バトラコトキシン

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バトラコトキシン
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 23509-16-2
PubChem 31958
ChemSpider 10310314
日にち化か辞じ番号ばんごう J54.476K
特性とくせい
化学かがく式しき C31H42N2O6
モル質量しつりょう 538.67 g mol−1
危険きけん性せい
主おもな危険きけん性せい 猛毒 T+
半数はんすう致死ちし量りょう LD50 0.002–0.007 mg/kg
（推定すいてい、ヒト、皮下ひか）
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・常つね圧あつ (100 kPa) におけるものである。

バトラコトキシン（英えい: batrachotoxin）は、心こころ毒性どくせい、神経しんけい毒性どくせいを持もつステロイドアルカロイドの一種いっしゅである。南米なんべいコロンビアのある種しゅのカエル（モウドクフキヤガエル等ひとし）から単たん離はなれされた[1]。パリトキシンに次つぐ猛毒もうどくであり、現地げんち人じんの間あいだでは古ふるくから矢や毒どくとして用もちいられている。

1969年ねんに構造こうぞうが決定けっていされ[2][3]、1998年ねんにハーバード大学だいがくの岸きし義人よしひとによって母体ぼたい骨格こっかくであるバトラコトキシニンAが全ぜん合成ごうせいされた[4][5]。

数少かずすくない有毒ゆうどくな鳥類ちょうるいとして知しられるピトフーイは同族どうぞく塩基えんきホモバトラコトキシンをもっている[6]。

化学かがく[編集へんしゅう]

バトラコトキシンの化合かごう物ぶつ名めいは、ギリシア語ごで蛙かえるを意味いみする「βάτραχος (batrachos)」と毒どくを意味いみする「τοξίνη (toxine)」から来きている。極きわめて強つよい毒どく成分せいぶんを塩基えんき成分せいぶんとして分離ぶんり、化学かがく的てき性質せいしつを検討けんとうしたJohn DalyおよびBernhard Witkopによって命名めいめいされた[1]。強力きょうりょくな毒どくを扱あつかうこと、そのうえ収集しゅうしゅう量りょうが極きわめて少すくなかったため、構造こうぞう決定けっていは幾多いくたの困難こんなんをともなった。後のちほどこの研究けんきゅうに加くわわった徳山とくやま 孝たかし（大阪市立大学おおさかいちりつだいがく）は、一いち成分せいぶんのバトラコトキシニンAを結晶けっしょう性せい誘導体ゆうどうたいに導みちびいた。この誘導体ゆうどうたいの単たん結晶けっしょうX線せん解析かいせきにより、そのステロイド構造こうぞうが明あきらかになった[2]。バトラコトキシンとバトラコトキシニンA のマススペクトルを比較ひかくして、二ふたつの化合かごう物ぶつは同おなじ塩基えんき性せいステロイド構造こうぞうを共有きょうゆうしていること、また、核かく磁気じき共鳴きょうめいスペクトルの解析かいせきによりバトラコトキシンはバトラコトキシニンAに一ひとつのピロール環たまきが付加ふかした構造こうぞうであることが明あきらかとなった。さらに、バトラコトキシニンA をピロール環たまき部分ぶぶんと化学かがく的てきに結合けつごうさせてバトラコトキシンに導みちびいたことにより、その化学かがく構造こうぞうは確定かくていした。また、付加ふかピロール環たまきはバトラコトキシン類るいの毒性どくせいに大おおきく寄与きよしていることも明あきらかになった[3]。

類縁るいえん体たい[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ a b Daly, J. W.; Witkop, B.; Bommer, P.; Biemann, K. (1965). “Batrachotoxin. The Active Principle of the Colombian Arrow Poison Frog, Phyllobates bicolor”. J. Am. Chem. Soc. 87 (1): 124–126. doi:10.1021/ja01079a026. 
  2. ^ a b Tokuyama, T.; Daly, J.; Witkop, B.; Karle, I. L.; Karle, J. (1968). “The structure of batrachotoxinin A, a novel steroidal alkaloid from the Columbian arrow poison frog, Phyllobates aurotaenia”. J. Am. Chem. Soc. 90: 1917–1918. doi:10.1021/ja01009a052. 
  3. ^ a b Tokuyama, T.; Daly, J.; Witkop. B. (1969). “Structure of batrachotoxin, a steroidal alkaloid from the Colombian arrow poison frog, phyllobates aurotaenia, and partial synthesis of batrachotoxin and its analogs and homologs.”. J. Am. Chem. Soc. 91: 3931-3933. doi:10.1021/ ja01042a042. 
  4. ^ Kurosu, M.; Marcin, L. R.; Grinsteiner, T. J.; Kishi, Y. (1998). “Total Synthesis of (±)-Batrachotoxinin A”. J. Am. Chem. Soc. 120: 6627–6628. doi:10.1021/ja981258g. 
  5. ^ 黒須くろす三千夫みちお、岸きし義人よしひと、バトラコトキシンの合成ごうせい研究けんきゅう 『有機ゆうき合成ごうせい化学かがく協会きょうかい誌し』 2004年ねん 62巻かん 12号ごう p.1205-1217, doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.62.1205
  6. ^ 船山ふなやま信次しんじ、ニューギニアの鳥類ちょうるいよりバトラコトキシン類るいの有毒ゆうどくアルカロイド発見はっけん : 鴆(ちん)毒どくも実在じつざいした? 『ファルマシア』 1993年ねん 29巻かん 10号ごう p.1144-, doi:10.14894/faruawpsj.29.10_1144

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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