ベナゼプリル

ベナゼプリル
IUPAC命名めいめい法ほうによる物質ぶっしつ名めい
	IUPAC名めい 2-[(3S)-3-{[(2S)-1-ethoxy-1-oxo-4-phenylbutan-2-yl]amino}- 2-oxo-2,3,4,5-tetrahydro-1H-1-benzazepin-1-yl]acetic acid;
臨床りんしょうデータ
胎児たいじ危険きけん度ど分類ぶんるい	D;
法的ほうてき規制きせい	処方箋しょほうせん医薬品いやくひん;
投与とうよ経路けいろ	経口けいこう
薬物やくぶつ動態どうたいデータ
血漿けっしょうタンパク結合けつごう	96.7%
代謝たいしゃ	肝きもグルクロン酸さん抱合ほうごう
半減はんげん期き	10～11時じ間あいだ
排泄はいせつ	腎じん、胆汁たんじゅう
識別しきべつ
CAS番号ばんごう;	86541-75-5
ATCコード	C09AA07 (WHO)
PubChem	CID: 5362124
DrugBank	APRD00063
ChemSpider	4514935
UNII	UDM7Q7QWP8?[[[:en:Wikipedia:WikiProject Chemicals/Chembox validation\|]]]
化学かがく的てきデータ
化学かがく式しき	C24H28N2O5
分子ぶんし量りょう	424.49 g/mol
	SMILES O=C(OCC)[C@@H](N[C@@H]2C(=O)N(c1ccccc1CC2)CC(=O)O)CCc3ccccc3;
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ベナゼプリル（英えい: benazepril）は、アンジオテンシン変換へんかん酵素こうそ阻害そがい薬やく系けいの降圧こうあつ薬やくの一ひとつである。

アンジオテンシンIはアンジオテンシン変換へんかん酵素こうそ（ACE）の作用さようによりアンジオテンシンIIに変化へんかする。アンジオテンシンIIは血圧けつあつを上昇じょうしょうさせる作用さようを有ゆうする。アンジオテンシン変換へんかん酵素こうそ阻害そがい薬やくはアンジオテンシン変換へんかん酵素こうそを抑制よくせいすることによりアンジオテンシンIIの生成せいせいを抑制よくせいし、血圧けつあつを低下ていかさせる。アルドステロン分泌ぶんぴつの抑制よくせいによる利尿りにょう作用さようを有ゆうする。高血圧こうけつあつ、鬱血うっけつ性せい心不全しんふぜんの治療ちりょうに使用しようされる。副作用ふくさようとして肺はいのブラジキニン増加ぞうかによる空咳からせきが生しょうじる。ベナゼプリルはプロドラッグであり、肝臓かんぞうのエステラーゼでエステルが加水かすい分解ぶんかいされて活性かっせい代謝たいしゃ物ぶつであるベナゼプリラートとなる。

製剤せいざいにはベナゼプリル塩酸えんさん塩しおが用もちいられる。海外かいがいでは利尿りにょう剤ざい（ヒドロクロロチアジド）との合ごう剤ざいも販売はんばいされている。

効能こうのう・効果こうか[編集へんしゅう]

高血圧こうけつあつ[編集へんしゅう]

ベナゼプリル10mg〜20mgを6週間しゅうかん投与とうよした臨床りんしょう試験しけんでは、座ざ位い拡張かくちょう期き血圧けつあつ（102.5±0.8mmHg 範囲はんい：95〜114mmHg）は統計とうけい学がく的てきに有意ゆういに低下ていかして87.5±0.93mmHgとなり、34名めい（81%）の患者かんじゃで血圧けつあつ管理かんり良好りょうこう（座ざ位い拡張かくちょう期き血圧けつあつ≦90mmHg）となった^[1]。

腎臓じんぞう病びょう[編集へんしゅう]

進行しんこう腎不全じんふぜんを有ゆうする患者かんじゃがベナゼプリルを服用ふくようすると腎臓じんぞうに対たいする“相当そうとう量りょうの”有効ゆうこう性せいを得える^[2]。腎臓じんぞう病びょう患者かんじゃに対たいする長期ちょうき投与とうよ試験しけんの結果けっか、ベナゼプリルは腎じん機能きのうを改善かいぜんし、偽薬ぎやく投与とうよ群ぐんに比くらべて腎じん疾患しっかんの進行しんこうを遅おくらせた^[3]。それ以前いぜんはACE阻害そがい薬やくは腎じん障害しょうがいを進行しんこうさせると思おもわれていたので、注目ちゅうもくを集あつめる結果けっかとなった。

WebMDの取材しゅざいした処しょに拠よると、『ACE阻害そがい薬やくは腎臓じんぞうの機能きのうを脅おびやかす可能かのう性せいがあったので、中心ちゅうしんとなる問といは、ACE阻害そがい薬やくを服用ふくようした患者かんじゃの腎じん機能きのうが低下ていかするか否ひかであった。端はし的てきに言いえば、（腎臓じんぞうから排泄はいせつされる）カリウムとクレアチニンの血ち中ちゅう濃度のうどが上昇じょうしょうするか否ひかである。結果けっか、腎じん機能きのうの悪化あっかはベナゼプリル服用ふくよう群ぐんでより緩ゆるやかであった。副作用ふくさようの面めんでは、ベナゼプリル服用ふくよう群ぐんと偽薬ぎやく服用ふくよう群ぐんで大おおきな違ちがいは見みられなかった。』

禁忌きんき[編集へんしゅう]

ベナゼプリルは下記かきの患者かんじゃに禁忌きんきである^[4]。

血管けっかん浮腫ふしゅの既往きおう歴れきのある患者かんじゃ（アンジオテンシン変換へんかん酵素こうそ阻害そがい剤ざい等とうの薬剤やくざいによる血管けっかん浮腫ふしゅ、遺伝いでん性せい血管けっかん浮腫ふしゅ、後天こうてん性せい血管けっかん浮腫ふしゅ、特発とくはつ性せい血管けっかん浮腫ふしゅ等とう）
デキストラン硫酸りゅうさん固定こてい化かセルロース、トリプトファン固定こてい化かポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートを用もちいた吸着きゅうちゃく器きによるアフェレーシスを施行しこう中ちゅうの患者かんじゃ
アクリロニトリルメタリルスルホン酸さんナトリウム膜まく（AN69）を用もちいた血液けつえき透析とうせき施行しこう中ちゅうの患者かんじゃ
アリスキレンを投与とうよ中ちゅうの糖尿とうにょう病びょう患者かんじゃ（ただし、他たの降圧こうあつ治療ちりょうを行おこなってもなお血圧けつあつのコントロールが著いちじるしく不良ふりょうの患者かんじゃを除のぞく）
妊婦にんぷまたは妊娠にんしんしている可能かのう性せいのある婦人ふじん（胎児たいじ死亡しぼう、奇形きけい率りつ増加ぞうか等とうの危険きけんがある）
製剤せいざい成分せいぶんに対たいし過敏かびん症しょうの既往きおう歴れきのある患者かんじゃ

副作用ふくさよう[編集へんしゅう]

重大じゅうだいな副作用ふくさようとして、血管けっかん浮腫ふしゅ、急性きゅうせい腎不全じんふぜん、高こうカリウム血ち症しょう、肝炎かんえん、肝きも機能きのう障害しょうがい、黄疸おうだん、無む顆粒かりゅう球だま症しょう、好こう中ちゅう球だま減少げんしょう、膵炎がある^[4]。

頻度ひんどの高たかい副作用ふくさようは、頭痛ずつうおよび咳嗽がいそうである。慢性まんせい咳嗽がいそうは服用ふくよう開始かいし2〜3ヶ月かげつ以内いないに患者かんじゃの2割わりに発生はっせいする^[5]。アナフィラキシーも発生はっせいし得える。

獣医じゅうい学がく領域りょういきでの使用しよう[編集へんしゅう]

ベナゼプリルはイヌの鬱血うっけつ性せい心不全しんふぜんの治療ちりょうに使用しようされる^[6]^[7]他た、ネコやイヌの慢性まんせい腎臓じんぞう病びょうの治療ちりょうに用もちいられる^[8]。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

^ Karnik ND, Oza YK, Sane SP, Kaushik R, Bhatt AD, Chawla KP et al. (1998). “An open clinical trial of benazepril--a new ACE inhibitor in mild-moderate hypertension.”. J Assoc Physicians India 46 (3): 283-5. PMID 11273348.
^ Hou F, Zhang X, Zhang G, Xie D, Chen P, Zhang W, Jiang J, Liang M, Wang G, Liu Z, Geng R (2006). “Efficacy and safety of benazepril for advanced chronic renal insufficiency”. N Engl J Med 354 (2): 131–40. doi:10.1056/NEJMoa053107. PMID 16407508.
^ Hitti, Miranda (2006年ねん1月がつ11日にち). “Drug May Treat Advanced Kidney Disease”. WebMD. 2006年ねん9月がつ7日にち閲覧えつらん。
^ ^a ^b “チバセン錠じょう2.5mg／チバセン錠じょう5mg／チバセン錠じょう10mg 添付てんぷ文書ぶんしょ” (2015年ねん3月がつ). 2016年ねん4月がつ10日とおか閲覧えつらん。
^ Dykewicz, Mark S. (2004年ねん4月がつ). “Cough and Angioedema From Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors: New Insights Into Mechanisms and Management”. Medscape. 2014年ねん4月がつ2日にち閲覧えつらん。
^ King JN, Mauron C, Kaiser G (December 1995). “Pharmacokinetics of the active metabolite of benazepril, benazeprilat, and inhibition of plasma angiotensin-converting enzyme activity after single and repeated administrations to dogs”. Am. J. Vet. Res. 56 (12): 1620–8. PMID 8599524.
^ O'Grady MR, O'Sullivan ML, Minors SL, Horne R (2009). “Efficacy of benazepril hydrochloride to delay the progression of occult dilated cardiomyopathy in Doberman Pinschers”. J. Vet. Intern. Med. 23 (5): 977–83. doi:10.1111/j.1939-1676.2009.0346.x. PMID 19572914.
^ “フォルテコール錠じょう2.5mgフレーバー”. エランコ・ジャパン株式会社かぶしきがいしゃ (2017年ねん4月がつ). 2018年ねん3月がつ24日にち閲覧えつらん。

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

[pmid11273348-1] Karnik ND, Oza YK, Sane SP, Kaushik R, Bhatt AD, Chawla KP et al. (1998). “An open clinical trial of benazepril--a new ACE inhibitor in mild-moderate hypertension.”. J Assoc Physicians India 46 (3): 283-5. PMID 11273348.

[Hou-2] Hou F, Zhang X, Zhang G, Xie D, Chen P, Zhang W, Jiang J, Liang M, Wang G, Liu Z, Geng R (2006). “Efficacy and safety of benazepril for advanced chronic renal insufficiency”. N Engl J Med 354 (2): 131–40. doi:10.1056/NEJMoa053107. PMID 16407508.

[Hitti-3] Hitti, Miranda (2006年ねん1月がつ11日にち). “Drug May Treat Advanced Kidney Disease”. WebMD. 2006年ねん9月がつ7日にち閲覧えつらん。

[pi-4] “チバセン錠じょう2.5mg／チバセン錠じょう5mg／チバセン錠じょう10mg 添付てんぷ文書ぶんしょ” (2015年ねん3月がつ). 2016年ねん4月がつ10日とおか閲覧えつらん。

[5] Dykewicz, Mark S. (2004年ねん4月がつ). “Cough and Angioedema From Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors: New Insights Into Mechanisms and Management”. Medscape. 2014年ねん4月がつ2日にち閲覧えつらん。

[6] King JN, Mauron C, Kaiser G (December 1995). “Pharmacokinetics of the active metabolite of benazepril, benazeprilat, and inhibition of plasma angiotensin-converting enzyme activity after single and repeated administrations to dogs”. Am. J. Vet. Res. 56 (12): 1620–8. PMID 8599524.

[7] O'Grady MR, O'Sullivan ML, Minors SL, Horne R (2009). “Efficacy of benazepril hydrochloride to delay the progression of occult dilated cardiomyopathy in Doberman Pinschers”. J. Vet. Intern. Med. 23 (5): 977–83. doi:10.1111/j.1939-1676.2009.0346.x. PMID 19572914.

[8] “フォルテコール錠じょう2.5mgフレーバー”. エランコ・ジャパン株式会社かぶしきがいしゃ (2017年ねん4月がつ). 2018年ねん3月がつ24日にち閲覧えつらん。

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