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SRB-A - Wikipedia コンテンツにスキップ

SRB-A

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
SRB-Aを装着そうちゃくしたH-IIBロケットH-IIAロケット。ロケット下部かぶふといブースターがSRB-A。
だい1だんにSRB-Aを採用さいようしたイプシロンロケット

SRB-A(エスアールビーエー)は宇宙開発事業団うちゅうかいはつじぎょうだんげん宇宙うちゅう航空こうくう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう)が開発かいはつし、IHIエアロスペース製造せいぞうする固体こたいロケットブースター (Solid Rocket Booster, SRB) である。H-IIAロケットH-IIBロケットおよイプシロンロケットだい1だんもちいられる。

概要がいよう

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H-IIAロケットの開発かいはつにあたって、たか信頼しんらいせいち、H-IIロケットのSRBより高性能こうせいのうかつていコストなSRBを目標もくひょうとして開発かいはつされたのがSRB-Aである[1]。これを達成たっせいするために炭素たんそ繊維せんい強化きょうかプラスチック (CFRP) せいいち体型たいけいモータケースを採用さいよう、またこうあつ燃焼ねんしょう採用さいようによって性能せいのうとさず全長ぜんちょう短縮たんしゅくすることに成功せいこうした[1]

初期しょきがたのSRB-A以降いこう、204がたよう開発かいはつされていたSRB-A2、H-IIAロケット6号機ごうきでのノズル破壊はかい起因きいんする分離ぶんり失敗しっぱいけて推力すいりょく燃焼ねんしょうあつ低減ていげんとう対策たいさくほどこしたSRB-A改良かいりょうがた、ノズル全体ぜんたい設計せっけいから抜本ばっぽんてき改善かいぜんおこな能力のうりょく初期しょきがたとほぼ同等どうとうまで回復かいふくさせたSRB-A3と、おおくの改良かいりょうがた開発かいはつされ、最大さいだいどうあつ信頼しんらいせい改善かいぜんされている。(型式けいしきべつ詳細しょうさい後述こうじゅつ

はつ飛翔ひしょうした2001ねん時点じてんで、SRBとしてはスペースシャトルSRBアリアン5ようのP238にいで世界せかいで3番目ばんめおおきいSRBである[2]。ただし、SRBではいメインのロケットモータには、M-VロケットのM-14モータ、ヴェガロケットのP80モータ、インドのPSLVのS-138モータとう、SRB-Aよりおおきい固体こたいロケットモータ (SRM) はいくつか存在そんざいする。

H-IIAロケットととも運用うんよう終了しゅうりょうし、後続こうぞくH3ロケットのSRBにはどう規模きぼSRB-3開発かいはつされている。イプシロンロケットだい1だんもイプシロンSからSRB-3に変更へんこうされる。

構成こうせい

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おもにノーズコーン、前部ぜんぶアダプタ、モータケース、後部こうぶアダプタ、結合けつごう構造こうぞうからなる[1]。H-IIAロケットやH-IIBロケットの場合ばあい前後ぜんご4ヶ所かしょのヨーブレスと2ほんのスラストストラットをもちいてだい1だんコア機体きたいからげるストラップ・オン方式ほうしき固定こていされる[1]。イプシロンロケットの場合ばあいにはノーズコーンはもちいられず、前部ぜんぶアダプタのわりにだん間接かんせつしゅ後部こうぶアダプタのわりにSMSJによってロール制御せいぎょ能力のうりょく後部こうぶとうけられる。

モータは全長ぜんちょう9,582mm(初期しょきがた)で直径ちょっけい2.5 mの円筒えんとうがたモータである[1]おも推進すいしんやくりょうやグレイン形状けいじょうちがいによる燃焼ねんしょうパターンの差異さいから高圧こうあつがたモータとちょうびょうがたモータの2種類しゅるい大別たいべつされる。こうあつがたモータは平均へいきん燃焼ねんしょう圧力あつりょくたかく、燃焼ねんしょう時間じかんやく100びょうみじかい。ちょうびょうがたモータはこうあつがたモータにくらべて平均へいきん燃焼ねんしょう圧力あつりょくひくく、燃焼ねんしょう時間じかんが120びょう前後ぜんこうながい。型式けいしきべつると、SRB-Aはこうあつがた、SRB-A2とSRB-A改良かいりょうがたちょうびょうがたであり、SRB-A3にはこうあつがたちょうびょうがたの2種類しゅるいがある。(詳細しょうさい後述こうじゅつ

H-IIAロケットのかく形式けいしき

H-IIAロケットの202・2022・2024・212がたやJ-Iロケット2号機ごうきにはこうあつがたモータが使用しようされ、H-IIAロケットの202・204がたやH-IIBロケット、イプシロンロケットにはちょうびょうがたモータがもちいられる。ただしSRB-A改良かいりょうがた使用しようしていたあいだは、2022・2024がたでも安定あんていせいたかちょうびょうがたモータを使用しようしていた。SRB-A3では、202がたなど2ほん1くみ使用しようする場合ばあいに、必要ひつよう打上うちあ能力のうりょくおうじて2種類しゅるいのモータから適切てきせつほう選択せんたくして使用しようしている。202がたちょうびょうがたモータを装着そうちゃくした場合ばあいには、重力じゅうりょく損失そんしつおおきくなり、ペイロードはGTO換算かんさんでおよそ300 kgすくなくなる。一方いっぽう、204がたやH-IIBといったSRB-Aを4ほん1くみ使用しようする場合ばあいには、コア機体きたい加速度かそくど制限せいげんとうによりちょうびょう燃焼ねんしょうモータを使用しようする[3]

モータケース

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CFRP炭素たんそ繊維せんい強化きょうかプラスチック)のフィラメント・ワインディング方式ほうしきによる一体いったい成形せいけいモータケースを採用さいようした[4]ことで、従来じゅうらいこう張力ちょうりょくこうせい比較ひかくして2ばい強度きょうどやく80%の軽量けいりょう実現じつげんした。また、同時どうじ費用ひよう大幅おおはば削減さくげんされている。
成形せいけい工程こうていチオコールしゃげんATK)のキャスター120製造せいぞうにおいて実績じっせきのある技術ぎじゅつライセンスもちいてすすめられる。開発かいはつ試験しけんよう原型げんけいモータ (EM) 地上ちじょう燃焼ねんしょう試験しけんようのモータケース2しきのみはチオコールしゃ工場こうじょう成形せいけいしたものを輸入ゆにゅうしたが、以降いこうはIHIエアロスペース富岡とみおか工場こうじょう生産せいさんされている。原材料げんざいりょうとして炭素たんそ繊維せんいとうT1000GB、樹脂じゅしそう輸入ゆにゅうしたATKせい樹脂じゅしもちいている。
SRB-Aの開発かいはつは4ねんという短期間たんきかんおこなわれる予定よていであった。当時とうじM-3SIIロケットようのKM-M、M-VロケットようのKM-V1、M-34とうのCFRP一体いったい成形せいけいモータをつく技術ぎじゅつゆうしていたものの、SRB-Aのような大型おおがたモータケースの成形せいけいおこなった実績じっせきく、当初とうしょ開発かいはつ期間きかんいちから開発かいはつおこなうことは困難こんなんであったため、ライセンス生産せいさんというかたちにせざるをえなかった[4]。しかし、2009ねん現在げんざいではM-VロケットようのM-25モータとう開発かいはつによって、大型おおがたのCFRP一体いったい成形せいけいモータケースを独自どくじ生産せいさんすることは可能かのうとなっており、H3ロケット使つかわれるSRB-3では国産こくさんされる[4]

推進すいしんやく

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BP-207J基本きほん特性とくせい[5]
組成そせい
HTPB 14 %
AP 68 %
Al 18 %
Fe2O3 0.1 %(そとわり
特性とくせい
断熱だんねつ火炎かえん温度おんど 3,368 K
平均へいきん分子ぶんしりょう 27.86 g/mol
平均へいきん比熱ひねつ 1.175
燃焼ねんしょう速度そくど(@8.9MPa) 8.7 mm/s
n指数しすう 0.3
密度みつど(@20℃) 1.77 g/cm3
推進すいしんやくていコストを重要じゅうようした末端まったん水酸基すいさんきポリブタジエン (HTPB) バインダをもちいるコンポジット推進すいしんやくBP-207J[5]使用しようしている。塩素えんそさんアンモニウム(AP)、HTPB、アルミニウム(Al)からなり、また、燃焼ねんしょう触媒しょくばいとして酸化さんかてつ(Fe2O3)をくわえることで高速こうそく燃焼ねんしょうはかっている。製造せいぞうにち。グレインは前部ぜんぶ円筒えんとう後部こうぶ11光芒こうぼう形状けいじょうであり、燃焼ねんしょう初期しょきにはだい推力すいりょく発生はっせいし、燃焼ねんしょう後期こうきゆるやかな燃焼ねんしょう持続じぞくする2段階だんかい燃焼ねんしょうパターンをつ。推進すいしんやく種子島宇宙たねがしまうちゅうセンターない専用せんよう充填じゅうてん施設しせつ充填じゅうてんされる。
H-IIロケットでは自立じりつするさいにロケット全体ぜんたい重量じゅうりょうをSRBのノズルでささえる設計せっけいとなっていたが、H-IIAロケットではだい1だんコア機体きたい下部かぶささえる設計せっけい変更へんこうされた。このため、従来じゅうらいよりノズルの強度きょうどとし軽量けいりょうすることが可能かのうとなった。また、ノズルスロートインサートの素材そざいとして従来じゅうらいグラファイトの10ばい強度きょうどを3D-C/Cふくごうざい採用さいよう[1]し、費用ひよう削減さくげんした。当初とうしょ製造せいぞう費用ひよう開発かいはつ期間きかん問題もんだいからコニカルノズルを採用さいようしていたものの、局所きょくしょエロージョン問題もんだいからベルノズルへと変更へんこうされるなど、改良かいりょうすすめられた。ノズルの最下さいかはし直径ちょっけいは1,656mm(初期しょきがた[1]。(かく型式けいしきべつ詳細しょうさい後述こうじゅつ

推力すいりょく方向ほうこう制御せいぎょ (TVC)

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H-IIロケットのSRBでは油圧ゆあつブローダウン方式ほうしきだったが、SRB-AではTVCによって単体たんたいでピッチ・ヨー制御せいぎょ能力のうりょくつ、電動でんどうアクチュエータをもちいた可動かどうノズル推力すいりょく方向ほうこう制御せいぎょ (MNTVC) を採用さいようしており[6]、これによって大幅おおはば整備せいび低減ていげん達成たっせいされた。開発かいはつにあたっては、だい出力しゅつりょく小型こがた電動でんどうモータだい電力でんりょくインバータだい出力しゅつりょく電源でんげん開発かいはつ課題かだいであった。電動でんどうモータにはこううらないせきりつステータとこうエネルギーせき永久えいきゅう磁石じしゃくもちいた大型おおがたてい慣性かんせいロータを採用さいよう実現じつげんした。また、だい電力でんりょくインバータには信頼しんらいせいたか小型こがたモジュールされた絶縁ぜつえんゲートバイポーラトランジスタ(IGBT, Insulated Gate Bipolar Transistor)、およたい振動しんどうせいしただい容量ようりょうアルミ電解でんかいコンデンサ採用さいようすることでこれを実現じつげんした。電源でんげんとしては、300 Vきゅうこう電圧でんあつ、150 Aきゅうこう電流でんりゅうしたねつ電池でんち使用しようしている。

ノーズコーン

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ノーズコーンはハンドレイアップ一体いったい成形せいけいのCFRPせいであり、先端せんたんはノーズフェアリングと同様どうよう半径はんけい750 mmはんいただきかく18である。全長ぜんちょうは2,203mm(初期しょきがた[1]

前部ぜんぶアダプタ

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前部ぜんぶアダプタは全長ぜんちょう1,225 mm・直径ちょっけい2.5 mで円筒えんとう形状けいじょう[1]のアルミセミモノコック構造こうぞうである。ヨー方向ほうこう荷重かじゅう伝達でんたつする2ほん前方ぜんぽうヨーブレスや、ピッチ方向ほうこう荷重かじゅう伝達でんたつする前方ぜんぽうピッチガイド、SRB-Aの推力すいりょく伝達でんたつする2ほんのスラストストラット、圧力あつりょくセンサがおさめられている。また、SRB-A改良かいりょうがた以降いこう電力でんりょくけい機器きき指令しれい破壊はかいけい機器ききもこれにくわわっている。

後部こうぶアダプタ

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後部こうぶアダプタは全長ぜんちょう0.7 m・直径ちょっけい2.5 mで円筒えんとう形状けいじょう[1]のアルミセミモノコック構造こうぞうである。ねつ電池でんち電動でんどうアクチュエーター、こう電圧でんあつインバーターとう、ピッチ・ヨー制御せいぎょようのノズル駆動くどう機器ききおさめられている。初期しょきがたのSRB-Aでは電力でんりょくけい機器きき指令しれい破壊はかいけい機器ききもここにおさめられていた。

結合けつごう構造こうぞう

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結合けつごう構造こうぞう部分ぶぶん円筒えんとう形状けいじょうのアルミセミモノコック構造こうぞうであり、後部こうぶアダプタにけられる。分離ぶんりモータやヨー方向ほうこう荷重かじゅう伝達でんたつする2ほん後方こうほうヨーブレス、ピッチ方向ほうこう荷重かじゅう伝達でんたつする後方こうほうピッチガイドが結合けつごうされている。

分離ぶんり方法ほうほう

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H-IIロケットのSRBではぜんはしおよ後端こうたん配置はいちされた分離ぶんりモータの分離ぶんりりょくにより、コアロケットに影響えいきょうあたえないようにコアロケットにたいしてやく45方向ほうこう分離ぶんりした。これにたいしてSRB-AはH-IIAのファミリー対応たいおうするため、コアロケットにたいして真後まうしろに分離ぶんりする。まず、前方ぜんぽうヨーブレスと後方こうほうヨーブレスの4ほん分離ぶんりボルト作動さどう分離ぶんりする。スラストストラットを棒高跳ぼうたかとびの要領ようりょうもちいて、SRB-Aが本体ほんたいから一番いちばんはなれる1びょうにスラストストラットの切断せつだんようこうひん(FLSC)で切断せつだんされる。H-IIAロケットでは2ほん同時どうじ分離ぶんりされるが、H2A2024がたやH-IIBロケットでは分離ぶんり衝撃しょうげきやわらげるため対称たいしょうの2ほんずつ2かいけて分離ぶんりされる。
H-IIAロケット6号機ごうきでは、ノズルが燃焼ねんしょうガスにより侵食しんしょくされてあなひらき、SRB-Aを分離ぶんりさせるための爆発ばくはつボルトの点火てんか制御せいぎょせんしるべばくせん)が切断せつだんされ、前方ぜんぽうヨーブレスが分離ぶんりされなかった。
H-IIBロケット2号機ごうきでは、片方かたがたのスラストストラットがけにくくなり分離ぶんりのタイミングにられた。原因げんいんはH-IIBロケット特有とくゆう艤装ぎそうであったが、分離ぶんり機構きこうについてはH-IIAロケットも共通きょうつう仕様しようであるため、冗長じょうちょうせいかんがかたからストラットを分離ぶんりするVがた成型せいけい爆破ばくはせん(FLSC-II)のホルダ部分ぶぶん設計せっけい変更へんこうおこなった[7]

型式けいしき

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SRB-Aの初期しょきがたである。モータはこうあつがたモータで燃焼ねんしょう時間じかんやく100びょう、ノズル形状けいじょうH-IIロケットのSRBとおなじコニカルノズル。開発かいはつには3かい実機じっきだいモータ試験しけん予定よていされた。1998ねん7がつおこなわれた原型げんけいモータ試験しけん (EM)、1999ねん3がつおこなわれたプロトタイプモータ試験しけん (PM) につづいて、1999ねん8がつおこなわれただい1かい認定にんていがたモータ試験しけん (QM) において過大かだいなエロージョンが確認かくにんされたことで地上ちじょう燃焼ねんしょう試験しけんをさらに2かい追加ついかした[1][8]。2000ねん6がつおこなわれたQM2では、CFRPをH-IIロケットでもちいられた実績じっせきひん変更へんこうし、かつ形状けいじょう分割ぶんかつ方式ほうしきから一体いったい方式ほうしきへとえる対策たいさくおこなった[1]。しかし、燃焼ねんしょう終了しゅうりょうにスロートインサートが脱落だつらくする問題もんだい発生はっせいし、エロージョンも前回ぜんかいつづきた[1]。2000ねん10がつおこなわれたQM3では、スロートインサート接合せつごうにテーパかく付与ふよするとともに、ねつ膨張ぼうちょうによるノズル開口かいこうとの干渉かんしょうけるためにスロート後方こうほう隙間すきま拡大かくだいする対策たいさくおこなったが[9][1]今度こんど局所きょくしょエロージョンが発生はっせいした[1]対策たいさくとして、ノズル開口かいこういたあつして、外周がいしゅうにCFRPせいのアウターパネルを補強ほきょうした[1]。これらの対策たいさくによって実用じつようえうると判断はんだんされ、ひとまずの開発かいはつ完了かんりょうし、H-IIAロケット1号機ごうきから5号機ごうきまで問題もんだいなく飛翔ひしょうした。しかし、6号機ごうきにおいて飛翔ひしょうちゅうにノズルがやぶあな燃焼ねんしょうガスが漏洩ろうえいしたことが原因げんいんでコア機体きたいからの分離ぶんり失敗しっぱいしたため、SRB-A改良かいりょうがた開発かいはつおこなわれることになった。

H-IIA204がた開発かいはつにあたり最大さいだいどうあつ抑制よくせいし、衛星えいせい負担ふたんらす目的もくてき開発かいはつされたのがSRB-A2である。ノズル口径こうけい拡大かくだい、モータ前方ぜんぽう推進すいしんやくかず%し、そのぶん後方こうほう推進すいしんやくらすことで、推力すいりょくレベルを従来じゅうらいのSRB-Aの70%におさえ、長時間ちょうじかんやく120びょう燃焼ねんしょうする推力すいりょくパターンをつ。また、ノズル形状けいじょうをコニカルがたからベルがたへと変更へんこうすることで、SRB-A開発かいはつちゅう問題もんだいとなった局所きょくしょエロージョンを分散ぶんさん半減はんげん[10]信頼しんらいせい向上こうじょうさせる設計せっけいであった。

2003ねん4がつ15にちにプロトタイプモデルの地上ちじょう燃焼ねんしょう試験しけんえ、どう12がつ認定にんていがた試験しけんのこすのみであったが、11月にH-IIAロケット6号機ごうきでSRB-Aの分離ぶんり失敗しっぱい発生はっせい、その事故じこ調査ちょうさ結果けっかによって別途べっとSRB-Aの改良かいりょうおこなわれることになり、SRB-A2の開発かいはつはSRB-A改良かいりょうがた開発かいはつへと統合とうごうされた。

SRB-A改良かいりょうがた

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H-IIAロケット6号機ごうきにおいてSRB-Aの分離ぶんり失敗しっぱいし、事故じこ調査ちょうさ結果けっかによってノズルの信頼しんらいせい向上こうじょう要求ようきゅうされたことから開発かいはつされたもので、基本きほん設計せっけいはSRB-A2を踏襲とうしゅうしている。H-IIAロケット7号機ごうきから13号機ごうきまで使用しようされた。

モータは、平均へいきん燃焼ねんしょうあつをSRB-Aの8わりまで燃焼ねんしょう時間じかんをSRB-Aの1.2ばいやく120びょう)に延長えんちょうする推力すいりょくパターンをつ、安全あんぜんせい余裕よゆうたせたちょうびょうがたモータに変更へんこうされた。ノズル形状けいじょうについては、ねつ負荷ふかたか局所きょくしょエロージョンを増大ぞうだいさせてしまう欠点けってんつコニカルがたノズルから、ねつ負荷ふかちいさいベルがたノズルへと変更へんこうされた。また、外側そとがわ金属きんぞくホルダーを鉄製てつせいホルダにし[11]、スロートインサートの範囲はんい後方こうほう拡大かくだいすることで継目つぎめねつ負荷ふか低減ていげんさせ、CFRPせいライナアフトを2じゅうにしいたあつすことで安全あんぜんせい余裕よゆうたせている[12]

6号機ごうき分離ぶんり失敗しっぱい直接的ちょくせつてき原因げんいんとして、漏洩ろうえいした燃焼ねんしょうガスが前部ぜんぶヨーブレス分離ぶんり機構きこう作動さどうようしるべばくせんってしまったことがげられており、これに対応たいおうして搭載とうさい機器ききさい配置はいちおこなわれた。後部こうぶアダプタに搭載とうさいされていた電力でんりょくけい機器きき指令しれい破壊はかいけい機器きき前部ぜんぶアダプタへと移動いどうされ、2系統けいとうある分離ぶんり機構きこううち1系統けいとうあたらしくもうけられたサブトンネルをとおして配線はいせんされている[12]

なお、H-IIAロケット7号機ごうきでは、通常つうじょうのSRB-A改良かいりょうがたより燃焼ねんしょう時間じかんながくとることで安全あんぜんせい余裕よゆうたせたモーターがもちいられた。

H-IIA 23号機ごうきのSRB-A

SRB-A3は、SRB-A改良かいりょうがた使用しようによって減少げんしょうした能力のうりょく初期しょきがたSRB-A使用しようのレベルまで回復かいふくしたうえ、よりたか信頼しんらいせい獲得かくとくするために開発かいはつされたものである。H-IIAロケット14号機ごうきから使用しようされている。燃焼ねんしょうパターンのちがいから高圧こうあつがた燃焼ねんしょう時間じかんやく100びょう)とちょうびょうがたやく120びょう)の2種類しゅるいがある。モータケース内面ないめん断熱だんねつざいあつさの共通きょうつうや、結合けつごう構造こうぞう部分ぶぶんさい設計せっけいによるSRB-Aがわ結合けつごう部分ぶぶん共通きょうつうといった、こうあつがたちょうびょうがたにおける仕様しよう共通きょうつうおこなわれており、計画けいかく変更へんこうへの柔軟じゅうなん対応たいおう可能かのうになったほか、どういち仕様しようでの継続けいぞく生産せいさんによる安定あんてい供給きょうきゅうせい確保かくほ不具合ふぐあい発生はっせいリスクの低減ていげん実現じつげんしている[3]

SRB-A改良かいりょうがたにおいて8わりまでげられていた平均へいきん燃焼ねんしょうあつ初期しょきがた同等どうとうまで回復かいふくされ、外側そとがわ金属きんぞくホルダーをアルミせいホルダに、断熱だんねつざいライナの1じゅう[11]、スロートインサートの前方ぜんぽう拡大かくだいなどの設計せっけい変更へんこうおこなわれた。ノズルについては、局所きょくしょエロージョンの発生はっせいメカニズム解明かいめい極力きょくりょく排除はいじょ目的もくてきとして、宇宙うちゅう科学かがく研究けんきゅう本部ほんぶ (ISAS)協力きょうりょくのもと[13]、ITE (Integral Throat Entrance) 方式ほうしきのノズルを採用さいようした[14]。ITE方式ほうしきノズルはこうあつ燃焼ねんしょう対応たいおうノズルとして開発かいはつされたものであり、M-Vロケット5号機ごうき以降いこう使用しようされたM-25モータにおいてはじめて採用さいようされたものである。 H-IIAロケット14号機ごうきでは、SRB-A3の基本きほん構造こうぞう適用てきようしつつも(改良かいりょうがた同様どうように)ノズルの断熱だんねつざいのCFRPせいライナアフトを2じゅうにし、いたあつふえあつすることで安全あんぜんせい余裕よゆうたせたこうあつがたモータがもちいられた。しかし、ノズル構造こうぞう予測よそくより100程度ていど温度おんどたか部位ぶい発生はっせいした。その解析かいせき結果けっか断熱だんねつざいぞうあつした14号機ごうきようSRB-A3ノズル特有とくゆう構造こうぞう原因げんいんであるとされ、以降いこうの15号機ごうきから17号機ごうきとH-IIB試験しけん使用しようされるちょうびょうがたSRB-A3では、ライナアフトを1じゅう[11]にし断熱だんねつざいうすくすることから問題もんだいがないものとされた。しかし、こうあつがたSRB-A3への適用てきよう評価ひょうかおこなったところ、ちょうびょうがたよりもたか負荷ふかがかかることがあかりかになったため、ノズル断熱だんねつざいから発生はっせいする分解ぶんかいガスがノズル内部ないぶまらないようにする改良かいりょうほどこしたうえ2009ねん11月11にち地上ちじょう燃焼ねんしょう試験しけんによる検証けんしょうおこなった。この試験しけんによって信頼しんらいせい確認かくにんされたため、初期しょきがたSRB-Aと同等どうとう能力のうりょくをもつ高圧こうあつがたSRB-A3を18号機ごうきみちびきげから適用てきようすることが可能かのうになった[15]

主要しゅようしょもと一覧いちらん

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型式けいしき SRB[1]
参考さんこう
SRB-A[1] SRB-A2 SRB-A改良かいりょうがた
(H-IIA F7)
SRB-A改良かいりょうがた SRB-A3
(H-IIA F14)
SRB-A3
(H-IIA F15, F17)
SRB-A3
(H-IIB)
SRB-A3
(H-IIA F18)
SRB-A3
(H-IIA F21)
全長ぜんちょう 23.4 m 15.2 m
(15.172m[1]
- 15.1 m
代表だいひょうみち 1.8 m 2.5 m
全備ぜんび質量しつりょう 70.4 t 76.4 t - 77 t 75.5 t 76.6 t 75.5 t 76.5 t
モータ質量しつりょう 68.8 t 71.1 t -
推進すいしんやく質量しつりょう 59.2 t 65.0 t - 66 t 65 t 66 t 64.9 t 66 t
真空しんくうちゅう最大さいだい推力すいりょく 1,760 kN 2,260 kN 2,110 kN[16] 2,245 kN 2,285 kN 2,445 kN 2,262.5 kN 2,305 kN 2,500.5 kN 2,305 kN
真空しんくうちゅう平均へいきん推力すいりょく 1,690 kN 1,780 kN -
最大さいだい作動さどう圧力あつりょく 5.59 MPa 11.8 MPa - 11.1 MPa 11.8 MPa -
燃焼ねんしょう時間じかん 94 s 100 s 114 s 128 s 120 s 100 s 120 s 114 s 100 s 120 s
空中くうちゅう推力すいりょく 273 s 280 s - 280 s 281 s 282 s 283.6 s
制御せいぎょ方式ほうしき 油圧ゆあつMNTVC 電動でんどうMNTVC

備考びこう

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  • ATKランチ・システムズ・グループのライセンスをもちいて製造せいぞうされるために"基本きほん設計せっけいはアメリカ"[17]、"輸入ゆにゅうひん国産こくさん技術ぎじゅつでもない"[18]ひとし誤認ごにん誤記ごきされる場合ばあいおおいが、前述ぜんじゅつとおりモータケース成形せいけい工程こうていにおいてライセンスをもちいているのみである。モータ設計せっけいIHIエアロスペースおこなっており、ATKの設計せっけいもとにIHIが製造せいぞうしているわけではない。
  • J-Iロケット2号機ごうきだい1だん使用しようされる予定よていだったが、どう1号機ごうきにJ-Iロケット計画けいかく自体じたい中止ちゅうしされたため使用しようされることはなかった。

出典しゅってん脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s “H-ⅡA固体こたいロケットブースタ(SRB-A) 開発かいはつ経緯けいい. JAXA (2003ねん12月9にち). 2019ねん10がつ29にち閲覧えつらん
  2. ^ ロケットについてのFAQ(よくある質問しつもん回答かいとう) Q5.H-IIAロケットには、なぜ固体こたいロケットブースタ(SRB-A)がついているのですか? (JAXA)
  3. ^ a b JAXA宇宙うちゅう輸送ゆそうミッション本部ほんぶSRB-A(概要がいよう燃焼ねんしょう試験しけん)”. JAXA. 2010ねん11月24にち閲覧えつらん
  4. ^ a b c 宇宙うちゅうえろ! 新型しんがた固体こたいロケットブースター「SRB-3」燃焼ねんしょう試験しけん取材しゅざい だい2かい カギは国産こくさん簡素かんそ - 先代せんだいからおおきく進化しんかげた「SRB-3」”. マイナビニュース (2018ねん9がつ7にち). 2019ねん10がつ28にち閲覧えつらん
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  10. ^ H-IIAロケット標準ひょうじゅんがた信頼しんらいせい向上こうじょうかか開発かいはつじょうきょうについて (JAXA)
  11. ^ a b c H-IIAロケット15号機ごうき打上うちあげにかか飛行ひこう安全あんぜん計画けいかく地上ちじょう安全あんぜん計画けいかく概要がいよう(JAXA)
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  13. ^ 平成へいせい18年度ねんどだい28かい文部もんぶ科学かがくしょう宇宙うちゅう開発かいはつ委員いいんかい 議事ぎじろく配付はいふ資料しりょう 2006.8.2
  14. ^ 松浦まつうらすすむ也の「宇宙うちゅう開発かいはつむ」 JAXAかわ内山うちやま治朗じろう理事りじ次期じき固体こたいロケット(1)〜能力のうりょく技術ぎじゅつ維持いじ発展はってんていコスト開発かいはつ予算よさん、の3つを満足まんぞくさせる (日経にっけいBP) 2006.8.18
  15. ^ H-IIAロケット固体こたいロケットブースタ認定にんていがたモータ燃焼ねんしょう試験しけん(その2)の結果けっかについて−信頼しんらいせい向上こうじょう活動かつどうのまとめ− (JAXA) (PDF, 250KB)
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  17. ^ ディスカバリーチャンネル 奇跡きせき建造けんぞう 特集とくしゅう日本にっぽん種子島宇宙たねがしまうちゅうセンターの挑戦ちょうせん
  18. ^ リサーチ・ナノスペース・ランチ・ビークルシステム:RNSLV=多目的たもくてき気象きしょう観測かんそく、UAV派遣はけん高速こうそく開発かいはつ小型こがた衛星えいせい打上うちあげ)ランチャー開発かいはつ競争きょうそう - ほししま秀雄ひでおエアワールド2007ねん11がつごう

参考さんこう文献ぶんけん

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  1. 日本航空にほんこうくう宇宙うちゅう学会がっかい だい46かん だい535ごう H-IIAロケットの固体こたいロケットブースターについて - 佐野さののぼる, 木内きうちしげるもと, 山田やまだ敏之としゆき

関連かんれん事項じこう

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外部がいぶリンク

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