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アサーティブネス

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

アサーティブネスもしくはアサーションえい:Assertiveness、assertion、わけ自己じこ表現ひょうげん意見いけん表明ひょうめい)は、自他じた尊重そんちょうした自己じこ表現ひょうげんもしくは自己じこ主張しゅちょうのことである[1][2]。アサーティブネスは、行動こうどう療法りょうほうにその起源きげんち、アサーション・トレーニングとの名称めいしょうでトレーニングがおこなわれてきた[3]。また、アサーティブなコミュニケーションとは、自分じぶん相手あいて人権じんけん (アサーティブけん) を尊重そんちょうしたうえで、自分じぶん意見いけん気持きもちをその適切てきせつないいかた表現ひょうげんすることであるとされる。一般いっぱんにもコミュニケーション重要じゅうよう技法ぎほうであるとかんがえられ、自己じこ啓発けいはつしょやビジネスしょなどでもしばしばげられている。

アサーティブネスには、社会しゃかい効果こうかてき適応てきおうするための社会しゃかい技能ぎのうとしての側面そくめんと、人間にんげんには自己じこ主張しゅちょうする権利けんりがあるという思想しそうとしての側面そくめんがある[2]

定義ていぎ

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非常ひじょうにあいまいで定義ていぎむずかしい概念がいねんであるが、おおくの場合ばあい適切てきせつ自己じこ主張しゅちょう」「自他じた尊重そんちょうした自己じこ表現ひょうげん」などとされる。この概念がいねんかぎは「相手あいて尊重そんちょうすること」もしくは「適切てきせつであること」という次元じげんと「自分じぶん尊重そんちょうすること」もしくは「みずからの権利けんり主張しゅちょうすること」という2つの次元じげん統合とうごうもしくは止揚しようにある[2]。この統合とうごうもしくは止揚しよう仕方しかたによってさまざまな定義ていぎ可能かのうである。行動こうどう分析ぶんせきがく観点かんてんからは機能きのうてきアサーションという定義ていぎ提案ていあんされている[4]

アサーティブの4原則げんそくは、率直そっちょく対等たいとう自己じこ責任せきにん誠実せいじつである[5]

アサーティブネスとそれ以外いがい差異さい

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アサーティブネスとは、自他じた尊重そんちょうした適切てきせつ自己じこ主張しゅちょうであるという意味いみで、のコミュニケーション方略ほうりゃくとはことなっている。コミュニケーションの方略ほうりゃくおも以下いかの3つにけられる[6]

  • 受身うけみてきなコミュニケーションいたいことがえずに、自分じぶん意思いし権利けんり自分じぶん自身じしんまもれないようなコミュニケーション。
  • 攻撃こうげきてきなコミュニケーション相手あいて権利けんり尊重そんちょうせず、自分じぶん権利けんりばかりを主張しゅちょうするコミュニケーション。
  • アサーティブなコミュニケーション相手あいて自己じこ主張しゅちょうする権利けんりみとめたうえで、自分じぶん自身じしん意思いし権利けんり主張しゅちょうするコミュニケーション。

ただし、アサーティブネスとそれ以外いがいのコミュニケーションの境界きょうかいせん恣意しいてきであり、これらはしばしばかさなりあったり、対人たいじんてき社会しゃかいてき文脈ぶんみゃくによっては容易よういにずれんだりすることが指摘してきされている[2]。また、アサーティブネスとそれ以外いがいのコミュニケーションをこのような3パターンに分類ぶんるいするのはもっともシンプルでわかりやすいが、これら以外いがいだい4、だい5のアサーティブでないコミュニケーションを追加ついかすることも可能かのうである。しかしながら、そういった区別くべつには実証じっしょうてき根拠こんきょかならずしもあるわけではない。

アサーティブネスにかんするさまざまな立場たちば

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アサーティブネスは、あるしゅ理想りそうてきなコミュニケーションのスタイルを提案ていあんしているという意味いみで、多種たしゅ多様たよう立場たちばから注目ちゅうもくされてきている。たとえば以下いかのような立場たちばがあげられる。

  • カウンセリングや自己じこ啓発けいはつ立場たちば[7][8]
  • 社会しゃかい心理しんりがく立場たちば[9]
  • 認知にんち行動こうどう療法りょうほう立場たちば[3][10]

日本にっぽんでアサーティブネスをひろめたのは、平木ひらき典子のりこであり、現在げんざいでも平木ひらきのアサーティブネスの立場たちばもっと日本にっぽんれられている。

アサーション・トレーニング

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トレーニング方法ほうほう起源きげん行動こうどう療法りょうほう由来ゆらいし、現在げんざいでは、認知にんち行動こうどう療法りょうほう方法ほうほうろんれられている[3]。トレーニングは基本きほんてきに、アサーションについての心理しんり教育きょういくからはじまり、参加さんかしゃにとってアサーションがどのようにむずかしいかについてのアセスメント、トレーナーがお手本てほんしめモデリング参加さんかしゃ実際じっさいにそれをやってせたさいにフィードバックをかえすといった内容ないよう構成こうせいされる[11]。これは一般いっぱんてきなソーシャル・スキル・トレーニングと同様どうよう手続てつづきである。

アサーティブネスの技法ぎほう

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こわれたレコード

こわれたレコード」という技法ぎほうは、アサーティブネスの専門せんもんたちによって支持しじされ、ひろおこなわれている[12]。これは、不当ふとう抵抗ていこう出会であったら、その都度つど自分じぶん要求ようきゅうかえしてべるという技法ぎほうである。この言葉ことば由来ゆらいは、表面ひょうめんきずのあるレコードをかけると、蓄音機ちくおんきはりんで、すう秒間びょうかん録音ろくおんが、無限むげんかえされることからている。この技法ぎほう短所たんしょは、抵抗ていこう持続じぞくするときには、かえすにつれて、はな要求ようきゅうちからうしなってゆくことである。要求ようきゅう過度かどかえされると、言葉ことば権威けんいぎゃく低下ていかする。そのような場合ばあいには、なんらかの強制きょうせい手段しゅだん必要ひつようとなる。

のれんにうで

「のれんにうでし」とばれる技法ぎほう提唱ていしょうするひともいる[13]敵対てきたいしゃがあなたを批判ひはんしても、その言葉ことば一部いちぶ限定げんていてき真実しんじつ見出みいだし、それに賛成さんせいするという技法ぎほうである。一部分いちぶぶんだけ、あるいは原則げんそくだけなら、賛意さんい表明ひょうめいすることも可能かのうである。

欠点けってんについての質問しつもん

欠点けってんについてへの質問しつもんは、特定とくていのことについて、さらに批判ひはんもとめるものである[14]。しかし、相手あいてからの批判ひはん一部いちぶ賛成さんせいして、自分じぶん欠点けってんみとめたとしても、それはけっして相手あいてからの要求ようきゅう受諾じゅだくするということではない。

わたし」を主語しゅごにすること

わたし」を主語しゅごにしてべると、自分じぶん立場たちばにおける感情かんじょう希望きぼうを、他人たにんへの評価ひょうか表明ひょうめいしたり、他人たにんへの感情かんじょうめたりすることなく、つたえることができる。

アサーションでのはなかたの4構成こうせい

はなしかたのエッセンスは、内容ないようよっつの部分ぶぶんけて構成こうせいするところにある。 ①事実じじつ、②事実じじつたいする自分じぶん気持きもち(I message)、③事実じじつ気持きもちをまえての提案ていあん、④提案ていあん否定ひていされた場合ばあい代案だいあん提示ていじして選択せんたくせまる、である。 ①事実じじつには客観きゃっかんせいがあるので、否定ひていしづらい。②それにたいする自分じぶん気持きもちは、自分じぶんしんなかのことなので、相手あいて否定ひていしづらい。 否定ひていしづらいことをつたえたのち、③の提案ていあんをされると、人間にんげん心理しんりとして、提案ていあん否定ひていしづらい。 その提案ていあんを、相手あいて否定ひていした場合ばあいそなえて、さらに代案だいあん提示ていじされて選択せんたくせまられると、代案だいあん否定ひていしづらい。 このように、相手あいて否定ひていしづらい状況じょうきょうみちびくことが、アサーティブネスの技法ぎほうである。 この技法ぎほうを、「DESC(デスク)ほう」とぶことがある。①Describe(説明せつめいする)、②Express(説明せつめいする)、③Suggest(提案ていあんする)、④Choose(選択せんたくする)の頭文字かしらもじをつないだものである。 あるいは、日本語にほんごで、「みかんていいな」とりゃくするおぼかたもある。①み=たこと、②かん=かんじたこと、③てい=提案ていあん、④いな=否定ひていされた場合ばあい代案だいあん、の頭文字かしらもじをつないだものである。

応用おうよう

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アサーティブネスの訓練くんれんが、アルコール使用しよう障害しょうがい予防よぼう効果こうかがあるとべる研究けんきゅうがいくつかある[15]

出典しゅってん

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  1. ^ 平木ひらき典子のりこ改訂かいていばん アサーション・トレーニング - さわやかな〈自己じこ表現ひょうげん〉のために』日本にっぽん精神せいしん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ、2009ねんISBN 4931317154 
  2. ^ a b c d 三田みたむらおおせ松見まつみ淳子じゅんこ 2010b.
  3. ^ a b c 三田みたむらおおせ 2010.
  4. ^ 三田みたむらおおせ松見まつみ淳子じゅんこ 2010a.
  5. ^ アサーティブ・コミュニケーションとは?, i-learning, https://www.i-learning.jp/topics/column/business/assertive-communication/ 2024ねん7がつ21にち閲覧えつらん 
  6. ^ Alberti, R. E., & Emmons, M. L. 1970.
  7. ^ 平木ひらき典子のりこ、2009.
  8. ^ Robert E. Alberti and Michael L. Emmons、1992.
  9. ^ Trower, P. (1979). Fundamentals of interpersonal behaviour: A social psychological perspective. New York: Plenum. 
  10. ^ マーシャ・M・リネハン、(かんやく)大野おおのひろし、(翻訳ほんやく)岩坂いわさかあきら井沢いざわいさお一朗いちろう松岡まつおかただし石井いしい留美るみ阿佐あさ雅弘まさひろ境界きょうかいせいパーソナリティ障害しょうがい弁証法べんしょうほうてき行動こうどう療法りょうほう―DBTによるBPDの治療ちりょうまことしん書房しょぼう、2007ねんISBN 978-4414414240 Cognitive-Behavioral Treatment of Borderline Personality Disorder
  11. ^ McFall, R. M., & Marston, A. R. (1970). “An experimental investigation of behavior rehearsal in assertion training”. Journal of Abnormal Psychology 76 (2): 295-303. 
  12. ^ Smith, M. J. (1975). When I say no, I feel guilty. New York: Bantam Books. p73 邦訳ほうやく「うまくいくにん」のあたまのいいはなかた ISBN 978-4198620479
  13. ^ 同書どうしょp104
  14. ^ 同書どうしょp120
  15. ^ DrugAlcohol-rehab.com

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Bower, S. A. & Bower, G. H. (1991). "Asserting Yourself: A Practical Guide for Positive Change". 2nd ed. Reading, MA: Addison Wesley
  • Robert E. Alberti and Michael L. Emmons (1992). "Your Perfect Right : A Guide to Assertive Living". 6th ed. San Luis Obispo, CA: Impact Publishers
    →『改訂かいてい新版しんぱん 自己じこ主張しゅちょうトレーニング』(菅沼すがぬま憲治けんじジャレット純子じゅんこともやく東京とうきょう図書としょ、2009ねん
  • 勝間かつま和代かずよことわちから』 (文春ぶんしゅん新書しんしょ、2009ねん ISBN 9784166606825
  • 平木ひらき典子のりこ改訂かいていばん アサーション・トレーニング - さわやかな〈自己じこ表現ひょうげん〉のために』(日本にっぽん精神せいしん技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょ、2009ねん
  • 三田みたむらおおせ松見まつみ淳子じゅんこ「アサーション(自他じた尊重そんちょうする自己じこ表現ひょうげん)とはなにか? ―“さわやか”と“しなやか”、2つのアサーションの共通きょうつう了解りょうかいもとめて―」『構造こうぞう構成こうせい主義しゅぎ研究けんきゅうだい4かん、2010b、158-182ぺーじISBN 476282707X 
  • 三田みたむらおおせ行動こうどう療法りょうほうにおけるアサーション・トレーニング研究けんきゅう歴史れきし課題かだい」『人文じんぶん論究ろんきゅうだい58かんだい3ごう関西学院大学かんせいがくいんだいがく人文じんぶん学会がっかい、2010ねん、95-107ぺーじ 
  • 三田みたむらおおせ, 松見まつみ淳子じゅんこ相互そうご作用さようとしての機能きのうてきアサーション」『パーソナリティ研究けんきゅうだい18かんだい3ごう日本にっぽんパーソナリティ心理しんり学会がっかい、2010a、220-232ぺーじ 

外部がいぶリンク

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