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フランシスコ・バレーラ

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フランシスコ・バレーラ

フランシスコ・ハビエル・バレーラ・ガルシア (Francisco Javier Varela Garcia, 1946ねん9月7にち - 2001ねん5月28にち) はチリタルカワノまれの生物せいぶつ学者がくしゃ認知にんち科学かがくしゃオートポイエーシス理論りろん提唱ていしょうられる。 日本語にほんごではヴァレラとしるされることがおおい。

生涯しょうがい[編集へんしゅう]

チリ大学だいがく生物せいぶつがくまなんだのちT・ニールス・ウィーゼル (Torsten Nils Wiesel) の指導しどうしたハーバード大学だいがく博士はかせごう取得しゅとくした。1970ねん、ハーバードとうからのもうって、アジェンデ社会しゃかい主義しゅぎ政権せいけん成立せいりつする2にちまえにチリに帰国きこくした。

一種いっしゅ知的ちてき興奮こうふん状態じょうたいにあったこのアジェンデ政権せいけん期間きかんちゅうに、生物せいぶつがく伝統でんとうてき枠組わくぐみにとらわれない関心かんしんひろげ、チリ大学だいがく生物せいぶつ学者がくしゃウンベルト・マトゥラーナとの議論ぎろんつうじて「生命せいめいとはなにか?」といういを追求ついきゅうし、オートポイエーシス概念がいねんをマトゥラーナともに提唱ていしょうした。しかし、1973ねんアウグスト・ピノチェトによる軍事ぐんじクーデターこると、はげしいはん体制たいせいりがはじまり、義父ぎふ殺害さつがいされるなどの生命せいめい危険きけんにさらされたため、チリからの出国しゅっこく余儀よぎなくされた。

コスタリカドイツて、アメリカコロラド大学だいがくニューヨーク大学だいがくなどで7ねんごした。このころ、チョギャム・トゥルンパなどとの交流こうりゅうから、ナーガールジュナなどのちゅうかんの「そら」の哲学てつがくから影響えいきょうけ、また仏教ぶっきょう修行しゅぎょう実践じっせんした。

1980ねんにチリ大学だいがく生物せいぶつがく教授きょうじゅとしてふたたびチリに帰国きこくしたのち、1986ねんからはパリ拠点きょてんさだめ、1988ねんよりくなるまでフランス国立こくりつ科学かがく研究けんきゅうセンター (CNRS) で研究けんきゅう部長ぶちょうつとめた。1987ねんにはチベット仏教ぶっきょう科学かがくしゃとの対話たいわつうじてしん科学かがく発展はってんをめざす団体だんたい設立せつりつにかかわり、ダライ・ラマ14せいをはじめとする仏教徒ぶっきょうととの会議かいぎ開催かいさいしている[1]

1990年代ねんだい早期そうきよりCがた肝炎かんえんによる肝臓かんぞうガンわずらい、肝臓かんぞう移植いしょくおこなうなどの治療ちりょうけてきたが、2001ねんに54さい死去しきょした。4にん子供こどもがおり、むすめレオノアはチリ・アメリカ・フランスなどで活躍かつやくしている世界せかいてき女優じょゆうである。

研究けんきゅう[編集へんしゅう]

オートポイエーシス[2][3][4]生命せいめいシステムをその自律じりつてき特性とくせいによってみずか特徴とくちょうづけるものとしてとらえようとするこころみであり、従来じゅうらい科学かがく素朴そぼく当然とうぜんのものとしてきた外部がいぶからの実在じつざいろんてき記述きじゅつ疑問ぎもんげかけるものであった。 以降いこうのバレーラの研究けんきゅうそとからの科学かがくてき記述きじゅつしんなど内部ないぶからの観点かんてんとをいかに調停ちょうていするかという問題もんだいそそがれてきた。

パリ時代じだいには、実在じつざいろんもとづく記述きじゅつよりも状況じょうきょうまれた身体しんたいせい行動こうどう重視じゅうしして認知にんち理解りかいしようとするエナクティヴィズム (enactivism) にもとづいて、仏教ぶっきょうてき実践じっせんのう科学かがくとの結合けつごう目指めざした[5]。 また、従来じゅうらい認知にんち科学かがく方法ほうほうでは意識いしき研究けんきゅうには不十分ふじゅうぶんであるとかんがえ、メルロー=ポンティなどの現象げんしょうがく知見ちけん発展はってんさせ一人称いちにんしょう報告ほうこくんだ神経しんけい現象げんしょうがく (neurophenomenology) を提唱ていしょうした[6][7]一方いっぽうで、脳波のうは位相いそうてき相関そうかん解析かいせきほう発展はってんさせるとともに、認知にんち瞬間しゅんかんにそれらに長距離ちょうきょり動的どうてき結合けつごうがみられることを報告ほうこくしている[8]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  1. ^ Hayward, J.w. and Varela, F.J. (eds.), (1992) Gentle Bridges: Conversation with the Dalai Lama on the Sciences of Mind, Boston:Shambhala, ISBN 1-57062-893-9 (pbk)
    山口やまぐち泰司やすじやく (1995) しん生命せいめい徹底てってい討論とうろんしんしょ科学かがく」をめぐるダライ・ラマとの対話たいわ, 青土おうづちしゃ, ISBN 4-7917-5382-8
  2. ^ Maturana, H.R. and Varela, F.J. (1980) Autopoiesis and Cognition: the Ralization of the Living, Boston:D. Reidel; (2001) Springer, ISBN 90-277-1016-3 (pbk)
    河本かわもと英夫ひでおやく (1991) オートポイエーシス — 生命せいめいシステムとはなに 国文こくぶんしゃ, ISBN 4-7720-0367-3
  3. ^ Varela, F.J. (1979) Principles of Biological Autonomy, NJ: Pearson Professional Education; NY:North Holland ISBN 0-444-00321-5
  4. ^ Maturana, H.R. and Varela, F.J. (1987) The Tree of Knowledge: the Biological Roots of Human Understanding Boston:New Science Library; (1992) Rev. ed., Boston:Shambhala, ISBN 0-87773-642-1 (pbk)
    かんけいろうやく (1987) 知恵ちえきている世界せかいはどのようにしてまれるのか, 朝日出版社あさひしゅっぱんしゃ, ISBN 4-255-87028-4; (1997) ちくま学芸がくげい文庫ぶんこ, ISBN 4-480-08389-8
  5. ^ Varela, F.J., Thompson, E., Rosch, E. (c1991,1993) The Embodied Mind: Cognitive Science and Human Experience, Cambridge:MIT Press, ISBN 0-262-72021-3 (pbk)
    田中たなか靖夫やすおやく (2001) 身体しんたいされたこころ仏教ぶっきょう思想しそうからのエナクティブ・アプローチ, 工作こうさくしゃ, ISBN 4-87502-354-5
  6. ^ Varela, F. and Shear, J. (eds.) (1999) The View from Within: First-Person Methodologies in the Study of Consciousness, Special Issue of Journal of Consciousness Studies, 6(2–3); Imprint Academic, ISBN 0-907845-25-8 (pbk)
  7. ^ Petitot, J., Varela, F., Pachoud, B. and Roy, J.M. (eds.) (1999) Naturalizing Phenomenology: Contemporary Issues in Phenomenology and Cognitive Science, Stanford:Stanford Univ. Pr., ISBN 0-8047-3610-3 (pbk)
  8. ^ Rodriguez, E., et al. (1999) "Perception's Shadow: Long-distance Synchronization in the Human Brain", Nature 397:340–343

おも著作ちょさく[編集へんしゅう]

  • Varela, F.J. and Dupuy, J.-P. (eds.) (1992) Understanding Origins: Contemporary Views on the Origin of Life, Mind, and Society, Boston:Kluwer Academic Pub., ISBN 0-7923-1251-1
  • Stein, W.D., and Varela, F.J. (eds.) (1993) Thinking About Biology: An Invitation to Current Theoretical Biology, Santa Fe Institute: Lecture Notes v. 3, Reading:Addison-Wesley, ISBN 0-201-62454-0 (pbk)
  • Varela, F.J. (ed.) Dalai Lama XIV, et al. (1997) Sleeping, Dreaming, and Dying: An Exploration of Consciousness With the Dalai Lama, Boston:Wisdom Pub., ISBN 0-86171-123-8
  • Varela, F.J. (1999) Ethical Know-How: Action, Wisdom, and Cognition, Standord:Stanford Univ. Pr., ISBN 0-8047-3033-4 (pbk)
  • Depraz, N., Varela, F., Vermersch, P (2003) On Becoming Aware: a Pragmatics of Experiencing, Phila.:John Benjamins Pub., ISBN 1-58811-216-0 (pbk); (2002) Amsterdam:John Benjamins Pub., ISBN 90-272-5163-0 (pbk)

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]