SN比ひ

SN比ひ（エスエヌひ）は、通信つうしん理論りろんないし情報じょうほう理論りろんあるいは電子でんし工学こうがくなどで扱あつかわれる値ねで、信号しんごう (signal) と雑音ざつおん (noise) の比ひである。

信号しんごう雑音ざつおん比ひ (signal-noise ratio) または 信号しんごう対たい雑音ざつおん比ひ (signal-to-noise ratio) の略りゃく。SNR、S/Nとも略りゃくす。S/N比ひと書かくのは/が比ひを意味いみするため，比ひが二に重じゅうになり間違まちがいである。

desired signal to undesired signal ratio、D/U ratio ともいう。

SN比ひが高たかければ伝送でんそうにおける雑音ざつおんの影響えいきょうが小ちいさく、SN比ひが小ちいさければ影響えいきょうが大おおきい。SN比ひが大おおきいことをSN比ひがよい、小ちいさいことを悪わるいとも言いう。

定義ていぎ

SN比ひは、信号しんごうの分散ぶんさんを雑音ざつおんの分散ぶんさんで割わった値ねである。

SN比ひで考かんがえる信号しんごうと雑音ざつおんの定義ていぎは、何なにに着目ちゃくもくしているかによる。見方みかたによっては、通常つうじょう「雑音ざつおん」とされている成分せいぶんに着目ちゃくもくする場合ばあいなど、逆転ぎゃくてんすることさえありうる。雑音ざつおんは確かく率りつ過程かていとも限かぎらない。

また、考かんがえるのは、真しんの信号しんごうS と真しんの雑音ざつおんN の分散ぶんさんである。真しんの値ねが得えられず測定そくてい値ちしかない場合ばあいは、不偏ふへん分散ぶんさんで代用だいようする必要ひつようがある（データ数すうが多おおい場合ばあいはほとんど影響えいきょうしないが）。実測じっそくされるのは S +N であり、これと S を混同こんどうしない注意ちゅういも必要ひつようである。

数式すうしきでは

$S/N={\frac {P_{\mathrm {S} }}{P_{\mathrm {N} }}}=\left({\frac {A_{\mathrm {S} }}{A_{\mathrm {N} }}}\right)^{2},$

P_S = 信号しんごう電力でんりょく、

P_N = 雑音ざつおん電力でんりょく、

A_S = 信号しんごう電圧でんあつ（電流でんりゅう）の実効じっこう値ち、

A_N = 雑音ざつおん電圧でんあつ（電流でんりゅう）の実効じっこう値ち

と表あらわされる。分散ぶんさんは電気でんき工学こうがくでは交流こうりゅう成分せいぶんの電力でんりょく（パワー）となるので、P で表あらわしている。平均へいきん値ちに相当そうとうする直流ちょくりゅう成分せいぶんを除のぞいた、交流こうりゅう成分せいぶんのみを考慮こうりょする。A は偏差へんさの実効じっこう値ち（二乗にじょう平均へいきん平方根へいほうこん）で、電気でんき工学こうがくでは交流こうりゅう成分せいぶんの電流でんりゅうまたは電圧でんあつになる。

分野ぶんやや物理ぶつり量りょうに関かかわらず電力でんりょくやパワーと呼よび P で表あらわすことが多おおいが、実際じっさいは電力でんりょくとは限かぎらず、たとえば映像えいぞうでは輝度きどであり、測定そくていでは長ながさや質量しつりょうなどさまざまな物理ぶつり量りょうでありうる。

単位たんい（デシベル）

よく使つかわれる値ねの対比たいひ

dB	電力でんりょく比ひ	電流でんりゅう比ひ
0	1	1
3.010	2	1.414
6.021	4	2
10	10	3.162
20	100	10
40	10000	100
60	1000000	1000
90	10億おく	31623

多おおくの信号しんごうはダイナミックレンジが非常ひじょうに広ひろいので、通常つうじょうSN比ひは常用じょうよう対数たいすう（10を底そこにした対数たいすう）で表現ひょうげんされる。ただし、単位たんいにはデシベル (dB) を使つかうので、常用じょうよう対数たいすうの10倍ばいの数値すうちになる。電流でんりゅう比率ひりつで考かんがえれば20倍ばいである。

$[S/N]_{\mathrm {dB} }=10\log _{10}{\frac {P_{\mathrm {S} }}{P_{\mathrm {N} }}}=20\log _{10}{\frac {A_{\mathrm {S} }}{A_{\mathrm {N} }}}$

SN比ひと通信つうしん効率こうりつ

伝送でんそう路ろの通信つうしん路ろ容量ようりょうは、ノイズが正規せいき分布ぶんぷの場合ばあい、シャノン＝ハートレーの定理ていりより

$C\leq B\log _{2}\left(1+{\frac {S}{N}}\right)$

で表あらわされる。B は帯域たいいき幅はばである。等号とうごうは通信つうしん方式ほうしきが理想りそう的てきな場合ばあいに成なり立たつ。

SN比ひが高たかいほど通信つうしん効率こうりつがよくなる。また $S\gg N$ ならば

$C\leq 0.332[S/N]_{\mathrm {dB} }B$

と表あらわせ、通信つうしん効率こうりつはSN比ひをデシベルで表あらわした値ねに比例ひれいする。

その他たの信号しんごう対たい雑音ざつおん比ひ

SN比ひ以外いがいにも、信号しんごうと雑音ざつおんの比率ひりつを表あらわす方法ほうほうがある。

搬送波はんそうは対たい雑音ざつおん比ひ（CN比ひ）

「信号しんごう」を搬送波はんそうはとした場合ばあいは、搬送波はんそうは対たい雑音ざつおん比ひ（Carrier to noise ratio）あるいは C/N （シーエヌ、CN比ひ、CNR とも）といい、デジタル信号しんごう伝送でんそうでは主おもにこちらを使つかう。

搬送波はんそうは対たい干渉かんしょう波は比ひ（CI比ひ）

搬送波はんそうはと干渉かんしょう波はの比率ひりつを搬送波はんそうは対たい干渉かんしょう波は比ひと呼よぶ。ラジオなどの無線むせん通信つうしんにおいて、他たのチャネルをノイズ源げん（干渉かんしょう波は）とするときなどに使つかわれる。

ピーク信号しんごう対たい雑音ざつおん比ひ（PSNR）

最大さいだい電力でんりょくと雑音ざつおんの比率ひりつをピーク信号しんごう対たい雑音ざつおん比ひ（PSNR: Peak signal-to-noise ratio）と呼よぶ。

Eb/N0

1ビット当あたりの信号しんごう電力でんりょくと雑音ざつおん密度みつどの比ひをEb/N0 (energy per bit to noise power spectral density ratio) と呼よぶ。

SINAD

SN比ひの計算けいさん式しきにおいて、雑音ざつおん電力でんりょくの項こうに機器ききが生しょうじる歪ゆがみ電力でんりょくを加くわえたものをSINADと呼よぶ。受信じゅしん機き（特とくにFM）の出力しゅつりょく雑音ざつおんを表あらわすために用もちいる。

参考さんこう文献ぶんけん

• 田口たぐち, 玄げん一いち『統計とうけい解析かいせき』（改訂かいてい新版しんぱん）丸善まるぜん、1972年ねん。全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:69005496。http://ebsa.ism.ac.jp/ebooks/ebook/886。 

関連かんれん項目こうもく

• ノイズ
• 量子りょうし化か雑音ざつおん
• SNDR
• 音質おんしつ
• 明瞭めいりょう度ど