(Translated by https://www.hiragana.jp/)
北越奇談 - Wikipedia コンテンツにスキップ

北越ほくえつ奇談きだん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
北越ほくえつ奇談きだん』より、葛飾かつしか北斎ほくさいかめろく泥亀でいきかいそうとなる」

北越ほくえつ奇談きだん』(ほくえつきだん)は、1812ねん文化ぶんか9ねん)に刊行かんこうされた随筆ずいひつしゅうぜん6かん著者ちょしゃ越後えちごこくげん新潟にいがたけん)の文人ぶんじんたちばなこん崙(たちばな こんろん)。校合きょうごう監修かんしゅう序文じょぶん戯作げさくしゃやなぎてい種彦たねひこによる。挿絵さしえだい部分ぶぶん浮世絵うきよえ葛飾かつしか北斎ほくさいえがき、こん自身じしん絵師えしとしていくつかの下絵したええがいている[1]

概要がいよう

[編集へんしゅう]

北越ほくえつ地方ちほう怪異かいいだんや、奇岩きがんかいせき植物しょくぶつなどの博物学はくぶつがくてき記録きろくなどが内容ないよう中心ちゅうしんであり、とくに4・5かんは「怪談かいだん」とだいし、妖怪ようかいたん中心ちゅうしんとして収録しゅうろくされている[2]

こん崙はかならずしも怪異かいい奇跡きせきといったものをしんじておらず、疑念ぎねんはさみながら、または娯楽ごらくてきに、怪異かいいなことは怪異かいいなままとしてあつかっていたようで、りゅうなどの伝説でんせつじょうのものを架空かくうのものとっていているれいられる。また、そうした怪異かいいたんなかまぜざるかたちで、刊行かんこうまでのやく200年間ねんかんにわたる北越ほくえつ地方ちほう一体いったい様子ようす人々ひとびとかんがかたなどもることができる[1]

3かんでは海保かいほ青陵せいりょうによる原稿げんこう記載きさいされているが、これは刊行かんこうねんより7ねんまえのものであり、それだけに原稿げんこうそろってから出版しゅっぱんいたるまではやく7ねんようしたとられ、刊行かんこうはかなりの曲折きょくせつをともなうだい事業じぎょうだったことがうかがえる。さらに、目録もくろくに「みぎ前編ぜんぺん6さつ」とかれていること、巻末かんまつに「北越ほくえつ奇談きだん後編こうへん続出ぞくしゅつ」と広告こうこくがあることなどから、こん崙は後編こうへん執筆しっぴつする予定よていであったことをうかがわせるが、結局けっきょく後編こうへん出版しゅっぱんされず、後編こうへんぶん草稿そうこう有無うむ判明はんめいしていない[1]

刊行かんこう当時とうじとしてはこん崙は無名むめい人物じんぶつであったのにたいし、北斎ほくさい浮世絵うきよえ代表だいひょうといえ、種彦たねひこ新進しんしん戯作げさくしゃであった。こうした面々めんめんは、版元はんもと無名むめいこん崙をすために起用きようしたものとかんがえられている[1]

北越ほくえつゆき北越ほくえつ奇談きだん

[編集へんしゅう]

随筆ずいひつ鈴木すずき牧之ぼくしによる『北越ほくえつゆき』(1837ねん)と本書ほんしょ越後えちごの2だい奇書きしょばれる[1]牧之ぼくしは『北越ほくえつゆき』の執筆しっぴつけての取材しゅざいちゅうこん崙にったと自著じちょ北海ほっかい雪見ゆきみ行脚あんぎゃしゅう』でべており、年代ねんだいおなじで感覚かんかくていることから、『北越ほくえつ奇談きだん』は『北越ほくえつゆき』の執筆しっぴつうえでのおおきな参考さんこうにもなっている[1]

雪国ゆきぐに生活せいかつきびしさをかんじさせる『北越ほくえつゆき』にたいし、『北越ほくえつ奇談きだん』は娯楽ごらく物語ものがたりとしての趣向しゅこうつよいため、江戸えど時代じだい当時とうじ人々ひとびと嗜好しこうい、このんでれられたという。しかしながら現代げんだいでは、『北越ほくえつゆき』は牧之ぼくしのこしたおおくの資料しりょうによって研究けんきゅうおおきくすすんでいることにたいし、『北越ほくえつ奇談きだん』は北斎ほくさいおさめたしょとして価値かちたかいと注目ちゅうもくされてはいるものの、随筆ずいひつとしての研究けんきゅうはそれほどすすんでいない。これはこん崙がなま没年ぼつねん不明ふめいうえ生涯しょうがい記録きろくすくないなぞ人物じんぶつということがおおきな要因よういんられている。そのようなおおくの意味いみにおいて、この2だい奇書きしょ対照たいしょうてきである[1]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b c d e f g 荒木あらきつねのう解説かいせつ」『現代げんだいやく 北越ほくえつ奇談きだん野島のじま出版しゅっぱん、1999ねん、235-237ぺーじISBN 978-4-8221-0176-3 
  2. ^ 少年しょうねんしゃ中村なかむら友紀ゆきおっと武田たけだえりへん妖怪ようかいほん ことかいやみうごめ百鬼夜行ひゃっきやこう伝説でんせつ学習研究社がくしゅうけんきゅうしゃ〈New sight mook〉、1999ねん、208ぺーじISBN 978-4-05-602048-9