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収穫しゅうかく逓減ていげん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

収穫しゅうかく逓減ていげん(しゅうかくていげん、えい: diminishing returns)は、経済けいざいがく用語ようごであり、収穫しゅうかく逓減ていげん法則ほうそくともばれる。

固定こていおよび可変かへん入力にゅうりょくたとえば工場こうじょう規模きぼ労働ろうどうものすう)のある生産せいさんシステムで、可変かへん入力にゅうりょくがあるてんぎると、入力にゅうりょく増加ぞうか出力しゅつりょく増加ぞうかむすびつかなくなっていく。ぎゃく製品せいひんをよりおお生産せいさんするのにかかるコストは増大ぞうだいしていく。これを相対そうたい費用ひよう逓増ていぞう法則ほうそく[1]あるいは機会きかい費用ひよう逓増ていぞう法則ほうそく[2]限界げんかい生産せいさんりょく逓減ていげん法則ほうそく[3]ともぶ。

表面ひょうめんじょう完全かんぜん経済けいざいてき概念がいねんだが、収穫しゅうかく逓減ていげんはテクノロジてき関係かんけい暗示あんじしている。収穫しゅうかく逓減ていげん法則ほうそくは、企業きぎょう短期たんき限界げんかい費用ひよう曲線きょくせん結局けっきょく増大ぞうだいすることをしめしている。

歴史れきし

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収穫しゅうかく逓減ていげん概念がいねん起源きげんさかのぼってみると、ヨハン・ハインリヒ・フォン・チューネンジャック・テュルゴートマス・ロバート・マルサスデヴィッド・リカードといった初期しょき経済けいざい学者がくしゃ懸念けねんにたどりく。

マルサスとリカードは19世紀せいきイングランドで、土地とちかぎられていることで収穫しゅうかく逓減ていげんきるのではないかと懸念けねんした。農業のうぎょう生産せいさんりょう増大ぞうだいさせるには、農民のうみんせた土地とち耕作こうさくして耕作こうさく面積めんせきひろげるか、既存きそん土地とちでより集中しゅうちゅうてき生産せいさん手法しゅほう適用てきようする必要ひつようがある。どちらにしても、農業のうぎょう生産せいさんりょう増大ぞうだいさせるのにかかるコストは増大ぞうだいしていき、マルサスとリカードは農業のうぎょう生産せいさんりょう増大ぞうだい人口じんこう増大ぞうだいいつかなくなると予測よそくした。(Case、Fair、1999: 790)

簡単かんたんれい

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1 kgたねをある一定いってい面積めんせき土地とち作付さくづけすることで、1 t作物さくもつ収穫しゅうかくできるとする。おな面積めんせきにもう 1 kgたねえれば、収穫しゅうかく2 t になると期待きたいされるかもしれない。

しかし、ここに収穫しゅうかく逓減ていげん発生はっせいするとしたら、たね1 kg やしても、収穫しゅうかくできるりょう増加ぞうか1 t よりもすくなくなる(おな土地とちで、おなぶしで、たんえるたねやしただけの場合ばあい)。たとえば、たね1 kg やしても、収穫しゅうかくりょう0.5 t しかえないというようなことがしょうじる。収穫しゅうかく逓減ていげん法則ほうそくによれば、さらにたね1 kg やして合計ごうけい 3 kgえた場合ばあい、それによってえる収穫しゅうかくりょう0.5 t よりもすくなく、たとえば、0.25 t になる。

経済けいざいがくにおける「限界げんかい主義しゅぎ」とは、生産せいさんシステムの生産せいさんせい限界げんかい追究ついきゅうすることを意味いみする。上述じょうじゅつみっつのシナリオで、収穫しゅうかくりょうたね 1 kg場合ばあい1 t、さらにたね1 kg 追加ついかしたときの収穫しゅうかくりょう増分ぞうぶん0.5 t、さらにたね1 kg 追加ついかしたときの収穫しゅうかくりょう増分ぞうぶん0.25 t となる。したがって、たね限界げんかい生産せいさんぶつ(marginal product, MP)は、えられたたね総量そうりょう増大ぞうだいするにつれて低下ていかする。このれいでは、限界げんかい生産せいさんぶつ追加ついかされたたねりょうえた収穫しゅうかくりょうったものにひとしい。

収穫しゅうかく逓減ていげん結果けっかとして、そう投資とうしりょうやしたとき、そう投資とうしたいするそう投資とうし回収かいしゅうりつ製品せいひんまたは収穫しゅうかく平均へいきん)が減少げんしょうしていく。最初さいしょ1 kg投資とうしたいして投資とうし回収かいしゅうりつ1 t/kg となる。2 kg投資とうしたいしては 1.5 t/2 kg = 0.75 t/kg3 kg投資とうしたいしては 1.75 t/3 kg = 0.58 t/kg となる。

費用ひようたい効果こうか

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入力にゅうりょく単位たんいたりの収穫しゅうかく生産せいさん費用ひようにはぎゃく関係かんけいがある。1 kgたね費用ひよう$1 とし、この価格かかく変化へんかしないとする。ただし、生産せいさん費用ひようたね購入こうにゅう費用ひようだけではないが、それら費用ひよう収穫しゅうかくりょうともなって変化へんかしない固定こてい費用ひようとする。1 kgたねえると 1 t収穫しゅうかくがあるので、この最初さいしょ1 t生産せいさん費用ひようには $1 余計よけいにかかる。すなわち、最初さいしょ1 t収穫しゅうかくについて、限界げんかい費用ひよう(marginal cost, MC)は 1 t たり $1 である。なに変化へんかしない場合ばあいたね1 kg やしたときの収穫しゅうかくりょう増加ぞうか最初さいしょのときの半分はんぶんである。すなわちその MC は 0.5 t たり $1、つまり 1 t たり $2 となる。同様どうようにさらにたね1 kg やしたとき、MC は 0.25 t たり $1、つまり 1 t たり $4 となる。したがって、収穫しゅうかく逓減ていげん限界げんかい費用ひよう増大ぞうだいともない、平均へいきん費用ひよう増大ぞうだいともなう。上述じょうじゅつれいでは、平均へいきん費用ひよう1 t については $11.5 t については $21.75 t については $3増大ぞうだいしていく。あるいは $1 たりの費用ひようあらわすとおおよそ、$1$1.3$1.7増大ぞうだいする。

費用ひよう機会きかい費用ひようでも測定そくてい可能かのうである。この場合ばあい、この法則ほうそく社会しゃかい全体ぜんたいにも適用てきようされる。ある製品せいひん社会しゃかいがよりおお生産せいさんしようとすると、その製品せいひんを1つ生産せいさんするための機会きかい費用ひよう増大ぞうだいする。このことは、生産せいさん可能かのうせいフロンティアゆみなりの曲線きょくせん説明せつめいする。

規模きぼ影響えいきょう

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以上いじょうろんじてきた限界げんかい収益しゅうえきは、様々さまざま入力にゅうりょくのうちのひとつだけが増大ぞうだいする場合ばあいである(たとえば、たねりょうだけがえ、土地とち面積めんせきわらない場合ばあい)。すべての入力にゅうりょく比例ひれいしてえるなら、その結果けっか一定いっていまたは増大ぞうだいすることになる。

会社かいしゃ長期ちょうきてきにあらゆる要素ようそ増大ぞうだいするよう運営うんえいされた場合ばあい当初とうしょ入力にゅうりょく増大ぞうだいよりも急速きゅうそく収益しゅうえきえていき、その入力にゅうりょく比例ひれいするように収益しゅうえきえ、最終さいしゅうてき収益しゅうえき増加ぞうか入力にゅうりょく増加ぞうかよりもすくなくなっていく。

収穫しゅうかく逓減ていげん普遍ふへんてき法則ほうそく

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収穫しゅうかく逓減ていげん法則ほうそくは、ぜん入力にゅうりょく増大ぞうだいしていくとき入力にゅうりょくたりの限界げんかい生産せいさんぶつっていくことをしめしている(入力にゅうりょく一定いってい場合ばあい)。一般いっぱん収穫しゅうかく逓減ていげんは、初期しょき限界げんかい収益しゅうえき増大ぞうだいの「」の現象げんしょう説明せつめいするものである。したがって、それは普遍ふへんてき法則ほうそくとはえない。

ある状況じょうきょう限界げんかい収益しゅうえき増大ぞうだい可能かのう証拠しょうこ存在そんざいする。ファクシミリは1だいだけあってもなんやくにもたないが、2だいあればメッセージを交換こうかんでき、台数だいすうえるにしたがってメッセージ交換こうかん経路けいろえていく。ある程度ていどまでファクシミリが普及ふきゅうすると、交換こうかん経路けいろえても、利便りべんせい向上こうじょうしなくなる。たとえば、おな部屋へやなんだいもファクシミリがあってもあまり利便りべんせい向上こうじょうしない。また、時間じかんてき要因よういんもあり、ファックスの送受信そうじゅしん完了かんりょうまでにかかる時間じかん関係かんけいしてくる。送受信そうじゅしんちゅうのファクシミリにたいして、べつのファクシミリが送信そうしんしようとしても接続せつぞく失敗しっぱいし、送信そうしんすべきファックスががってしまう。[4]

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ えい: law of increasing relative cost
  2. ^ えい: law of increasing opportunity cost
  3. ^ 限界げんかい生産せいさんりょく逓減ていげん法則ほうそく」が「収穫しゅうかく逓減ていげん法則ほうそく」ともぶことをしめすHP
  4. ^ Kelly, Kevin (1994ねん). Out of control: the new biology of machines, social systems and the economic world. Boston: Addison-Wesley. ISBN 0-201-48340-8 

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Johns, Karl E. & Fair, Ray C. (1999). Principles of Economics (5th ed.). Prentice-Hall. ISBN 0-13-961905-4.