内郷うちごう丸まる遭難そうなん事件じけん

内郷うちごう丸まる遭難そうなん事件じけん

事故じこ後ごの遺体いたい捜索そうさく
日付ひづけ	1954年ねん（昭和しょうわ29年ねん）10月8日にち
時間じかん	13時じ5分ふん(JST)
場所ばしょ	神奈川かながわ県けん津久井つくい郡ぐん与瀬よせ町まち
死者ししゃ・負傷ふしょう者しゃ
中学生ちゅうがくせい22名めい死亡しぼう

内郷うちごう丸まる遭難そうなん事件じけん（うちごうまるそうなんじけん）は、1954年ねん（昭和しょうわ29年ねん）10月がつ8日にち昼過ひるすぎ、神奈川かながわ県けん津久井つくい郡ぐん与瀬よせ町まち（現在げんざいの相模原さがみはら市し緑みどり区く与瀬よせ）にある相模さがみ湖こで発生はっせいした水難すいなん事故じこである。

定員ていいんの4倍ばい以上いじょうの客きゃくを乗のせた遊覧ゆうらん船せんの内郷うちごう丸まるが運航うんこう中ちゅうに浸水しんすいにより沈没ちんぼつ、中学生ちゅうがくせい22人にんの死者ししゃが出でた。

経過けいか

乗船じょうせんまで

麻布あざぶ中学校ちゅうがっこう の二に学期がっきの遠足えんそくは、日帰ひがえりで10月がつ8日にち、2年生ねんせいの行いき先さきは高尾山たかおさん相模さがみ湖こ方面ほうめんとなった。生徒せいと276人にんは、担任たんにん4人にんを含ふくむ教諭きょうゆ6人にんの付つき添そいで出発しゅっぱつした。高尾山たかおさん登山とざんを終おえ、大だい垂水たるみ公園こうえんからバスで相模さがみ湖こ嵐山あらしやま湖畔こはんへ12時じ頃ごろ着つき、白須しらす茶店ちゃみせで昼食ちゅうしょくをとった。その後ごは徒歩とほでダムなどを見学けんがくする予定よていであったが、茶店ちゃみせの主人しゅじんに遊覧ゆうらん船せんの乗船じょうせんを勧すすめられたため、急遽きゅうきょ予定よていを変更へんこうし、希望きぼう者しゃが各自かくじ船賃ふなちんを支払しはらった上うえ、教諭きょうゆの付つき添そいで遊覧ゆうらん船せんを利用りようすることにした。

この時とき、乗船じょうせんを希望きぼうした人数にんずうは教諭きょうゆ2人ふたりと生徒せいと75人にんで、全員ぜんいんが一いち度どに定員ていいんが乗客じょうきゃく19人にん、船員せんいん2人にんの内郷うちごう丸まるに乗のり込こむことになった。船主せんしゅの説明せつめいによれば、料金りょうきんを受うけ取とっているうちに生徒せいとが我先われさきにと船ふねに乗のり込こんでしまい、そのまま出発しゅっぱつしてしまったという。

後日ごじつの横浜よこはま地方ちほう海難かいなん審判しんぱん庁ちょう（当時とうじ）の調しらべで、人数にんずうの総そう重量じゅうりょうは約やく3,660 kgに及およんだことが分わかっている。

事故じこ発生はっせい

12時じ55分ふん頃ごろに乗船じょうせんが終おわった内郷うちごう丸まるは出航しゅっこうした。この時とき、船頭せんどうは客席きゃくせきを見みて「かなり乗のったとは思おもうが平素へいそと別べつに変かわったことは感かんじないし心配しんぱいない」と判断はんだんし、そのまま出航しゅっこうした。しかし、定員ていいんを大幅おおはばに超過ちょうかして乗船じょうせんしたために乾ひ舷ふなばたが下さがって船尾せんびのエンジン排気はいき管かんが水みずに浸つかり、後日ごじつの海難かいなん審判しんぱん庁ちょうの調しらべでは、この時点じてんで毎まい分ぶん23 kgの割合わりあいで浸水しんすいが始はじまり、船尾せんび側がわへのトリムが暫時ざんじ増ふえつつあったと推定すいていしている。岸きしにいた船主せんしゅは出航しゅっこう直後ちょくごにこれに気きづいて沈没ちんぼつの危険きけんを察知さっちし、大声おおごえで内郷うちごう丸まるに岸きしへ戻もどるよう叫さけび続つづけたものの、船頭せんどうの耳みみには届とどかなかった。このため、船主せんしゅは自転車じてんしゃで300 m先さきの内郷うちごう船着場ふなつきばから第だい三さん内ない郷きょう丸まる（事故じこを起おこした内郷うちごう丸まるとは別べつの遊覧ゆうらん船せん）に乗のって内郷うちごう丸まるを追おった。

出航しゅっこうした船ふねは湖水こすいの西岸せいがんに向むかったが、3分ふん程ほど経たつと船尾せんびからの浸水しんすいが客席きゃくせきにも現あらわれ始はじめ、やがてそのままの姿勢しせいではいられなくなり、次第しだいに騒然そうぜんとなった。そして出航しゅっこうして10分ふんほど経たった13時じ5分ふん、1000 m程度ていど進すすんだ頃ころに船尾せんびの船縁ふなべりを乗のり越こえての激はげしい浸水しんすいが始はじまり、船体せんたいが船尾せんびから沈没ちんぼつしていった。沈没ちんぼつ地点ちてんは神奈川かながわ県けん津久井つくい郡ぐん日連ひづれ村むら（現在げんざいの相模原さがみはら市し緑みどり区く）地内じない、岸きしから約やく100 m、水深すいしん約やく25 mの地点ちてんであった。

沈没ちんぼつとともに湖面こめんに放ほうりだされた生徒せいとたちは、いったん沈しずんで再度さいど浮うかんできた内郷うちごう丸まるの屋根やねにしがみついたりしながら救助きゅうじょを待まち、駆かけ付つけた第だい三さん内ない郷きょう丸まるのほか、第だい一いち勝しょう瀬せ丸まるなどの遊覧ゆうらん船せん、モーターボートなど計けい5隻せきに救助きゅうじょされた。

救助きゅうじょされた生徒せいとは与瀬よせの船着場ふなつきばから上陸じょうりくし、付近ふきんの旅館りょかん「大正たいしょう館かん」に収容しゅうようされ、乗船じょうせんしなかった生徒せいとを合流ごうりゅうさせ、点呼てんこをとった結果けっか、この時点じてんで20人にんが行方ゆくえ不明ふめいであることが確認かくにんされた。

その後ご、乗船じょうせんしなかった生徒せいとと救助きゅうじょされた生徒せいと219人にんは、バスで19時じ50分ふんごろ学校がっこうに到着とうちゃくして帰宅きたくし、残のこっていた35人にんも21時じ頃ごろに学校がっこうに到着とうちゃくした。しかし、22時じ頃ごろになって2人ふたりの生徒せいとが帰宅きたくしていないことが判明はんめいし、この生徒せいとの遭難そうなんも確認かくにんされ、最終さいしゅう的てきに遭難そうなん者しゃは合計ごうけい22人にんとなった。

収容しゅうよう

翌よく9日にちは、早朝そうちょうから警察けいさつ消防しょうぼうに自衛隊じえいたいも加くわわり、大勢おおぜいの関係かんけい者しゃが見みている中なかで捜索そうさくを開始かいし、湖底こていから22の遺体いたいが引ひき上あげられた。

海難かいなん審判しんぱん

横浜よこはま地方ちほう海難かいなん審判しんぱん理事りじ所しょは事件じけんの発生はっせいの通告つうこくを受うけると、直ただちに係員かかりいん3人にんを相模さがみ湖こへ派遣はけんした。翌日よくじつ、現地げんちに赴おもむいた係員かかりいんは、内郷うちごう丸まるの船体せんたいを実地じっち検分けんぶんするとともに、貸かしボート業者ぎょうしゃや当時とうじ生徒せいとを引率いんそつした教員きょういん、遊覧ゆうらん船せんを運行うんこうする会社かいしゃの専務せんむ、事故じこを目撃もくげきした船舶せんぱくの乗組のりくみ員いん、遭難そうなんした中学生ちゅうがくせいなどに事情じじょう聴取ちょうしゅを行おこない、10月25日にち、内郷うちごう丸まる船頭せんどうと船舶せんぱくの所有しょゆう者しゃを指定してい海難かいなん関係かんけい人じんに指定していした。

11月9日にちに第だい1回かいの審判しんぱんが開廷かいていされた。傍聴ぼうちょう席せきには死亡しぼうした生徒せいとの家族かぞくをはじめ、報道ほうどう関係かんけい者しゃなど多数たすうの傍聴ぼうちょう者しゃで埋うまり、異様いような雰囲気ふんいきに包つつまれていた。

その後ご、この審判しんぱんは1955年ねん2月がつ5日にちの第だい5回かいの審判しんぱんをもって結審けっしんとなった。結審けっしんまでの間あいだ、審判しんぱんでは15人にんの証人しょうにん尋問じんもんを行おこなうなど集中しゅうちゅう的てきに審理しんりが行おこなわれ、3月4日にち、「本件ほんけん遭難そうなんは、船舶せんぱく所有しょゆう者しゃの業務ぎょうむ上じょうの過失かしつと船頭せんどうの運航うんこうに関かんする職務しょくむ上じょうの過失かしつとによって発生はっせいしたものである。」を主文しゅぶんとし、本件ほんけん事故じこに関かんし、船舶せんぱくの所有しょゆう者しゃが法令ほうれいに違反いはんして大おおがかりな船舶せんぱくの改造かいぞうを行おこなったにもかかわらず届出とどけでしなかった上うえ、さらに運行うんこう上じょうにおいても内郷うちごう丸まる船頭せんどうが法令ほうれいに違反いはんして定員ていいんを超こえて旅客りょかくを乗のせた上うえに沈没ちんぼつの危険きけんが切迫せっぱくするまで気付きづかなかった責任せきにんを追及ついきゅうする内容ないようの裁決さいけつがい渡いわたされた他ほか、2人ふたりの指定してい海難かいなん関係かんけい人じんに対たいして、関係かんけい法令ほうれいおよび定員ていいんの順守じゅんしゅを要求ようきゅうし、船舶せんぱくの前方ぜんぽうまたは後方こうほうに人員じんいんが偏かたよることの危険きけんに係かかる指摘してきを主おもな内容ないようとする勧告かんこく書しょが出だされ、第だい一いち審しんで確定かくていした。

現在げんざい

さがみ湖みずうみリゾート株式会社かぶしきがいしゃプレジャーフォレスト内ないに慰霊いれい碑ひが設もうけられており、麻布あざぶ学園がくえんの教職員きょうしょくいんが毎年まいとし献花けんかしている。

遭難そうなんした船ふね

内郷うちごう丸まるは、1947年ねん（昭和しょうわ22年ねん）の春はるに渡船とせんおよび遊覧ゆうらんに使用しようする目的もくてきで建造けんぞうされた全長ぜんちょう11.58 m、幅はば2.04 mのオール4本ほんで推進すいしんする木造もくぞう船舶せんぱくで、1951年ねん（昭和しょうわ26年ねん）に原動機げんどうきを取とり付つけ、1954年ねん（昭和しょうわ29年ねん）に受検じゅけんした小型こがた船舶せんぱく安全あんぜん規則きそくによる検査けんさにおいて復元ふくげん力りょくを基もとにした計算けいさんで最大さいだい人員じんいんを旅客りょかく19人にん、船員せんいん2人にんの合計ごうけい21人にんと定さだめていた。

受検じゅけんの直後ちょくごに今回こんかいの事件じけんを起おこした船主せんしゅに所有しょゆう権けんが移うつり、船首せんしゅに甲板かんぱん、船尾せんびに展望てんぼう台だいなどを増設ぞうせつするとともに客席きゃくせきなどにベニヤ板べにやいたを打うち付つける等とうの船舶せんぱくの主要しゅよう部分ぶぶんに手てを入いれる大おおがかりな改造かいぞうを行おこなったにもかかわらず、届とどけ出ですることなく運航うんこうしていた。

関連かんれん項目こうもく

• 洞爺とうや丸まる事故じこ - この事故じこの12日にち前まえに発生はっせいした。両りょう事故じこはともに1954年ねんの読売新聞よみうりしんぶん十じゅう大だいニュース第だい8位いとなった。
• 琵琶湖びわこ遭難そうなん事故じこ
• 和歌山わかやま中学ちゅうがく漕艇そうてい部ぶ遭難そうなん事故じこ
• 学習院大学がくしゅういんだいがくヨット遭難そうなん事故じこ
• 神かみ竜りゅう湖こ遊覧ゆうらん船せん沈没ちんぼつ事故じこ - 類似るいじの事故じこ。遠足えんそく中ちゅうの小学生しょうがくせいが犠牲ぎせいとなった。
• セウォル号ごう沈没ちんぼつ事故じこ - 類似るいじの事故じこ。
• 土肥どい淳あつし一郎いちろう - 子この土肥どい孝夫たかおが犠牲ぎせいとなった。
• 堤つつみ康次郎やすじろう - 五男いつお・猶なお二にが当時とうじ遭難そうなん事故じこに遭あった生徒せいとたちの一いち年ねん後輩こうはいで、合同ごうどう葬そうで保護ほご者しゃ代表だいひょうとして弔辞ちょうじを読よんだ。

出典しゅってん

• 麻布あざぶ学園がくえん公式こうしきウェブサイト - 年表ねんぴょうに本ほん事件じけんに遭あった旨むねの記載きさいあり