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アサーティブネス もしくはアサーション (英 えい :Assertiveness、assertion、訳 わけ :自己 じこ 表現 ひょうげん ・意見 いけん 表明 ひょうめい )は、自他 じた を尊重 そんちょう した自己 じこ 表現 ひょうげん もしくは自己 じこ 主張 しゅちょう のことである[ 1] 。アサーティブネスは、行動 こうどう 療法 りょうほう にその起源 きげん を持 も ち、アサーション・トレーニングとの名称 めいしょう でトレーニングがおこなわれてきた。また、アサーティブなコミュニケーションとは、自分 じぶん と相手 あいて の人権 じんけん (アサーティブ権 けん ) を尊重 そんちょう した上 うえ で、自分 じぶん の意見 いけん や気持 きも ちをその場 ば に適切 てきせつ ない方 いかた で表現 ひょうげん することであるとされる。一般 いっぱん にもコミュニケーション の重要 じゅうよう な技法 ぎほう であると考 かんが えられ、自己 じこ 啓発 けいはつ 書 しょ やビジネス書 しょ などでもしばしば取 と り上 あ げられている。
アサーティブネスには、社会 しゃかい に効果 こうか 的 てき に適応 てきおう するための社会 しゃかい 技能 ぎのう としての側面 そくめん と、人間 にんげん には自己 じこ 主張 しゅちょう する権利 けんり があるという思想 しそう としての側面 そくめん がある
非常 ひじょう にあいまいで定義 ていぎ の難 むずか しい概念 がいねん であるが、多 おお くの場合 ばあい 「適切 てきせつ な自己 じこ 主張 しゅちょう 」「自他 じた を尊重 そんちょう した自己 じこ 表現 ひょうげん 」などとされる。この概念 がいねん の鍵 かぎ は「相手 あいて を尊重 そんちょう すること」もしくは「適切 てきせつ であること」という次元 じげん と「自分 じぶん を尊重 そんちょう すること」もしくは「自 みずか らの権利 けんり を主張 しゅちょう すること」という2つの次元 じげん の統合 とうごう もしくは止揚 しよう にある。この統合 とうごう もしくは止揚 しよう の仕方 しかた によってさまざまな定義 ていぎ が可能 かのう である。行動 こうどう 分析 ぶんせき 学 がく の観点 かんてん からは機能 きのう 的 てき アサーション という定義 ていぎ が提案 ていあん されている。
アサーティブの4原則 げんそく は、率直 そっちょく 、対等 たいとう 、自己 じこ 責任 せきにん 、誠実 せいじつ である[ 5] 。
アサーティブネスとは、自他 じた を尊重 そんちょう した適切 てきせつ な自己 じこ 主張 しゅちょう であるという意味 いみ で、他 た のコミュニケーション方略 ほうりゃく とは異 こと なっている。コミュニケーションの方略 ほうりゃく は主 おも に以下 いか の3つに分 わ けられる。
受身 うけみ 的 てき なコミュニケーション :言 い いたいことが言 い えずに、自分 じぶん の意思 いし や権利 けんり を自分 じぶん 自身 じしん で守 まも れないようなコミュニケーション。
攻撃 こうげき 的 てき なコミュニケーション :相手 あいて の権利 けんり を尊重 そんちょう せず、自分 じぶん の権利 けんり ばかりを主張 しゅちょう するコミュニケーション。
アサーティブなコミュニケーション :相手 あいて の自己 じこ 主張 しゅちょう する権利 けんり を認 みと めたうえで、自分 じぶん 自身 じしん の意思 いし や権利 けんり を主張 しゅちょう するコミュニケーション。
ただし、アサーティブネスとそれ以外 いがい のコミュニケーションの境界 きょうかい 線 せん は恣意 しい 的 てき であり、これらはしばしば重 かさ なりあったり、対人 たいじん 的 てき ・社会 しゃかい 的 てき な文脈 ぶんみゃく によっては容易 ようい にずれ込 こ んだりすることが指摘 してき されている。また、アサーティブネスとそれ以外 いがい のコミュニケーションをこのような3パターンに分類 ぶんるい するのは最 もっと もシンプルでわかりやすいが、これら以外 いがい の第 だい 4、第 だい 5のアサーティブでないコミュニケーションを追加 ついか することも可能 かのう である。しかしながら、そういった区別 くべつ には実証 じっしょう 的 てき な根拠 こんきょ が必 かなら ずしもあるわけではない。
アサーティブネスは、ある種 しゅ の理想 りそう 的 てき なコミュニケーションのスタイルを提案 ていあん しているという意味 いみ で、多種 たしゅ 多様 たよう な立場 たちば から注目 ちゅうもく されてきている。たとえば以下 いか のような立場 たちば があげられる。
カウンセリングや自己 じこ 啓発 けいはつ の立場 たちば [ 8]
社会 しゃかい 心理 しんり 学 がく の立場 たちば [ 9]
認知 にんち 行動 こうどう 療法 りょうほう の立場 たちば [ 10]
日本 にっぽん でアサーティブネスを広 ひろ めたのは、平木 ひらき 典子 のりこ であり、現在 げんざい でも平木 ひらき のアサーティブネスの立場 たちば は最 もっと も日本 にっぽん で受 う け入 い れられている。
トレーニング方法 ほうほう の起源 きげん は行動 こうどう 療法 りょうほう に由来 ゆらい し、現在 げんざい では、認知 にんち 行動 こうどう 療法 りょうほう の方法 ほうほう 論 ろん が取 と り入 い れられている。トレーニングは基本 きほん 的 てき に、アサーションについての心理 しんり 教育 きょういく から始 はじ まり、参加 さんか 者 しゃ にとってアサーションがどのように難 むずか しいかについてのアセスメント、トレーナーがお手本 てほん を示 しめ すモデリング 、参加 さんか 者 しゃ が実際 じっさい にそれをやって見 み せた際 さい にフィードバックを返 かえ すといった内容 ないよう で構成 こうせい される[ 11] 。これは一般 いっぱん 的 てき なソーシャル・スキル・トレーニングと同様 どうよう の手続 てつづ きである。
壊 こわ れたレコード
「壊 こわ れたレコード」という技法 ぎほう は、アサーティブネスの専門 せんもん 家 か 達 たち によって支持 しじ され、広 ひろ く行 おこな われている[ 12] 。これは、不当 ふとう な抵抗 ていこう に出会 であ ったら、その都度 つど 、自分 じぶん の要求 ようきゅう を繰 く り返 かえ して述 の べるという技法 ぎほう である。この言葉 ことば の由来 ゆらい は、表面 ひょうめん に傷 きず のあるレコード をかけると、蓄音機 ちくおんき の針 はり が跳 と んで、数 すう 秒間 びょうかん の録音 ろくおん が、無限 むげん に繰 く り返 かえ されることから来 き ている。この技法 ぎほう の短所 たんしょ は、抵抗 ていこう が持続 じぞく する時 とき には、繰 く り返 かえ すにつれて、話 はな し手 て の要求 ようきゅう が力 ちから を失 うしな ってゆくことである。要求 ようきゅう が過度 かど に繰 く り返 かえ されると、言葉 ことば の権威 けんい は逆 ぎゃく に低下 ていか する。そのような場合 ばあい には、他 た の何 なん らかの強制 きょうせい 手段 しゅだん が必要 ひつよう となる。
のれんに腕 うで 押 お し
「のれんに腕 うで 押 お し」と呼 よ ばれる技法 ぎほう を提唱 ていしょう する人 ひと もいる[ 13] 。敵対 てきたい 者 しゃ があなたを批判 ひはん しても、その言葉 ことば の一部 いちぶ に限定 げんてい 的 てき に真実 しんじつ を見出 みいだ し、それに賛成 さんせい するという技法 ぎほう である。一部分 いちぶぶん だけ、あるいは原則 げんそく だけなら、賛意 さんい を表明 ひょうめい することも可能 かのう である。
欠点 けってん についての質問 しつもん
欠点 けってん についてへの質問 しつもん は、特定 とくてい のことについて、さらに批判 ひはん を求 もと めるものである[ 14] 。しかし、相手 あいて からの批判 ひはん の一部 いちぶ に賛成 さんせい して、自分 じぶん の欠点 けってん を認 みと めたとしても、それは決 けっ して相手 あいて からの要求 ようきゅう を受諾 じゅだく するということではない。
「私 わたし 」を主語 しゅご にすること
「私 わたし 」を主語 しゅご にして述 の べると、自分 じぶん の立場 たちば における感情 かんじょう や希望 きぼう を、他人 たにん への評価 ひょうか を表明 ひょうめい したり、他人 たにん への感情 かんじょう を責 せ めたりすることなく、伝 つた えることができる。
アサーションでの話 はな し方 かた の4部 ぶ 構成 こうせい
話 はなし の組 く み立 た て方 かた のエッセンスは、内容 ないよう を4 よっ つの部分 ぶぶん に分 わ けて構成 こうせい するところにある。
①事実 じじつ 、②事実 じじつ に対 たい する自分 じぶん の気持 きも ち(I message)、③事実 じじつ と気持 きも ちを踏 ふ まえての提案 ていあん 、④提案 ていあん が否定 ひてい された場合 ばあい の代案 だいあん を提示 ていじ して選択 せんたく を迫 せま る、である。
①事実 じじつ には客観 きゃっかん 性 せい があるので、否定 ひてい しづらい。②それに対 たい する自分 じぶん の気持 きも ちは、自分 じぶん の心 しん の中 なか のことなので、相手 あいて は否定 ひてい しづらい。
否定 ひてい しづらいことを伝 つた えた後 のち 、③の提案 ていあん をされると、人間 にんげん 心理 しんり として、提案 ていあん も否定 ひてい しづらい。
その提案 ていあん を、相手 あいて が否定 ひてい した場合 ばあい に備 そな えて、さらに代案 だいあん を提示 ていじ されて選択 せんたく を迫 せま られると、代案 だいあん は否定 ひてい しづらい。
このように、相手 あいて を否定 ひてい しづらい状況 じょうきょう に導 みちび くことが、アサーティブネスの技法 ぎほう である。
この技法 ぎほう を、「DESC(デスク)法 ほう 」と呼 よ ぶことがある。①Describe(説明 せつめい する)、②Express(説明 せつめい する)、③Suggest(提案 ていあん する)、④Choose(選択 せんたく する)の頭文字 かしらもじ をつないだものである。
あるいは、日本語 にほんご で、「みかんていいな」と略 りゃく する覚 おぼ え方 かた もある。①み=見 み たこと、②かん=感 かん じたこと、③てい=提案 ていあん 、④いな=否定 ひてい された場合 ばあい の代案 だいあん 、の頭文字 かしらもじ をつないだものである。
アサーティブネスの訓練 くんれん が、アルコール使用 しよう 障害 しょうがい の予防 よぼう に効果 こうか があると述 の べる研究 けんきゅう がいくつかある[ 15] 。
Bower, S. A. & Bower, G. H. (1991). "Asserting Yourself: A Practical Guide for Positive Change". 2nd ed. Reading, MA: Addison Wesley
Robert E. Alberti and Michael L. Emmons (1992). "Your Perfect Right : A Guide to Assertive Living". 6th ed. San Luis Obispo, CA: Impact Publishers
→『改訂 かいてい 新版 しんぱん 自己 じこ 主張 しゅちょう トレーニング』(菅沼 すがぬま 憲治 けんじ ・ジャレット純子 じゅんこ 共 とも 訳 やく 、東京 とうきょう 図書 としょ 、2009年 ねん )
勝間 かつま 和代 かずよ 『断 ことわ る力 ちから 』 (文春 ぶんしゅん 新書 しんしょ 、2009年 ねん ISBN 9784166606825 )
平木 ひらき 典子 のりこ 『改訂 かいてい 版 ばん アサーション・トレーニング - さわやかな〈自己 じこ 表現 ひょうげん 〉のために』(日本 にっぽん ・精神 せいしん 技術 ぎじゅつ 研究所 けんきゅうじょ 、2009年 ねん )
三田 みた 村 むら 仰 おおせ 、松見 まつみ 淳子 じゅんこ 「アサーション(自他 じた を尊重 そんちょう する自己 じこ 表現 ひょうげん )とは何 なに か? ―“さわやか”と“しなやか”、2つのアサーションの共通 きょうつう 了解 りょうかい を求 もと めて―」『構造 こうぞう 構成 こうせい 主義 しゅぎ 研究 けんきゅう 』第 だい 4巻 かん 、2010b、158-182頁 ぺーじ 、ISBN 476282707X 。
三田 みた 村 むら 仰 おおせ 「行動 こうどう 療法 りょうほう におけるアサーション・トレーニング研究 けんきゅう の歴史 れきし と課題 かだい 」『人文 じんぶん 論究 ろんきゅう 』第 だい 58巻 かん 第 だい 3号 ごう 、関西学院大学 かんせいがくいんだいがく 人文 じんぶん 学会 がっかい 、2010年 ねん 、95-107頁 ぺーじ 。
三田 みた 村 むら 仰 おおせ , 松見 まつみ 淳子 じゅんこ 「相互 そうご 作用 さよう としての機能 きのう 的 てき アサーション 」『パーソナリティ研究 けんきゅう 』第 だい 18巻 かん 第 だい 3号 ごう 、日本 にっぽん パーソナリティ心理 しんり 学会 がっかい 、2010a、220-232頁 ぺーじ 。