オェングス

オェングス

オェングス（Aengus、Aengus、Oengus、Aonghus）は、ケルト神話しんわの愛あいと若わかさ、美よしを司つかさどる神かみである。オィンガス、アンガス・オグ、エーンガスとも呼よばれる。トゥアハ・デ・ダナーン（ダーナ神かみ族ぞく）のひとり。 父ちちはダグザ、母はははボアーン。養父ようふはミディール。養子ようしはディルムッド・オディナ。

概要がいよう

彼かれは黄金おうごんでできた竪琴たてごとを持もっている。また彼かれの口くちづけが小鳥ことりになり、小鳥ことりのさえずる声こえが若者わかものの心しんに恋心こいごころになって飛とび込こんでいくという。

オェングスはミディールに育そだてられた。やがて成人せいじんしたオェングスはダグザの王宮おうきゅうを訪たずね、「昼ひると夜よるに居いさせてほしい」と言いった。何なん日にちもオェングスが居い続つづけるのでダグザがわけをきくと、オェングスは「昼ひると夜よるとは永遠えいえんのことだ。あなたは永遠えいえんに居いてもいいと言いった」と答こたえた。こうしてオェングスはダグザの王宮おうきゅうを得えて、妖精ようせい国くにの王おうになった。

ある晩ばん、オェングスの寝床ねどこに美うつくしい女性じょせいが現あらわれた。オェングスが寝床ねどこに入いれようとすると彼女かのじょは消きえてしまった。次つぎの晩ばんから女性じょせいは、毎晩まいばん現あらわれては笛ふえで美うつくしい音色ねいろを奏かなでた後のち消きえた。彼女かのじょに恋こい焦こがれたオェングスは病気びょうきになった。誰だれにも理由りゆうを話はなさないオェングスを見みて、医術いじゅつの神かみフィンゲンが原因げんいんを恋こいの病やまいだと見抜みぬいた。父母ちちははが心配しんぱいし、手てをつくしてその女性じょせいを捜さがし始はじめた。マンスターの王おうボォヴにも探さがしてもらい、ようやく女性じょせいを見みつけた。それは、コノートのウェヴァンという妖精ようせいの丘おかに住すむエタル・アヌバァルの娘むすめ、カーであった。ところが彼女かのじょは非常ひじょうに魔力まりょくが強つよいため、父ちちのエタルにもカーをオェングスに嫁とつがせることはできないのだった。しかしエタルは、カーが1年ねんごとに白鳥しらとりと人間にんげんの姿すがたを交互こうごにとること、次つぎの11月1日にちの「サウィン」には白鳥はくちょうの姿すがたになって仲間なかまたちと湖みずうみを泳およいでいるはずだと話はなした。

オェングスは11月1日にちに湖みずうみへ行いき、150羽わいる白鳥はくちょうの中なかにいたカーの白鳥はくちょうを呼よんだ。そして飛とんできたカーを抱だきしめて自分じぶんも白鳥はくちょうになった。2羽わの白鳥はくちょうは仲良なかよくオェングスの王宮おうきゅうへ飛とんでいって、以後いごカーはオェングスと一緒いっしょに暮くらしたという。

オェングスは、ミディールが新あたらしく迎むかえた妻つまエーディンが本妻ほんさいのファームナッハに嫉妬しっとされて蝶ちょうに変身へんしんさせられ、自分じぶんの王宮おうきゅうに逃のがれてきたときに、彼女かのじょのために美うつくしい四阿あずまやを作つくって、甘あまい蜜みつをもつ花はなをたくさん咲さかせた。ファームナッハの魔法まほうはオェングスにも解とけなかったものの、エーディンは夜よるの間あいだだけは人間にんげんの姿すがたに戻もどれた。2人ふたりは、ファームナッハが嵐あらしを起おこして蝶ちょうを飛とばしてしまうまで、四阿あずまやでつかの間まの恋こいを楽たのしんだという。

参考さんこう文献ぶんけん

• 井村いむら君江きみえ『ケルトの神話しんわ 女神めがみと英雄えいゆうと妖精ようせいと』筑摩書房ちくましょぼう〈ちくま文庫ぶんこ〉、1990年ねん3月がつ27日にち。ISBN 978-4480023926。 
• ウィリアム・バトラー・イエイツ 著しる、栗原くりはら古城こじょう 訳わけ『幻まぼろしの海うみ』赤城あかぎ正蔵しょうぞう、1914年ねん。 

関連かんれん項目こうもく

• ミディール
• ダグザ
• ディルムッド・オディナ

外部がいぶリンク

『エーンガス・オグ』 - コトバンク