは、カリフォルニアしゅうランチョコードヴァに本部ほんぶく。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ “Two engine rivals merge into Aerojet Rocketdyne”. spaceflightnow.com. (2013ねん6がつ18にち). http://spaceflightnow.com/news/n1306/18aerojet/#.UcgLYz6qOCF 2013ねん6がつ24にち閲覧えつらん 
  2. ^ Malina, Frank Joseph” (英語えいご). American National Biography. 2007ねん10がつ18にち閲覧えつらん
  3. ^ EPA Proposes a Plan to Address Groundwater Contamination in the Western Area of the Aerojet Site” (英語えいご). California Department of Toxic Substances Control (November, 2000). 2007ねん10がつ18にち閲覧えつらん
  4. ^ Edge of Groundwater Contamination Plume Appears in Carmichael” (英語えいご). United States Environmental Protection Agency (May, 2004). 2007ねん10がつ18にち閲覧えつらん

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]