ロケットダイン

サターンVロケットのF-1エンジンの前まえに立たつヴェルナー・フォン・ブラウン博士はかせ

ロケットダイン（Rocketdyne）は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの液体えきたい燃料ねんりょうロケットエンジンの主要しゅような設計せっけい製造せいぞう業者ぎょうしゃ。同社どうしゃはその歴史れきしの大だい部分ぶぶんでノースアメリカン社しゃ(NAA)と深ふかい関かかわりを持もっていた。NAA 社しゃはロックウェル・インターナショナルと合併がっぺいし、その後ご1996年ねん12月にボーイング社しゃに買収ばいしゅうされた。2005年ねん2月がつ、ボーイング社しゃはロケットダイン社しゃをプラット・アンド・ホイットニー社しゃに売却ばいきゃくすることに合意ごういし、2005年ねん8月がつ2日にち、その契約けいやくが履行りこうされ、プラット・アンド・ホイットニー・ロケットダイン（Pratt & Whitney Rocketdyne）となった。

2012年ねん3月がつに、プラット・アンド・ホイットニー・ロケットダインの親会社おやがいしゃであるユナイテッド・テクノロジーズ(UTC)がグッドリッチ社しゃを取得しゅとくするために一部いちぶ事業じぎょうの売却ばいきゃくを行おこなうことを発表はっぴょうし、プラット・アンド・ホイットニー・ロケットダインはGenCorpに売却ばいきゃくされることになった。しかし、連邦れんぽう取引とりひき委員いいん会かい(FTC)の承認しょうにんが遅おくれたため、この売却ばいきゃくが完了かんりょうしたのは2013年ねん半なかばのことであった。2013年ねん6月がつにFTCの承認しょうにんが得えられたため、プラット・アンド・ホイットニー・ロケットダインはGenCorpの傘下さんかに入はいった。GenCorpは別べつのロケットエンジンメーカであるエアロジェット社しゃを傘下さんかに有ゆうしていたため、ライバル企業きぎょうであった両社りょうしゃは統合とうごうされてエアロジェット・ロケットダイン（Aerojet Rocketdyne）となった。

歴史れきし

ロケットダイン社しゃは NAA が第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん直後ちょくごに設立せつりつした。設立せつりつ目的もくてきはドイツのV2ロケットを研究けんきゅうし、SAEや合衆国がっしゅうこくがその知識ちしきを活用かつようできるようにすることであった。ロケットダインはまた、V2のエンジンの設計せっけいからバーナーとインジェクターの分離ぶんりなどの一般いっぱん的てきなコンセプトを踏襲とうしゅうして、さらに大型おおがたのナバホミサイル計画けいかくのエンジンを開発かいはつした。この仕事しごとは1940年代ねんだいにはそれほど重要じゅうようと思おもわれず、資金しきん提供ていきょうも少すくなかった。しかし、1950年ねんに朝鮮ちょうせん戦争せんそうが勃発ぼっぱつすると、優先ゆうせん順位じゅんいが変かわってきたのである。ナバホの開発かいはつは困難こんなんの連続れんぞくで、レッドストーンミサイルの設計せっけい（基本きほん的てきにV2をそのまま大型おおがた化かしたもの）が製造せいぞう段階だんかいに入はいったのを受うけて、1950年代ねんだい後半こうはんにナバホ計画けいかくは中止ちゅうしされた。しかし、ロケットダインのエンジン（A-5 または NAA75-110）はレッドストーン向むけに開発かいはつされたエンジンよりも遥はるかに信頼しんらい性せいが高たかいことを証明しょうめいした。そのため、レッドストーンは A-5 を使つかうよう再さい設計せっけいされた（そのために射程しゃていが短みじかくなったが、信頼しんらい性せいが優先ゆうせんされた）。1955年ねん、ミサイルが製造せいぞう段階だんかいに入はいると、NAA はロケットダインを独立どくりつ部門ぶもんとしてスピンオフさせた。

ロケットダインの次つぎの大おおきな開発かいはつは、S-3D と呼よばれる初はじめての新しん設計せっけいであり、V2 からの派生はせい設計せっけいである A シリーズと並行へいこうして開発かいはつが行おこなわれた。S-3 はジュピターの設計せっけい（レッドストーンの発展はってん型がた）で使用しようされ、後のちにさらに性能せいのうの良よいソーミサイルにも使つかわれた。さらに大型おおがたの LR89/LR105 はアトラスで使用しようされた。ソーは軍用ぐんようには短期間たんきかんしか使つかわれなかったが、1950年代ねんだいから1960年代ねんだいにかけて人工じんこう衛星えいせいの打うち上あげに使つかわれた。「ソー・デルタ」という発展はってん型がたがその後ご宇宙うちゅう開発かいはつで使つかわれるデルタロケットの原型げんけいとなったが、1960年代ねんだい後半こうはんのデルタはソーとは全まったく関係かんけいがなかったのである。本来ほんらいの S-3 エンジンは一部いちぶのデルタロケットでも使つかわれたが、デルタの大だい部分ぶぶんはその改良かいりょう型がたの RS-27 を使用しようした。これは、アトラスの3エンジンクラスタ構成こうせいを1エンジンで置おき換かえることを目的もくてきとして開発かいはつされたものであった。

アトラスも軍事ぐんじ用ようの兵器へいきとしての使用しよう期間きかんは短みじかく、その後ご数すう十じゅう年間ねんかん、宇宙うちゅうへの打うち上あげに使つかわれるようになった。マーキュリー計画けいかくの一部いちぶでも使つかわれたが、アトラス-アジェナ、アトラス-セントールとして人工じんこう衛星えいせい打うち上あげに多おおく使つかわれた。アトラスの発展はってん型がたは今いまも製造せいぞうされ使つかわれている。

ロケットダインはアメリカ航空こうくう宇宙うちゅう局きょくの主要しゅよう供給きょうきゅう業者ぎょうしゃとなった。サターンロケットの主しゅエンジン全すべてを供給きょうきゅうした（計画けいかくだけで終おわったノヴァロケットでもその予定よていだった）。

サターンIの一段いちだん目め S-I には8基きの H-1 、二に段だん目め S-IV には6基きの RL-10 が使つかわれている。

サターンIBの一段いちだん目め S-IBには8基きの H-1 、二に段だん目め S-IVB には1基きの J-2 が使つかわれている。

サターンVの一段いちだん目め S-IC には5基きの F-1 、二に段だん目め S-II には5基きの J-2 、三さん段だん目め S-IVB には1基きの J-2 が使つかわれている。

1965年ねんには、ロケットダインはタイタンを除のぞく合衆国がっしゅうこく内ないのほとんどのロケットエンジンを製造せいぞうするようになった。従業じゅうぎょう員数いんずうは 65,000名めいにも膨ふくれ上あがった。ロケットダインはSSMEの契約けいやくも勝かち取とり、このままの成長せいちょうが1970年代ねんだいにも続つづくと思おもわれた。しかし、軍ぐんと民間みんかんとの間あいだの契約けいやく数すうの急激きゅうげきな低下ていかにより、同社どうしゃも人員じんいん削減さくげんを余儀よぎなくされたのである。宇宙船うちゅうせん製造せいぞうの大だい企業きぎょうとなっていたノースアメリカンはスペースシャトルに大おおきく依存いぞんするようになっていたため、1966年ねんにはロックウェル社しゃと合併がっぺいしノースアメリカン・ロックウェル社しゃとなった。同社どうしゃは数すう年ねん後ごにロックウェル・インターナショナルと改称かいしょう。ロケットダインはその中なかの主要しゅよう部門ぶもんの1つとなった。

1980年代ねんだいから90年代ねんだいにかけて、ロックウェルは縮小しゅくしょう傾向けいこうが続つづいた。まず一般いっぱん航空機こうくうき部門ぶもんを1980年ねん、Sabrelinerビジネスジェット部門ぶもんを1983年ねんに売却ばいきゃく。かつての NAA の残のこりの部門ぶもんはロケットダインと共ともに 1996年ねんにボーイング社しゃに売却ばいきゃくされた。ロケットダインはボーイングの統合とうごう防衛ぼうえいシステム部門ぶもんの一部いちぶとなったが、2005年ねん8月がつ2日にち、プラット・アンド・ホイットニー社しゃに売却ばいきゃくされた[1]。

主おもな製品せいひん

ロケットダイン社しゃが開発かいはつした主おもなエンジンを以下いかに列挙れっきょする。カッコ内ないは燃料ねんりょうの構成こうせい。

• H-1 (高こう純度じゅんどケロシン/液体えきたい酸素さんそ) サターンI/Ib、ジュピター、Mercury-Redstone、一部いちぶのデルタロケットで使用しよう。
• F-1 (高こう純度じゅんどケロシン/液体えきたい酸素さんそ) サターンVロケットで使用しよう。
• J-2 (液体えきたい水素すいそ/液体えきたい酸素さんそ) サターンV および IB で使用しよう。
  • J-2X (液体えきたい水素すいそ/液体えきたい酸素さんそ) J-2 エンジンのアップグレード版ばん。スペースシャトル後ごに予定よていされている有人ゆうじんのアレスIと無人むじんのアレスVで使用しよう予定よてい。
• SSME (液体えきたい水素すいそ/液体えきたい酸素さんそ) スペースシャトルの主しゅエンジン。ロケットダインでは RS-25 と呼よばれている。
• RL-10 (液体えきたい水素すいそ/液体えきたい酸素さんそ) サターンI およびアトラスの上段じょうだんのセントールで使用しよう。また、Lunar Surface Access Module の主しゅ推進すいしん機関きかんとしても使用しよう予定よてい。
• RS-68 (液体えきたい水素すいそ/液体えきたい酸素さんそ) デルタIV の一段いちだん目めで使用しよう。アレスVの主しゅ推進すいしん機関きかんとしても使用しよう予定よてい。
• RS-27A (高こう純度じゅんどケロシン/液体えきたい酸素さんそ) デルタII/III、アトラスで使用しよう。

拠点きょてんその他た

ロケットダインのエンジンの多おおくはボーイングの Santa Susana Field Laboratory (SSFL) で試験しけんが行おこなわれた。現在げんざいの プラット・アンド・ホイットニー・ロケットダイン社しゃはユナイテッド・テクノロジーズ社しゃの完全かんぜん子会社こがいしゃであり、本拠地ほんきょちはカリフォルニア州しゅう Canoga Park 近ちかくにある。他たの拠点きょてんはウェストパームビーチ（フロリダ州しゅう）、ハンツビル（アラバマ州しゅう）、ケネディ宇宙うちゅうセンター（フロリダ州しゅう）、ジョン・C・ステニス宇宙うちゅうセンター（ミシシッピ州しゅう）など。

ロケットダインはエドワーズ空軍くうぐん基地きちでの様々さまざまな計画けいかくも主導しゅどうした。

1959年ねん7月がつ26日にち、ロケットダインはナトリウム冷却れいきゃく式しきの原子げんし炉ろの実験じっけんを Santa Susana Field Laboratory で行おこない、メルトダウンによる放射能ほうしゃのう漏もれを起おこした。また、核かく廃棄はいき物ぶつの不適切ふてきせつな処理しょりについて告発こくはつされたこともある。ただし、現在げんざいのロケットダイン社しゃは原子力げんしりょく技術ぎじゅつには関与かんよしておらず、Santa Susana Field Laboratory は核かく実験じっけんにもロケットエンジンの試験しけんにも使つかわれていない。

外部がいぶリンク

• 公式こうしきサイト