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LE-7

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LE-7(名古屋なごや科学かがくかん 2006ねん

LE-7エンジンは、宇宙開発事業団うちゅうかいはつじぎょうだん(NASDA)が航空宇宙技術研究所こうくううちゅうぎじゅつけんきゅうじょ(NAL)、三菱重工業みつびしじゅうこうぎょう石川島播磨重工業いしかわじまはりまじゅうこうぎょうげんIHI)ととも開発かいはつしたH-IIロケットだい1だんよう液体えきたいロケットエンジン日本にっぽんはつだい1だんよう液体えきたいロケットエンジンである。

LE-7の後継こうけいに、コストダウンと信頼しんらいせい向上こうじょうはかったLE-7Aエンジンがある。

開発かいはつ

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LE-7エンジンの燃焼ねんしょう方式ほうしきには、SSMEスペースシャトルメインエンジン)に採用さいようされたのとおなだん燃焼ねんしょうサイクル採用さいようしている[1]。LE-7では、プリバーナーとばれる燃焼ねんしょうしつ気化きかした燃料ねんりょう液体えきたい水素すいそ酸化さんかざい液体えきたい酸素さんそ一部いちぶみちびき(おおくの液体えきたい酸素さんそしゅ燃焼ねんしょうしつ直接ちょくせつおくられる)、燃焼ねんしょうさせて水素すいそリッチのこうあつ不完全ふかんぜん燃焼ねんしょうガスをつくり、その燃焼ねんしょうガスで液体えきたい水素すいそよう液体えきたい酸素さんそようりょうターボポンプを駆動くどうしてりょう推進すいしんざい加速かそく加圧かあつさせたのちに、しゅ燃焼ねんしょうしつふたた燃焼ねんしょうガスと液体えきたい酸素さんそ燃焼ねんしょうさせて推進すいしんりょくしている[2]。この方式ほうしき燃焼ねんしょう効率こうりついがエンジンの配管はいかんなどに高温こうおんこうあつ部分ぶぶんおおいため技術ぎじゅつてきむずかしく、LE-7の開発かいはつにおいてもトラブルが続出ぞくしゅつ開発かいはつ期間きかん幾度いくどとなく延長えんちょうされた。

開発かいはつにおいてまずたったかべはターボポンプの振動しんどう過大かだい所定しょてい回転かいてんすうられないことであった。原因げんいんはターボポンプの羽根車はねぐるま重心じゅうしん中心ちゅうしんじくからごくわずかにズレていたことであり、職人しょくにん手作業てさぎょう羽根車はねぐるま研磨けんまして重心じゅうしん適正てきせいすることで解決かいけつした。その燃焼ねんしょう試験しけんはじまったが、エンジン始動しどう開始かいし直後ちょくご爆発ばくはつ損傷そんしょうかえす5びょうかべ問題もんだいとなった。原因げんいん予備よび燃焼ねんしょうしつ液体えきたい酸素さんそさきまりその液体えきたい水素すいそることで過剰かじょう反応はんのうこしていたことであり、圧力あつりょくけいをつけて予備よび燃焼ねんしょうしつりょう推進すいしんざいるタイミングを調整ちょうせいすることで解決かいけつした。この問題もんだい解決かいけつするだけでやく2ねんついやした。

その燃焼ねんしょう試験しけんつづいたが、エンジンの完成かんせいちかいとおもわれた1992ねん、エンジン始動しどう直後ちょくご爆発ばくはつき、H-IIのはつげが1ねん延期えんきされることになった。原因げんいんはエンジンのかく部品ぶひん溶接ようせつして接合はぎあわしたさいしょうじた微妙びみょう凹凸おうとつねつちから集中しゅうちゅうして損傷そんしょうしたことであり、職人しょくにん手作業てさぎょうかがみ使つかって部品ぶひん内側うちがわ溶接ようせつ部分ぶぶんまで徹底的てっていてき研磨けんまして平滑へいかつにすることで解決かいけつした。なおこの工程こうてい手間てまがかかり、信頼しんらいせいやコストにかかわるため、後継こうけいLE-7Aでは溶接ようせつ箇所かしょよんぶんいち以下いからされている。

開発かいはつ製造せいぞうにおいては、三菱重工業みつびしじゅうこうぎょう燃焼ねんしょう・バルブ・全体ぜんたい艤装ぎそうを、石川島播磨重工業いしかわじまはりまじゅうこうぎょうげんIHI)が液体えきたい水素すいそようターボポンプと液体えきたい酸素さんそようターボポンプをになった。

  • 1983ねん昭和しょうわ58ねん) - 「開発かいはつ研究けんきゅう開始かいし[注釈ちゅうしゃく 1]
  • 1986ねん昭和しょうわ61ねん) - 「開発かいはつ開始かいし[2]
  • 1988ねん昭和しょうわ63ねん12月15にち - 種子島宇宙たねがしまうちゅうセンターのLE-7燃焼ねんしょう試験しけん設備せつび竣工しゅんこう
  • 1990ねん平成へいせい2ねん9月 - 連続れんぞく200びょう燃焼ねんしょう試験しけん成功せいこう。その試験しけんにて燃焼ねんしょう試験しけん始動しどう16びょうだい規模きぼそともえ発生はっせいしエンジンが大破たいは
  • 1991ねん平成へいせい3ねん5月16にち - 角田つのだロケット開発かいはつセンター(げん角田つのだ宇宙うちゅうセンター)にて、液体えきたい水素すいそターボポンプの開発かいはつ試験しけんちゅう事故じこ
  • 1991ねん平成へいせい3ねん8がつ8にち - 三菱重工業みつびしじゅうこうぎょう名古屋なごや誘導ゆうどう推進すいしんシステム製作所せいさくしょ小牧こまききた工場こうじょう)での試験しけんちゅう技術ぎじゅつしゃ1めい死亡しぼう
  • 1992ねん平成へいせい4ねん6がつ10日とおか - 燃焼ねんしょう試験しけんちゅうそともえ発生はっせいし、エンジンぜんそんおよ設備せつび一部いちぶ焼損しょうそん試験しけん初号しょごうげをいちねん延期えんき
  • 1993ねん平成へいせい5ねん2がつ - 連続れんぞく4かいの350びょう燃焼ねんしょう試験しけん成功せいこう
  • 1993ねん平成へいせい5ねん5月 - 種子島宇宙たねがしまうちゅうセンターのH-IIロケットしゃてんにてステージ燃焼ねんしょう試験しけん(CFT)成功せいこう
  • 1994ねん平成へいせい6ねん2がつ4にち - H-IIロケット試験しけん1号機ごうき成功せいこう
  • 1994ねん平成へいせい6ねん3がつ - すべての性能せいのう試験しけん完了かんりょう開発かいはつ完了かんりょう[2][5]
  • 1999ねん平成へいせい11ねん11月15にち - H-IIロケット8号機ごうきげ。げ3ふん59びょうにLE-7エンジンが異常いじょう停止ていしし、指令しれい破壊はかい。LE-7の異常いじょう失敗しっぱい直結ちょっけつした最初さいしょ最後さいご事故じこである。

しょもと

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H-II 8号機ごうき 事故じこ原因げんいん

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事故じこ直後ちょくごのテレメータデータから、LE-7エンジンだかあつ配管はいかんけいなんらかのトラブルがあり推進すいしんやく供給きょうきゅう瞬時しゅんじ停止ていししていたと推定すいていされた。1999ねん12月24にちに、海洋かいよう科学かがく技術ぎじゅつセンターげんJAMSTEC)の協力きょうりょくによって海底かいていしずんだLE-7エンジンの残骸ざんがい発見はっけん2000ねん1がつ23にちに、海底かいてい3,000mからエンジンをげた。

残骸ざんがい調査ちょうさから、液体えきたい水素すいそターボポンプインデューサが破断はだんしていることが判明はんめいし、破断はだんめん調査ちょうさ結果けっかから疲労ひろう破壊はかい原因げんいん推定すいていされた。インデューサ単体たんたい試験しけんかえした結果けっか旋回せんかいキャビテーションばれる現象げんしょうとそれに起因きいんする部品ぶひん共振きょうしん発生はっせいし、インデューサに過大かだい負荷ふかをかけ疲労ひろう破壊はかいいたったことが事故じこ原因げんいん判明はんめいした。これらの結果けっかは、のLE-7Aの開発かいはつかされることになった。

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 宇宙うちゅう開発かいはつにおける計画けいかく管理かんり進捗しんちょくによって「研究けんきゅう研究けんきゅう概念がいねん設計せっけい)」→「開発かいはつ研究けんきゅう予備よび設計せっけい)」→「開発かいはつ基本きほん設計せっけい詳細しょうさい設計せっけい維持いじ設計せっけい)」→「運用うんよう」の4つの段階だんかい(フェーズ)にかれている。要求ようきゅうもとづき仕様しよう計画けいかくめるのが「研究けんきゅう」、仕様しよう計画けいかく詳細しょうさい文書ぶんしょし、しん技術ぎじゅつ試作しさくをし実現じつげんせい目処めどけ、開発かいはつ体制たいせい構築こうちくするのが「開発かいはつ研究けんきゅう」、設計せっけいについての各種かくしゅ解析かいせきをし全体ぜんたい試作しさくひんから実機じっきつくるまでが「開発かいはつ」である。「開発かいはつ研究けんきゅう」までが企画きかく立案りつあんフェーズ、「開発かいはつ以降いこう実施じっしフェーズである。宇宙うちゅう開発かいはつ委員いいんかいかくフェーズアップにたいする審査しんさおこなう。この一連いちれん開発かいはつ手法しゅほうNASAではPPP(Phased Project Planning)とび、NASDAれたものである[3][4]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d e f g h 岸本きしもと健治けんじ; 吉田よしだひろしせん, 深堀ふかほりおさむ, 大東おおひがし弘幸ひろゆき, 安藤あんどうきよし, 福島ふくしま幸夫ゆきお (1996ねん5がつ). “改良かいりょうがたLE-7エンジンの開発かいはつ” (PDF). 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルアーカイブ. 2024ねん3がつ3にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c 宇宙うちゅう開発かいはつ委員いいんかい技術ぎじゅつ評価ひょうか部会ぶかい (2000ねん5がつ18にち). “H-IIロケット8号機ごうき失敗しっぱい原因げんいん究明きゅうめいおよ今後こんご対策たいさくについて” (PDF). 文部もんぶ科学かがくしょう. 2009ねん10がつ26にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2013ねん8がつ21にち閲覧えつらん
  3. ^ 宇宙うちゅう開発かいはつかんするプロジェクトの評価ひょうか指針ししん 5.評価ひょうか実施じっしのための原則げんそく文部もんぶ科学かがくしょう / 005.htm”. 文部もんぶ科学かがくしょう. 2008ねん2がつ18にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2010ねん8がつ21にち閲覧えつらん
  4. ^ 設計せっけい品質ひんしつ確保かくほ思想しそう 航空こうくう宇宙うちゅうエレクトロニクスにまなぶ「信頼しんらいせい設計せっけい”. Tech Village (2006ねん3がつ28にち). 2010ねん8がつ21にち閲覧えつらん
  5. ^ LE-7ターボポンプの開発かいはつ”. 航空こうくう宇宙うちゅう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう. 2016ねん3がつ6にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2010ねん8がつ21にち閲覧えつらん
  6. ^ a b c d e f 1 H-Ⅱロケット8号機ごうき主要しゅようしょもと” (PDF). 文部もんぶ科学かがくしょう (2013ねん6がつ10日とおか). 2024ねん3がつ3にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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