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レバレッジ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
てこの原理げんり。てこを使つかえばかるおもりおも荷物にもつうごかせるように、レバレッジを使つかえばすくない自己じこ資本しほんおおきな資本しほんうごかせる。

レバレッジ英語えいご: leverage)とは、経済けいざい活動かつどうにおいて、他人たにん資本しほん使つかうことで自己じこ資本しほんたいする利益りえきりつたかめること、または、そのたかまる倍率ばいりつ

原義げんぎは「てこ(レバー、lever)の作用さよう」。レヴァレッジリバレッジなどカナ表記ひょうきはいくつかある。レバレッジ効果こうかレバレッジりつなどとも。ギアリング(gearing歯車はぐるまによるトルク増大ぞうだい)とぶこともあるが趣旨しゅしおなじである。ちからくわえた方向ほうこうから作用さようする方向ほうこう一方いっぽうてき増幅ぞうふくされる、てこや歯車はぐるまたとえられるが、後述こうじゅつとお商取引しょうとりひき用語ようごでは損失そんしつ増幅ぞうふくされる。

レバレッジ効果こうか[編集へんしゅう]

自己じこ資本しほんをもって経済けいざい活動かつどうをするさい利益りえきりつたかめたい(正確せいかくには変動へんどうせい:ボラティリティをたかめたい)場合ばあい他人たにん資本しほんもちいることで可能かのうとなる。

そう資産しさん = 自己じこ資本しほん + 他人たにん資本しほん
レバレッジ倍率ばいりつ = そう資産しさん ÷ 自己じこ資本しほん
  • れい1)事業じぎょう会社かいしゃが100えん自己じこ資本しほんっている場合ばあいそう資産しさんは100えんである。そう資産しさん100えんから100えんげと10えん利益りえきがもたらされることが期待きたいできる場合ばあい、100えん自己じこ資本しほんたいして利益りえきりつは10%となる。ここで市場いちば非常ひじょう有望ゆうぼう拡張かくちょうせいがある)と想定そうていした場合ばあい、400えん他人たにん資本しほんれ)を導入どうにゅうし、そう資産しさんを500えんにしたとする。その場合ばあいそう資産しさん500えんからは500えんげと、50えん利益りえき営業えいぎょう利益りえき)がもたらされる。400えんれにたいする利払りばらいが、5%の20えんだとすると、利益りえき経常けいじょう利益りえき)は30えんとなる。これで、自己じこ資本しほんたいする利益りえきりつは30%となる。
  • れい2)100えん自己じこ資本しほんで100えん土地とちい、それを担保たんぽに80えんり80えん土地とちい、それを担保たんぽに60えんり60えん土地とちい、それを担保たんぽに40えんり40えん土地とちい、それを担保たんぽに20えんり20えん土地とち場合ばあい自己じこ資本しほん100えんで300えん不動産ふどうさん所有しょゆうすることができる(レバレッジ3ばい)。この場合ばあい金利きんり考慮こうりょしなければ不動産ふどうさん価格かかく平均へいきん10%上昇じょうしょうすれば自己じこ資本しほんは130えんになる。

一方いっぽうで、レバレッジ効果こうか変動へんどうせいたかめているため、自己じこ資本しほんたいする損失そんしつ割合わりあいおおきくなる。すなわち、そう資本しほん利用りようした事業じぎょう利益りえきりつ他人たにん資本しほん調達ちょうたつコストを下回したまわるときは、むしろレバレッジ効果こうかにより、利益りえきりつ減少げんしょうまたは損失そんしつ拡大かくだい招来しょうらいすることとなる。

このようにして、他人たにん資本しほん導入どうにゅうすることで同額どうがく自己じこ資本しほんでも、よりたか利益りえきりつげられることをレバレッジ効果こうかぶ。同様どうように、他人たにん資本しほんすで利用りようしている企業きぎょうも、その他人たにん資本しほん利用りよう割合わりあいたか自己じこ資本しほん比率ひりつ低下ていかさせることで、レバレッジ効果こうか利用りようすることができる。

なお、レバレッジ倍率ばいりつ債務さいむ超過ちょうかにより自己じこ資本しほんが0以下いかとき定義ていぎできない。

ぎゃくのレバレッジ効果こうか[編集へんしゅう]

また、ぎゃく自己じこ資本しほんのうち投資とうしする割合わりあいひくくすることで、自己じこ資本しほんたいする利益りえき変動へんどうせい低下ていかさせ、安全あんぜんせいたかめることも可能かのうである。

レバレッジ効果こうかれい[編集へんしゅう]

  • 装置そうち産業さんぎょう
  • 不動産ふどうさん担保たんぽとした不動産ふどうさん投資とうし
  • 金融きんゆうにおける信用しんよう取引とりひき

市場いちば長期ちょうきてき安定あんていてき成長せいちょう期待きたいできる場合ばあい事業じぎょう会社かいしゃ自社じしゃ資産しさん自己じこ資本しほん)を担保たんぽ借入かりいれをおこない、営業えいぎょう部門ぶもん強化きょうか製造せいぞう設備せつび増強ぞうきょうなどをおこなう。このさいちょうてき期待きたい収益しゅうえきりつ市場いちば利子りしりつよりも十分じゅうぶんたかければ他人たにん資本しほん導入どうにゅうによるせいのレバレッジ効果こうか期待きたいできる。一方いっぽう市場いちば成長せいちょう非常ひじょう確実かくじつで、短期たんきてき変動へんどうはばおおきいことが予想よそうできる場合ばあいこうレバレッジ経営けいえい自己じこ資本しほん不可測ふかそく損失そんしつをもたらす可能かのうせいがある。

金融きんゆう取引とりひき[編集へんしゅう]

金融きんゆう取引とりひきにおいては、20世紀せいき初頭しょとうごろから意識いしきてきにレバレッジ効果こうかはたらかせるようになった。ブローカーズローンとばれた取引とりひきでは、購入こうにゅうする株式かぶしき担保たんぽ資金しきんりて株式かぶしき購入こうにゅうできるため、自己じこ資本しほん以上いじょう投資とうしおこなうことが可能かのうであった。現代げんだいでも、レバレッジがた投資とうし信託しんたく・レバレッジがた上場じょうじょう投資とうし信託しんたく信用しんよう取引とりひき各種かくしゅデリバティブ取引とりひき先物さきもの取引とりひきオプション取引とりひきFXCFDなど)などで他人たにん資本しほん導入どうにゅうしてレバレッジ効果こうかはたらかせた投資とうし可能かのうである。

ぎゃくに、ボラティリティをらしたい、実質じっしつてきにレバレッジをげたい場合ばあいは、普通ふつう預金よきん日米にちべいなどの国債こくさい保有ほゆうし、比率ひりつたかめることで、ボラティリティががる。

現物げんぶつ不動産ふどうさん投資とうしにおいては、銀行ぎんこうかられをすることでレバレッジをかけた投資とうし可能かのうである。不動産ふどうさん投資とうし信託しんたく一般いっぱんてき金融きんゆう商品しょうひんおなじくレバレッジをかけられる。

レバレッジ倍率ばいりつ固定こていにするとしょうじる現象げんしょう[編集へんしゅう]

レバレッジがた投資とうし信託しんたくやレバレッジがたETFなどは、レバレッジ倍率ばいりつ固定こていにするため、ほとんどの金融きんゆう商品しょうひん毎日まいにちちが周期しゅうき場合ばあいもあり)、レバレッジ倍率ばいりつ固定こていになるように調整ちょうせい(リバランス)をはかる。そのさい、レバレッジ倍率ばいりつが1ばいよりおおきいと、金融きんゆう商品しょうひん価格かかく変動へんどうし、もともどっても、資産しさん減少げんしょうしてしまう。このこと日本にっぽんのレバレッジがた投資とうし信託しんたくやレバレッジがたETFの留意りゅういてんに「はら指標しひょう上昇じょうしょう下落げらく相互そうごかえ場合ばあい上記じょうき複利ふくり効果こうかによりレバレッジがた指標しひょう逓減ていげんしていくという特性とくせいがあり、このような場合ばあい投資とうししゃ利益りえきにくくなりますので留意りゅうい必要ひつようです」などの文言もんごんかなら記載きさいされている。

たとえば、3日間にちかん価格かかく推移すいいが5えん→4えん→5えんだとして、5えん→4えんは20%下落げらくたいして、4えん→5えんは25%上昇じょうしょうのため、もともどるにはよりおおきく上昇じょうしょうしないといけないことに原因げんいんがある。レバレッジ2ばいで、資産しさん50,000えんでスタートしたとする。

  • 1にちかぶ100,000えん証拠しょうこきん50,000えん
  • 2にちかぶ80,000えん。レバレッジ2ばいにするために、かぶ売却ばいきゃくし、かぶ60,000えん証拠しょうこきん30,000えん
  • 3にちかぶ75,000えん。このかぶ売却ばいきゃくして資産しさん確定かくていさせると、証拠しょうこきん45,000えんとなり、資産しさんが10%減少げんしょうしている。

ぎゃくに、レバレッジ倍率ばいりつが1ばい未満みまん場合ばあいは、おな価格かかくもどった場合ばあいでも、資産しさんえるという現象げんしょう発生はっせいする。3日間にちかん価格かかく推移すいいが5えん→4えん→5えんだとして、レバレッジ0.5ばいで、資産しさん50,000えんでスタートしたとする。

  • 1にちかぶ25,000えん現金げんきん25,000えん合計ごうけい50,000えん
  • 2にちかぶ20,000えん現金げんきん25,000えん。レバレッジ0.5ばいにするために、かぶ購入こうにゅうし、かぶ22,500えん現金げんきん22,500えん合計ごうけい45,000えん
  • 3にちかぶ28,125えん現金げんきん22,500えん合計ごうけい53,125えんとなり、当初とうしょの50,000えんから資産しさんが6.25%えている。

ここでは現金げんきんとしたが、預金よきん国債こくさいなどであれば、金利きんりくためマイナス金利きんりでなければさら資産しさんえる。

これらは数学すうがくてき現象げんしょうのため、レバレッジ倍率ばいりつ固定こていにした場合ばあいすべての金融きんゆう商品しょうひん不動産ふどうさん投資とうしなどで発生はっせいする。

日本にっぽん企業きぎょうのレバレッジ効果こうか[編集へんしゅう]

自己じこ資本しほんのみを担保たんぽ他人たにん資本しほん導入どうにゅうすればレバレッジは4ばいであっても(ひだり)、連帯れんたい保証ほしょうすることで実質じっしつレバレッジは1.5ばいとなる(みぎ

日本にっぽん企業きぎょう高度こうど経済けいざい成長せいちょうれを大幅おおはばやしたため、伝統でんとうてき先進せんしんこくよりレバレッジ効果こうかたかいとされてきた。しかし日本にっぽん場合ばあいはとくに伝統でんとうてき家業かぎょうてき)な中小ちゅうしょう企業きぎょうたいする法人ほうじん融資ゆうしでは、経営けいえいしゃ(オーナー)個人こじんによる連帯れんたい保証ほしょう発達はったつしており、個人こじんオーナーの土地とち家屋かおく担保たんぽにした法人ほうじん融資ゆうしというてんでは本来ほんらい意味いみでのレバレッジ効果こうか限定げんていてきなものである。

また、1970年代ねんだい後半こうはん以降いこう優良ゆうりょう製造せいぞうぎょう債務さいむ返済へんさいてんじ、1990年代ねんだいまつには有利子ゆうりし負債ふさい返済へんさいだいブームとなった。このため、一部いちぶ企業きぎょう多額たがく現金げんきんかかえ、むしろぎゃくのレバレッジ効果こうかはたらいている。

一般いっぱん欧米おうべい企業きぎょう自己じこ資本しほん比率ひりつたかく、日本にっぽん企業きぎょう自己じこ資本しほん比率ひりつひくい。一般いっぱんにアメリカけい企業きぎょう自己じこ資本しほん比率ひりつたかいとされるが、上場じょうじょう企業きぎょう上場じょうじょう企業きぎょうによってその性向せいこうはことなり、中小ちゅうしょう企業きぎょう金融きんゆう機関きかんからの借入かりい比率ひりつがややたかくなる。欧州おうしゅうでは伝統でんとうてき社債しゃさい市場いちば発達はったつしているため、米国べいこくけい企業きぎょうより自己じこ資本しほん比率ひりつひくい。米国べいこくけい企業きぎょう欧州おうしゅう子会社こがいしゃ設立せつりつするさいも、米国べいこく本社ほんしゃから直接ちょくせつ資本しほん投下とうかをおこなうより現地げんち社債しゃさい発行はっこうして資本しほん調達ちょうたつおこな傾向けいこうにある。

日本にっぽん企業きぎょうについては1990ねんバブル崩壊ほうかい以降いこう自己じこ資本しほん傾向けいこうにあるが、これについても業種ぎょうしゅ業態ぎょうたい個別こべつ企業きぎょうによりまちまちというほかない状況じょうきょうである。たとえばかつては借金しゃっきん経営けいえいはやされたこともあるトヨタ自動車とよたじどうしゃなども、本社ほんしゃ単体たんたいでは金融きんゆう機関きかんからの借入かりいれがないものの連結れんけつ会計かいけいでは多額たがく有利子ゆうりし負債ふさいがあり、連結れんけつ自己じこ資本しほん比率ひりつは30%たいとなる。これは顧客こきゃくけオートローンなど金融きんゆう事業じぎょう会社かいしゃ子会社こがいしゃ(トヨタファイナンス)につほか、買収ばいしゅうなどにより連結れんけつしたあたらしい子会社こがいしゃ有利子ゆうりし負債ふさい存在そんざいしていることによる。オートローン事業じぎょうについては、顧客こきゃく債権さいけん証券しょうけんして金融きんゆう機関きかんけさせている場合ばあい保証ほしょう契約けいやく:デフォルトスワップ)、かしたおせリスクは保証ほしょうりょうとして損益そんえき処理しょりできており、この場合ばあいどこまでを正味しょうみ他人たにん資本しほん(レバレッジ)と評価ひょうかできるか会計かいけい資料しりょうだけで判断はんだんするのはにわかに困難こんなんになる。

文献ぶんけん情報じょうほう[編集へんしゅう]

  • 西野にしの嘉一郎かいちろう企業きぎょう資本しほん構成こうせい悪化あっかとその対策たいさく:減税げんぜい公債こうさい発行はっこう提唱ていしょう」『商學しょうがく討究とうきゅうだい16かんだい2ごう小樽商科大学おたるしょうかだいがく、1965ねん12月、51-71ぺーじISSN 04748638NAID 110000230912 
  • もり昭夫あきお資本しほん構成こうせい規定きてい要因よういん : にちどく企業きぎょう資本しほん構成こうせい比較ひかく中心ちゅうしんとして」『国民こくみん経済けいざい雑誌ざっしだい156かんだい1ごう神戸大学こうべだいがく経済けいざい経営けいえい学会がっかい、1987ねん7がつ、1-19ぺーじdoi:10.24546/00173675ISSN 0387-3129NAID 120000943499 
  • 競争きょうそうりょく強化きょうかかんする問題もんだい天野あまの正人まさと金融きんゆうちょう金融きんゆう研究けんきゅう研修けんしゅうセンター2009ねん7がつ22にち[1]P.8[2]
  • 欧米おうべい主要しゅようこく中小ちゅうしょう企業きぎょう政策せいさく融資ゆうし中小ちゅうしょう企業きぎょう金融きんゆう公庫こうこ総合そうごう研究所けんきゅうじょ中小公庫ちゅうしょうこうこレポートNO.2004-10 2005ねん3がつ25にち[3]※P.11に欧州おうしゅう事例じれいあり
  • 日本にっぽん経済けいざい中心ちゅうしんとする国際こくさい比較ひかく統計とうけい日本銀行にっぽんぎんこう

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]