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オートプシー・イメージング

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

オートプシー・イメージングAutopsy imaging、Ai)とは、狭義きょうぎでは死亡しぼう画像がぞう診断しんだん広義こうぎでは死亡しぼう画像がぞう病理びょうり診断しんだんのことである。 「Autopsy=検死けんし」、「imaging=画像がぞう診断しんだん」に由来ゆらいする造語ぞうごで、画像がぞう診断しんだんによって死因しいん検証けんしょうするというもの。略語りゃくごとして「Ai」としょうされることがおおい。「死後しご画像がぞう診断しんだん」(Post Mortem ImagingPMI)ともう。スイス提唱ていしょうされたVirtopsy(VirtualとAutopsyによる造語ぞうご)は概念がいねんまった一致いっちするものではないが、相応そうおうする概念がいねんである。放射線ほうしゃせん画像がぞう検査けんさ限定げんていすれば、Radio-Autopsyというかたりもある。

コンピュータ断層だんそう撮影さつえい (CT) やかく磁気じき共鳴きょうめい画像がぞうほう (MRI) などによって撮影さつえいされた死後しご画像がぞう (Postmortem Imaging = PMI) により、死体したいにどのような器質きしつてき病変びょうへんしょうじているのかを診断しんだんする(狭義きょうぎのAi)ことによって、死亡しぼう病態びょうたい把握はあく死因しいん究明きゅうめいなどをおこなうシステムである。

日本にっぽん医療いりょうほうもとづく医療いりょう事故じこ調査ちょうさにおいては、調査ちょうさ方法ほうほうのひとつとして通達つうたつげられている[1]

意義いぎ[編集へんしゅう]

画像がぞう検査けんさによって、ある程度ていど器質きしつてき異常いじょう所見しょけん確認かくにんすることで、死因しいん推定すいていはか目的もくてき施行しこうされる。

とくERなどでは、死因しいんからだひょうからではわからない症例しょうれいたいして、正確せいかく死亡しぼう診断しんだんしょ死体したい検案書けんあんしょ作成さくせいするためにAiを活用かつようするようになっている。救急きゅうきゅう搬送はんそうされる症例しょうれいには、自宅じたくでの服毒ふくどく自殺じさつ幼児ようじ虐待ぎゃくたいなどの外因がいいん可能かのうせいがある症例しょうれいふくまれる。からだひょう情報じょうほうからこれらを判断はんだんするには限界げんかいがあるが、Aiをれることにより正確せいかく判断はんだん可能かのうになり、外因がいいんなどがうたがわれる場合ばあいには、所轄しょかつ警察けいさつしょ検視けんし依頼いらいおこなっている[よう出典しゅってん]

議論ぎろん[編集へんしゅう]

死亡しぼう施行しこうされる医学いがくてき検索けんさく死亡しぼう医学いがく検索けんさく)としては、病理びょうり解剖かいぼう司法しほう解剖かいぼう行政ぎょうせい解剖かいぼうの3種類しゅるい解剖かいぼうがある。しかし、行政ぎょうせい解剖かいぼう以外いがいは、解剖かいぼう資格しかく医師いし不足ふそくとうによって、きわめてひく解剖かいぼうりつにとどまっている[よう検証けんしょう]異状いじょうはもちろんのこと、病院びょういんないでの死亡しぼうについても、死亡しぼうしん病態びょうたいしん死因しいん明確めいかくになるれいきわめてひく[よう検証けんしょう]

画像がぞう所見しょけん診断しんだん剖検ぼうけん肉眼にくがん所見しょけん診断しんだんさら病理びょうり組織そしきがくてき診断しんだんふく最終さいしゅう病理びょうり診断しんだんを(広義こうぎのAi)をおこなうことで、死亡しぼう病態びょうたい正確せいかく診断しんだんできるようになる。これらが制度せいどとして構築こうちくされれば、いま日本にっぽんにおいてはごく少数しょうすうれいにしか適用てきようされていない「死亡しぼう医学いがく検索けんさく」がシステムとして確立かくりつされることになり、医療いりょうしつたかめるうえで、直接的ちょくせつてき間接かんせつてきおおいに寄与きよするものとなる。2005ねん時点じてんでの日本にっぽん国内こくないのCT普及ふきゅうりつ人口じんこう100まんにんあたり92.6だい、MRIは35.3だい国際こくさいてき平均へいきんの6 - 7ばい格段かくだんおお数値すうちOECD調しらべ)[よう出典しゅってん医学いがく]であり、環境かんきょうそのものはじゅうふん整備せいびされている。

2009ねん現在げんざいおおくの病院びょういんでAiのみがはじまっている。しかし、Ai単独たんどく実施じっしはエビデンスがなく、現時点げんじてんでは実施じっし困難こんなんであるとのかんがえから、病理びょうり解剖かいぼうまえ検査けんさとしてむこととしている施設しせつもある。日本にっぽん医師いしかいのアンケートでもすでに4わりちか病院びょういんでAiを実施じっししており、解剖かいぼう実施じっしされる割合わりあいが3%程度ていどしかない現状げんじょうではそのほとんどがAi単独たんどく施行しこうである[よう出典しゅってん]

病院びょういん施設しせつない死亡しぼうでも、解剖かいぼう同意どういられないがAiなら」という症例しょうれいがかなりおおくなってている[よう検証けんしょう]はらびょう悪化あっか死亡しぼうするのは自然しぜんであるが、かならずしもdown hill courseをとるのではなく、ある時点じてん急変きゅうへん死亡しぼうする事例じれいおおいということに、実際じっさいにAiをおこなうとづくこともおお[よう説明せつめい]実際じっさい症例しょうれいでも急変きゅうへん死亡しぼうしたため、死因しいん不明ふめいであるということに直面ちょくめんした臨床りんしょうたいしても納得なっとくのいく回答かいとうられるケースがえてている。

Ai検査けんさがルーチンしてくると、医師いしあるいは看護かんごから遺族いぞくへの死因しいんたいする説明せつめいいままでより正確せいかくなものとなり、いままで途絶とだえがちであった死後しご遺族いぞくとのかかわりいがより良好りょうこうになる。一種いっしゅのグリーフケアとしてAiが役立やくだっているようである。その病理びょうり解剖かいぼうおこなわれる場合ばあいは、より正確せいかく病理びょうり画像がぞう対比たいひ可能かのうとなり、病理びょうり解剖かいぼうがない場合ばあいでも、生前せいぜん画像がぞう比較ひかくすることにより病態びょうたい変化へんか最後さいごまで確認かくにんすることができる。

通常つうじょう各地かくちのAiセンターは大学だいがく医学部いがくぶ装置そうち使用しよう検査けんさ実施じっししているが、法医学ほういがく分野ぶんや医療いりょう過誤かご事件じけんなどでは客観きゃっかんてきな読影には遠隔えんかくシステムが必須ひっすである。

放射線ほうしゃせん技師ぎしかいでのガイドライン策定さくていよりAi実施じっしかんしてまず問題もんだいとなるのは、施行しこう施設しせつ各科かっかかく部門ぶもんとのコンセンサスをることである。つぎ実際じっさい検査けんさ担当たんとうする診療しんりょう放射線ほうしゃせん技師ぎしとの調整ちょうせいである。理想りそうてきなリソース配分はいぶんとして、全体ぜんたい構図こうず見渡みわたせる位置いちにいる放射線ほうしゃせん主導しゅどうし、病院びょういんないでのシステム構築こうちく、フローチャートの設定せっていおこなうことが推奨すいしょうされる。また放射線ほうしゃせん中央ちゅうおう管理かんり部門ぶもんで、画像がぞうかいし、横断おうだんてきなつながりがあることも重要じゅうようてんとしてげられる。今後こんご各地かくちでAiが実施じっしされ、Aiセンターが設立せつりつされるだろう。重要じゅうようなことは「Aiが検査けんさ実施じっしして終了しゅうりょう、ということではない」ということである。かく施設しせつからの搬送はんそう院内いんない移動いどう検査けんさ実施じっし、そして最後さいごに読影までおこなわれ、はじめてAiが完結かんけつするのである[2]

読影をおこなうこと、またおこなえる体制たいせいととのえることが重要じゅうようである。大学だいがく法医学ほういがく教室きょうしつでもAiがおこなわれているが、データがどのようにあつかわれるか注意深ちゅういぶか見守みまも必要ひつようがある。開示かいじ制限せいげんにより、司法しほう解剖かいぼう結果けっか遺族いぞくつたえられるまで2ねん以上いじょうかかるケースが全体ぜんたいの6わりえるという報告ほうこくもある。Aiの情報じょうほう同様どうようあつかいをけると、遺族いぞくへの説明せつめいにも使用しようできないという事態じたい発生はっせいしてしまう。今後こんごAiセンターの役割やくわりが、医療いりょう情報じょうほうをまとめたデータベースセンターとしての役割やくわりになうことをかんがえると、警察けいさつあるいは検察けんさつによるAi情報じょうほうかこみがおこなわれないように十分じゅうぶん注意ちゅういする必要ひつようがある。

警察庁けいさつちょうは、変死へんしたい死因しいん調しらべ、犯罪はんざいせい有無うむ判断はんだんする検視けんしかん刑事けいじ調査官ちょうさかん)を増員ぞういん。コンピュータ断層だんそう撮影さつえい(CT)検査けんさ遺体いたい内部ないぶ異常いじょうさぐるAi(死亡しぼう画像がぞう診断しんだん)を都道とどう府県警ふけんけい実施じっしする費用ひようを、国費こくひ負担ふたんしている。しかし、現状げんじょうでは死後しご画像がぞう的確てきかくに読影できる専門医せんもんいかぎられているため、解剖かいぼうもしくは法医学ほういがくしゃによる読影がおこなわれているが、出血しゅっけつ有無うむ間違まちがって判断はんだんするなど問題もんだいてんおおい。これにかんしては、解剖かいぼう法医学ほういがくしゃ画像がぞう診断しんだん専門せんもんではないということもおおきな要因よういんであり、そのため遠隔えんかく読影サービスによる客観きゃっかんてきなコンサルテーションが必要ひつようとなっている。

子供こども虐待ぎゃくたい事件じけん捜査そうさ機関きかんから画像がぞう所見しょけん鑑定かんていしょ作成さくせい依頼いらいされたりすることなどや、法医学ほういがく分野ぶんや以外いがいでも外部がいぶ医療いりょう機関きかんからも医療いりょう事故じこ調査ちょうさで読影をもとめられたりするなど、中立ちゅうりつせいたもつために独立どくりつした第三者だいさんしゃ機関きかん設立せつりつ準備じゅんびすすめてきた。2009ねん12月に日本にっぽん放射線ほうしゃせん専門医せんもんいかいのメンバーらにより「一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじんAi情報じょうほうセンター」が設立せつりつされこれらの障害しょうがいのぞかれつつある[3][4]

国内こくない施設しせつ[編集へんしゅう]

2007ねん千葉大学ちばだいがく臨床りんしょうオートプシー・イメージングセンターが設立せつりつされた。群馬大学ぐんまだいがく基礎きそオートプシー・イメージングセンターが設立せつりつされ、近畿大学きんきだいがく神奈川歯科大学かながわしかだいがくかたち各地かくち施設しせつ整備せいびすすんでいる。札幌医科大学さっぽろいかだいがくではAiを患者かんじゃ家族かぞくへの適切てきせつ対応たいおう知識ちしき攻究こうきゅう重要じゅうようせい医学いがくせい認識にんしきさせ、人間にんげんせいゆたかな医師いし育成いくせいはかることを目的もくてきとして導入どうにゅうしている。

死亡しぼう画像がぞう診断しんだんの読影業務ぎょうむを、専門医せんもんいがインターネット経由けいゆう「一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじんAi情報じょうほうセンター」が設立せつりつされた。遠隔えんかく読影により異状いじょう死体したいをAiでスクリーニングし、不審ふしん遺体いたい解剖かいぼうまわすシステムの定着ていちゃく目指めざしている。


脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 厚生こうせい労働省ろうどうしょう 平成へいせい27ねん5がつ8にち せいはつ0508だい1ごう
  2. ^ ネット経由けいゆ遺体いたい診断しんだん「Ai情報じょうほうセンター」発足ほっそく”. 産経新聞さんけいしんぶん (2009ねん12月9にち). 2009ねん12がつ20日はつか閲覧えつらん
  3. ^ 海堂かいどうたかし (2010ねん1がつ15にち). “法医学ほういがくの「死後しご画像がぞう」には「診断しんだん」がない”. 日系にっけいBP. 2010ねん1がつ21にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2010ねん1がつ26にち閲覧えつらん
  4. ^ 海堂かいどうたかし (2010ねん1がつ8にち). “ほう主導しゅどうの「死後しご画像がぞう」には「診断しんだん」がない | 海堂かいどうたかし公式こうしきホームページ”. 宝島社たからじましゃ. 2017ねん3がつ31にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2019ねん4がつ12にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 海堂かいどう たかし死因しいん不明ふめい社会しゃかい Aiがひらあたらしい医療いりょう講談社こうだんしゃブルーバックス〉、2007ねん11月21にちISBN 978-4-06-257578-2 
  • 大友おおとも くに ちょ塩谷しおや 清司せいじ山本やまもと 正二しょうじ へん『オートプシー・イメージング読影ガイド』文光ぶんこうどう、2009ねん4がつ1にちISBN 978-4830637360 
  • 阿部あべ 一之かずゆき樋口ひぐち 清孝きよたか井野いの 賢司けんじ へん『これで安心あんしん! 診療しんりょう放射線ほうしゃせん技師ぎしのための よくわかるオートプシー・イメージング(Ai)検査けんさマニュアル』ベクトル・コア、2010ねん10がつ15にちISBN 978-4902380729 
  • 海堂かいどう たかし塩谷しおや 清司せいじ山本やまもと 正二しょうじ飯野いいの 守男もりお高野たかの 英行ひでゆき死因しいん不明ふめい社会しゃかい2 なぜAiが必要ひつようなのか』講談社こうだんしゃ〈ブルーバックス〉、2011ねん8がつ19にちISBN 978-4062577359 
  • 高橋たかはし 直也なおや塩谷しおや 清司せいじ へん『Autopsy imaging 症例しょうれいしゅう死亡しぼう画像がぞう診断しんだんのための読影マニュアル〜』ベクトル・コア、2012ねん11月9にちISBN 978-4906714056 
  • 今井いまい ひろし高野たかの 英行ひでゆき山本やまもと 正二しょうじ へん『Autopsy imaging ガイドライン』(3はん)ベクトル・コア、2015ねん7がつ30にちISBN 978-4906714360 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]