カビュ

カビュ
本名ほんみょう	ジャン・カビュ (Jean Cabut)
生誕せいたん	1938年ねん1月がつ13日にち シャロン＝アン＝シャンパーニュ (マルヌ県けん)
死没しぼつ	2015年ねん1月がつ7日にち (76歳さい) パリ
国籍こくせき	フランス
職業しょくぎょう	風刺ふうし画家がか、ジャーナリスト
称号しょうごう	レジオンドヌール勲章くんしょう
サイン

カビュ (Cabu; 本名ほんみょうジャン・カビュ Jean Cabut; 1938年ねん1月がつ13日にち - 2015年ねん1月がつ7日にち) は、フランスの風刺ふうし画家がか、ジャーナリスト。『アラキリ』、『シャルリー・エブド』、『カナール・アンシェネ』などに風刺ふうし画がを掲載けいさいし、また、討論とうろん番組ばんぐみ『反論はんろん権けん』、子供こども向むけ番組ばんぐみ「レクレA2 (Récré A2)」などのテレビ番組ばんぐみにもレギュラー出演しゅつえんした。

1970年代ねんだいに反はん体制たいせい的てき・反はん軍国ぐんこく主義しゅぎ的てきな青年せいねん「のっぽのデュデュッシュ」、下品げひん・無む教養きょうよう・偏狭へんきょう・人種じんしゅ差別さべつ的てき・女性じょせい差別さべつ的てきなフランス人じん男性だんせいのステレオタイプである「ボフ (Beauf)」などのキャラクターを生うみ出だした。

2015年ねん1月がつ7日にち、シャルリー・エブド襲撃しゅうげき事件じけんでイスラム過激かげき派はに殺害さつがいされた。

経歴けいれき

パリの美術びじゅつ学校がっこうエコール・エティエンヌ (École Estienne) に在籍ざいせき中ちゅうの1957年ねん（19歳さい）に初はじめて週刊しゅうかん誌し『パリ・マッチ (Paris Match)』に彼かれのイラストが掲載けいさいされた。1958年ねん3月がつにアルジェリア戦争せんそうに動員どういんされて学業がくぎょうを中断ちゅうだんせざるを得えなくなったが、このときの「口くちにできないほど恐おそろしい」体験たいけんから、彼かれは終生しゅうせい、反はん軍国ぐんこく主義しゅぎの姿勢しせいを貫つらぬくことになった。

1960年ねんに復員ふくいんし、「ショロン教授きょうじゅ」ことジョルジュ・ベルニエ（Georges Bernier）とフランソワ・カヴァナが創刊そうかんした『アラキリ』にフレッド (Fred)、ジャン＝マルク・レゼール、ジェベ (Gébé)、ジョルジュ・ウォランスキらとともに参加さんか。

1962年ねんから若者わかもの向むけ漫画まんが誌し『ピロット (Pilote)』に「のっぽのデュデュッシュ」を連載れんさい。

1966年ねん、『パリ・プレス (Paris-Presse)』紙しにパリで失踪しっそうを遂とげたモロッコの人民じんみん諸しょ勢力せいりょく全国ぜんこく同盟どうめい (UNFP) の党首とうしゅメフディー・ベン・バルカに関かんするルポルタージュを掲載けいさいし、さらに『ル・フィガロ』紙しにこの裁判さいばんの様子ようすを描えがいた画がを掲載けいさいした。

1972年ねん、ピエール・フルニエ (Pierre Fournier) が創刊そうかんした政治せいじ・エコロジー新聞しんぶん『ラ・グル・ウヴェルト(大口おおぐち開あけて / 黙だまっていられない)』に『シャルリー・エブド』のカヴァナ、ウォランスキ、レゼールらとともに参加さんか。政治せいじ批判ひはんと併あわせて、反核はんかく運動うんどうを含ふくむエコロジー運動うんどうも彼かれの主おもな活動かつどうとなった。

1980年代ねんだいからはテレビ番組ばんぐみにも出演しゅつえん。政治せいじ風刺ふうし画がを紹介しょうかいする番組ばんぐみ『反論はんろん権けん』などのほか、ドロテの子供こども向むけ番組ばんぐみ「レクレ A2」にも出演しゅつえんして子供こどもたちのために画がを描えがいた。「（シャルリーの風刺ふうし画家がかが）子供こどもたちのために画がを描えがくなんて意外いがいなことと思おもわれるかもしれないけれど、子供こどもを相手あいてにするのは漫画まんが家かにとって理想りそう的てきなこと。みんな、12歳さいまでは絵えを描えがくのだから」と話はなしている。

1970年ねんから80年代ねんだいにかけて多おおくのアルバム（画集がしゅう）を発表はっぴょうして成功せいこうを収おさめ、1982年ねんからは主おもに『カナール・アンシェネ』に風刺ふうし画がを掲載けいさいした。

1992年ねん、湾岸わんがん戦争せんそうに反対はんたいするために創刊そうかんされた風刺ふうし新聞しんぶん『ラ・グロス・ベルタ』（「グロス・ベルタ」は「ディッケ・ベルタ」のこと）のメンバーであったフィリップ・ヴァルとカビュは、編集へんしゅう長ちょうと意見いけんが合あわなくなり同紙どうしを離はなれ、1982年ねんに活動かつどうを停止ていししていた『シャルリー・エブド』を再開さいかいすることにした。カビュの風刺ふうし画がに登場とうじょうした「ボフ (Beauf)」(beau-frère (義理ぎりの兄弟きょうだい) に由来ゆらい) は「下品げひん、無む教養きょうよう、偏狭へんきょうなフランス人じん男性だんせい」を表あらわす新語しんご（俗語ぞくご）として辞書じしょに載のるまでになった。

襲撃しゅうげき事件じけんの現場げんばに捧ささげられた花束はなたばのなかにカビュのポスター; LIBRE (自由じゆう)

2006年ねんに『シャルリー・エブド』がデンマークの日刊にっかん紙しに掲載けいさいされたムハンマドの風刺ふうし画がを転載てんさいしたとき、表紙ひょうしに「原理げんり主義しゅぎ者ものにお手上てあげのムハマンド」と題だいして頭あたまを抱かかえるムハンマドを描えがいた風刺ふうし画がを掲載けいさい。吹ふき出だしにある「ばかどもに愛あいされるのはつらいよ」という言葉ことばが物議ぶつぎをかもすことになり、イスラム教いすらむきょう団体だんたいに訴うったえられたが、「宗教しゅうきょう批判ひはんの自由じゆうは信仰しんこうの尊重そんちょうと同おなじように重要じゅうようである・・・イスラムの名なにおいてテロ行為こういを繰くり返かえしている一部いちぶの者ものに向むけられたものであり・・・このようなテロリストとイスラム教徒きょうとが混同こんどうされるおそれは一切いっさいない」として無罪むざいとなり、『シャルリー・エブド』の風刺ふうし画家がからはフランス文化ぶんか・通信つうしん省しょうにその功績こうせきを称となえられることになった。また、この裁判さいばんについては『ばかどもに愛あいされるのはつらいよ (C'est dur d'être aimé par des cons)』というドキュメンタリー映画えいがが制作せいさくされた（カンヌ国際映画祭かんぬこくさいえいがさいで上映じょうえい）。

2015年ねん1月がつ7日にち、シャルリー・エブド襲撃しゅうげき事件じけんで殺害さつがいされた。

2016年ねん6月がつ、「報道ほうどうの自由じゆう、表現ひょうげんの自由じゆう、自由じゆうな精神せいしん」の促進そくしんを使命しめいとするニュージアム（ワシントンD.C.）にシャルリー・エブド襲撃しゅうげき事件じけんの犠牲ぎせい者しゃ（シャルブ、ジョルジュ・ウォランスキ、カビュ、フィリップ・オノレ、ティニウス、ベルナール・マリス、エルザ・カヤットおよびムスタファ・ウラド）が、バングラデシュ、ブラジル、コンゴ民主みんしゅ共和きょうわ国こく、イラク、メキシコ、パキスタン、ソマリア、トルコおよびシリアのブロガーや報道ほうどうカメラマンらとともに登録とうろくされ、同年どうねん9月がつには『インサイド・シャルリー・エブド』というドキュメンタリー映画えいがが作成さくせいされた。試写ししゃ会かいに参加さんかしたカビュの妻つまヴェロニク・ブラシェ・カビュは「彼かれらは自分じぶんたちがしていることがいかに重大じゅうだいなことか、その危険きけん性せいをよくわかっていた。言論げんろんの自由じゆうのために犠牲ぎせいを払はらった彼かれらがどんな仕事しごとをしていたのか知しってもらいたい」と語かたった。

2018年ねん12月1日にち、カビュの生誕せいたん地ちシャロン＝アン＝シャンパーニュ (マルヌ県けん) に彼かれに捧ささげるマルチメディア図書館としょかん (médiathèque) が開館かいかん。デュデュッシュに因ちなんで「デュデュショテック (Duduchotèque)」と命名めいめいされた。2019年ねん4月がつ1日にちまで1年ねん4か月げつにわたって開催かいさいされる第だい1回かい企画きかく展てんではカビュの若わかい頃ころのデッサン約やく80点てんが展示てんじされる。

著書ちょしょ

「のっぽのデュデュッシュ」を描えがくカビュ (サロン・デュ・リーブルにて; 2008年ねん)

のっぽのデュデュッシュ・シリーズ

• Le Grand Duduche (のっぽのデュデュッシュ), Paris, Dargaud, 1967
• Le Grand Duduche : Il lui faudrait une bonne guerre !… (のっぽのデュデュッシュ：正々堂々せいせいどうどうと戦たたかわなければ…), Paris, Dargaud, 1973
• Le Grand Duduche: L’Ennemi intérieur (のっぽのデュデュッシュ：内ないなる敵てき), Paris, Square, 1973
• Le Grand Duduche en vacances (のっぽのデュデュッシュのヴァカンス), Paris, Square, 1980, (ISBN 978-2205018066)
• Passe ton bac, après on verra ! (バカロレアに合格ごうかくしたら), Paris, Rond-Point, 1980
• Cabu et Wiliam Leymergie, Maraboud’ficelle (カビュとウィリアム・レイメルジー マラブーフィセル), Paris, Dargaud, 1980 (ISBN 978-2205016956)
• Le Grand Duduche: À bas la mode ! (のっぽのデュデュッシュ：流行りゅうこうなんかくたばれ!), Paris, Dargaud, 1981 (ISBN 978-2205018639)
• Le Grand Duduche et la fille du proviseur (のっぽのデュデュッシュと校長こうちょうの娘むすめ) (1982, Dargaud)
• Le Grand Duduche : L'Intégrale (のっぽのデュデュッシュ全集ぜんしゅう) (序文じょぶん：ルネ・ゴシニ), Paris, Vents d'Ouest, 2008 (ISBN 978-2749304359)

カトリーヌ・シリーズ

• Le Journal de Catherine (カトリーヌ新聞しんぶん), Paris, Square, 1970
• Le Journal de Catherine (カトリーヌ新聞しんぶん), Paris, Folio, 1974 (ISBN 978-2070365296)
• Catherine saute au Paf ! (カトリーヌ、ポンと跳とんだ), Paris, Éditions du Square, 1978

ボフ・シリーズ

• Mon Beauf' (僕ぼくのボフ) (序文じょぶん：フランソワ・カヴァナ), Paris, Le Square, janvier 1976, 72 p.
• La France des beaufs (ボフのフランス), Paris, Square, 1979
• Mitterrand et son beauf (ミッテランと彼かれのボフ), Paris, Albin Michel, 1984, 68 p.(ISBN 2-226-01412-8)
• Rôti de Beauf (ボフのロースト) (序文じょぶん：フランソワ・カヴァナ), Paris, Le Cherche midi, 1985 (ISBN 978-2862740669)
• À consommer avec moderation (食事しょくじはほどほどに), Paris, Albin Michel, 1989
• Les nouveaux beaufs sont arrives (新しん世代せだいボフの登場とうじょう), Paris, Le Cherche midi, 1992 (ISBN 2-86274-231-7)
• L’Intégrale Beauf (ボフ全集ぜんしゅう) (序文じょぶん：Eric Emptaz), Paris, Michel Lafon, 2014, (ISBN 978-2749923420)

トントン (=ミッテラン)・シリーズ

• Tonton 1er roi de France (フランス第だい一いち王おうトントン) (1988, Belfond)
• Tonton accro (中毒ちゅうどくトントン) (1988, Albin Michel)
• Tonton la-terreur (恐怖きょうふ王おうトントン) (1991, Albin Michel)
• Adieu Tonton (あばよ、トントン) (1992, Albin Michel)

その他たのアルバム

• Les Aventures de madame Pompidou (マダム・ポンピドゥーの冒険ぼうけん), Paris, Square, 1972
• Cabu (カビュ), Paris, Glénat, « Carton » (「カルトン」コレクション), 1975
• A bas toutes les armées ! (軍隊ぐんたいはみんな、くたばれ!) (1979, Editions du Square)
• Cabu et Didier Convard, Inspecteur la bavure (カビュとディディエ・コンヴァール：刑事けいじ大だい失敗しっぱい), Paris, Albin Michel, 1981 (ISBN 2-226-01105-6)
• Bien dégagé sur les oreilles (髪かみは短みじかく), Paris, La Découverte, octobre 1985, 139 p. (ISBN 2-7071-1568-1)
• Le Nez de Dorothée (ドロテの鼻はな) (1986, Flammarion)
• Le Gros Blond avec sa chemise noire (黒くろシャツのデブのブロンド (=ジャン＝マリー・ル・ペン)) (1988, Albin Michel)
• Les Interdits de Cabu (カビュの排斥はいせき) (1989, Albin Michel)
• Mort aux vieux ! (年寄としよりは死しね!) (1989, Albin Michel)
• Cabu au Canard enchaîné (カナール・アンシェネのカビュ) (1989, Albin Michel)
• Les abrutis sont parmi nous (バカはわれわれのなかに) (1992, Albin Michel)
• Responsables mais pas coupables ! (責任せきにんをもって、しかも罪つみは犯おかさないで) (1993, Albin Michel)
• Secrets d’État (国家こっか機密きみつ) (1994, Albin Michel)
• Les Aventures épatantes de Jacques Chirac (ジャック・シラクのすごい冒険ぼうけん) (1996, Albin Michel)
• Vas-y Jospin ! (それいけ、ジョスパン!) (1999, Albin Michel)
• À gauche toute ! (全員ぜんいん、左ひだり向むけ!) (2000, Albin Michel)
• C’est la faute à la société (社会しゃかいのせいだ) (2008, 12 bis)
• Mai 68 (五月ごがつ革命かくめい) (collectif, 2008, Michel Lafon)
• Dessins cruels (残酷ざんこくな画が), Paris, Le Cherche midi, avril 2014, 128 p.(ISBN 978-2-7491-3483-3)
• Cabu s'est échappé ! (カビュ、逃にげる!) (『シャルリー・エブド』の最終さいしゅうページの画が1,000枚まい) 1969-2015 (序文じょぶん：ベルトラン・ドラノエ) (2017, Les échappés)