城しろ米まい

城しろ米まい（じょうまい）とは、本来ほんらいは江戸えど幕府ばくふ直轄ちょっかつ地ち（いわゆる「天領てんりょう」）からの年貢ねんぐ米まいを指さすが、後のちに兵糧ひょうろう米まいのために幕府ばくふ・譜代ふだい諸しょ藩はんなどに備蓄びちくされた米べいのことを指さした。

御ご城しろ米まい（おしろまい）・城しろ付づけ米まい（しろつけまい）とも。

享とおる保ほ15年ねん（1730年ねん）には、幕府ばくふ直轄ちょっかつ領りょうの年貢ねんぐ米まいである城しろ米まいと区別くべつするために御用ごよう米まい（ごようまい）と改称かいしょうされた。

概要がいよう

原型げんけいは豊臣とよとみ政権せいけん時代じだいに存在そんざいし、城じょう米べい奉行ぶぎょう（じょうまいぶぎょう）が置おかれて福島ふくしま正則まさのり・毛利もうり高こう政まさしらが任命にんめいされた。江戸えど幕府ばくふでもその方針ほうしんが継承けいしょうされて直轄ちょっかつ地ちからの年貢ねんぐ米まいの余剰よじょうを江戸城えどじょうなどに備蓄びちくして有事ゆうじの際さいには兵糧ひょうろう米まいとすることとなっていたが、寛永かんえい年間ねんかんに入はいると、その一層いっそうの充実じゅうじつが求もとめられ、寛永かんえい10年ねん（1633年ねん）に譜代ふだい諸しょ藩はんに対たいして幕府ばくふ年貢ねんぐ米まいあるいは御ご用金ようきんを供給きょうきゅうして米べいの備蓄びちく・管理かんりを命めいじた。3年ねん後ごには江戸えどの浅草あさくさ御蔵おぐらにも専用せんようの施設しせつが置おかれて城しろ米まい奉行ぶぎょうが任命にんめいされた。幕府ばくふは城しろ米まい奉行ぶぎょう・譜代ふだい諸しょ藩はんに対たいして、毎年まいとし城しろ米まいの中身なかみを入いれ替かえて有事ゆうじに備そなえることを命めいじ、譜代ふだい藩はんの転うたて封ふうの際さいには引継ひきつぎの一環いっかんとして、法規ほうき通どおりの城しろ米まい備蓄びちくの有無うむと備蓄びちくの方針ほうしんの確認かくにんが求もとめられた。以後いご、寛文ひろふみ元年がんねん（1661年ねん）・貞享ていきょう2年ねん（1685年ねん）にも城しろ米まい備蓄びちくの増加ぞうかが命めいじられ、東海道とうかいどうの宿場しゅくば町まちに対たいしても同様どうようの措置そちを命めいじた。

貞享ていきょう2年ねんの制せいによれば、全国ぜんこくに44.2万まん石せきの城しろ米まいが備蓄びちくされ、江戸城えどじょう・大だい坂城さかき・二条城にじょうじょう・駿府すんぷ城じょうと言いった幕府ばくふ直轄ちょっかつの城しろや譜代ふだい諸しょ藩はんの城しろ、東海道とうかいどう宿駅しゅくえきなどの計けい68ヶ所かしょに分散ぶんさんして備蓄びちくされることになっており、また、延のべ宝たから元年がんねん（1673年ねん）には、幕府ばくふが民間みんかんの廻船かいせんを雇やとえ船せんして城しろ米まいを指定していの備蓄びちく地ちへ輸送ゆそうするための専せん用船ようせん（城じょう米べい積せき船せん）とした。城しろ米まい積せき船せんは高額こうがくで雇やとい船せんされる代かわりに幕府ばくふの厳重げんじゅうな管理かんり下かに置おかれて城しろ米まい以外いがいの一切いっさいの物資ぶっしの搬送はんそうを禁きんじられているなど、条件じょうけんが厳格げんかくであったために次第しだいに成なり手てに事欠ことかくようになったために、寛ひろし保ほ3年ねん（1743年ねん）には許可きょか制せいながらも空そら船せん時じの一般いっぱん貨物かもつの搬送はんそうも許ゆるされることとなった。

当初とうしょ、軍事ぐんじ目的もくてきのための備蓄びちく米まいであった城しろ米まいも長ながい間あいだの平和へいわのために次第しだいに飢饉ききんなどの災害さいがいの救済きゅうさいや臨時りんじの出費しゅっぴの際さいの財源ざいげんに流用りゅうようされるようになり、ついに元禄げんろく2年ねん（1689年ねん）には、幕府ばくふ財政ざいせいの赤字あかじ穴埋あなうめのために備蓄びちく量りょうを寛文ひろふみ以前いぜんに戻もどし、その余剰よじょうを売却ばいきゃくさせている。享とおる保ほ15年ねんに城しろ米まいが「御用ごよう米まい」と改あらためられた背景はいけいには、実際じっさいには災害さいがい救済きゅうさいや財政ざいせい調整ちょうせいのために用もちいられて軍事ぐんじ色しょくが払拭ふっしょくされていた現状げんじょうに応おうじたものであるとされている。その後ご、享とおる保ほの大だい飢饉ききんや天明てんめいの大だい飢饉ききんの救済きゅうさいのためにも御用ごよう米まいが活用かつようされたが、松平まつだいら定信さだのぶの寛政かんせいの改革かいかくでは、囲かこえ米まいを導入どうにゅうして御用ごよう米まいの役目やくめを代行だいこうさせ、御用ごよう米まいを当初とうしょの軍事ぐんじ専用せんように復帰ふっきさせようとしたが、幕府ばくふ財政ざいせいの悪化あっかなどによって依然いぜんとして、災害さいがいや財政ざいせい目的もくてきでの利用りようが続つづけられた。