(Translated by https://www.hiragana.jp/)
キリストと姦通女 (ブリューゲル) - Wikipedia コンテンツにスキップ

キリストと姦通かんつうおんな (ブリューゲル)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
『キリストと姦通かんつうおんな
オランダ: Christus en de overspelige vrouw
英語えいご: Christ and the Woman Taken in Adultery
作者さくしゃピーテル・ブリューゲル
製作せいさくねん1562ねん
種類しゅるいいたじょう油彩ゆさい
寸法すんぽう24.1 cm × 34 cm (9.5 in × 13 in)
所蔵しょぞうコートールド美術館びじゅつかんロンドン

キリストと姦通かんつうおんな』(キリストとかんつうおんな、らん: Christus en de overspelige vrouwえい: Christ and the Woman Taken in Adultery)は、初期しょきフランドル巨匠きょしょうピーテル・ブリューゲルが1562ねんいたじょう油彩ゆさい製作せいさくした絵画かいがで、画家がか作品さくひんちゅう、『聖母せいぼ』 (アプトン・ハウス英語えいごばんバンベリー) などとともにグリザイユ (淡彩たんさい) でえがかれている数少かずすくないものの1つである。『新約しんやく聖書せいしょ』の「ヨハネによる福音ふくいんしょ」に記述きじゅつされているイエス・キリスト逸話いつわ主題しゅだいとしている[1][2][3]。ブリューゲルが自身じしんのためにえがいたといわれ、祈念きねんとしての性格せいかくっている[3]画家がか死後しご作品さくひん画家がか次男じなんヤン・ブリューゲル (ちち)相続そうぞくされ、ヤンはその複製ふくせいを10てん以上いじょう制作せいさくした[1][3]作品さくひんは1978ねんロンドンコートールド美術館びじゅつかん収蔵しゅうぞうされた [4]

作品さくひん

[編集へんしゅう]
ロレンツォ・ロット『キリストと姦通かんつうおんな』 (1530-1535ねんごろ) ルーヴル美術館びじゅつかん
ルーカス・クラナッハ『キリストと姦通かんつうおんな』 (1532ねん以降いこう) エルミタージュ美術館びじゅつかん
ラファエロ・サンティのカルトン連作れんさくの1つ『ペテロに天国てんごくかぎさづけるキリスト』(1515-1516ねんごろ) ヴィクトリア&アルバート博物館はくぶつかん

「ヨハネによる福音ふくいんしょ」 (8しょう:7) によれば、姦淫かんいんした罪深つみぶかおんながイエス・キリストのまえされ、パリサイじんがキリストに彼女かのじょつみう。画面がめん一段いちだんひくいところにいるキリストは、こしをかがめて壇上だんじょうに「あなたかたなかつみのないものが、まずこのおんないしげつけるがよい」としるしている[1][2][3]

姦通かんつうおんなは、イタリアルネサンス画家がかロレンツォ・ロットのようなヴェネツィア画家がかえがくと半裸はんら魅惑みわくてき女性じょせいとなる。一方いっぽうドイツルーカス・クラナッハどう主題しゅだい作品さくひんでは、キリストはユダヤりつ法学ほうがくしゃやパリサイじんきびしく訓戒くんかいしている。それにたいし、ブリューゲルのほんさくでは、姦通かんつうおんなつみ悔悛かいしゅんした内面ないめんせいち、つつましやかにえがかれている。また、キリストはしずかに地面じめんこしをかがめており、文字もじいているだけである[1]みぎはしつパリサイじん長老ちょうろうは、キリストのいた文字もじつめて沈思ちんし黙考もっこうしている。群衆ぐんしゅうなかには、おどろきの表情ひょうじょう文字もじているもの、すでにけてこのろうとするものもいる。作品さくひんはあたかも舞台ぶたいじょうひろげられる心理しんりげきのようで、ブリューゲルの友人ゆうじんのコールンヘルト、オルテリウスがき、ブリューゲル自身じしん信条しんじょうとした寛容かんよう謙譲けんじょう精神せいしん真摯しんしつたえるものとなっている[2]

ひかりらす前景ぜんけいからくら背景はいけいまで、明暗めいあんのグラデーションをつけながらグリザイユのはい褐色かっしょく色調しきちょう全体ぜんたい統一とういつされている[2]。ブリューゲルは画面がめんせいなる雰囲気ふんいきつつみ、人々ひとびとにその傲慢ごうまんしん反省はんせいさせるには、グリザイユ技法ぎほう最適さいてきかんがえたのであろう[1]

また、画家がかにはめずらしいことに背景はいけい描写びょうしゃがまったくなく[3]建築けんちく神殿しんでん表現ひょうげん最小限さいしょうげんにとどめられている[1]比較的ひかくてきおおきな人物じんぶつぞう構成こうせいされているほんさくには、かつてブリュッセルにあったイタリア・ルネサンスの巨匠きょしょうラファエロ・サンティカルトン連作れんさく影響えいきょう指摘してきされている[2][3]姦淫かんいんおんなもラファエロふう姿すがたである。ブリュッセル移住いじゅうのブリューゲルはあらためてイタリア絵画かいが研究けんきゅうしており、ほんさくはその成果せいかの1つである[2]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b c d e f もり洋子ようこ 2017ねん、86-87ぺーじ
  2. ^ a b c d e f 岡部おかべひろしさん 2012ねん、87ぺーじ
  3. ^ a b c d e f 『ブリューゲルへの招待しょうたい』、2017ねん、59ぺーじ
  4. ^ Christ and the Woman Taken in Adultery”. コートールド美術館びじゅつかん公式こうしきサイト(英語えいご). 2023ねん6がつ13にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • もり洋子ようこ『ブリューゲルの世界せかい』、新潮社しんちょうしゃ、2017ねん刊行かんこう ISBN 978-4-10-602274-6
  • 岡部おかべひろしさん図説ずせつブリューゲル 風景ふうけい民衆みんしゅう画家がか』、河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、2012ねん刊行かんこう ISBN 978-4-309-76194-7
  • 小池こいけ寿子ひさこ廣川ひろかわ暁生あきお監修かんしゅう『ブリューゲルへの招待しょうたい』、朝日新聞あさひしんぶん出版しゅっぱん、2017ねん刊行かんこう ISBN 978-4-02-251469-1

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]