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コルモゴロフ空間くうかん

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位相いそう空間くうかん分離ぶんり公理こうり
コルモゴロフ による分類ぶんるい
T0  (コルモゴロフ空間くうかん)
T1  (フレシェ空間くうかん)
T2  (ハウスドルフ空間くうかん)
T2½ (ウリゾーン空間くうかん)
完全かんぜんT2  (完全かんぜんハウスドルフ空間くうかん)
T3英語えいごばん (正則せいそくハウスドルフ空間くうかん)
T英語えいごばん (チホノフ空間くうかん)
T4英語えいごばん (正規せいきハウスドルフ空間くうかん)
T5英語えいごばん (ぜん部分ぶぶん正規せいきハウスドルフ空間くうかん)
T6英語えいごばん (完全かんぜん正規せいきハウスドルフ空間くうかん)

数学すうがく位相いそう空間くうかんろん関連かんれん分野ぶんやにおけるコルモゴロフ空間くうかん(コルモゴロフくうかん、えい: Kolmogorov space)あるいは T0-空間くうかんは、任意にんいことなるてんたいしてすくなくともその一方いっぽう他方たほうふくまぬひらき近傍きんぼうつような位相いそう空間くうかんである。この条件じょうけん分離ぶんり公理こうりばれるものの一種いっしゅで、T0-分離ぶんり公理こうりなどとばれ、直観ちょっかんてきには空間くうかんかくてん位相いそうてき識別しきべつ可能かのうであることを意味いみする。名称めいしょうアンドレイ・コルモゴロフちなむ。

定義ていぎ[編集へんしゅう]

位相いそう空間くうかん XT0-空間くうかんであるとは、X任意にんいそうことなるてん位相いそうてき識別しきべつ可能かのうであるときにう。すなわち、x, y が T0-空間くうかん Xそうことなるてんならば、x または y一方いっぽうふくひらけ集合しゅうごうで、他方たほうふくまないようなものが存在そんざいする。

注意ちゅういてんとして、位相いそうてき識別しきべつ可能かのうてん同士どうし自動的じどうてきあいことなり、またX部分ぶぶん集合しゅうごうとしての一元いちげん集合しゅうごう {x}, {y} が分離ぶんりされるならば、 xy とはX位相いそう位相いそうてき識別しきべつ可能かのうであることがげられる。記号きごうてきけば

分離ぶんりされる」 ⇒ 「位相いそうてき識別しきべつ可能かのう」 ⇒ 「そうことなる」

となり、位相いそうてき識別しきべつ可能かのうであるという性質せいしつは、一般いっぱんにはあいことなるという条件じょうけんよりもつよく、分離ぶんりされるという条件じょうけんよりはよわ制約せいやく条件じょうけんであるとえる。一方いっぽう、T0-空間くうかんにおいては後者こうしゃ矢印やじるしぎゃくつ。すなわち T0-空間くうかんにおいて、てんあつまりのかくてんあいことなることとそれらが位相いそうてき識別しきべつ可能かのうであることとは同値どうちである。このことは、T0-分離ぶんり公理こうりが、如何いかにほかの分離ぶんり公理こうり鼎立ていりつするものであるかということをしめしている。

れい反例はんれい[編集へんしゅう]

数学すうがく普通ふつう研究けんきゅうしていて遭遇そうぐうする位相いそう空間くうかんというのは T0 になっていることがほとんどである。とくにすべてのハウスドルフ空間くうかん (T2) およびT1-空間くうかんは T0 である。

T0 にならない空間くうかん[編集へんしゅう]

  • ひとつよりおおくのもと集合しゅうごう密着みっちゃく位相いそうれたもの。これはすべてのてん位相いそうてき識別しきべつ不能ふのうになる。
  • 集合しゅうごう R2 = R × R に、前者ぜんしゃR通常つうじょうひらき集合しゅうごう後者こうしゃR との直積ちょくせき集合しゅうごうとなっているものをひらけ集合しゅうごうさだめたもの。この位相いそうはつまり、R における通常つうじょう位相いそう密着みっちゃく位相いそうとのせき位相いそうであり、(a, b) と (a, c) のかたちもと位相いそうてき識別しきべつ不能ふのうになる。
  • 実数じっすう直線ちょくせん R から複素数ふくそすう平面へいめん C へのはか函数かんすう f: RC で、|f(x)|2実数じっすう直線ちょくせん全体ぜんたいでのルベーグ積分せきぶん有限ゆうげんとなるようなもの(自乗じじょうルベーグ積分せきぶん函数かんすう全体ぜんたい空間くうかんほとんいたところ一致いっちするふたつの函数かんすう位相いそうてき識別しきべつ不能ふのうである。

T0 だが T1 でない空間くうかん[編集へんしゅう]

T0-空間くうかんたいする操作そうさ[編集へんしゅう]

よくある位相いそう空間くうかんれい大体だいたいが T0 である。実際じっさい数学すうがくおおくの分野ぶんやとく-T0空間くうかん解析かいせきがく)では、-T0後述こうじゅつするような方法ほうほうで T0-空間くうかんえられるのが普通ふつうである。こういったかんがかた実感じっかんするのに、よくられたれいげる。 自乗じじょう積分せきぶん函数かんすう空間くうかん L2(R)は、実数じっすう直線ちょくせん R から複素数ふくそすう平面へいめん C への積分せきぶん函数かんすう f で |f(x)|2実数じっすう直線ちょくせん全体ぜんたいわたルベーグ積分せきぶん有限ゆうげんになるものすべてからなる空間くうかんとする。この空間くうかんはか函数かんすう f積分せきぶん平方根へいほうこんをノルム ǁfǁ としてノルム線型せんけい空間くうかんになる、といたいのだけれども問題もんだいがあって、この「ノルム」だとれい函数かんすう以外いがいにも「ノルム」が 0 になるような函数かんすうがあるので、「ノルム」は本当ほんとうはノルムではなくてはんノルムにしかならないのである。この問題もんだいのぞ標準ひょうじゅんてき方法ほうほうは、空間くうかん L2(R) のもと函数かんすうそのものではなくて函数かんすうぞくする同値どうちるいであるとすることである。これは、もともとのはんノルム線型せんけい空間くうかんからしょう空間くうかん構成こうせいしたのであって、られたしょう空間くうかんがノルム線型せんけい空間くうかんになるのである。この構成こうせいではいくつものよい性質せいしつをもとのはんノルム空間くうかんからぐ(後述こうじゅつ)。

一般いっぱんに、集合しゅうごう X うえまった位相いそう Tあつかさいには、その位相いそうが T0 であったほう便利べんりである。そうでなかった場合ばあいに、X のほうはえずに T には適当てきとうひれをけて強制きょうせいてきT が T0 となるようにすることはあまり適当てきとう方法ほうほうではない(-T0 位相いそう重要じゅうよう特殊とくしゅとしてられることがおおいことによる)。そこで、位相いそう空間くうかんたいしてさだめられる様々さまざま条件じょうけんについて、その T0 はん-T0 はん両方りょうほう理解りかいすることが重要じゅうようになる。

コルモゴロフしょう[編集へんしゅう]

てんあいだ位相いそうてき不可ふか識別しきべつせい位相いそう空間くうかんにおける同値どうち関係かんけいあたえる。どのような位相いそう空間くうかん Xかんがえるかにらず、この同値どうち関係かんけいってられるしょう位相いそう空間くうかんつねに T0 になり、このしょう空間くうかんXコルモゴロフしょう (Kolmogorov quotient) とばれ、KQ(X) であらわされる。もちろん、もともとの X がそもそも T0 であったならば、KQ(X) と X とは自然しぜん 同相どうしょうになる。けんろんてきべれば、コルモゴロフ空間くうかんけん位相いそう空間くうかんけん反射はんしゃてき部分ぶぶんけんであり、コルモゴロフしょうはその反射はんしゃである。

ふたつの位相いそう空間くうかん X, Yコルモゴロフ同値どうちであるとは、それらのコルモゴロフしょう同相どうしょうとなることをう。位相いそう空間くうかんたいするおおくの性質せいしつが、このコルモゴロフ同値どうち関係かんけいたもたれる(つまり、コルモゴロフ同値どうちXY について、X がそういった性質せいしつたすことと Yどう性質せいしつたすこととが同値どうちになる)。他方たほう位相いそう空間くうかんにおけるべつ性質せいしつは T0-せい含意がんいする(つまり、空間くうかん X がその性質せいしつつならば X は T0 でなければならない)ものが大半たいはんであって、わずかに(離散りさん空間くうかんであるという性質せいしつのような)いくつかの性質せいしつがこの経験けいけんそく例外れいがいとなっているばかりである。さらにいことは、位相いそう空間くうかんうえ定義ていぎされるおおくの構造こうぞうX と KQ(X) のあいだ翻訳ほんやくすることができる。というわけで、あるしゅ性質せいしつ構造こうぞうそなえた-T0位相いそう空間くうかんがあったならば、普通ふつうおな性質せいしつ構造こうぞうった T0位相いそう空間くうかんをコルモゴロフしょうをとることでつくれるのである。

さきげた L2(R) のれいもこの特徴とくちょうそなえている。位相いそうてき観点かんてんでいえば、このれいでもととしたはんノルム線型せんけい空間くうかんにはたくさんの余計よけい構造こうぞうはいっている(たとえば、ベクトル空間くうかん構造こうぞうや、はんノルムおよびそれがさだめる(位相いそう両立りょうりつする)なずらえ距離きょり一様いちよう構造こうぞうなど)し、それらの構造こうぞう様々さまざま性質せいしつたとえばはんノルムがちゅうせん定理ていりたすことや、一様いちよう構造こうぞう完備かんびであることなど)もっているのだが、このはんノルム線型せんけい空間くうかんが T0 でないことはほとんいたところひとしいふたつのはか函数かんすう位相いそうてき識別しきべつ不能ふのうだからなのであって、そのコルモゴロフしょう(つまり実際じっさいの L2(R))はさきほどべた余分よぶん性質せいしつ構造こうぞうはそのままたもって「ちゅうせん定理ていりたす完備かんびはんノルム空間くうかん」となり、それだけではなくていまや T0 であるという性質せいしつくわわるのである。はんノルムがノルムとなる必要ひつようじゅうふん条件じょうけんかんがえている位相いそうが T0 となることであったから、L2(R) は実際じっさいに「ちゅうせん定理ていりたす完備かんびノルム空間くうかん」(ヒルベルト空間くうかんばれる)になる。そして、数学すうがく(や量子力学りょうしりきがくなどの物理ぶつりがく)が一般いっぱんあつかうのは、このヒルベルト空間くうかんについてである、というわけである。さてこのれいにおいて記号きごう L2(R) が、この記号きごう示唆しさするところの自乗じじょう積分せきぶん函数かんすうそのものの空間くうかんではなくて、積分せきぶん函数かんすう同値どうちるい空間くうかんであるところのコルモゴロフしょうしているのが普通ふつうである、ということに注意ちゅういされたい。

T0-ばん概念がいねん[編集へんしゅう]

ノルムがまず歴史れきしてき定義ていぎされていた一方いっぽうで、はんノルムの定義ていぎというのはノルムの-T0 はん一種いっしゅとしてうまく定式ていしきされたものである。一般いっぱんに、位相いそう空間くうかんの「性質せいしつ」と「構造こうぞう」の双方そうほうたいしてその -T0 はんかんがえることができるが、まずはハウスドルフであるという性質せいしつれいにとって「性質せいしつ」の場合ばあいについてべる。ハウスドルフであるという性質せいしつたいしてあらたな性質せいしつを、位相いそう空間くうかん X がそのあらたな性質せいしつ満足まんぞくするというのを、コルモゴロフしょう KQ(X) がハウスドルフであることと定義ていぎすることができる。いまつくったこの性質せいしつは(あまり有名ゆうめいではないものの)顕著けんちょ概念がいねんで、この場合ばあい Xぜん正則せいそくばれる位相いそう空間くうかんである(べつにもっと直接的ちょくせつてきぜん正則せいそくせい定義ていぎもあるのだが)。他方たほう、「構造こうぞう」の場合ばあいについて距離きょり構造こうぞうれいにとってべれば、位相いそう空間くうかん X うえあらたな構造こうぞうたとえば簡単かんたんに KQ(X) じょう距離きょり函数かんすうとなるものとしてれることができる。いまられた構造こうぞうもまた顕著けんちょ構造こうぞうで、これは X うえなずらえ距離きょり函数かんすうさだめる(これもやはりもっと直接的ちょくせつてき定義ていぎがある概念がいねんである)。

コルモゴロフしょうかんがえるこのやりかただと、かんがえたい性質せいしつ構造こうぞうから T0-せい要求ようきゅう自然しぜんける。T0 であるような空間くうかん一般いっぱんには容易ようい調しらべられるものであるし、この方法ほうほうで T0 でないことをゆるした構造こうぞう全体ぜんたいぞうをつかむことも容易よういすることができる。つまり、T0要求ようきゅうはコルモゴロフしょう概念がいねんもちいて自由じゆうにつけたりはずしたりできるということである。

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]