ジャイロコンパス

ジャイロコンパス

船ふねに搭載とうさいされたジャイロコンパス

ジャイロコンパスは、高速こうそく回転かいてんするコマの運動うんどうを用もちいて方位ほういを知しる道具どうぐである。転うたて輪わ羅針儀らしんぎ（てんりんらしんぎ）とも言いう。 現在げんざいは500トン以上いじょうの船ふねには設置せっちが義務付ぎむづけられている。

なお、航空機こうくうきの飛行ひこう方位ほうい計けい（w:Heading indicator）のように、ジャイロスコープの方向ほうこうを保たもつ性質せいしつのみを利用りようし、方位ほういに対たいして自己じこ修正しゅうせいする性質せいしつをもたないものについても、ジャイロコンパスの語かたりが使つかわれることがある。

構造こうぞうと原理げんり

1889年ねんにヘルマン・アンシュッツ・ケンプフェが作つくったジャイロコンパス

高速こうそく回転かいてんするコマ（ジャイロスコープ）が回転かいてん軸じくの方向ほうこうを保たもとうとする性質せいしつと、自転じてんする地球ちきゅうの表面ひょうめんにおいて回転かいてん軸じくを水平すいへいに保たもった場合ばあいにジャイロ効果こうかのジャイロモーメントによりジャイロスコープの回転かいてん軸じくが地球ちきゅうの地軸ちじくと平行へいこうに向むく作用さよう（プリセッション）を利用りようする。

ジャイロコンパスは起動きどうする時ときに方位ほうい磁石じしゃくなどを参考さんこうに北きたの方かたにジャイロ軸じくを向むけて回転かいてんを始はじめると静止せいし点てんを中心ちゅうしんとして水平すいへい、垂直すいちょく両方向りょうほうこうに減衰げんすい振ふ揺ゆらを繰くり返かえして真ま北きたを向むいて静止せいしする。静せい定じょうまでに時間じかんがかかり、ジャイロコンパスの静せい定方さだかた式しきにはいくつもの特許とっきょと技術ぎじゅつがあり起動きどうから静せい定じょうまでの時間じかんは時代じだいが進すすむほど大幅おおはばに短縮たんしゅくされているが、昔むかしは静しずか定じょうまでに数時間すうじかんを要ようしていた 。

長所ちょうしょ

• 方位ほうい磁石じしゃくと異ことなり地球ちきゅうの自転じてん軸じくに対たいする真ま北きたを常つねに示しめし北きた磁と真ま北きたの補正ほせいを必要ひつようとしない。
• 周囲しゅういの磁気じきの影響えいきょうを受うけないので金属きんぞくに囲かこまれた航空機こうくうきや船ふねの中なかでも使用しようでき設置せっち場所ばしょを選えらばない。
• 動揺どうようによる影響えいきょうを受うけないので船ふねや飛行機ひこうきなどの乗のり物もので使用しようしても方位ほうい磁石じしゃくのように動揺どうようで方位ほういがブレない。
• 方位ほういを機械きかい的てきな出力しゅつりょくとして取とり出だせるため他たの機器ききに方位ほういの情報じょうほうを入力にゅうりょくすることができる、ジャイロレピータなどの子こ機きに遠隔えんかく表示ひょうじさせることができる。このため高性能こうせいのうな大型おおがたジャイロコンパスが一いち台だいあれば方位ほういの情報じょうほうを複数ふくすうの機器ききで共有きょうゆうすることもできる。

短所たんしょ

• 地球ちきゅうの運動うんどう以外いがいの力ちからが加くわわるとジャイロエラーが発生はっせいする、時間じかんがたてば正ただしい位置いちに戻もどるが搭載とうさいされた乗のり物ものに加速度かそくどがかかった時ときに方位ほういが乱みだれる。慣性かんせい航法こうほう装置そうちはこの乱みだれを検出けんしゅつして加速度かそくどがかかったことを感知かんちする装置そうちである。
• ジャイロを回転かいてんさせる動力どうりょくが無ないと使つかえない（船ふねや飛行機ひこうきでは電源でんげん喪失そうしつ時じなどのバックアップとして磁気じきコンパスを備そなえている）。
• 起動きどうしてから正確せいかくな方位ほういを示しめすように静しずか定じょうするまでに時間じかんがかかる。
• 磁気じきコンパスに比くらべて大型おおがたで高価こうか。
• 精密せいみつ機械きかいなのでメンテナンスを必要ひつようとする。

歴史れきし

最初さいしょの発明はつめいは1885年ねんにMarinus Gerardus van denBosが取得しゅとくした特許とっきょである。 実用じつよう化かしたのは1906年ねんにドイツでヘルマン・アンシュッツ・ケンプフェが発明はつめいしたもので、ドイツ帝国ていこく海軍かいぐんで広ひろく使用しようされた。 ケンプフェは、ジャイロコンパスを大量たいりょう生産せいさんするためにキールにAnschütz＆Co. を設立せつりつした。後ごのen:Raytheon Anschütz社しゃである。

アメリカではエルマー・アンブローズ・スペリーが実用じつよう的てきなジャイロコンパスを製造せいぞうして量産りょうさんするためにスペリー社しゃを設立せつりつした。 この装置そうちはアメリカ海軍かいぐんに採用さいようされ第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんで主要しゅような役割やくわりを果はたした。 一方いっぽう、イギリスのブラウンは、1914年ねんに船舶せんぱく用よう、飛行機ひこうき用ようのジャイロコンパスを開発かいはつ。後のちにブラウン式しきと呼よばれるようになった。

ジャイロコンパスを地球ちきゅう上じょうで用もちいる場合ばあい、地球ちきゅうは球面きゅうめん体たいであるため地表ちひょう面めんの移動いどうによる水平面すいへいめんの変換へんかんを元もととする偏差へんさは免まぬかれ得えないが、1923年ねん、マックス・シューラーは、ジャイロコンパスの固有こゆう振動しんどう周期しゅうきとして84.4分ぶんの振動しんどう周期しゅうき（シューラー周期しゅうき: 海面かいめんで地球ちきゅうの周まわりを周回しゅうかいする想定そうてい衛星えいせいの公転こうてん周期しゅうきと同一どういつである）を持もたせることができれば重力じゅうりょくの影響えいきょうを排除はいじょできることを発見はっけんし、ジャイロコンパスの誤差ごさ累積るいせきを格段かくだんに減へらすことを可能かのうにした。周期しゅうき84.4分ぶんの固有こゆう周期しゅうきをジャイロコンパスに機械きかい的てきに持もたせることは難むずかしく、通常つうじょうはサーボモーターを使つかったフィードバック制御せいぎょループの周期しゅうきをシューラー周期しゅうきに一致いっちさせることにより、地球ちきゅう上じょうを動うごいたぶんの偏差へんさを角度かくどに直なおし修正しゅうせいさせている。この調整ちょうせい方法ほうほうのことをシューラーチューニングと呼よぶ。

関連かんれん項目こうもく

• ジャイロスコープ
• 磁気じきコンパス
• 方位ほうい磁針じしん
• スペリー