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外国がいこくじん治安ちあん諸法しょほう

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ほう本文ほんぶん

外国がいこくじん治安ちあん諸法しょほう(がいこくじん・ちあんしょほう、えい:Alien and Sedition Acts)は、1798ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく制定せいていされた4つで1くみ法律ほうりつである。ほう制定せいてい主導しゅどうしたのは連邦れんぽうとうであり、当時とうじ大統領だいとうりょうジョン・アダムズであった。この時期じきフランスとのあいだのち疑似ぎじ戦争せんそうばれる宣戦せんせん布告ふこく戦争せんそうをしていた。提案ていあんした連邦れんぽうとうアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく敵性てきせい外国がいこくじんからまもり、政府せいふよわめるような治安ちあん妨害ぼうがいめさせるために考案こうあんしたと主張しゅちょうした。民主みんしゅ共和党きょうわとうは、歴史れきしたち同様どうように、これらのほう憲法けんぽう違背いはいしており、行政ぎょうせいたいする批判ひはんおさえるために考案こうあんされていること、またしゅう権限けんげんおかしているとって攻撃こうげきした。これらのほうは1798ねん1800ねん選挙せんきょおおきな政治せいじ問題もんだいになった。この法律ほうりつなか敵性てきせい外国がいこくじんほうのみが2007ねんでも有効ゆうこうであり、戦時せんじには強制きょうせいされてきた歴史れきしがある。の3つの法律ほうりつ1802ねんまでに失効しっこうするか法律ほうりつえられた。トーマス・ジェファーソンはこれらの法律ほうりつすべてが違憲いけんであり、無効むこうとし、ほうれて有罪ゆうざい宣告せんこくされたものすべてに恩赦おんしゃあたえ、釈放しゃくほう命令めいれいした。

一般いっぱん外国がいこくじん治安ちあん諸法しょほうばれるものは、つぎの4つの法律ほうりつである。

  1. 1798ねん外国がいこくじん帰化きかほう公式こうしき名称めいしょう外国がいこくじん帰化きか統一とういつ規則きそく設定せっていする法律ほうりつ)は、外国がいこくじんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく市民しみんとなる条件じょうけんとしてアメリカでの在留ざいりゅう期間きかんを5年間ねんかんから14年間ねんかん延長えんちょうした。1798ねん6がつ18にち執行しっこうされ、失効しっこうさだめられなかったが、1802ねん撤廃てっぱいされた。
  2. 友好ゆうこうてき外国がいこくじんほう公式こうしき名称めいしょう外国がいこくじんかんするほう)は、「アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく平和へいわ安全あんぜんにとって危険きけんである」となされる在留ざいりゅう外国がいこくじん強制きょうせい退去たいきょさせる権限けんげん大統領だいとうりょうあたえた。このほうはフランスの同調どうちょうしゃたいするおそれから制定せいていされた。当時とうじアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくとフランス革命かくめい政府せいふとのあいだ戦争せんそう可能かのうせいつよまっていた。1798ねん7がつ25にち執行しっこうされ、2年間ねんかん時限じげん立法りっぽうであった。
  3. 敵性てきせい外国がいこくじんほう公式こうしき名称めいしょう外国がいこくてきかんするほう)は、在留ざいりゅう外国がいこくじん本国ほんごくアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくとが戦争せんそうになった場合ばあいに、その在留ざいりゅう外国がいこくじん拘束こうそくし、強制きょうせい退去たいきょさせる権限けんげん大統領だいとうりょうあたえた。1798ねん7がつ6にち執行しっこうされ、失効しっこうさだめられなかった。現在げんざいでも有効ゆうこうである。
  4. 治安ちあんほう公式こうしき名称めいしょうアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくたいする特定とくてい犯罪はんざい罰則ばっそくさだめるほう)は、政府せいふあるいはその執行しっこう部門ぶもんたいして「虚偽きょぎの、中傷ちゅうしょうてきなおよび悪意あくいのある文書ぶんしょ」を出版しゅっぱんすることを犯罪はんざいとした。1798ねん7がつ14にち執行しっこうされ、1801ねん3がつ3にちまでの時限じげん立法りっぽうとされた。

背景はいけい[編集へんしゅう]

治安ちあんほうは、「アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく法律ほうりつ、あるいはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょう行動こうどう反対はんたいするまたは反抗はんこうする」しゃ最大さいだい2年間ねんかん禁固きんこしょすることができるとしている。議会ぎかい議長ぎちょう批判ひはんするものを「き、印刷いんさつし、くちしあるいは出版しゅっぱんする」ことも違法いほうとされた。この法律ほうりつふく大統領だいとうりょう批判ひはんすることをきんじてはいないことは注目ちゅうもくすべきである。ジェファーソンはこの法律ほうりつ制定せいていされた当時とうじふく大統領だいとうりょうであり、あたらしい法律ほうりつによってもジェファーソンにたいする批判ひはん自由じゆうのままであった。

治安ちあんほう意味いみ解釈かいしゃくについてはかなりの議論ぎろんがあった。言論げんろん自由じゆうかんするアメリカの法理ほうりろん以前いぜんのイギリスほうとはいくつかことなっていることはあきらかである。イギリスほうでは、言論げんろんはそれが真実しんじつであろうと正確せいかくであろうと「扇動せんどうてき」になりうる行動こうどうであり、自由じゆう言論げんろんたいして政府せいふ優先ゆうせんするというかんがかた制限せいげんされていた。たとえば、民主みんしゅ共和党きょうわとう中道ちゅうどうてき連邦れんぽう党員とういん何人なんにんかが「虚偽きょぎの、中傷ちゅうしょうてきなおよび悪意あくいのある文書ぶんしょ」という条件じょうけんくわえることに成功せいこうしたが、これは具体ぐたいてき名誉めいよ毀損きそんたいする弁護べんごとして植民しょくみん裁判所さいばんしょ真実しんじつあつかうことが出来できるとしたジョン・ピーター・ゼンガー裁判さいばん意識いしきしたものであった。しかし、おおくの連邦れんぽうとう裁判官さいばんかん首尾しゅび一貫いっかんして法律ほうりつをこのかた解釈かいしゃくしたわけではなく、以降いこう様々さまざま議論ぎろんつづいた。とくアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽう修正しゅうせいだい1じょうについての始原しげん主義しゅぎしゃ解釈かいしゃくと、治安ちあんほう違憲いけんではないかという疑問ぎもんがあり、またなん、どの程度ていど以前いぜんのイギリスほうからわってきたかということにたいする議論ぎろんである。

合憲ごうけんせい[編集へんしゅう]

ジェファーソンは治安ちあんほう権利けんり章典しょうてんだい1じょうすなわちアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽう修正しゅうせいだい1じょう保護ほごされている言論げんろん自由じゆうという権利けんりおかしていると非難ひなんする一方いっぽうで、おも議論ぎろん対象たいしょうは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽう修正しゅうせいだい10じょう、すなわち「アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽう委嘱いしょくされていない権限けんげん、あるいはしゅうたいして憲法けんぽうきんじられていない権限けんげんは、それぞれのしゅうにまたは人民じんみん留保りゅうほされる」という規定きていにこのほう違背いはいしているというものであった。外国がいこくじん治安ちあん諸法しょほう通過つうかした1798ねんは、修正しゅうせいだい1じょう権利けんり現在げんざいのようにしゅう制限せいげんしていなかった。ジェファーソンは連邦れんぽう政府せいふ外国がいこくじん治安ちあん諸法しょほう委嘱いしょくされていない権限けんげん行使こうししようとすることによって、その境界きょうかいえたとつよ主張しゅちょうした。バージニアしゅうケンタッキーしゅうべつにして、しゅう議会ぎかいでは連邦れんぽうとう主導しゅどうして、この法律ほうりつ支持しじするか、あるいはバージニアしゅうおよびケンタッキーしゅう非難ひなんしたことを否定ひていする決議けつぎおこない、ジェファーソンの主張しゅちょう拒絶きょぜつした[1]

司法しほう審査しんさ原則げんそくもと違憲いけん立法りっぽうたいするほう是正ぜせい制度せいどは、1803ねんの「マーベリーたいマディソン事件じけん」まで制定せいていされていなかった。1798ねん合衆国がっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょで、とくにミスター判事はんじばれたサミュエル・チェイス連邦れんぽうとう反対はんたいしゃたいする敵意てきいかくさなかった。外国がいこくじん治安ちあん諸法しょほう最高裁さいこうさい審査しんさ請求せいきゅうされなかった。ただし、巡回じゅんかい裁判所さいばんしょ最高裁さいこうさいかく判事はんじ連邦れんぽうとう反対はんたいするもの告訴こくそする訴訟そしょうについておおくのことをみみにした。

トーマス・ジェファーソンとジェームズ・マディソンは、憲法けんぽう論議ろんぎ有利ゆうりすすめるために、憲法けんぽう違反いはんただすと民衆みんしゅううったえることによって連邦れんぽうとう議席ぎせきうばうことを画策かくさくし、またしょしゅう連邦れんぽうほう無効むこうすることを要求ようきゅうするケンタッキーしゅうおよびバージニアしゅう決議けつぎ草稿そうこういた。ケンタッキーしゅうおよびバージニアしゅう決議けつぎは、しょしゅうアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくくわわるためにその権威けんい一部いちぶ委譲いじょうすることに同意どういしたしゅう自発じはつてき連合れんごうアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくっているが、もろしゅう究極きゅうきょくてきにその主権しゅけん連邦れんぽう政府せいふわたしてしまったわけではないという「盟約めいやく理論りろん」を反映はんえいしていた。盟約めいやく理論りろんかんがえでは、連邦れんぽう政府せいふ憲法けんぽうふくめてその同意どうい事項じこうやぶっているかどうかを判断はんだんし、その違背いはい事項じこう無効むこうするか、あるいは連合れんごうから脱退だったいするかできるとていた。この理論りろん適用てきよう考慮こうりょしたべつ機会きかいべいえい戦争せんそうときハートフォード会議かいぎであり、また南北戦争なんぼくせんそう直前ちょくぜん南部なんぶもろしゅう脱退だったいであった。

治安ちあんほうは1801ねん失効しっこうすることになっていたが、これはアダムズの任期にんき満了まんりょうおなじくしていた。このことはほう合憲ごうけんせい最高裁さいこうさい直接ちょくせつさば機会きかいさまたげていたが、その最高裁さいこうさいによる治安ちあんほうたいする言及げんきゅう違憲いけんなされるものが今日きょうまでつづいている。たとえば、「ニューヨーク・タイムズたいサリバン事件じけん」の言論げんろん自由じゆうかんする裁判さいばんでは、最高裁さいこうさいが「治安ちあんほう法廷ほうてい審査しんさされていないが、その有効ゆうこうせいたいする攻撃こうげき過去かこにも成功せいこうしてきた。」と宣言せんげんした。[2]

1800ねん選挙せんきょ[編集へんしゅう]

連邦れんぽうとう外国がいこくじん治安ちあん諸法しょほうたいする反対はんたいえていくことを期待きたいしていたが、おおくの民主みんしゅ共和党きょうわとういん連邦れんぽうとうたいする批判ひはんを「き、印刷いんさつし、くちしあるいは出版しゅっぱんし」つづけた。実際じっさい民主みんしゅ共和党きょうわとういんほう自体じたいつよ批判ひはんし、それを選挙せんきょ対策たいさく目玉めだまにした。このほう連邦れんぽうとう党勢とうせい密接みっせつかかわりがあり、連邦れんぽうとう衰退すいたいおおきく影響えいきょうする要因よういんとしてその生命せいめいわった。諸法しょほうはアダムズ大統領だいとうりょう任期にんき満了まんりょうした1801ねん失効しっこうした。

最終さいしゅうてきにこの諸法しょほう連邦れんぽうとう逆風ぎゃくふうかせた。連邦れんぽうとう国外こくがい退去たいきょおこなわせる外国がいこくじんのリストを準備じゅんびしていた、おおくの外国がいこくじん外国がいこくじん治安ちあん諸法しょほう審議しんぎされているあいだ国外こくがい脱出だっしゅつした。アダムズ大統領だいとうりょう国外こくがい退去たいきょ命令めいれいしょいち署名しょめいすることがかった。著名ちょめい新聞しんぶん編集へんしゅうしゃ下院かいん議員ぎいんのマシュー・ライアンをふくめ25めいもの逮捕たいほされた。そのなかで11めい裁判さいばんけられ(1めい公判こうはん待機たいきちゅう死亡しぼう)、10めい扇動せんどうつみ有罪ゆうざいとなったが、これらはあきらかに連邦れんぽうとうりの判事はんじによる裁判さいばんであった。しかし連邦れんぽうとうはあらゆる階層かいそう分野ぶんや権勢けんせいうしない、そのすう年間ねんかん議会ぎかい外国がいこくじん治安ちあん諸法しょほう執行しっこう犠牲ぎせいになったものかえ陳謝ちんしゃしたり補償ほしょう決議けつぎおこなった。トーマス・ジェファーソンは1800ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょう選挙せんきょ勝利しょうりして大統領だいとうりょうしょくくと、敵性てきせい外国がいこくじんほう治安ちあんほう有罪ゆうざいとなっていたもの全員ぜんいん恩赦おんしゃした。

制定せいていされた法律ほうりつ[編集へんしゅう]

  • 外国がいこくじん帰化きか統一とういつ規則きそく設定せっていする法律ほうりつ(1798ねん外国がいこくじん帰化きかほう)、1798ねん6月18にち ch. 54, 1 Stat. 566
  • 外国がいこくじんかんするほう1798ねん7がつ25にち ch. 58, 1 Stat. 570
  • 外国がいこくてきかんするほう1798ねん7がつ6にち ch. 66, 1 Stat. 577
  • アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくたいする特定とくてい犯罪はんざい罰則ばっそくさだめるほう治安ちあんほう)、1798ねん7がつ14にち ch. 74, 1 Stat. 596

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Copies of the responding resolutions.
  2. ^ 376 U.S. 254, 276 (1964)

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Elkins, Stanley M. and Eric McKitrick, The Age of Federalism (1995), the standard scholarly history of the 1790s.
  • Miller, John Chester. Crisis in Freedom: The Alien and Sedition Acts (1951)
  • Rehnquist, William H. Grand Inquests: The historic Impeachments of Justice Samuel Chase and President Andrew Johnson (1994); Chase was impeached and acquitted for his conduct of a trial under the Sedition act.
  • Rosenfeld, Richard N. American Aurora: A Democratic-Republican Returns: The Suppressed History of Our Nation's Beginnings and the Heroic Newspaper That Tried to Report It (1997), clippings from a Republican newspaper
  • Smith, James Morton. Freedom's Fetters: The Alien and Sedition Laws and American Civil Liberties (1967).
  • Stone, Geoffrey R.Perilous Times: Free Speech in Wartime from The Sedition Act of 1798 to The War on Terrorism (2004).
  • Alan Taylor, "The Alien and Sedition Acts" in Julian E. Zelizer, ed. The American Congress (2004) pp. 63?76
  • Wright, Barry. "Migration, Radicalism, and State Security: Legislative Initiatives in the Canada's and the United States c. 1794-1804" in Studies in American Political Development, Volume 16, Issue 1, April 2002, pp. 48-60

いち史料しりょう[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]