商品しょうひん開発かいはつ

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商品しょうひん開発かいはつ(しょうひんかいはつ、えい: Product development)は商品しょうひん製品せいひん開発かいはつする業務ぎょうむ・プロセスである。製品せいひん開発かいはつとも。

概説がいせつ[編集へんしゅう]

とく新規しんきであることを強調きょうちょうするときには「しん商品しょうひん開発かいはつ」という言葉ことば使つかわれることもある。

経営けいえいマーケティング教科書きょうかしょなどに、商品しょうひん開発かいはつ典型てんけいてきなプロセスが解説かいせつされていることもある。(→#プロセス学術がくじゅつ団体だんたいについては、1951ねん4がつ21にち日本にっぽん商業しょうぎょう学会がっかい慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく教授きょうじゅ向井むかい鹿松しかまつ初代しょだい会長かいちょうとして設立せつりつされた[1]

商品しょうひん開発かいはつのアイディア作成さくせい段階だんかいからキャッチコピーつくり、そのコピーの魅力みりょく調査ちょうさしつつ商品しょうひん開発かいはつ方向ほうこう必要ひつようおうじて軌道きどう修正しゅうせいする方法ほうほうなども提案ていあんされている[2]

はん社会しゃかいてき商品しょうひんや、市場いちばれられないような商品しょうひん開発かいはつしてしまわないように、社内しゃない商品しょうひん開発かいはつかんする原則げんそくもうけている企業きぎょうもある。たとえば花王かおうのそれなどがられており、同社どうしゃでは社会しゃかいてき有用ゆうようせい創造そうぞうせい、パフォーマンス・バイ・コスト、流通りゅうつう適合てきごうせいなどの原則げんそく(チェック項目こうもく)を設定せっていしているという[3]

プロセス[編集へんしゅう]

商品しょうひん開発かいはつ以下いかの8つの意思いし決定けっていプロセスをたどるとされることもある[4]

  1. アイデア創出そうしゅつ
  2. アイデアスクリーニング
  3. コンセプト開発かいはつとコンセプトテスト
  4. マーケティング戦略せんりゃく立案りつあん
  5. 事業じぎょう分析ぶんせき
  6. 製品せいひん開発かいはつ
  7. 市場いちばテスト
  8. 商品しょうひん

最初さいしょの6段階だんかい合致がっちしなければ、そのアイデアはてられる、ともされる。

製品せいひん発見はっけん[編集へんしゅう]

製品せいひん発見はっけんえい: Product Discovery)はつくるべき製品せいひん発見はっけんする活動かつどうである[5]市販しはんよう製品せいひん製作せいさくする市場いちば投入とうにゅう対比たいひされる[6]

製品せいひんのアイデアがあったとき、そのアイデアは想定そうてい顧客こきゃく価値かちバリュープロポジション)・量産りょうさんプラン・ビジネスプランなどからなる。製品せいひん発見はっけんはこれらアイデア・仮説かせつ量産りょうさんまえ検証けんしょうつくるべきかつくらざるべきか確定かくていする活動かつどうである。

製品せいひん発見はっけん目的もくてきは「つくるべき製品せいひん確定かくてい」「浪費ろうひ防止ぼうし[7]」「アイディエーションのまな[8]」である。つく製品せいひんがあってはじめて顧客こきゃく価値かち事業じぎょう価値かちせ、つくらざるべき製品せいひんけることで効率こうりつ価値かち提供ていきょう可能かのうになる。根底こんていにある思想しそうは「リスクは最初さいしょむ」である[9]。またつぎ仮説かせつ構築こうちく利用りようできるまなびをられる。

製品せいひん発見はっけんせずに市場いちば投入とうにゅうする、すなわち検証けんしょうをおこなわずに量産りょうさん製品せいひん製造せいぞう販売はんばいした場合ばあい資源しげん時間じかん資本しほんにん)を浪費ろうひする危険きけんせいがある。浪費ろうひこすおおきなリスクとしては以下いかげられる[10]

  • 顧客こきゃく価値かち: バリュープロポジション実際じっさい顧客こきゃく価値かち一致いっちしない
    • 効用こうよう: 製品せいひん使つか利点りてんかんじない
      • ニーズ: 重要じゅうようでない問題もんだいいている
      • 解決かいけつさく: 問題もんだい解決かいけつできないさく提案ていあんしている(的外まとはずれの解決かいけつさく
    • 費用ひよう: 製品せいひん負担ふたんおおきすぎる
  • 実現じつげん可能かのうせい: 技術ぎじゅつ制約せいやくかべにぶつかり市場いちば投入とうにゅう完遂かんすいできない
  • 事業じぎょう実現じつげんせい: 市場いちば投入とうにゅうをしてもビジネスじょう利益りえきられない

製品せいひん発見はっけん市場いちば投入とうにゅうしでリスクを検証けんしょうできるてん肝要かんようである。ゆえに製品せいひん発見はっけんのために市場いちば投入とうにゅう同等どうとうのコストがかかっては意味いみがない[11]製品せいひん発見はっけん早期そうき高速こうそく安価あんかしょう人数にんずうであることが重要じゅうようである[12][13]。そのためプロトタイプ/MVP[14]迅速じんそく作成さくせい素早すばや検証けんしょうをおこなう[15]使つかわったらてる)。プロトタイプの最小さいしょうサイズは検証けんしょうしたい仮説かせつるため(c.f. MVP#Minimum)、検証けんしょうあわせ様々さまざま技法ぎほう利用りようされる。

製品せいひんはユーザーがえら利用りようするものである。ゆえに価値かち・ユーザビリティの検証けんしょうはユーザーテスト・市場いちばテストで検証けんしょうされなければならない(c.f. MVP#Product[16][17]実現じつげん可能かのうせい検証けんしょう概念がいねん実証じっしょう/PoCともばれる。

製品せいひん発見はっけんになうのはプロダクトマネジメントUXデザイン・エンジニアリングのロールからなるチームである[18]。なぜならおおくの製品せいひん機能きのう・デザイン・技術ぎじゅつからっており総合そうごうてき設計せっけいする必要ひつようがあるからである[19]

職種しょくしゅ[編集へんしゅう]

ある程度ていど以上いじょう規模きぼ企業きぎょうになると商品しょうひん開発かいはつ専任せんにんしゃ配置はいちされていることもおおい。業界ぎょうかいにもよるが、「商品しょうひん開発かいはつ」はひとつの専門せんもんしょく職種しょくしゅとして成立せいりつしており、企業きぎょう経験けいけんしゃ募集ぼしゅうされていることもある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 学会がっかいHP”. 日本にっぽん商業しょうぎょう学会がっかい. 2022ねん1がつ23にち閲覧えつらん 個人こじん会員かいいん1,072めい賛助さんじょ会員かいいん11しゃ団体だんたい購読こうどく会員かいいん32けん (2019ねん7がつ現在げんざい
  2. ^ 田村たむらひとし一瞬いっしゅんで!しんをつかむれるキャッチコピーの法則ほうそく』p.45
  3. ^ 佐川さがわ幸三郎こうざぶろうあたらしいマーケティングの実際じっさい
  4. ^ "ほとんどの企業きぎょうがいまだに製品せいひん開発かいはつ使つかっているプロセスをあらわしている。… アイデア→「ビジネスケース」→ロードマップ(工程こうていひょう)→要求ようきゅう事項じこう→デザイン(設計せっけい)→ビルド(製造せいぞう)→テスト→デプロイ(展開てんかい)" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  5. ^ "つく必要ひつようのある製品せいひん発見はっけんすること。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  6. ^ "製品せいひん発見はっけんする活動かつどうわたしたちが必要ひつよう製品せいひん見極みきわめるのに役立やくだつが、製品せいひんのビルド、テスト、リリースに必要ひつよう仕事しごと実際じっさいにおこなうのは市場いちば投入とうにゅうにおいてである。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  7. ^ "製品せいひん発見はっけん目的もくてきは、エンジニアにリリースできる品質ひんしつ製品せいひん開発かいはつ依頼いらいしても、それが無駄むだ努力どりょくにならないことをなんらかの根拠こんきょによって確認かくにんすることである。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  8. ^ "経験けいけん主義しゅぎでは、知識ちしき経験けいけんから⽣まれ、意思いし決定けってい観察かんさつもとづく。" Ken Schwaber & Jeff Sutherland (2020). スクラムガイド.
  9. ^ "リスクは最後さいごではなく最初さいしょむ。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  10. ^ "製品せいひん発見はっけん目的もくてきつぎ重要じゅうようなリスクに対処たいしょすることである。... 価値かちのリスク … ユーザビリティーのリスク … 実現じつげん可能かのうせいのリスク … 事業じぎょう実現じつげんせいのリスク" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  11. ^ "知識ちしきるために実際じっさい製品せいひんおな品質ひんしつのものをつくるのは、たとえ最小限さいしょうげん機能きのうおさえたとしても相当そうとう時間じかん費用ひよう浪費ろうひであり" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  12. ^ "製品せいひん発見はっけん目標もくひょうは、市場いちば投入とうにゅうでおこなうよりもはるかに迅速じんそくに、かつていコストでイテレーションを実行じっこうすることである。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  13. ^ "偉大いだい製品せいひん発見はっけんしたいなら、早期そうきに、かつ頻繁ひんぱんに、アイデアを実際じっさいのユーザーや顧客こきゃく提示ていじすることが必須ひっすである。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  14. ^ "MVPはプロトタイプであって製品せいひんではない。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  15. ^ "製品せいひん発見はっけんには一連いちれんきわめて簡単かんたん実験じっけんふくまれる。それを迅速じんそくかつていコストで実行じっこうするため、わたしたちは製品せいひんではなくプロトタイプを使つかう。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  16. ^ "効率こうりつてき製品せいひん発見はっけん重要じゅうようかぎは、簡易かんいてき実験じっけん結果けっかをとりあえず開発かいはつむのではなく、顧客こきゃく対話たいわする機会きかいることである。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  17. ^ "顧客こきゃく調査ちょうさ経験けいけんもとづいてした判断はんだんかもしれないが、今日きょうではよくわかっているように、どんな場合ばあいでも、 実際じっさいのユーザーや顧客こきゃくでアイデアの妥当だとうせい検証けんしょうしなければならない。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  18. ^ "発見はっけんは、プロダクトマネジメント、ユーザーエクスペリエンスデザイン、エンジニアリングの緊密きんみつ協力きょうりょくによるところがおおきい。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.
  19. ^ "機能きのう、デザイン、技術ぎじゅつは、本質ほんしつてきからっている。… このことは、プロダクトマネージャー、プロダクトデザイナー、テックリードが物理ぶつりてきとなり同士どうしすわることをつよすすめる唯一ゆいいつ最大さいだい理由りゆうである。" マーティ・ケーガン. (2017). INSPIRED 熱狂ねっきょうさせる製品せいひんすプロダクトマネジメント. 佐藤さとう真治しんじ, せきみつるとく やく. 日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター.

関連かんれん文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • のべおか 健太郎けんたろう製品せいひん開発かいはつ知識ちしき日経にっけい文庫ぶんこ、2002ねん
  • 浅田あさだ 和実かずみ図解ずかいでわかる商品しょうひん開発かいはつマーケティング―しょうヒット&ロングセラー商品しょうひんすマーケティング・ノウハウ』日本にっぽん能率のうりつ協会きょうかいマネジメントセンター、2006ねん
  • のべおか健太郎けんたろう藤本ふじもと隆宏たかひろ製品せいひん開発かいはつ組織そしき能力のうりょく日本にっぽん自動車じどうしゃ企業きぎょう国際こくさい競争きょうそうりょく」 RIETI・ディスカッション・ペーパー・シリーズ

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]