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ソシオメーター理論りろん

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進化しんか心理しんりがく観点かんてんからは、ひとのソシオメーターには地位ちいメーターや配偶はいぐう価値かちメーターなどの様々さまざまなメーターがあるとされ、おなじように様々さまざまなメーターがある航空機こうくうきのコックピットにたとえられる[1]

ソシオメーター理論りろんえい: Sociometer theory)は、自尊心じそんしんについての進化しんか心理しんりがくてき視点してんからの理論りろんであり、自尊心じそんしん対人たいじん関係かんけい尺度しゃくど(またはソシオメーター)であるとする理論りろんである。

解説かいせつ

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この理論りろんてき視点してんはじめてマーク・リアリー英語えいごばん同僚どうりょうたちによって1995ねん紹介しょうかいされた[2][3]。その、カークパトリックとエリスによってこれはさらに展開てんかいされた[4]。リアリーの研究けんきゅうにおいて、自尊心じそんしんをソシオメーターとして議論ぎろんされている。この理論りろんは、社会しゃかいてき感情かんじょう対人たいじんおよびうち人的じんてき行動こうどう自己じこ奉仕ほうしバイアス拒絶きょぜつへの反応はんのうといった心理しんりてき現象げんしょうへのはんおうとしてつくされた。この理論りろんもとづき、自尊心じそんしん他者たしゃからの受容じゅよう拒絶きょぜつ監視かんしする社会しゃかい関係かんけい、そして対人たいじん交流こうりゅう有効ゆうこうせい尺度しゃくどである[5]。このため、ソシオメーター理論りろんでは人間にんげん関係かんけい価値かち重点じゅうてんかれている。これは、あるひとひととの関係かんけいをどの程度ていど重視じゅうししているか、そしてそれが日々ひび生活せいかつにどのように影響えいきょうするかということである。様々さまざま研究けんきゅう調査ちょうさによって確認かくにんされているように、人間にんげん関係かんけい価値かちたかいとなされるひとは、よりたか自尊心じそんしん可能かのうせいたかい。

ソシオメーター理論りろんおも概念がいねんは、自尊心じそんしんのシステムが個人こじん現在げんざいおよび今後こんご関係かんけいしつ測定そくていするための尺度しゃくどとして機能きのうするということである。さらに、この自尊心じそんしん測定そくていはこれらふたつのタイプの関係かんけい関係かんけいてき評価ひょうか観点かんてんから評価ひょうかする。つまり、人々ひとびと個人こじんとの関係かんけいをどのように価値かちかんじているかである。個人こじん関係かんけいてき評価ひょうか否定ひていてきことなる場合ばあい関係かんけいてき価値かちひくいとかんじ、自尊心じそんしん低下ていかする可能かのうせいがある。一方いっぽう個人こじん関係かんけいてき評価ひょうか肯定こうていてきことなる場合ばあい関係かんけいてき価値かちたかいとかんじ、自尊心じそんしん上昇じょうしょうする可能かのうせいがある[6]

リアリーによれば、人間にんげん関係かんけい価値かちもっとおおきな影響えいきょうあたえる5つの主要しゅようなグループがあり、それらはつぎのように分類ぶんるいされる。①マクロレベル(たとえばコミュニティ)②手段しゅだんてき連合れんごうたとえばチームや委員いいんかい)③交際こうさい関係かんけい親族しんぞく関係かんけい友情ゆうじょうである。

そして人々ひとびと対人たいじん関係かんけい外的がいてき要因よういん関係かんけい価値かちにどの程度ていど依存いぞんしているかをるための研究けんきゅうおこなわれた。この研究けんきゅう目的もくてきは、学生がくせいによる評価ひょうかもとづいて活動かつどうのためのグループをえらぶことだった。研究けんきゅうでは、2つのグループがてられた。両方りょうほうのグループは、ピア評価ひょうか提出ていしゅつけた大学生だいがくせい構成こうせいされていた。ちがいは、コントロールグループの学生がくせいが①そのひと交流こうりゅうしたいか、②そのひと距離きょりくかをえらんだことである。以前いぜんたずねられたさい一部いちぶ学生がくせい他人たにん自分じぶんたいする意見いけん関心かんしんである、またはにしないとべていた。しかし、結果けっか分析ぶんせきされたとき、自尊心じそんしんおおきな変動へんどうがあることがわかった。関係かんけい価値かちひくいとされただい2グループ(距離きょりくグループ)にれられた人々ひとびとは、自尊心じそんしん低下ていかしていた。その結果けっかかれらが状況じょうきょう評価ひょうかする方法ほうほうそこなわれた。関係かんけい価値かちたかいとかんじられただい1グループでは、自尊心じそんしんたかかった。これは、グループへの包摂ほうせつという基本きほんてき人間にんげんのニーズに進化しんか根拠こんきょがあること、および社会しゃかいてき受容じゅよう周辺しゅうへんにいることの負担ふたんしめ証拠しょうこをいくらか提供ていきょうしている[5]

キャメロンとスティンソンはさらにソシオメーター理論りろん定義ていぎをレビューし[7]概念がいねんの2つの重要じゅうよう構成こうせい要素ようそ強調きょうちょうしている。

社会しゃかいてき受容じゅよう拒絶きょぜつ具体ぐたいてき経験けいけんは、自身じしん価値かち社会しゃかいてきパートナーとしての努力どりょく表現ひょうげん形成けいせいするために内面ないめんされる。②自尊心じそんしんたかひとは、他者たしゃから価値かちみとめられているとかんじることがおおい。自尊心じそんしんひくひとは、社会しゃかいてきパートナーとしての自分じぶん価値かち疑問ぎもんち、その不安ふあん将来しょうらい関係かんけい悪影響あくえいきょうおよぼすことがおおい。

ソシオメーター理論りろん関連かんれんする自尊心じそんしんのタイプ

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1. 状態じょうたい自尊心じそんしんは、個人こじん現在げんざい関係かんけいてき評価ひょうか測定そくていし、その個人こじん即座そくざ状況じょうきょう他者たしゃれられる可能かのうせい排除はいじょされる可能かのうせい評価ひょうかする[6][8]状態じょうたい自尊心じそんしんシステムは、関係かんけい評価ひょうか関連かんれんするがかりを監視かんしし、排除はいじょ関連かんれんするがかりが検出けんしゅつされると、感情かんじょうてきおよび動機どうきてき結果けっか応答おうとうする[6]

2. 特性とくせい自尊心じそんしんは、個人こじん社会しゃかいてき状況じょうきょうれられるか拒絶きょぜつされるかの主観しゅかんてき尺度しゃくどである[6]。この形式けいしき自尊心じそんしんは、個人こじん社会しゃかいてき状況じょうきょう評価ひょうかするのに役立やくだち、現在げんざいまたは将来しょうらい関係かんけい長期ちょうきてき尊重そんちょうされ価値かちがあるかどうかを推定すいていする。

3. 全体ぜんたいてき自尊心じそんしんは、個人こじんことなる人種じんしゅ民族みんぞく、コミュニティがその個人こじんについてなにうかの可能かのうせい全体ぜんたいてき見通みとおしを評価ひょうかするために発揮はっきする安定あんていした、内的ないてき自尊心じそんしん尺度しゃくどである[6]。しばしば、この内的ないてき自尊心じそんしん尺度しゃくどは、個人こじん自尊心じそんしん通常つうじょうのレベルを下回したまわった場合ばあい関係かんけいてき評価ひょうか回復かいふくするのに有益ゆうえきである。

4. 領域りょういき特有とくゆう自尊心じそんしんは、個人こじん社会しゃかいてき学術がくじゅつてき運動うんどうてき状況じょうきょうなど、自分じぶん自身じしん成果せいか評価ひょうかする尺度しゃくどであり、それによって自尊心じそんしんわる可能かのうせいがある[6]。この領域りょういき特有とくゆう尺度しゃくどは、現在げんざいのパフォーマンスにおける例外れいがい特定とくていするための効果こうかてき方法ほうほうであり、あやまった傾向けいこうたとえば、つね成績せいせきひくいということ)をつくすのをける。

支持しじする証拠しょうこ

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ソシオメーター理論りろん支持しじは、オランダでおこなわれた国際こくさいてき横断おうだんてき研究けんきゅうからられた。この研究けんきゅうでは、1599にんの7さいと8さいどもたちの自尊心じそんしん評価ひょうかした[9]。そして、だいいちども時代じだいにおける自尊心じそんしんがどのように発達はったつするか、そしてだい自尊心じそんしん変化へんかする同年代どうねんだい家族かぞく関係かんけいとも発達はったつするか調査ちょうさされ、個人こじんあいだちがいと個人こじんないでの社会しゃかいてき支援しえん時間じかんてき変化へんか評価ひょうかされた[9]中間なかま児童じどう平均へいきんレベルの自尊心じそんしん安定あんていしており、変化へんかられなかった。さらに、個人こじん内外ないがい評価ひょうかはどちらも自尊心じそんしんについての肯定こうていてき報告ほうこくをもたらし、自己じこ報告ほうこく測定そくてい参加さんかしゃ完成かんせいしたこれらの評価ひょうかからより強固きょうこ社会しゃかいてきネットワークがあきらかになった[9]

キャメロンとスティンソンは、受容じゅよう拒絶きょぜつ経験けいけん短期たんきてきおよび長期ちょうきてき自尊心じそんしんのレベルにつよ影響えいきょうおよぼすことをしめし、ふたたびソシオメーター理論りろん支持しじしめした[7]

  1. 自尊心じそんしん社会しゃかいてき受容じゅよう拒絶きょぜつ反応はんのうする。つまり、状態じょうたい自尊心じそんしん(その自尊心じそんしん)は、社会しゃかいてき受容じゅよう拒絶きょぜつ両方りょうほうおおきく反応はんのうする。受容じゅよう状態じょうたい自尊心じそんしんたかめ、拒絶きょぜつ自尊心じそんしん否定ひていてき見方みかたこすことがられている[7]実験じっけんしつ設定せっていでは、これらの変化へんかは、社会しゃかいてき拒絶きょぜつ受容じゅよう将来しょうらいてき予測よそく過去かこ経験けいけんおもすことにより、個人こじん自尊心じそんしん通常つうじょうのレベルから主観しゅかんてき逸脱いつだつする可能かのうせいがある。
  2. 全体ぜんたいてき自尊心じそんしん社会しゃかいてき価値かち認識にんしき関連かんれんしている。つまり、社会しゃかいてき価値かち自尊心じそんしん測定そくていするためのソシオメーターとして利用りようできる概念がいねんである。さらに、この関連かんれんは、全体ぜんたいてき自尊心じそんしん自己じこかんをトップダウン方式ほうしき影響えいきょうするために存在そんざいするとかんがえられている。このトップダウンプロセスでは、通常つうじょう社会しゃかいてき状況じょうきょうでの帰属きぞくかん関連付かんれんづけられる特性とくせいが、自尊心じそんしん仲介ちゅうかいする役割やくわりたす。さらに、このトップダウン方式ほうしき全体ぜんたいてき自尊心じそんしん自己じこかん影響えいきょうする場合ばあい個人こじん帰属きぞくかん社会しゃかいてき価値かち認識にんしき全体ぜんたいてき自尊心じそんしんせい相関そうかん関係かんけいにあるべきである[7]
  3. 自尊心じそんしん受容じゅよう拒絶きょぜつへの反応はんのう調節ちょうせつする。つまり、ソシオメーター理論りろん自尊心じそんしんまけ変化へんか自尊心じそんしんシステムのバランスをくずし、このソシオメーターがこれらの不一致ふいっち区別くべつし、帰属きぞくかん社会しゃかいてき状況じょうきょうにおける個人こじん自己じこ価値かち回復かいふくするための行動こうどう可能かのうにすることを強調きょうちょうしている[7]

出典しゅってん

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  1. ^ まこと, 沼崎ぬまざき (2019). 適応てきおうてき機能きのうから自尊心じそんしん. 心理しんりがくワールド 87: 27–28. https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2019/10/87-27-28.pdf. 
  2. ^ Leary, M. R., & Downs, D. L. (1995). Interpersonal functions of the self-esteem motive: The self-esteem system as a sociometer. In M. H. Kernis (Ed.), Efficacy, Agency, and Self-Esteem (pp. 123-144). New York: Plenum Press.
  3. ^ Leary, Mark R.; Tambor, Ellen S.; Terdal, Sonja K.; Downs, Deborah L. (1995). “Self-esteem as an interpersonal monitor: The sociometer hypothesis”. Journal of Personality and Social Psychology 68 (3): 518–530. doi:10.1037/002-3514.68.3.518. 
  4. ^ Kirkpatrick, L. A., & Ellis, B. J. (2001). An evolutionary-psychological approach to self-esteem: multiple domains and multiple functions. In G. J. O. Fletcher & M. S. Clark (Eds.), Blackwell handbook of social psychology: Interpersonal processes (pp. 411-436). Oxford, UK: Blackwell Publishers.
  5. ^ a b Leary, Mark R. (2005). “Sociometer theory and the pursuit of relational value: Getting to the root of self-esteem”. European Review of Social Psychology 16: 75–111. doi:10.1080/10463280540000007. 
  6. ^ a b c d e f Leary, Mark R.; Baumeister, Roy F. (2000), “The nature and function of self-esteem: Sociometer theory”, Advances in Experimental Social Psychology Volume 32 (Elsevier): pp. 1–62, doi:10.1016/s0065-2601(00)80003-9, ISBN 978-0-12-015232-2 
  7. ^ a b c d e Cameron, Jessica J.; Stinson, Danu Anthony (2017), Zeigler-Hill, Virgil; Shackelford, Todd K., eds. (英語えいご), Sociometer Theory, Springer International Publishing, pp. 1–6, doi:10.1007/978-3-319-28099-8_1187-1, ISBN 9783319280998 
  8. ^ Leary, Mark R.; Downs, Deborah L. (1995), “Interpersonal Functions of the Self-Esteem Motive”, Efficacy, Agency, and Self-Esteem (Springer US): pp. 123–144, doi:10.1007/978-1-4899-1280-0_7, ISBN 978-1-4899-1282-4 
  9. ^ a b c Magro, Sophia W.; Utesch, Till; Dreiskämper, Dennis; Wagner, Jenny (2018-09-30). “Self-esteem development in middle childhood: Support for sociometer theory” (英語えいご). International Journal of Behavioral Development 43 (2): 118–127. doi:10.1177/0165025418802462. 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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