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スペクトル効率こうりつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

スペクトル効率こうりつ(スペクトルこうりつ、えい: Spectral efficiency、Spectrum efficiency)は、デジタル通信つうしんシステムであたえられた帯域たいいきはば転送てんそう可能かのう情報じょうほう総量そうりょうす。有限ゆうげん周波数しゅうはすうスペクトル物理ぶつりそう通信つうしんプロトコルがどれだけ効率こうりつてき使つかっているかの尺度しゃくどである。

リンクスペクトル効率こうりつ

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リンクスペクトル効率こうりつ(Link spectral efficiency)の単位たんいbit/s/Hz であり、特定とくてい変調へんちょう方式ほうしき使つかった論理ろんりてきなポイントツーポイントのリンクでの通信つうしん容量ようりょう(あるいはスループット)をあらわす。前方ぜんぽうあやま訂正ていせい (FEC) 符号ふごう変調へんちょう方式ほうしきれられている場合ばあい、ここでの「ビット」はユーザデータのビットであり、FEC のオーバヘッドは除外じょがいされる。

1kHzきろへるつ帯域たいいきはば毎秒まいびょう1000ビットを転送てんそうする技術ぎじゅつでは、スペクトル効率こうりつは 1 bit/s/Hz となる。

電話でんわ回線かいせんのモデムのれい: 電話でんわ回線かいせんようV.92モデムはくだりでは 56,000 bit/s、のぼりでは 48,000 bit/s の転送てんそう可能かのうである。電話でんわ交換こうかんでのフィルタリングにより、周波数しゅうはすうは 300Hzへるつ から 3,400Hzへるつ制限せいげんされ、帯域たいいきはばは 3400 − 300 = 3100 Hzへるつ となる。スペクトル効率こうりつは、くだりでは 56,000/3,100 = 18.1 bit/s/Hz、のぼりでは 48,000/3,100 = 15.5 bit/s/Hz となる。

FEC を除外じょがいした変調へんちょう方式ほうしき達成たっせいできる最大さいだいスペクトル効率こうりつは、標本ひょうほん定理ていりからつぎのようにもとめられる。信号しんごうアルファベットが M 符号ふごうから構成こうせいされ、かく符号ふごうを N = log2 M ビットであらわすとする。その場合ばあいのスペクトル効率こうりつ符号ふごうあいだ干渉かんしょう使つかわない場合ばあい、2N bit/s/Hz をえることはできない。たとえば、符号ふごうが 8 種類しゅるいで、それぞれ 3 ビットであらわされるとすると、スペクトル効率こうりつは 6 bit/s/Hz をえられない。

前方ぜんぽうあやま訂正ていせい符号ふごう使つかわれる場合ばあい、スペクトル効率こうりつ低下ていかする。たとえば、符号ふごうレート 1/2 の FEC を付与ふよすると、符号ふごうちょうが 1.5 ばいとなり、スペクトル効率こうりつは 50% 低下ていかする。スペクトル効率こうりつ低下ていかさせるのとえに、FEC は信号しんごうSN改善かいぜんする(つね改善かいぜんできるとはかぎらない)。

あるSN通信つうしんで、ビットあやまりなしで通信つうしんできるスペクトル効率こうりつ上限じょうげんは、符号ふごう変調へんちょう方式ほうしき理想りそうてきなものであるとした場合ばあいシャノン=ハートレーの定理ていりあたえられる。たとえば、SNが 1 すなわち 0 デシベルであった場合ばあい符号ふごう変調へんちょう方式ほうしきがどうであってもリンクスペクトル効率こうりつは 1 bit/s/Hz をえられない。

グッドプット(アプリケーションそう使つかえる情報じょうほうりょう)は、一般いっぱんにここで計算けいさんされるスループットよりもちいさい。なぜなら、パケットの再送さいそうがあったり、上位じょういプロトコルのオーバヘッドがあったりするからである。

スペクトル効率こうりつという用語ようごは、おおきければ周波数しゅうはすうスペクトルをより効率こうりつてき活用かつようしているという誤解ごかいむ。たとえば、携帯けいたい電話でんわスペクトラム拡散かくさんや FEC といった技法ぎほう使つかっているためスペクトル効率こうりつ(bit/s/Hz)は低下ていかするが、SNわるくても通信つうしん可能かのうとなっている。このため、周波数しゅうはすう帯域たいいきをより多数たすうのリンクで使つかうことができ、全体ぜんたいとしてはスペクトル効率こうりつ低下ていか以上いじょう効果こうかられる。後述こうじゅつするように、より適切てきせつ尺度しゃくどとして単位たんい帯域たいいきたりの bit/s/Hz があり、これがCDMA方式ほうしきのデジタル携帯けいたい電話でんわ基本きほんとなっている。しかし、電話でんわ回線かいせんやケーブルTVネットワークでは、チャンネルあいだ相互そうご干渉かんしょう問題もんだいとならず、所与しょよのSNでの最大さいだいスペクトル効率こうりつ一般いっぱん使つかわれている。

システムスペクトル効率こうりつ

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無線むせんネットワークでは、システムスペクトル効率こうりつ有限ゆうげん無線むせん周波数しゅうはすう帯域たいいき同時どうじにサポート可能かのうなユーザーやサービスのりょう尺度しゃくどとなる。その単位たんいは、bit/s/Hz/area unitbit/s/Hz/cellbit/s/Hz/site などとしるされる。システムが同時どうじにサポートできるぜんユーザーの最大さいだいスループットグッドプット総計そうけい通信つうしん帯域たいいき(Hz)でったものであらわすこともある。これには、単一たんいつ通信つうしん通信つうしん技法ぎほうだけでなく、多元たげん接続せつぞく手法しゅほう無線むせん資源しげん管理かんり技法ぎほうなども影響えいきょうする。とく動的どうてき無線むせん資源しげん管理かんりによって改善かいぜんされる。最大さいだいグッドプットで定義ていぎする場合ばあい通信つうしんあいだ相互そうご干渉かんしょう衝突しょうとつによる再送さいそうのぶんは排除はいじょされる。上位じょういそうプロトコルのオーバヘッドは無視むしされる。

携帯けいたい電話でんわネットワークの容量ようりょうは、1 MHz の周波数しゅうはすうスペクトルじょうでの最大さいだい同時どうじ接続せつぞく回線かいせんすうでもあらわされ、Erlangs//MHz/cell、Erlangs/MHz/sector、Erlangs/MHz/km² といった単位たんいになる。この情報じょうほうげん符号ふごう手法しゅほう(データ圧縮あっしゅく)にも影響えいきょうされ、アナログ携帯けいたい電話でんわネットワークでも使つかわれる。

れい: 周波数しゅうはすう分割ぶんかつ多元たげん接続せつぞく (FDMA) と固定こていチャネル (FCA) にもとづく携帯けいたい電話でんわシステムで周波数しゅうはすうさい利用りよう係数けいすうが 4 であるとき、かく基地きちきょくぜん利用りよう可能かのう周波数しゅうはすうスペクトルの 1/4 にアクセスできる。したがって、最大さいだいシステムスペクトル効率こうりつ(bit/s/Hz/site)はリンクスペクトル効率こうりつの 1/4 となる。かく基地きちきょくが3つのセクタアンテナで3セルに分割ぶんかつできる場合ばあい、これを 4/12 さい利用りようパターンとぶ。かくセルは利用りよう可能かのうなスペクトルの 1/12 にアクセスするので、システムスペクトル効率こうりつ(bit/s/Hz/cell または bit/s/Hz/sector)は、リンクスペクトル効率こうりつの 1/12 となる。

リンクスペクトル効率こうりつ(bit/s/Hz)がひくいからといって、システムスペクトル効率こうりつ観点かんてんかられば、かならずしも符号ふごう方式ほうしき効率こうりつであることを意味いみしない。たとえば、CDMAスペクトラム拡散かくさん単一たんいつ通信つうしん(あるいは1人ひとりのユーザー)だけをるとスペクトル効率こうりつくない。しかし、おな周波数しゅうはすう帯域たいいき複数ふくすう通信つうしんかさねることができるため、システムスペクトル効率こうりつ非常ひじょうい。

れい: W-CDMA 3G 携帯けいたい電話でんわシステムでは、電話でんわをかけると最大さいだい 8,500 bit/s に圧縮あっしゅくされ、これが 5 MHz はば周波数しゅうはすうチャネルに拡散かくさんされる。このときのリンクのスループットは 8,500/5,000,000 = 0.0017 bit/s/Hz となる。ここで、おなじセルないで100けんの(無音むおんでない)電話でんわ同時どうじ可能かのうであるとする。かく基地きちきょくが3方向ほうこうのセクタアンテナによって3セルに分割ぶんかつされるなら、スペクトラム拡散かくさんにより、周波数しゅうはすうさい利用りよう係数けいすうが 1 よりちいさくなる。このときのシステムスペクトル効率こうりつは 1 · 100 · 0.0017 = 0.17 bit/s/Hz/site または 0.17/3 = 0.06 bit/s/Hz/cell(または bit/s/Hz/sector)となる。

スペクトル効率こうりつは、固定こてい/動的どうてきなチャネルて、電力でんりょく制御せいぎょ、リンクアダプテーションといった無線むせん資源しげん管理かんり技法ぎほうによって改善かいぜんされる。

比較ひかくひょう

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以下いかに、一般いっぱんてき通信つうしんシステムでのスペクトル効率こうりつしめす。

一般いっぱんてき通信つうしんシステムでのスペクトル効率こうりつ
サービス 規格きかく 周波数しゅうはすうチャネルごとビット毎秒まいびょう R

(Mbit/s)

周波数しゅうはすうチャネルごと帯域たいいきはば B

(MHz)

リンクスペクトル効率こうりつ R/B

(bit/s/Hz)

典型てんけいてき周波数しゅうはすうさい利用りよう係数けいすう 1/K システムスペクトル効率こうりつ

ほぼ R/B/K相当そうとう (bit/s/Hz/site)

だい世代せだい携帯けいたい電話でんわ (2G) GSM 1993 0.013•8 タイムスロット = 0.104 0.2 0.52 1/7 0.17 [1]
2.75G GSM + EDGE 最大さいだい 0.384 通常つうじょう 0.20 0.2 最大さいだい 1.92 通常つうじょう 1.00 1/7 0.33 [1]
2.75G IS-136HS + EDGE 最大さいだい 0.384 通常つうじょう 0.27 0.2 最大さいだい 1.92 通常つうじょう 1.35 1/7 0.45 [1]
だいさん世代せだい携帯けいたい電話でんわ (3G) W-CDMA FDD 1997 携帯けいたいあたり最大さいだい 0.384 5 携帯けいたいたり最大さいだい 0.077 1/7 [よう出典しゅってん] 0.51
3.5G HSDPA 2007 携帯けいたいたり最大さいだい 14.4 5 携帯けいたいたり最大さいだい 2.88 1/7 [よう出典しゅってん] 0.71
3.5G HSOPA OFDMA 携帯けいたいたり最大さいだい 100 10 携帯けいたいたり最大さいだい 5 1/7 [よう出典しゅってん] 0.71
だいさん世代せだい携帯けいたい電話でんわ (3G) CDMA2000 1x 携帯けいたいたり最大さいだい 0.144 1.25 携帯けいたいたり最大さいだい 0.115 1/7 [よう出典しゅってん] 0.51
Wi-Fi IEEE 802.11a/g 2003 最大さいだい 54 20 最大さいだい 2.7 1/3 0.9
Wi-Fi IEEE 802.11n Draft 2.0 2007 最大さいだい 144.4 20 最大さいだい 7.22 1/3 2.4
WiMAX IEEE 802.16 2004 96 20 (1.75, 3.5, 7...) 4.8 1/4 1.2
デジタルラジオ DAB 0.576 ~ 1.152 1.712 0.34 ~ 0.67 1/5 0.08 ~ 0.17
デジタルラジオ DAB + SFN 0.576 ~ 1.152 1.712 0.34 ~ 0.67
デジタルテレビ DVB-T 最大さいだい 31.67 通常つうじょう 22.0 8 最大さいだい 4.0 通常つうじょう 2.8 1/5 0.55
デジタルテレビ DVB-T + SFN 最大さいだい 31.67 通常つうじょう 22.0 8 最大さいだい 4.0 通常つうじょう 2.8
デジタルテレビ DVB-H 5.5 ~ 11 8 0.68 ~ 1.4 1/5 0.14 ~ 0.28
デジタルテレビ DVB-H + SFN 5.5 ~ 11 8 0.68 ~ 1.4
ひかりファイバーによるデジタルケーブルTV 256-QAM 38 6 6.33 1 6.33

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c Anders Furuskär, Jonas Näslund and Håkan Olofsson, "Edge—Enhanced data rates for GSM and TDMA/136 evolution", Ericsson Review no 1, 1999, [1]

関連かんれん項目こうもく

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