カマラ (元朝がんちょう)

カマラ（モンゴル語ご: ᠭᠠᠮᠠᠯᠠ, ラテン文字もじ転写てんしゃ: Kammala、中なか統みつる4年ねん（1263年ねん）^[1] - 大徳だいとく6年ねん1月がつ10日とおか（1302年ねん 2月がつ8日にち））は、元もとの皇族こうぞく。漢字かんじ表記ひょうきは甘あま麻あさ剌^[1]、『集しゅう史し』などではカマラー（ペルシア語ご: كملا, ラテン文字もじ転写てんしゃ: Kamalā）と記しるされる。名なはカンマラとも読よむ。

生涯しょうがい[編集へんしゅう]

世よ祖そクビライの皇太子こうたいしチンキムがココジン（コンギラト部族ぶぞく出身しゅっしん）との間あいだに儲もうけた3人にんの嫡子ちゃくしのうちの長男ちょうなんで、弟おとうとにダルマバラとテムルがいる。クビライの嫡長孫まごであるカマラは、幼おさない頃ころから祖母そぼの昭あきら睿皇后こうごうチャブイによって育そだてられ、長ながじると祖父そふクビライに侍さむらいしたが、弁舌べんぜつが苦手にがてで無口むくちであり、あまり聡明そうめいに見みえる性質せいしつではなかった。

成人せいじんすると祖父そふにより、オゴデイ家かのカイドゥに西部せいぶの諸王しょおうが与くみして戦乱せんらんの激はげしくなっていたモンゴル高原こうげんでの駐留ちゅうりゅうを命めいじられたが、至いたり元もと26年ねん（1289年ねん）にカイドゥ相手あいてに手痛ていたい敗戦はいせんを喫きっした。至いたり元もと27年ねん（1290年ねん）に梁はり王おうに封ふうじられ、雲南うんなんへの出だし鎮を命めいじられたが、至いたり元もと29年ねん（1292年ねん）^[1]に晋すすむ王おうに改あらため封ふうされ、高原こうげんに移うつり鎮した。カマラの叔父おじであった北平きたひら王おうノムガンが数すう年ねん前まえに死去しきょして以来いらい、チンギス・カンの四大しだいオルドは無主むしゅとなっており、晋すすむ王おうの相続そうぞくはチンギス・カンの遺産いさんを受うけ継つぐとともに、ノムガンの配下はいかにあった高原こうげんの遊牧ゆうぼく軍団ぐんだんを領りょうする重職じゅうしょくであり、モンゴル人じんの本土ほんどである北方ほっぽうにおけるカアンの副ふく王おうに就任しゅうにんしたことを意味いみした。

至いたり元もと31年ねん（1294年ねん）にクビライが崩くずれじると、上うえ都とで開ひらかれたクリルタイで、先さきに祖父そふから皇太子こうたいしの印綬いんじゅを与あたえられていた弟おとうとのテムルとどちらが後継こうけい者しゃにふさわしいか議論ぎろんされた。しかし、このクリルタイでは朝廷ちょうていの軍ぐん権けんを握にぎる知ち枢密院すうみついん事ことバヤンがテムルの支持しじを表明ひょうめいし、他たの将軍しょうぐんたちやカマラ・テムル兄弟きょうだいの母ははにあたるココジンもこれに賛成さんせいしたため、カマラはテムルにカアン位いを譲ゆずった^[1]。ラシードゥッディーンの『集あつまり史し』によれば、摂政せっしょうとしてクリルタイを主催しゅさいしたココジンは、「誰だれであれ（モンゴルにとって重要じゅうような掟おきてである）チンギス・カンの訓くん言げんを最もっともよく知しっている者ものがカアンに即位そくいすべきである」というクビライの遺言ゆいごんを持もち出だして兄弟きょうだいに訓くん言げんを知しっているかを問とうと、聡明そうめいで弁舌べんぜつと記憶きおく力りょくに優すぐれていたテムルは多おおくの訓くん言げんを雄弁ゆうべんに答こたえたが、弁舌べんぜつの苦手にがてなカマラは口くち篭こもって上手じょうずに答こたえることができなかった。そこで将軍しょうぐんたちは一致いっちしてテムルがカアンにふさわしいと認みとめ、テムルがカアンに即位そくいしたという。

大徳だいとく4年ねん（1300年ねん）、カイドゥが中央ちゅうおうアジアの諸王しょおうの全ぜん軍ぐんを率ひきいて最後さいごの大だい攻勢こうせいをかけてくると、高原こうげんに駐留ちゅうりゅうしていたカマラの軍ぐんは打うち破やぶられて苦境くきょうに陥おちいった。しかし、テムルによって派遣はけんされてきた甥おい（ダルマバラの長男ちょうなん）のカイシャン率ひきいるカアン直轄ちょっかつのキプチャク親衛しんえい軍ぐんや、従兄弟いとこの安西あんざい王おうアナンダ率ひきいる漢かん地ち西部せいぶ駐留ちゅうりゅう軍団ぐんだんの増援ぞうえんを受うけて、翌よく大徳だいとく5年ねん（1301年ねん）に元もと軍ぐんはテケリクでカイドゥの軍ぐんを撃退げきたいし、カイドゥを戦傷せんしょう死しに追おい込こんだ。カマラはこの戦争せんそうから間まもなくとなる大徳だいとく6年ねん（1302年ねん）初頭しょとうに死去しきょした。

カマラの一連いちれんの戦争せんそうにおける不手際ふてぎわ、急死きゅうしと前後ぜんごして、晋すすむ王家おうけの所領しょりょうは大幅おおはばに削減さくげんされてしまい、晋すすむ王位おういを継ついだ次男じなんのイェスン・テムルが至いたり治ち3年ねん（1323年ねん）にカアンに即位そくいする（泰やすし定てい帝みかど）まで目立めだった活躍かつやくはなかった。即位そくいしたイェスン・テムルは亡父ぼうふに光ひかり聖きよし仁孝にんこう皇帝こうていと諡おくりなし、廟びょう号ごうを顕宗けんそうとして^[1]、カアンに準じゅんじる祭祀さいしを行おこなった。しかし、致和元年がんねん（1328年ねん）にアリギバ（イェスン・テムルの長男ちょうなん）が倒たおされてトク・テムル（文ぶん宗むね、カイシャンの次男じなん）が即位そくいすると、晋すすむ王家おうけのカアンたちは傍系ぼうけいの簒奪さんだつ者しゃとみなされ、カアンの祭祀さいしから外はずされてしまった。