募集ぼしゅう株式かぶしき

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増資ぞうしから転送てんそう

募集ぼしゅう株式かぶしき(ぼしゅうかぶしき)とは、株式会社かぶしきがいしゃが、その設立せつりつのちに、募集ぼしゅうおうじて株式かぶしき引受ひきうけの申込もうしこみをしたものたいしててる株式かぶしきのことである(会社かいしゃほう199じょう1こう)。募集ぼしゅうによってあらたな株式かぶしき新株しんかぶ)の発行はっこうまたは自己じこ株式かぶしき金庫きんこかぶ)の処分しょぶんおこなうこととなる場合ばあい当該とうがい株式かぶしきである。

また、新株しんかぶ発行はっこう自己じこ株式かぶしき処分しょぶんのことを、「募集ぼしゅう株式かぶしき発行はっこうとう」(会社かいしゃほう199じょうどうほう213じょう)という。株式かぶしき発行はっこうによりはらまれた財産ざいさん資本しほんきんまれること(どうほう445じょう1こう)から、募集ぼしゅう株式かぶしき発行はっこうとうのことを増資ぞうし資本しほん増強ぞうきょうとう)ともいう(ただし、2ぶんの1までは資本しほんきんまず資本しほん準備じゅんびきんとすることがゆるされており、実際じっさいにはそのようにするのが一般いっぱんてきである。どうほう445じょう2こう3こう)。

きゅう商法しょうほう規定きていでは新株しんかぶ発行はっこう自己じこ株式かぶしき処分しょぶん別個べっこ規定きていされていたが、あらたな株主かぶぬし募集ぼしゅうするてんにおいてはちがいがないので、会社かいしゃほうでは募集ぼしゅう株式かぶしき発行はっこうとうというかたちでまとめて規定きていされている。

種類しゅるい[編集へんしゅう]

募集ぼしゅう株式かぶしき発行はっこうとうには、てる相手あいてにより3つの種類しゅるいがある。

  1. 公募こうぼ特定とくてい多数たすうもの株式かぶしきてる場合ばあい公募こうぼ増資ぞうしともいう)
  2. 第三者だいさんしゃ割当わりあ特定とくてい第三者だいさんしゃ株式かぶしきてる場合ばあい第三者だいさんしゃ割当わりあて増資ぞうしともいう。どう項目こうもく参照さんしょう
  3. 株主かぶぬし割当わりあ:すべての株主かぶぬしたいして持株もちかぶすうおうじて株式かぶしき割当わりあてをける権利けんり付与ふよする場合ばあい202じょう第三者だいさんしゃ割当わりあて増資ぞうしたいして均等きんとう割当わりあてともいう)。なお、株主かぶぬしはかかる権利けんり譲渡じょうとすることはできない。これにたいして、ライツイシュー277じょう)の場合ばあいは、権利けんり譲渡じょうと可能かのうである。

手続てつづき[編集へんしゅう]

募集ぼしゅう事項じこう決定けってい[編集へんしゅう]

募集ぼしゅう事項じこうとは、株式かぶしき募集ぼしゅうたってさだめなければならない条件じょうけんをいい、具体ぐたいてきにはつぎの5てん決定けっていしなければならない(199じょう1こう、2こう)。

  1. 募集ぼしゅう株式かぶしきの(種類しゅるいおよび)すう
  2. 募集ぼしゅう株式かぶしき払込はらいこみ金額きんがく発行はっこう価額かがく)またはその算定さんてい方法ほうほう
  3. 金銭きんせん以外いがい財産ざいさん出資しゅっし目的もくてきとするとき(現物げんぶつ出資しゅっし)は、そのうまおよび当該とうがい財産ざいさん内容ないよう価額かがく
  4. 金銭きんせん払込はらいこみまたは現物げんぶつ出資しゅっし給付きゅうふ期日きじつ期間きかん
  5. 新株しんかぶ発行はっこう場合ばあいは、増加ぞうかする資本しほんきんおよび資本しほん準備じゅんびきんかんする事項じこう
公募こうぼまたは第三者だいさんしゃ割当わりあての場合ばあい
原則げんそくとして、募集ぼしゅう事項じこう決定けってい株主かぶぬし総会そうかい決議けつぎによる(どうじょう2こう)。ただし、株主かぶぬし総会そうかい決議けつぎによって、募集ぼしゅう事項じこう決定けってい取締役とりしまりやく取締役とりしまりやくかい設置せっち会社かいしゃでは取締役とりしまりやくかい)に委任いにんすることができる(200じょう1こう)。
また、公開こうかい会社かいしゃでは、定款ていかんさだめられた発行はっこう可能かのう株式かぶしき総数そうすう範囲はんいないで(37じょう)、取締役とりしまりやくかい決議けつぎにより募集ぼしゅう事項じこう決定けっていすることができる(201じょう1こう)。このように、発行はっこう可能かのう株式かぶしき総数そうすう範囲はんいない取締役とりしまりやくかい判断はんだん新株しんかぶ発行はっこうおこなうことができる制度せいど授権資本しほん制度せいどという。
なお、募集ぼしゅう事項じこう払込はらいこみ金額きんがく募集ぼしゅう株式かぶしきけるものとく有利ゆうり金額きんがくである場合ばあいには、取締役とりしまりやくは、株主かぶぬし総会そうかいにおいて、当該とうがい払込はらいこみ金額きんがくでそのもの募集ぼしゅうをすることを必要ひつようとする理由りゆう説明せつめいしなければならない(199じょう3こう)。この場合ばあい取締役とりしまりやくかいかぎりで募集ぼしゅう事項じこう決定けっていすることはできず、株主かぶぬし総会そうかい決議けつぎ必要ひつようである(201じょう1こう参照さんしょう)。
株主かぶぬし割当わりあての場合ばあい
株主かぶぬし割当わりあての場合ばあいは、募集ぼしゅう事項じこうのほかに、株主かぶぬし割当わりあてをおこなむねと、募集ぼしゅう株式かぶしき引受ひきうけ申込もうしこみの期日きじつさだめなければならない。
公開こうかい会社かいしゃでは取締役とりしまりやくかい決議けつぎでこれらを決定けっていする。
非公開ひこうかい会社かいしゃでは、定款ていかん取締役とりしまりやくまたは取締役とりしまりやくかいに授権している場合ばあい取締役とりしまりやくまたは取締役とりしまりやくかい、そうでない場合ばあい株主かぶぬし総会そうかい決議けつぎ決定けっていする(202じょう1こう、3こうどうじょう5こうにより199じょう2こう適用てきよう)。
株式会社かぶしきがいしゃは、申込もうしこみの期日きじつ週間しゅうかんまえまでに、株主かぶぬしたいし、募集ぼしゅう事項じこうとう通知つうちしなければならない(202じょう4こう)。
株主かぶぬし割当わりあての場合ばあいは、株式かぶしき希薄きはく問題もんだいしょうじないので、とく有利ゆうり価額かがくでの発行はっこうについての説明せつめい義務ぎむ適用てきようされない(202じょう5こうにより199じょう3こう適用てきよう)。

募集ぼしゅう株式かぶしき割当わりあ[編集へんしゅう]

募集ぼしゅう株式かぶしき引受ひきうけの申込もうしこみをするものは、(1)申込もうしこみしゃ氏名しめいまたは名称めいしょうおよび住所じゅうしょ、(2)けようとする募集ぼしゅう株式かぶしきかず記載きさいした書面しょめん株式会社かぶしきがいしゃ交付こうふしなければならない(203じょう2こう)。

株式会社かぶしきがいしゃは、申込もうしこみしゃなかから募集ぼしゅう株式かぶしき割当わりあてをするもの、およびてる募集ぼしゅう株式かぶしきかずさだめなければならない(204じょう)。この割当わりあてによって、申込もうしこみしゃてられた募集ぼしゅう株式かぶしき引受ひきうけじんとなる(206じょう1ごう)。

株主かぶぬし割当わりあての場合ばあいは、株主かぶぬしは、持株もちかぶすうおうじて募集ぼしゅう株式かぶしき割当わりあてをける権利けんりゆうするが(202じょう2こう)、公募こうぼ場合ばあいは、割当わりあて自由じゆう原則げんそく妥当だとうし、株式会社かぶしきがいしゃ裁量さいりょうてるものえらぶことができる。募集ぼしゅう株式かぶしきけようとするものがその総数そうすう引受ひきうけをおこな契約けいやく締結ていけつする場合ばあい第三者だいさんしゃ割当わりあて増資ぞうし)には、申込もうしこみ・割当わりあての手続てつづきまず、その契約けいやく締結ていけつした第三者だいさんしゃ引受ひきうけじんとなる(205じょう、206じょう2ごう)。

出資しゅっし履行りこう[編集へんしゅう]

  • 金銭きんせん以外いがい財産ざいさん出資しゅっし207じょう
期日きじつさだめた場合ばあい当該とうがい期日きじつ期間きかんさだめた場合ばあい出資しゅっし履行りこうをしたに、出資しゅっし履行りこうをした募集ぼしゅう株式かぶしき株主かぶぬしとなる。

差止さしどめ・募集ぼしゅうかか責任せきにんなど[編集へんしゅう]

210じょうから213じょう

  • 引受ひきうけの無効むこうまたは取消とりけしの制限せいげん211じょう
  • 公正こうせい払込はらいこみ金額きんがく株式かぶしきけたものとう責任せきにん212じょう

新株しんかぶ発行はっこう自己じこ株式かぶしき処分しょぶん[編集へんしゅう]

所定しょてい手続てつづき完了かんりょう新株しんかぶ発行はっこうされまたは自己じこ株式かぶしき交付こうふされる。

新株しんかぶ発行はっこう自己じこ株式かぶしき処分しょぶん機能きのう[編集へんしゅう]

資金しきん調達ちょうたつ目的もくてきエクイティファイナンス)にもちいられることが一般いっぱんてきである。ただし、安定あんてい株式かぶしき確保かくほ買収ばいしゅう防止ぼうしさくとしても伝統でんとうてき利用りようされることがおおく、また、近年きんねんでは、役員やくいん従業じゅうぎょういんのインセンティブ向上こうじょうなど資金しきん調達ちょうたつ以外いがいめんでの企業きぎょう価値かち広義こうぎ)の向上こうじょう目的もくてきにも利用りようされる。

株券かぶけん発行はっこう[編集へんしゅう]

現行げんこう会社かいしゃほうにおいては、株式会社かぶしきがいしゃ株券かぶけん発行はっこうしないのが原則げんそくとされているが(214じょう参照さんしょう)、株券かぶけん発行はっこう定款ていかんさだめている会社かいしゃ株券かぶけん発行はっこう会社かいしゃ)においては、株式かぶしき発行はっこう遅滞ちたいなく株券かぶけん発行はっこうする義務ぎむう(215じょう)。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]