ペンローズ方式ほうしき

ペンローズ方式ほうしき（ペンローズほうしき、Penrose method）は、意思いし決定けってい機関きかんにおける各かく代表だいひょう団だんの票ひょうの重おもみ付づけの方式ほうしきの1つで、1946年ねんにライオネル・ペンローズによって考案こうあんされた。平方根へいほうこん方式ほうしき（へいほうこんほうしき、square-root method）ともいう。

この方式ほうしきでは、個々ここの代表だいひょう団だんの票ひょうの重おもみを、その代表だいひょう団だんが代表だいひょうする国くに・地域ちいきの人口じんこうの平方根へいほうこんに比例ひれいして配分はいぶんする。これは、ペンローズの平方根へいほうこんの法則ほうそくにより、意思いし決定けってい機関きかんの構成こうせい員いんのペンローズ＝バンザフ指数しすうで定義ていぎされる投票とうひょう力りょくは、その規模きぼの平方根へいほうこんに反比例はんぴれいするという事実じじつに基もとづく。一定いっていの条件じょうけんの下したでは、この配分はいぶんは、代表だいひょうする国くにの人口じんこうの規模きぼに関係かんけいなく、代表だいひょうされた全すべての人々ひとびとに平等びょうどうな投票とうひょう権けんを実現じつげんする。比例ひれい配分はいぶんは、より大おおきな人口じんこうを有ゆうする代表だいひょう団だんに過剰かじょうな議決ぎけつ権けんを与あたえることになる。

この方法ほうほうが適切てきせつとなるための前提ぜんてい条件じょうけんは、意思いし決定けってい機関きかんにおける代表だいひょう団だんが、保有ほゆうする票ひょうを複数ふくすうの候補こうほに分割ぶんかつして投票とうひょうすることなく、一括いっかつ投票とうひょうすることである。むしろ、各かく代表だいひょう団だんは1票ひょうだけを保有ほゆうし、その票ひょうに対たいして、代表だいひょうする人口じんこうの平方根へいほうこんに比例ひれいした重おもみ付づけを適用てきようする。もう一ひとつの前提ぜんてい条件じょうけんは、代表だいひょうされた人々ひとびとの意見いけんが統計とうけい的てきに独立どくりつしていることである。各かく代表だいひょう団だんの代表だいひょう性せいは、国内こくないの統計とうけい的てきな変動へんどうから生しょうじるものであり、ペンローズは、「小しょう選挙せんきょ区くの方ほうが大だい選挙せんきょ区くよりも代表だいひょう的てきな政府せいふを得える可能かのう性せいが高たかい」としている。この考かんがえ方かたを数学すうがく的てきに定式ていしき化かすると、平方根へいほうこんの法則ほうそくが得えられる。

ペンローズ方式ほうしきは現在げんざい、主要しゅような意思いし決定けってい機関きかんでは採用さいようされていないが、国際こくさい連合れんごう議会ぎかい会議かいぎでの代表だいひょうの配分はいぶんや、欧州おうしゅう連合れんごう理事りじ会かいでの投票とうひょう方式ほうしきに提案ていあんされたことがある。

欧州おうしゅう連合れんごう理事りじ会かいでの提案ていあん

「特定とくてい多数決たすうけつ方式ほうしき」も参照さんしょう

票ひょうの重おもみの比較ひかく
（人口じんこうは2003年ねん1月がつ1日にち現在げんざい）

加盟かめい国こく	人口じんこう （百ひゃく万まん人にん）		ニース		ペンローズ
ドイツ	82.54	16.5%	29	8.4%	9.55%
フランス	59.64	12.9%	29	8.4%	8.11%
イギリス	59.33	12.4%	29	8.4%	8.09%
イタリア	57.32	12.0%	29	8.4%	7.95%
スペイン	41.55	9.0%	27	7.8%	6.78%
ポーランド	38.22	7.6%	27	7.8%	6.49%
ルーマニア	21.77	4.3%	14	4.1%	4.91%
オランダ	16.19	3.3%	13	3.8%	4.22%
ギリシャ	11.01	2.2%	12	3.5%	3.49%
ポルトガル	10.41	2.1%	12	3.5%	3.39%
ベルギー	10.36	2.1%	12	3.5%	3.38%
チェコ	10.20	2.1%	12	3.5%	3.35%
ハンガリー	10.14	2.0%	12	3.5%	3.34%
スウェーデン	8.94	1.9%	10	2.9%	3.14%
オーストリア	8.08	1.7%	10	2.9%	2.98%
ブルガリア	7.85	1.5%	10	2.9%	2.94%
デンマーク	5.38	1.1%	7	2.0%	2.44%
スロバキア	5.38	1.1%	7	2.0%	2.44%
フィンランド	5.21	1.1%	7	2.0%	2.39%
アイルランド	3.96	0.9%	7	2.0%	2.09%
リトアニア	3.46	0.7%	7	2.0%	1.95%
ラトビア	2.33	0.5%	4	1.2%	1.61%
スロベニア	2.00	0.4%	4	1.2%	1.48%
エストニア	1.36	0.3%	4	1.2%	1.23%
キプロス	0.72	0.2%	4	1.2%	0.89%
ルクセンブルク	0.45	0.1%	4	1.2%	0.70%
マルタ	0.40	0.1%	3	0.9%	0.66%
欧州おうしゅう連合れんごう	484.20	100%	345	100%	100%

2003年ねんのアムステルダム条約じょうやく交渉こうしょうの中なかでスウェーデンが、2007年ねん6月がつのリスボン条約じょうやくサミットの中なかでポーランドが、欧州おうしゅう連合れんごう(EU)理事りじ会かいにおける加盟かめい国こくの議決ぎけつ権けんの重おもみを計算けいさんする方法ほうほうとしてペンローズ方式ほうしきを提案ていあんした。

現在げんざい、EU理事りじ会かいでの投票とうひょうはペンローズ方式ほうしきを採用さいようしていない。ニース条約じょうやくで採用さいようされた特定とくてい多数決たすうけつ方式ほうしきは、2004年ねんから2014年ねんまで有効ゆうこうであり、その後ごも2017年ねんまで一定いっていの条件じょうけんの下したで有効ゆうこうである。右みぎの表ひょうに、特定とくてい多数決たすうけつ方式ほうしきとペンローズ方式ほうしきによる各かく加盟かめい国こくの票ひょうの重おもみを示しめす。

票ひょうの重おもみの他ほかに、加盟かめい国こくの投票とうひょう力りょく（ペンローズ・バンザフ指数しすう）は、決定けっていに必要ひつような閾値の割合わりあいにも依存いぞんする。閾値の割合わりあいが小ちいさいほど、大国たいこくに有利ゆうりに働はたらく。例たとえば、ある国くにが総そう議決ぎけつ権けんの30%を持もち、意思いし決定けっていに必要ひつような閾値が29%である場合ばあい、その国くにの議決ぎけつ権けんは100%となる（すなわち、指数しすうは1である）。EU-27では、どの加盟かめい国こくでも全ぜん国民こくみんの投票とうひょう力りょくがほぼ等ひとしくなる最適さいてきな閾値が約やく61.6%で計算けいさんされている。これを発表はっぴょうした論文ろんぶんの著者ちょしゃが所属しょぞくするヤギェウォ大学だいがくにちなんで、このシステムは「ヤギェウォの妥協だきょう」と呼よばれている。最適さいてきな閾値は、加盟かめい国こくの数かず$M$が$1/2+1/{\sqrt {\pi M}}$になるにつれて減少げんしょうする。

批判ひはん

ペンローズ方式ほうしきは、世論せろんが賛成さんせいと反対はんたいに等ひとしく分わかれる投票とうひょうに限定げんていされていると主張しゅちょうされてきた。選挙せんきょ方法ほうほうについての様々さまざまな研究けんきゅうでは、このような等分とうぶん割わりのシナリオは典型てんけい的てきなものではないことが示しめされている。そのような選挙せんきょでは、投票とうひょうの重おもみを有権者ゆうけんしゃ数すうの0.9乗じょう（ペンローズ方式ほうしきでは0.5乗じょう）に応おうじて配分はいぶんすべきであることが示唆しさされている。

実際じっさいには、1票ひょうの決定けってい力りょくの理論りろん的てきな可能かのう性せいは疑問ぎもんである。2000年ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょう選挙せんきょにおけるフロリダ州しゅうでの選挙せんきょのように、同数どうすうに近ちかい選挙せんきょ結果けっかは法的ほうてきに争あらそわれる可能かのう性せいが高たかく、1人ひとり1票ひょうが決定的けっていてきではないことを示唆しさしている。

外部がいぶリンク

• The Double Majority Voting Rule of the EU Reform Treaty as a Democratic Ideal for an Enlarging Union : an Appraisal Using Voting Power Analysis, D. Leech and H. Aziz, University of Warwick (2007).
• Many more references at the web page of American Mathematical Society here.