ガブリエッロ・キアブレーラ

キアブレーラ

ガブリエッロ・キアブレーラ（Gabriello Chiabrera, 1552年ねん6月18日にち - 1637年ねん10月14日にち）は、イタリアの詩人しじん。

生涯しょうがい

キアブレーラは貴族きぞくの家系かけいの出身しゅっしんで、ジェノヴァ共和きょうわ国こくの領地りょうちの小ちいさな町まちであったサヴォーナで、より有名ゆうめいな詩人しじんピエール・ド・ロンサールの誕生たんじょうから28年ねん後ごに生うまれた。断片だんぺん的てきに現存げんそんしている、彼かれがガイウス・ユリウス・カエサルのように自分じぶんを第三者だいさんしゃとして記しるした自伝じでんで述のべられているように、彼かれは父ちちの死後しごに生うまれた子こであった。彼かれは9歳さいのときにローマへ行いき、おじのジョヴァンニに世話せわされた。この地ちで彼かれは家庭かてい教師きょうし付つきで学まなんでいたが、二に度ど続つづけて高熱こうねつに冒おかされ、最終さいしゅう的てきには社会しゃかいのためにイエズス会かいの学校がっこうへ送おくられた。この場所ばしょに彼かれは20歳さいになるまで滞在たいざいし、彼かれ自身じしんの言葉ことばによれば、「仕事しごとのためというよりも、学問がくもんのために」哲学てつがくを学まなんだ。

この頃ころにおじを失うしない、キアブレーラは「彼かれ自身じしんを見みて、また彼かれらに見みられるために再ふたたび」サヴォーナへ戻もどった。しかしそれからすぐ彼かれはローマに戻もどり、枢機卿すうききょうの世帯せたいに加くわわった。彼かれは数すう年間ねんかんそこに滞在たいざいし、しばしばパウルス・マヌティウスやスペローネ・スペローニ（劇げき作家さっかであり、トルクァート・タッソの評論ひょうろん家かであった）の社交しゃこう界かいをしばしば訪おとずれ、講義こうぎに参加さんかしたり談話だんわを聞きいたりしていた。彼かれに浴あびせられた侮辱ぶじょくに対たいする復讐ふくしゅう心しんが彼かれを再ふたたびサヴォーナへ向むかわせ、その地ちで、彼かれは自みずからを楽たのしませるために詩し、特とくにギリシア語ごの詩しを読よんだ。

キアブレーラが選えらんだ詩人しじんはピンダロスとアナクレオンで、彼かれらについて学まなび続つづけるうち、いつしか彼かれは、自みずからの舌したで彼かれらのリズムと構成こうせいを再現さいげんし、新あらたな解釈かいしゃくの形かたちで彼かれの国くにを豊ゆたかにしたいという望のぞみを、彼かれ自身じしんの言葉ことばで言いうところの「同郷どうきょうの人ひとであるコロンブスが、新しん世界せかいをみつけるか溺おぼれ死じにぬかであったのと同おなじように」、抱いだくようになった。彼かれの評判ひょうばんはすぐに立たったが、彼かれはサヴォーナから出でることは滅多めったになかった（そうするように招まねかれることはしばしばあったが）。例外れいがいとしては楽たのしみのための旅行りょこう（これには彼かれは非常ひじょうに満足まんぞくしていた）、および彼かれの詩しや劇げき作家さっかとしての才能さいのうを買かわれてしばしば召還しょうかんされていた王子おうじ達たちの宮廷きゅうていへの訪問ほうもんなどが挙あげられる。彼かれが円熟えんじゅく期きにあった50歳さいの頃ころ、彼かれはレリア・パヴェーゼと結婚けっこんしたが、彼かれは子供こどもに恵めぐまれなかった。その後ご、彼かれは単純たんじゅんで非難ひなんするところのない生涯しょうがいを送おくり、その間あいだに彼かれは多おおくの詩しを作つくった。その内容ないようは叙事詩じょじし、悲劇ひげき詩し、牧歌ぼっか、抒情詩じょじょうし、諷刺ふうし詩しなどである。

キアブレーラは1637年ねんに85歳さいで死去しきょした。彼かれの墓碑銘ぼひめいがローマ教皇きょうこうウルバヌス8世せいによって優雅ゆうがなラテン語らてんごで書かかれたが、彼かれの墓石はかいしに刻きざまれたのは、彼かれ自身じしんによる2つの風変ふうがわりなイタリア語ごの六ろく歩ほ格かくであり、これを見みる者ものはこの詩人しじん自身じしんの、ゴルゴタの丘おかよりもパルナッソス山さんを好このまないようにという戒いましめを受うけることになる。

作品さくひん観かん

Opere, 1757

ストロペーとアンティストロペーの入念にゅうねんな華はなやかさをもった頌詩の作つくり手しゅ、新あたらしく複雑ふくざつなリズムの師し、大おおがかりな言葉ことばと混成こんせいした形容けいよう辞じの考案こうあん者しゃ、大胆だいたんな置おき換かえや倒置とうちの使用しよう者しゃ、そして詩しのい回いまわしの新あらたな系統けいとうの発明はつめい者しゃとして、キアブレーラがロンサールと比較ひかくされるのは驚おどろくべきことではない。両者りょうしゃともその栄光えいこうと同おなじように大おおきく、突然とつぜんの失墜しっついを被こうむる運命うんめいであった。ロンサールはマレルブやフランス文学ぶんがく（と呼よばれるもの）に継承けいしょうされた。一方いっぽうキアブレーラは偉大いだいなイタリア人じんの最後さいごのものであり、彼かれの後のち、イタリア文学ぶんがくはマンゾーニによる2度目どめの文芸ぶんげい復興ふっこうまでの間あいだ、衰退すいたいしていた。しかしながらキアブレーラは、ただの革新かくしん者しゃのそれは別べつとして、優秀ゆうしゅうな人物じんぶつであった。叙事詩じょじしや戯曲ぎきょくを別べつにすると、キアブレーラの作品さくひんの多おおくは現在げんざいも見みて楽たのしむことが可能かのうである。彼かれの壮大そうだいなピンダロス詩しが愚鈍ぐどんなものであることは事実じじつだが、彼かれのカンツォネットは、ロンサールのアナクレオン的てき要素ようそと同おなじように、非常ひじょうに優雅ゆうがなものである。彼かれの自伝じでん的てき短編たんぺんも非常ひじょうに興味深きょうみぶかいものである。ギリシャへの崇敬すうけい、旅たびと観光かんこうに対たいする喜よろこび、親友しんゆうや同輩どうはいと文学ぶんがく的てき会話かいわをすることへの嫌悪けんお、虚栄きょえい心しんと復讐ふくしゅう心しん、教皇きょうこうや王子おうじたちによって彼かれに授さづけられた寵愛ちょうあいの記憶きおくへの誇ほこり、ウェルギリウスの詩作しさくと隠喩いんゆに関かんする「果はてしない驚異きょうい（infinita maraviglia）」、男性だんせい韻いんと無韻むいん詩しへの溺愛できあい、ひそかなキリスト教きりすときょう精神せいしん—そういったものをもった純粋じゅんすいな古ふるい詩人しじんは、彼かれ自身じしんが発見はっけんと征服せいふくによって思おもい描えがいた芸術げいじゅつの「新しん世界せかい」においてなされているよりも、より研究けんきゅうされる価値かちのある人物じんぶつである。

外部がいぶリンク

• Gabriello Chiabreraの作品さくひん （インターフェイスは英語えいご）- プロジェクト・グーテンベルク（イタリア語ご）

出典しゅってん

•  この記事きじにはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく内うちで著作ちょさく権けんが消滅しょうめつした次つぎの百科ひゃっか事典じてん本文ほんぶんを含ふくむ: Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Chiabrera, Gabriello". Encyclopædia Britannica (英語えいご). Vol. 6 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 177.