不ふ落不落

鳥山とりやま石燕せきえん『百ひゃく器き徒然つれづれ袋ぶくろ』より「不ふ落々々」

不ふ落不落、不ふ落々々（ぶらぶら）は、鳥山とりやま石燕せきえんの妖怪ようかい画集がしゅう『百ひゃく器き徒然つれづれ袋ぶくろ』に描えがかれている日本にっぽんの妖怪ようかいで、提灯ちょうちんの妖怪ようかい。

『百ひゃく器き徒然つれづれ袋ぶくろ』では、竹たけに結むすびつけられ、さけ目めを口くちのようにひらいた提灯ちょうちんが道みちに向むかっておおいかぶさるように傾かたむいている様子ようすが描えがかれている。解説かいせつ文ぶんには、

山田やまだもる提灯ちょうちんの火ひとは見みゆれどもまことは蘭らんぎくにかくれすむ狐火きつねびなるべしとゆめのうちにおもひぬ

とあり、田たに立たっている提灯ちょうちんの火ひのように見みえるが、蘭らん菊きくの野のに隠かくれすんでいる狐きつねのおこす火ひ（狐火きつねび）なのでは無ないかと夢ゆめのなかで思おもった、と記しるされている。他たの文献ぶんけんや民間みんかん伝承でんしょうには「ぶらぶら」という妖怪ようかいは確認かくにんされておらず石燕せきえんが何なにに拠よっているか詳細しょうさいは不明ふめいであるが、俗ぞくにいう提灯ちょうちんお化ばけに相当そうとうする妖怪ようかいと考かんがえられている。「山田やまだもる」という言葉ことばは通常つうじょうはかかしに用もちいられることが多おおい。狐きつねが火ひを実際じっさいに起おこす描写びょうしゃで描えがかれる石燕せきえんの提灯ちょうちん火ひ（『今昔こんじゃく画図えず続ぞく百ひゃく鬼おに』）の絵えには画面がめんに田たの畦道あぜみちや、かかしが描えがかれている。文中ぶんちゅうに「狐火きつねびなるべし」という表現ひょうげんがあることからそのまま不ふ落不落の正体しょうたいを狐きつねとする解釈かいしゃくも存在そんざいするが、『百ひゃく器き徒然つれづれ袋ぶくろ』に器物きぶつの妖怪ようかいとして描えがかれていることから、提灯ちょうちんそのものが化ばけた妖怪ようかいの一種いっしゅと見みなすほうが妥当だとうであるとする意見いけんもある。

画が中ちゅうに書かき込こまれた表記ひょうきは不ふ々落々という字じ順じゅんで「ぶらぶら」と読よませているが、当該とうがいの巻まきの目録もくろくでは不ふ落々々とあり、音おとなどからも「不ふ落不落」の表記ひょうきが一般いっぱん的てきに用もちいられている。

水木みずきしげるの著作ちょさくでは、京都きょうと府ふの竹たけ寺てらに伝つたわるもので新あたらしく亡なくなった者ものが寺てらに運はこばれて来くる際さいに現あらわれる墓場はかばの提灯ちょうちんの妖怪ようかいであるという解説かいせつがなされているが、石燕せきえんの作品さくひんなどからは確認かくにんされていない。

関連かんれん項目こうもく

• 提灯ちょうちん火ひ - 石燕せきえんによって描えがかれている怪火かいか。
• 提灯ちょうちんお化ばけ
• 日本にっぽんの妖怪ようかい一覧いちらん