ラポルテの規則きそく

ラポルテの規則きそく（ラポルテのきそく、英えい: Laporte rule）は、中心ちゅうしん対称たいしょうの分子ぶんし（反転はんてん中心ちゅうしんを持もつもの）および原子げんしにのみ適用てきようされる分光ぶんこう学がく的てき選択せんたく則そくである。ラポルテの規則きそくは、パリティが保存ほぞんされる電子でんし遷移せんい（反転はんてん中心ちゅうしんに対たいして対称たいしょうであっても反対称はんたいしょうであっても、すなわちg〔偶〕→ g〔偶〕、あるいはu〔奇き〕→ u〔奇き〕）は禁制きんせいである、と述のべる。こういった分子ぶんしにおける許容きょよう遷移せんいは、（g → uあるいはu → gの）パリティの変化へんかを含ふくまなければならない。結果けっかとして、分子ぶんしが中心ちゅうしん対称たいしょうであるとすれば任意にんいのp軌道きどう内ないあるいはd軌道きどう内ないでの遷移せんい（すなわち、任意にんいの亜あ殻から内ないでの電子でんしの再さい分配ぶんぱいのみを含ふくむ遷移せんい）は禁制きんせいである。

軌道きどうに付つけられる記号きごうgはドイツ語ごのgeradeの略りゃくであり、反転はんてん中心ちゅうしんに関かんして対称たいしょう性せいが存在そんざいすることを意味いみする。すなわち、全すべての原子げんしを反転はんてん中心ちゅうしんを通とおって反転はんてんさせたとすると、得えられる軌道きどうは反転はんてんを行おこなう前まえのものと全まったく同おなじとなる。記号きごうuはドイツ語ごのungeradeの略りゃくであり、軌道きどうが反転はんてん中心ちゅうしんに関かんして反対称はんたいしょうであり、反転はんてんによっていずれの場所ばしょにおいても符号ふごうが変化へんかする。ラポルテの規則きそくは、電子でんし遷移せんいの間あいだにパリティが反転はんてんしなければならないとする量子力学りょうしりきがくにおける選択せんたく律りつが起源きげんである。

しかしながら、対称たいしょう中心ちゅうしんが乱みだれたとすれば禁制きんせい遷移せんいは許ゆるされ、実際じっさいに、こういった一見いっけんしたところ禁制きんせいの遷移せんいは実験じっけんで観測かんそくされる。対称たいしょう中心ちゅうしんの乱みだれは、ヤーン・テラー効果こうかや非対称ひたいしょう振動しんどうといった様々さまざまな理由りゆうで起おこる。錯体さくたいは常つねに完璧かんぺきに対称たいしょうではない。分子ぶんしの非対称ひたいしょう振動しんどうの結果けっかとして起おこる遷移せんいは振ふ電でん遷移せんいと呼よばれる（振ふ電でん相互そうご作用さようを参照さんしょう）。こういった非対称ひたいしょう振動しんどうによって、d → d遷移せんいといった理論りろん的てきに禁制きんせいであるはずの遷移せんいが弱よわく許ゆるされる。

ラポルテの規則きそくの名称めいしょうはオットー・ラポルテに因ちなむ。ラポルテの規則きそくは、特とくに遷移せんい金属きんぞくの電子でんし分光ぶんこう法ほうに関連かんれん性せいがある。八はち面めん体形たいけい錯体さくたいは（厳密げんみつあるいは近似きんじ的てきに）対称たいしょう中心ちゅうしんを持もつ。そのため、d → d遷移せんいはラポルテの規則きそくによって禁制きんせいであり、極きわめて弱よわく観測かんそくされる。しかしながら、四面しめん体形たいけい錯体さくたいは対称たいしょう中心ちゅうしんを持もたないため、ラポルテの規則きそくは適用てきようされず、より強つよいスペクトルを持もつ。

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