バリスタ (兵器へいき)

バリスタ (ballista) は、古代こだいから中世ちゅうせいにかけて使つかわれた、据すえ置おき式しきの大型おおがた弩いしゆみ砲ほうである^[1]。

概要がいよう

てこを用もちいて弦つるを引ひき絞しぼり、石いしや金属きんぞくの弾たま、極太ごくぶとの矢や（あるいは矢や羽わのついた槍やり）、複数ふくすうの小型こがたの矢や、火炎瓶かえんびんなどを打うち出だした^[2]。矢や弾だんを弾はじき出だす動力どうりょくは弓ゆみが主おもだったが、複数ふくすうの弓ゆみを並ならべたり、捻ねじった動物どうぶつ性せい繊維せんいの太ふとし縄なわや金属きんぞく製せいのばねを用もちいるなどの改良かいりょうを加くわえられた物ものもあった。

白兵戦はくへいせんの支援しえん、攻おさむ城しろ戦せんにおける攻おさむ城じょう兵器へいき、それらからの防衛ぼうえいに使つかわれ、軍船ぐんせんに搭載とうさいすることもあった。

なお、英語えいごで弾道だんどうを意味いみするバリスティック (ballistic) はバリスタが語源ごげんである。バリスタがラテン語らてんごでarcuballistaと呼よばれていたこともあり、その中世ちゅうせいフランス語ふらんすご訳やくのアーバレスト（arbalest, 現在げんざいのフランス語ふらんすごではarbaleste）は主おもにクロスボウの一種いっしゅを指さし、また、クロスボウの同義どうぎとして使つかわれる場合ばあいもある。

歴史れきし

ディアドコイ戦争せんそうの一ひとつでマケドニアが行おこなったロードス包囲ほうい戦せんでは、巨大きょだいな攻おさむ城しろ塔とうの中なかに様々さまざまな種類しゅるいのバリスタやカタパルトを何なん段だんにも装備そうびしたヘレポリス (Helepolis) と呼よばれる巨大きょだいな兵器へいきが使用しようされた。また、ロードス側がわも連発れんぱつ式しきのバリスタでヘレポリスに対たいして絶たえ間まなく射撃しゃげきを浴あびせた。結果けっか的てきに包囲ほうい戦せんは失敗しっぱいに終おわり、そうして破壊はかいされたヘレポリスの残骸ざんがいやマケドニア兵へいが置おいていった甲冑かっちゅうを材料ざいりょうにし、この戦争せんそうでの勝利しょうりを記念きねんして世界せかいの七不思議ななふしぎの一ひとつであるロードスの巨きょ像ぞうが作つくられた。

第だい二に次じポエニ戦争せんそうでは、小型こがた化かして携帯けいたいできるようにした狙撃そげき用よう武器ぶきであるスコルピウス（scorpius, スコーピオン〈scorpion〉）が使つかわれた。

欧州おうしゅう西部せいぶではローマの崩壊ほうかい期きから中世ちゅうせいにかけて姿すがたを消けしており、一説いっせつには中世ちゅうせい初頭しょとうにおける戦禍せんか拡大かくだいを嘆なげいたローマ教皇きょうこうによる使用しよう禁止きんし令れいに起因きいんしているとも言いわれている。

東ひがしロろーマ帝国まていこくなどでは騎馬きば砲兵ほうへいの要領ようりょうで台車だいしゃに360度ど回転かいてんする台だいを付つけ、その上うえにバリスタを載のせて馬うまに引ひかせるバリスタ・クアドリロティスという兵器へいきも作つくられた。ばねを利用りようしたサスペンションにより、機動きどう力りょくがあった。現在げんざいの戦車せんしゃの原型げんけいとなっている。

カタパルトなどと同おなじく火砲かほうが登場とうじょうしても併用へいようして使用しようされたが、爆発ばくはつ力りょくが高たかく安全あんぜんな火薬かやくが改良かいりょうされて火砲かほうの鋳造ちゅうぞう技術ぎじゅつも進化しんかし、火砲かほうが十分じゅうぶん信頼しんらいできる兵器へいきになるとバリスタは使用しようされなくなった。