コンセール・スピリチュエル

ル・コンセール・スピリチュエル（Le Concert Spirituel）は、18世紀せいきフランスの演奏えんそう会かい・音楽おんがく集団しゅうだんの名称めいしょうである。「宗教しゅうきょう音楽おんがく演奏えんそう会かい」の意味いみで、系統けいとう的てきに発達はったつしえた最初さいしょの定期ていき演奏えんそう会かいである。

沿革えんかく

フランスのようなカトリックの国くにでは、復活ふっかつ祭さいの前まえの40日間にちかん（四よん旬しゅん節ぶし）に劇場げきじょうの催もよおしを休やすむ習ならわしになっていて、その期間きかんにはまじめなスタイルの音楽おんがくを公演こうえんする習慣しゅうかんができていた。

作曲さっきょく家かでチェス選手せんしゅのフランソワ＝アンドレ・ダニカン・フィリドール（1726年ねん - 1795年ねん）の兄あにアンヌ・ダニカン・フィリドール（1681年ねん - 1731年ねん）によって1725年ねんに結成けっせいされた。演奏えんそう会かいの会場かいじょうはパリのテュイルリー宮殿きゅうでんにあるスイス人じん百ひゃく人にんホール（Salle des Cent Suisses）であった。毎年まいとし24回かい、午後ごご2時じから6時じまで行おこなわれていた。1762年ねんには常任じょうにん指揮しき者しゃ2名めいのほかに歌手かしゅ53名めい、楽らく手しゅ40名めいを擁ようしている。

ル・コンセール・スピリチュエルは、アンドレ・カンプラやジャン＝ジョゼフ・ド・モンドンヴィル、ジャン＝フィリップ・ラモーといった作曲さっきょく家かたちによるグラン・モテの演奏えんそうに特とく化かした組織そしきとして、フランスで嚆矢こうしというべき存在そんざいだった。ヨーロッパ全土ぜんどに盛名せいめいをはせて、諸しょ外国がいこくの主要しゅよう都市としもこの催もよおしをまねるようになった。フランスで最初さいしょの交響曲こうきょうきょくを書かいたゴセックは、自作じさくをコンセール・スピリチュエルで演奏えんそうした。1778年ねん6月18日にちにはモーツァルトの『パリ交響曲こうきょうきょく』の初演しょえんが、コンセール・スピリチュエルでおこなわれた。しかし1791年ねん、フランス革命かくめいによって演奏えんそう会かいは終焉しゅうえんを迎むかえる。王政おうせい復古ふっこ後ご、ナポレオン時代じだいから計画けいかくされていたコンセール・スピリチュエルの復活ふっかつが実現じつげんした。1818年ねん、パリ・オペラ座ざの支配人しはいにんが公開こうかい練習れんしゅうの指揮しき者しゃフランソワ・アブネックに交響こうきょう曲きょくの演奏えんそうを依頼いらいしてから、本格ほんかく的てきな演奏えんそう会かいになる。毎年まいとしの聖せい週しゅうといわれる復活ふっかつ祭さいの前週ぜんしゅうの月曜げつよう・水曜すいよう・金曜きんように行おこなわれ、1831年ねんまではオペラ座ざで正確せいかくに繰くり返かえされた。第だい1回かいの演奏えんそう会かいにはベートーヴェンの序曲じょきょくがプログラムに組くまれ、交響こうきょう曲きょく第だい2番ばんが1821年ねんに初演しょえんされた。1823年ねんには同おなじくベートーヴェンのオラトリオ『オリーヴ山上さんじょうのキリスト』、1825年ねんには『ベネディクトゥス』などをフランスに紹介しょうかいした。

1988年ねん、バロック音楽おんがくの専門せんもん家かであるエルヴェ・ニケが、古楽こがく器きによって18世紀せいきフランス音楽おんがくを演奏えんそうする目的もくてきのもとに、「ル・コンセール・スピリチュエル」 (Le Concert Spirituel) の名称めいしょうで演奏えんそう団体だんたいを創設そうせつした。

参考さんこう文献ぶんけん

• Constant Pierre, Histoire du Concert Spirituel (1725-1790), Paris: Société française de musicologie / Heugel, 2000. ISBN 2-85357-007-X（フランス語ふらんすご）
• Michel Brenet, Les Concerts en France sous l'Ancien Régime, Paris, Fischbacher, 1900, réimprimé à New York, Da Capo Press, 1970.（フランス語ふらんすご）
• フェリックス・ロージェル著ちょ、橘たちばな西にし路ろ訳やく『合唱がっしょう』（白水しろみず社しゃ、1958年ねん）