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仙骨せんこつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
骨ほね: 仙骨せんこつ
仙骨せんこつ、寛ひろし骨ほね面めん
男性だんせいの骨盤こつばん（中央ちゅうおうが仙骨せんこつ）
名称めいしょう
日本語にほんご 仙骨せんこつ
英語えいご Sacrum
ラテン語らてんご os sacrum
関連かんれん構造こうぞう
上位じょうい構造こうぞう 骨盤こつばん
関連かんれん情報じょうほう
MeSH Sacrum
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仙骨せんこつ。赤色あかいろで示しめす。

仙骨せんこつ（せんこつ、英えい: Sacrum）とは、脊椎せきついの下部かぶに位置いちする大おおきな三角形さんかっけいの骨ほねで、骨盤こつばんの上方かみがた後部こうぶであり、くさびのように寛ひろし骨こつに差さし込こまれている。その上部じょうぶは腰椎ようついの最さい下部かぶと結合けつごうしており、下部かぶは尾骨びこつと結合けつごうしている。

仙骨せんこつとなる仙せん椎骨ついこつは、胚はい発生はっせいでははじめの1か月げつの終おわりころに上位じょういの脊椎せきついが先さきに形成けいせいし、その後ごに形成けいせいしていく。誕生たんじょう時じの5つの仙せん椎しいは、16--18歳さいごろから徐々じょじょに癒合ゆごうをはじめ、およそ34歳さいくらいまでに１ひとつの仙骨せんこつとして完全かんぜんに癒合ゆごうする。

仙骨せんこつは3つの異ことなる面めんを持もっており、それぞれが様々さまざまな形状けいじょうを形成けいせいする。仙骨せんこつは4つの他ほかの骨ほねと関節かんせつ結合けつごうする。全体ぜんたいに彎曲わんきょくしており、前ぜん傾かたぶけしている。前方ぜんぽうに凹面になっている。仙骨せんこつ底そこは前方ぜんぽうに突出とっしゅつし、岬みさき角かくを形成けいせいしている。ここが仙骨せんこつの最さい上部じょうぶである。中央ちゅうおう部ぶは大おおきく背せ側がわに湾曲わんきょくし、骨盤こつばん腔の空間くうかんを形成けいせいしている。側がわ方かたへの2つの突出とっしゅつは仙骨せんこつ翼つばさと呼よばれ、腸ちょう骨こつとL字じ型がたの仙せん腸ちょう関節かんせつを形成けいせいする。

語源ごげん

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英語えいごのsacrum[1] はラテン語らてんごのos sacrumによるものであり、[2][3] これはさらに古代こだいギリシア語ごのἱερόν ὀστέονの翻訳ほんやくであることが[4]、ギリシャの医師いしガレノスの著作ちょさくから確認かくにんされている[4][5]。Osおよびὀστέονは「骨ほね」を意味いみし[5][6]、sacrumおよびἱερόνは「聖せいなる」[5][6]という意味いみである。 かつて仙骨せんこつは英語えいごではholy bone[7]と呼よばれていた。このような表現ひょうげんは他たの言語げんごにも見みられ、ドイツ語ごの heiliges Bein[7] またはHeiligenbein[8]、オランダ語ごのheiligbeen[9]などがある。「仙骨せんこつ」も重訂じゅうてい解体かいたい新書しんしょにos sacrumが「護まもる神かみ骨こつ」と訳やくされたものが、「薦骨せんこつ」、「仙骨せんこつ」と変かえられたものである[10]

元もととなったἱερόν ὀστέονの語源ごげんにはいくつかの説せつがある。一ひとつは、生殖せいしょく器きの位置いちする部位ぶいであるため、これが供きょう犠として捧ささげられたためという説せつである[11]。他たには[8] 古代こだい、この骨ほねが不壊ふえであると信しんじられたためἱερόνという形容詞けいようしが用もちいられたとする説せつもある。さらに、仙骨せんこつは最大さいだいの椎骨ついこつであるためμέγας σπόνδυλος[12]とも呼よばれたとする説せつもある（μέγας = 大おおきな[5]、σπόνδυλος　= 椎骨ついこつ[5]）。いくつかの例れいでἱερόςはμέγαςの同義語どうぎごとして用もちいられており[12]、このためμέγας σπόνδυλοςからἱερόν ὀστέονへと変化へんかしたとしている。ラテン語らてんごのvertebra magna[4] はμέγας σπόνδυλοςの訳わけである。

構造こうぞう

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仙骨せんこつは脊椎せきついの支持しじと脊髄せきずいを内包ないほうするために複雑ふくざつな形状けいじょうをしている。また、寛ひろし骨ほねと関節かんせつ結合けつごうしている。仙骨せんこつは寛ひろし骨ほね面めん、背面はいめん、および側面そくめんの3つの面めんを持もっている。仙骨せんこつ底そこは上前うわまえ方かたを向むいた広ひろい構造こうぞうである。仙骨せんこつ突 (apex ossis sacri )は下方かほうを向むき、尾骨びこつと関節かんせつ結合けつごうする楕円だえん状じょうの面めんを持もっている。仙骨せんこつ管かんは脊柱せきちゅう管かんの一部いちぶであり、仙骨せんこつの大半たいはんを貫通かんつうしている。

岬みさき角かく

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仙骨せんこつ岬みさき角かく（こうかく、英えい: promontory）は骨盤こつばん上口かみぐち（英語えいご版ばん）の縁えんをなしており、腸ちょう骨こつ線せん（英語えいご版ばん）および骨盤こつばん分界ぶんかい線せん（英語えいご版ばん）を構成こうせいする[13]。岬みさき角かくは第だい五ご腰椎ようついと関節かんせつし、水平面すいへいめんに対たいし約やく30度どの仙せん椎しい角かく（英語えいご版ばん）をなす。

表面ひょうめん

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仙骨せんこつ前面ぜんめん (英えい: pelvic surface) は上部じょうぶで凹状になっており、両りょう端はしの間あいだでわずかに曲まがっている。その中なかほどには4つの横切よこぎる畝うねがあり、これは元来がんらいの5つの仙せん椎しいの境界きょうかい面めんである。第だい一いちの領域りょういきの本体ほんたいは大おおきく、腰椎ようついのような構造こうぞうをしている。これ以下いかの骨ほねは順じゅんに小ちいさく、平たいらになり、前方ぜんぽうに凹状となって仙骨せんこつを形成けいせいする。4つの畝うねの端はしは4つの前ぜん仙骨せんこつ孔あな(英えい: anterior sacral foramina) に終おわっている。これらの孔あなは仙骨せんこつ神経しんけいの出口でぐちと外側そとがわ仙骨せんこつ動脈どうみゃく（英語えいご版ばん）の入口いりくちとなっている。前ぜん仙骨せんこつ孔あなの横よこ面めんには仙骨せんこつ神経しんけいを内包ないほうする広ひろく浅あさい溝みぞに横切よこぎられている。これらは、梨なし状じょう筋すじの起おこり始はじめとなる畝うね状じょうの骨ほねで分わけられている。仙骨せんこつを正中せいちゅう線せんで分割ぶんかつすると、骨ほね同士どうしは周しゅう状じょうの骨ほねで結合けつごうされており内部ないぶに椎間板ついかんばんが存在そんざいした空間くうかんを残のこしていることが見みられる。

背面はいめんは凸とつ状じょうであり、前面ぜんめんより幅はばが狭せまい。中央ちゅうおうに、仙せん椎しいの棘とげ突起とっきに由来ゆらいする3ないし4の結節けっせつを持もつ正中せいちゅう仙骨せんこつ稜りょう（英語えいご版ばん）がある。正中せいちゅう仙骨せんこつ稜りょうの両側りょうがわは浅あさい溝みぞ状じょうになっており、多た裂きれ筋すじの起おこり始はじめである。溝みぞの底部ていぶは癒合ゆごうした椎骨ついこつの椎しい弓ゆみからなる。第だい五ご仙せん椎しい、および時ときにより第だい四よん仙せん椎しいの椎しい弓ゆみは背面はいめんで癒合ゆごうしないため、仙骨せんこつ管かんの背せ側壁そくへきの欠かけ失しつ、すなわち仙骨せんこつ裂きれ孔あなを形成けいせいする。溝みぞの側面そくめんは癒合ゆごうした関節かんせつ突起とっきよりなる内側うちがわ仙骨せんこつ稜りょうである。第だい一いち仙せん椎しいの関節かんせつ突起とっきは大おおきく卵たまご形がたをしている。その端はし面めんは左右さゆうに凹状になっており、上うえおよび背面はいめんを向むき、第だい五ご腰椎ようついの下しも関節かんせつ突起とっきと関節かんせつしている。仙骨せんこつ角かくとして知しられる第だい五ご仙せん椎しいの下しも関節かんせつ突起とっきは下方かほうを向むき、尾骨びこつ角かくと関節かんせつしている。関節かんせつ突起とっきの横よこに4つの後こう仙骨せんこつ孔あながある。これらは前ぜん仙骨せんこつ孔あなに比くらべ、小ちいさく形かたちも一定いっていしておらず、仙骨せんこつ神経しんけいの背せ側がわ領域りょういきを通とおしている。後こう仙骨せんこつ孔あなの外側そとがわには仙せん椎しいの横よこ突起とっきよりなる外側そとがわ仙骨せんこつ稜りょうがある。第だい一いち仙せん椎しいの横よこ突起とっきは大おおきく特徴とくちょう的てきである。これらは第だい二に仙せん椎しいの横よこ突起とっきとともに、後こう仙せん腸ちょう靭帯じんたいの上部じょうぶ線維せんいに付着ふちゃく面めんを提供ていきょうする。第だい三さん仙せん椎しいの横よこ突起とっきには後こう仙せん腸ちょう靭帯じんたいの下部かぶ線維せんいが付着ふちゃくする。第だい四よん、および第だい五ご仙せん椎しいの横よこ突起とっきには仙骨せんこつ結節けっせつ靭帯じんたいが付着ふちゃくする。

外側そとがわ面めんは上部じょうぶで広ひろく、下部かぶで狭せまくなっている。上うえ半分はんぶんは未み成熟せいじゅくな軟骨なんこつで覆おおわれた耳みみ状じょう面めんを形成けいせいしており、腸ちょう骨こつと関節かんせつしている。この背せ側がわには仙骨せんこつ粗あら面めんがあり、後こう仙せん腸ちょう靭帯じんたいが付着ふちゃくする3つの深ふかいくぼみがある。下部かぶは薄うすくなっており、仙骨せんこつ尖とんが外側そとがわ角かくと呼よばれる突起とっきで終おわっている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Anderson, D.M. (2000). Dorland’s illustrated medical dictionary (29th edition). Philadelphia/London/Toronto/Montreal/Sydney/Tokyo: W.B. Saunders Company.
  2. ^ His, W. (1895). Die anatomische Nomenclatur. Nomina Anatomica. Der von der Anatomischen Gesellschaft auf ihrer IX. Versammlung in Basel angenommenen Namen. Leipzig: Verlag Veit & Comp.
  3. ^ Federative Committee on Anatomical Terminology (FCAT) (1998). Terminologia Anatomica. Stuttgart: Thieme
  4. ^ a b c Hyrtl, J. (1880). Onomatologia Anatomica. Geschichte und Kritik der anatomischen Sprache der Gegenwart. Wien: Wilhelm Braumüller. K.K. Hof- und Unversitätsbuchhändler.
  5. ^ a b c d e Liddell, H.G. & Scott, R. (1940). A Greek-English Lexicon. revised and augmented throughout by Sir Henry Stuart Jones. with the assistance of. Roderick McKenzie. Oxford: Clarendon Press.
  6. ^ a b Lewis, C.T. & Short, C. (1879). A Latin dictionary founded on Andrews' edition of Freund's Latin dictionary. Oxford: Clarendon Press.
  7. ^ a b Schreger, C.H.Th. (1805). Synonymia anatomica. Synonymik der anatomischen Nomenclatur. Fürth: im Bureau für Literatur.
  8. ^ a b Foster, F.D. (1891-1893). An illustrated medical dictionary. Being a dictionary of the technical terms used by writers on medicine and the collateral sciences, in the Latin, English, French, and German languages. New York: D. Appleton and Company.
  9. ^ Everdingen, J.J.E. van, Eerenbeemt, A.M.M. van den (2012). Pinkhof Geneeskundig woordenboek (12de druk). Houten: Bohn Stafleu Van Loghum.
  10. ^ “骨ほねの逸話いつわ：仙骨せんこつ”. 2014年ねん7月がつ30日にち閲覧えつらん。
  11. ^ Online Etymology Dictionary
  12. ^ a b Hyrtl, J. (1875). Lehrbuch der Anatomie des Menschen. Mit Rücksicht auf physiologische Begründung und praktische Anwendung. (Dreizehnte Auflage). Wien: Wilhelm Braumüller K.K. Hof- und Universitätsbuchhändler.
  13. ^ Kirschner, Celeste G. (2005). Netter's Atlas Of Human Anatomy For CPT Coding. Chicago: American medical association. p. 274. ISBN 1-57947-669-4 

関連かんれん項目こうもく

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