ドロップキック (フットボール)

ドロップキック（英語えいご: drop kick）は、様々さまざまなフットボールコードにおけるキックの一種いっしゅである。ボールを一度いちど地面じめんに落下らっか（ドロップ）させ、跳はね返かえってきたボールを蹴けるキックである。

ドロップキックはラグビーユニオンとラグビーリーグにおけるプレー再開さいかいや得点とくてんの方法ほうほう（ドロップゴール）として使つかわれる。また、サッカーのゴールキーパーはドロップキックを使つかってボールをプレーに戻もどすことが多おおい。オーストラリアンフットボールとグリッドアイアンフットボール（アメリカンフットボールおよびカナディアンフットボール）でもかつては広ひろく使つかわれたが、現在げんざいはほぼ使つかわれることはない。

ラグビー

パット・オウディー

ドロップキックの技術ぎじゅつ

「ドロップゴール」も参照さんしょう

ラグビーにおけるドロップキックは、まずボールの尖とがっている部分ぶぶんの一方いっぽうを下した側がわに向むけて、蹴けり足あしの上側うわがわに両手りょうてで保持ほじする。次つぎに蹴けり足あしの前方ぜんぽうの地面じめんにボールを落下らっかさせ、地面じめんに着ついた瞬間しゅんかん、あるいは直後ちょくごに蹴ける。ドロップキックは「ハーフボレー」とも呼よばれる。蹴けり足あしはわずかにインステップ側がわでボールに接触せっしょくすることが多おおい。

ラグビーユニオンのキックオフ（ドロップアウト）では、キッカーは飛ひ距離きょりよりも高たかくボールを蹴けり上あげることを目指めざす。そのため、ボールの下した側がわ近ちかくを蹴けれるように、ボールが地面じめんに落下らっかして弾はずみ始はじめた後のちにボールを蹴ける。

ラグビーリーグ

ラグビーリーグでは、守備しゅびチーム側がわがインゴールエリア内ないでタックルされた、またはノックオンした後のち、あるいは守備しゅびチームがタッチインゴールへとボールを出だした後のちにゴールラインからプレーを再開さいかいするために行おこなわれる（これはゴールラインドロップアウトと呼よばれる）。また、ペナルティーゴールを失敗しっぱいしてボールデッドになった後のちに20メートルラインからプレーを再開さいかいする時ときにも行おこなわれる。オープンプレー中ちゅうにドロップゴールで得点とくてん（1点てん）を狙ねらう時ときにも行おこなわれる。

ドロップキックはペナルティゴールを狙ねらう時ときや、ペナルティーからタッチ（サイドライン）にボールを蹴けり出だす時ときに用もちいてもいい。しかし、これが行おこなわれるのは稀まれで、前者ぜんしゃの場合ばあいはプレースキックが一般いっぱん的てきに使つかわれ、後者こうしゃの場合ばあいはパントキックが大抵たいてい使つかわれる。

ラグビーユニオン

ラグビーユニオンでは、ドロップキックはキックオフや、プレー再開さいかい、ドロップゴールを狙ねらう時ときに使つかわれる。元々もともとは、プレースキックと共ともに得点とくてんをする2つの方法ほうほうの1つであった（元々もともとはトライは得点とくてんにはならず、ゴールを狙ねらう機会きかいが得えられるだけであった）。

ドロップキックは前ぜん後半こうはんの開始かいし時じにセンタースポットから行おこなわれる。また、点てんが入はいった後のちにはセンタースポットから、ボールがタッチダウン（攻撃こうげきチームがインゴールエリアへボールを蹴けるあるいは持もち込こみ、守備しゅびチームがインゴールエリア内ないでボールデッドにした時とき）となった後のちに22メートルラインから試合しあいを再開さいかいするために行おこなわれる。オープンプレー中ちゅうにドロップゴールで得点とくてん（3点てん）を狙ねらう時ときにも行おこなわれる。

トライ後ごのコンバージョンキックは、プレースキックではなくドロップキックで行おこなってもよい。

7人にん制せいラグビー

7人にん制せいラグビー（セブンズ）と15人にん制せいのドロップキックの用法ようほうは同おなじであるが、例外れいがいはセブンズではコンバージョンキックとペナルティーキックは全すべてドロップキックで行おこなわなければならない点てんである。どちらもトライ後ご、あるいはペナルティーが与あたえられてから40秒びょう以内いないに行おこなわれなければならない。

アメリカンフットボールおよびカナディアンフットボール

アメリカンフットボールとカナディアンフットボールの両方りょうほうで、フィールドゴール、フェアキャッチキック（アメリカンフットボールのみ）、あるいはエキストラポイントで得点とくてんするための1つのやり方かたとしてドロップキックがあるが、現代げんだいの試合しあいにおいてこの技術ぎじゅつが使つかわれることはめったにない。

ドロップキックを行おこなうザック・カーリン。

ボールが地面じめんに着つく前まえに空中くうちゅうで蹴けるパントやグラウンド上じょうに静しずか置おけしたボールを蹴けるプレースキックと比較ひかくするとドロップキックの難易なんい度どは著いちじるしく高たかい。ジム・ソープはかつて「フィールドからゴールを狙ねらう時ときにプレースキックはドロップキックとほぼ2対たい1の比率ひりつで安全あんぜんだと思おもう」と説明せつめいした。

ブリックリーのドロップキックでダートマスを破やぶった（1912年ねん）。

ドロップキックは初期しょきフットボールにおいて奇襲きしゅう的てき戦術せんじゅつとしてしばしば使つかわれた。ボールをスナップあるいはラテラルパスで後方こうほうの選手せんしゅにボールを渡わたし、ボールを受うけ取とった選手せんしゅはランあるいはパスのフェイクを入いれてから、フィールドゴールを狙ねらう。この得点とくてん方法ほうほうはボールの端はしが（現代げんだいのラグビーボールのように）より丸まるみを帯おびていた1920年代ねんだいと1930年代ねんだい初頭しょとうにはうまくいった。チャールズ・ブリックリー、フランク・ハドソン、ジム・ソープ、パディ・ドリスコル、アル・ブラッドグッドといった初期しょきのフットボールのスター選手せんしゅは熟練じゅくれんしたドロップキッカーであった。ドリスコルは1925年ねんに、ブラッドグッドは1926年ねんに1試合しあいで4つのドロップキックフィールドゴールを決きめたNFL記録きろくを持もっている。ドリスコルが1924年ねんに決きめた55ヤードのドロップキックは、1953年ねんにバート・レチチャーに破やぶられるまで（プレースキックで56ヤード）、フィールドゴールレンジの非公式ひこうしき記録きろくであった。

1934年ねんにボールが両りょう端はしがより鋭するどった形かたちに変かわった。この変更へんこうを行おこなったのは一般いっぱん的てきにショーティー・レイの功績こうせきとされている。レイは当時とうじ大学だいがくフットボールの審判しんぱん員いんで、後のちにNFLの審判しんぱん員いん長ちょうにもなった人物じんぶつである。この形状けいじょう変更へんこうによりパスがより簡単かんたんになった反面はんめん、地面じめんからの跳はね返かえり方かたはより予測よそく不能ふのうになったため、ドロップキックの技術ぎじゅつは廃すたれてしまった。ドロップキックはプレースキックに取とって代かわられた。ドロップキックはルールには残のこっているものの、目めにすることはほとんどなく、効果こうか的てきに使つかわれる場面ばめんもない。

カナディアンフットボールでは、プレースキックはスクリメージラインよりも後方こうほうから行おこなわなければならないのに対たいして、ドロップキックはフィールド上じょうのどの地点ちてんからでも行おこなうことができる。

NFL

AFLとNFLの合併がっぺい前まえ、NFLでドロップキックが最後さいごに成功せいこうしたのは、1941年ねん12月21日にち、シカゴのリグレー・フィールドで開催かいさいされたシカゴ・ベアーズ対たいニューヨーク・ジャイアンツのNFLチャンピオンシップの試合しあい（結果けっかは37対たい9でシカゴの勝利しょうり）である。シカゴ・ベアーズのスクーター・マクリーンがドロップキックを決きめた。当時とうじはNFLではなかったが、1948年ねん11月28日にちのオール・アメリカ・フットボール・カンファレンスのサンフランシスコ・フォーティナイナーズ対たいクリーブランド・ブラウンズの試合しあいで、フォーティナイナーズのジョー・ベトラノがキックを成功せいこうさせた。

ドロップキックの準備じゅんびをするエディー・マハン。

今日きょうまでに、1941年ねん以降いこうのNFLで唯一ゆいいつのドロップキック成功せいこう例れいは、2006年ねん1月がつ1日にちに行おこなわれたニューイングランド・ペイトリオッツとマイアミ・ドルフィンズの試合しあいで、ペイトリオッツの控ひかえクォーターバックであるダグ・フルーティが決きめたタッチダウン後ごのエキストラポイントで決きめたキックである。フルーティはドロップキックの成功せいこう確かく率りつを「80パーセント」と見積みつもっていた。自身じしんのNFLでの最後さいごの試合しあいで当時とうじ43歳さいのフルーティに歴史れきし的てきキックを行おこなう機会きかいが与あたえられた。このドロップキックがフルーティのNFLでの最後さいごのプレーであった。

カナディアンフットボール

カナディアンフットボールでは、いつでもドロップキックを狙ねらうことができる。キッカーの後うしろにいる選手せんしゅは、キッカーも含ふくめて、キックをリカバーしてよい。ドロップキックがアウントオブバウンズになると、次つぎのスクリメージにおけるポゼッションは相手あいてチームに移うつる。

1974年ねん9月がつ8日にち、エドモントン・エスキモーズのクォーターバックであるトム・ウィルキンソンは24対たい2で大勝たいしょうしていた試合しあいの最後さいごにドロップキックフィールドゴールを試こころみたが成功せいこうしなかった。

1980年代ねんだいのある試合しあいで、ハミルトン・タイガーキャッツのワイドレシーバーであるアール・ウィンフィールドがパントを適切てきせつに処理しょりできなかった。苛立いらだったウィンフィールドはボールを蹴けってアウトオブバウンズにした。このキックはドロップキックと見みなされ、ポゼッションが相手あいてチームに移うつった。

オーストラリアンフットボール

かつてはボールを長ながい距離きょり運はこぶ手段しゅだんとして好このまれたが、現在げんざいドロップキックはより正確せいかくなドロップパントに置おき換かわっている。ドロップキックが普通ふつうに使つかわれていたのは1970年代ねんだいが最後さいごで、その頃ころまでにはビハインド後ごのキックインのために使つかわれるのがほとんどで、通常つうじょうのプレー中ちゅうではほとんど使つかわれていなかった。

推薦すいせん文献ぶんけん

• Price, Christopher (December 31, 2020). “The inside story of Doug Flutie's NFL drop kick, 15 years ago Friday”. https://www.bostonglobe.com/2020/12/31/sports/15-years-ago-doug-flutie-did-something-nfl-hadnt-seen-six-decades-it-was-perfect-capper-an-unorthodox-career/ January 1, 2021閲覧えつらん。 

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