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合衆国がっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょ

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アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょ
Supreme Court of the United States


設置せっち 1789ねん3月4にち
くに アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
所在地しょざいち ワシントンD.C.
座標ざひょう 北緯ほくい3853ふん26びょう 西経せいけい7700ふん16びょう / 北緯ほくい38.89056 西経せいけい77.00444 / 38.89056; -77.00444座標ざひょう: 北緯ほくい3853ふん26びょう 西経せいけい7700ふん16びょう / 北緯ほくい38.89056 西経せいけい77.00444 / 38.89056; -77.00444
判事はんじ選定せんてい方法ほうほう 大統領だいとうりょう指名しめい
認可にんか 合衆国がっしゅうこく憲法けんぽう
判事はんじ任期にんき 終身しゅうしん任期にんき
判事はんじ構成こうせい人数にんずう 9にん法令ほうれいによる)
ウェブサイト supremecourt.gov
最高さいこう裁判所さいばんしょ長官ちょうかん首席しゅせき判事はんじ
現職げんしょく ジョン・ロバーツ
着任ちゃくにん 2005ねん9月29にち

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょ(アメリカがっしゅうこくさいこうさいばんしょ、英語えいご: Supreme Court of the United States、略称りゃくしょう: SCOTUS)は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく連邦れんぽう政府せいふ司法しほう連邦れんぽう裁判所さいばんしょ)を統括とうかつする、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける最上級さいじょうきゅう連邦れんぽう裁判所さいばんしょ

合衆国がっしゅうこく憲法けんぽうだい3じょうだい1せつ規定きていもとづき設置せっちされている唯一ゆいいつ裁判所さいばんしょである(連邦れんぽう下級かきゅう裁判所さいばんしょ連邦れんぽうほうしたがって設置せっちされている)。

日本にっぽんでは連邦れんぽう最高さいこう裁判所さいばんしょぶこともおおい。

概要がいよう[編集へんしゅう]

合衆国がっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょは、その長官ちょうかんである首席しゅせき判事はんじ(しゅせきはんじ、Chief Justice)と8にん陪席ばいせき判事はんじ(ばいせきはんじ、Associate Justices)から構成こうせいされる。この首席しゅせき判事はんじのことを日本にっぽんでは便宜上べんぎじょう最高裁さいこうさい長官ちょうかん(さいこうさいちょうかん)と意訳いやくしている。

最高裁さいこうさい長官ちょうかん陪席ばいせき判事はんじは、大統領だいとうりょう指名しめいし、任命にんめいするが、任命にんめいには上院じょういんによる助言じょげん同意どうい必要ひつようとされる(合衆国がっしゅうこく憲法けんぽう2じょう2せつ2こう)。最高裁さいこうさい長官ちょうかん陪席ばいせき判事はんじはいずれも終身しゅうしんせいで、本人ほんにん死去しきょまたはみずか引退いんたいするまで、その地位ちい保証ほしょうされ、弾劾だんがい裁判さいばん以外いがい理由りゆうでは解任かいにんされることはない(どう3じょう1せつ。ただし、現在げんざいまでに弾劾だんがいによって解任かいにんされた最高裁さいこうさい判事はんじはいない)。なお、日本にっぽんでは現職げんしょく最高裁さいこうさい判事はんじとし最高裁さいこうさい長官ちょうかん昇格しょうかくすることがおおいが、アメリカでは最高裁さいこうさい長官ちょうかん陪席ばいせき判事はんじはそれぞれ別個べっこ任命にんめいされることになっており、長官ちょうかん死去しきょまたは引退いんたいした場合ばあいには外部がいぶからあらたな長官ちょうかん任命にんめいされるのが普通ふつうで、陪席ばいせき判事はんじ長官ちょうかん昇格しょうかくしたれいすくない[注釈ちゅうしゃく 1]

合衆国がっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょは、しゅうあいだあらそいなどのかぎられた事件じけんについてだいいちしんとしての管轄かんかつけんゆうするが(合衆国がっしゅうこく憲法けんぽう3じょう2せつ2こう)、そのような事件じけんはまれであり、ほとんどの事件じけん連邦れんぽう下級かきゅう裁判所さいばんしょまたはしゅう最高さいこう裁判所さいばんしょからの裁量さいりょう上訴じょうそ事件じけんである。合衆国がっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょは、連邦れんぽうほう州法しゅうほう連邦れんぽうしゅう行政府ぎょうせいふ行為こうい合衆国がっしゅうこく憲法けんぽうはんするかかを判断はんだんする権限けんげん違憲いけん審査しんさけん)をゆうすることが判例はんれいじょう確立かくりつされており[注釈ちゅうしゃく 2]合衆国がっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょによって違憲いけん判断はんだんされた法令ほうれいとう無効むこうとなる。

最高裁さいこうさい長官ちょうかん慣例かんれいとして、合衆国がっしゅうこく憲法けんぽう2じょう1せつ8こうさだめられた大統領だいとうりょう就任しゅうにん宣誓せんせいおこなう。

合衆国がっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょは、首都しゅとワシントンD.C.北東ほくとう地区ちく最高さいこう裁判所さいばんしょビルにある。最高さいこう裁判所さいばんしょビルは、ギリシアパルテノン神殿しんでんモチーフとしててられ、そのりょうわきには川村かわむらわれぞうとジェームス・アール・フレーザーのともさくによる「ジャスティス(正義せいぎいちたいぞう)」がある[注釈ちゅうしゃく 3]

現在げんざいジョン・ロバーツ長官ちょうかんは2005ねん就任しゅうにんした。

歴史れきし[編集へんしゅう]

初代しょだい合衆国がっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょ長官ちょうかん
ジョン・ジェイ

連邦れんぽう最高裁さいこうさい歴史れきしかたるとき、その時々ときどき最高裁さいこうさい長官ちょうかん名前なまえ(「○○・コート」)でその時代じだいしめすことがおおい。

初代しょだい最高裁さいこうさい長官ちょうかんジョン・ジェイである。憲法けんぽう制定せいていしばらくは、最高裁判所さいこうさいばんしょ連邦れんぽう政府せいふにおいて重要じゅうよう役割やくわりめることはなかった。

この状況じょうきょうおおきくえたのがジョン・マーシャル長官ちょうかん時代じだいである。マーベリーたいマディソン事件じけんにおいて、最高裁さいこうさい違憲いけん立法りっぽう審査しんさけんゆうすると宣言せんげんしたほか、おおくの重要じゅうよう判決はんけつにより、連邦れんぽう政府せいふ三権さんけんひとつとしての司法しほう役割やくわり確立かくりつするにいたった。一方いっぽうしゅう裁判所さいばんしょたいする連邦れんぽう最高裁さいこうさい優位ゆうい確立かくりつする判決はんけつくだし、判決はんけつ執行しっこうたりしゅう政府せいふ抵抗ていこうける場面ばめんもあった。またすべての判事はんじ意見いけん発表はっぴょうするイギリスからの伝統でんとうり、ひとつの多数たすう意見いけん発表はっぴょうする慣習かんしゅうつくられた。この時代じだい唯一ゆいいつ弾劾だんがい裁判さいばんひらかれ、最高裁さいこうさい判事はんじサミュエル・チェイス訴追そついされたが、結局けっきょく上院じょういんはチェイスを弾劾だんがいしなかった。

つづロジャー・トーニー長官ちょうかん時代じだい(1836ねん - 1864ねん)は、ドレッド・スコットたいサンフォード事件じけん裁判さいばんられている。最高裁さいこうさいは、この判決はんけつで、奴隷どれい制度せいど存続そんぞく許容きょようし、これが南北戦争なんぼくせんそう原因げんいんひとつとなったとわれている。

南北戦争なんぼくせんそうのチェイス、ウェイト、フラーかく長官ちょうかん時代じだい(1864ねん - 1910ねん)は、南北戦争なんぼくせんそう憲法けんぽう修正しゅうせい条項じょうこう解釈かいしゃくみ、実体じったいてきデュー・プロセス原理げんり発展はってんさせていった。ホワイト、タフトかく長官ちょうかん時代じだい(1910ねん - 1930ねん)にこの理論りろん頂点ちょうてんたっし、このころから、連邦れんぽう政府せいふにしか適用てきようがないとされてきた権利けんり章典しょうてん一部いちぶを、憲法けんぽう修正しゅうせい14じょうつうじてしゅう政府せいふ行為こういにも適用てきようはじめた。

ヒューズ、ストーン、ビンソンの3長官ちょうかん時代じだい(1930ねん - 1950ねん)には、現在げんざいあたらしい建物たてものうつった。またニューディール政策せいさくささえるためにおおきく憲法けんぽう解釈かいしゃく変更へんこうした。

アール・ウォレン長官ちょうかん時代じだいウォーレン・コート英語えいごばん、1953ねん - 1969ねん)は、憲法けんぽうじょう市民しみんけんひろ解釈かいしゃくしたおおくの判決はんけつくだ論争ろんそうんだ。ブラウンたい教育きょういく委員いいんかい裁判さいばんでは人種じんしゅ隔離かくり政策せいさく違憲いけんとしたほか、プライバシーの権利けんりみとめ、学校がっこうでの義務ぎむてき宗教しゅうきょう教育きょういく制限せいげんした。またミランダたいアリゾナしゅう事件じけんなど刑事けいじ手続てつづきにおけるあらたな判例はんれいつくられ、しゅう政府せいふにも適用てきようされる権利けんり章典しょうてん範囲はんいひろげた。

バーガー長官ちょうかん時代じだい(1969ねん - 1986ねん)には、人工じんこう妊娠にんしん中絶ちゅうぜつ憲法けんぽうじょう権利けんりであるとみとめたローたいウェイド事件じけんアファーマティブ・アクションかんするカリフォルニア大学だいがく理事りじかいたいバッキ裁判さいばんなどで、おおくの論争ろんそうこした。選挙せんきょ活動かつどうにおける支出ししゅつ制限せいげん違憲いけんとする判決はんけつくだし、また死刑しけい制度せいどについては、違憲いけんから合憲ごうけんへとみじかあいだ判例はんれい変更へんこうした。

ウィリアム・レンキスト長官ちょうかん時代じだい(1986ねん - 2005ねん)には、訴権そけん労働ろうどう組合くみあい争議そうぎけん中絶ちゅうぜつけんなどをせまかいし、一方いっぽう連邦れんぽう議会ぎかい通商つうしょう条項じょうこうじょう権限けんげんせま解釈かいしゃくするふたつの判決はんけつした。

2016ねん2がつアントニン・スカリア判事はんじ死去しきょし、当時とうじバラク・オバマ大統領だいとうりょう民主党みんしゅとう)はスカリア判事はんじ後任こうにん候補こうほ指名しめいしたが、共和党きょうわとう上院じょういん議員ぎいんらの反対はんたいにより挫折ざせつ。2017ねん1がつ就任しゅうにんした共和党きょうわとうドナルド・トランプ大統領だいとうりょう保守ほしゅニール・ゴーサッチ後任こうにん候補こうほ指名しめいし、同年どうねん4がつ7にち上院じょういん同意どういるまで、合衆国がっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょ判事はんじせきやく1ねん2かげつにわたって1人ひとり空席くうせき状態じょうたいつづいていた[1]

2021ねん4がつ9にち、バイデン大統領だいとうりょう現行げんこうにん定員ていいん拡大かくだいすることをふく改革かいかくについて検討けんとうする超党派ちょうとうは委員いいんかい設置せっちした。大統領だいとうりょうれいもとづいて設置せっちされた委員いいんかいは、リベラル保守ほしゅ法学ほうがくしゃもと連邦れんぽう判事はんじなど36にんのメンバーで構成こうせいされ、公聴こうちょうかいひらくなどして180にち以内いない検討けんとう結果けっか報告ほうこくする。増員ぞういんのほか、現行げんこう終身しゅうしんせいわる任期にんき導入どうにゅうなどについて「利点りてん合法ごうほうせい」を検討けんとうするという[2]

1967ねんまで9にん全員ぜんいん白人はくじん男性だんせいであった。1967ねんはじめての黒人こくじん男性だんせいとしてサーグッド・マーシャルが、1981ねんはじめての女性じょせいとしてサンドラ・オコナーが、1993ねん2人ふたり女性じょせいとしてルース・ベイダー・ギンズバーグがそれぞれ就任しゅうにんし、2006ねん、オコナーが引退いんたいし、2009ねん、3にん女性じょせいはつのヒスパニックけいとしてソニア・ソトマイヨールが、2010ねん、4にん女性じょせいとしてエレナ・ケーガンが、2022ねんはつ黒人こくじん女性じょせいとしてケタンジ・ブラウン・ジャクソンがそれぞれ就任しゅうにんした。

管轄かんかつ[編集へんしゅう]

最高裁さいこうさい管轄かんかつけんは、合衆国がっしゅうこく憲法けんぽう連邦れんぽうほうによって規定きていされている。憲法けんぽうじょう以下いかかかげられる事件じけんについてのみ管轄かんかつけんゆうし、それ以外いがい事件じけんについては、管轄かんかつけんゆうしない。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける訴訟そしょうだい部分ぶぶんは、しゅう裁判所さいばんしょ審理しんりされる。

  • 連邦れんぽう憲法けんぽう連邦れんぽうほうおよび条約じょうやくかんする事件じけん
  • 大使たいし外交がいこう使節しせつおよび領事りょうじかんする事件じけん
  • 海事かいじおよび海上かいじょう管轄かんかつかんする事件じけん
  • 合衆国がっしゅうこく一方いっぽう当事とうじしゃである争訟そうしょう
  • しゅう政府せいふあいだでの争訟そうしょう
  • しゅう政府せいふしゅう州民しゅうみんとのあいだ争訟そうしょう
  • ことなるしゅう州民しゅうみんあいだ争訟そうしょう
  • ことなるしゅうから付与ふよされた土地とち権利けんり主張しゅちょうするおなしゅう州民しゅうみんあいだ争訟そうしょう
  • しゅう政府せいふまたはそのしゅう州民しゅうみん他国たこくやその国民こくみんとのあいだ争訟そうしょう

修正しゅうせいだい11じょうは、連邦れんぽう裁判所さいばんしょが「しゅう政府せいふしゅう州民しゅうみんまたは国民こくみんから提起ていきされた訴訟そしょう」について裁判さいばんおこなうことをきんじているが、この条項じょうこう意味いみについてはあらそいがある。合衆国がっしゅうこく憲法けんぽうは、大使たいし外交がいこう使節しせつかんする事件じけんおよびしゅう当事とうじしゃ事件じけんについてだいいちしん管轄かんかつけんみとめているが、場合ばあい裁判所さいばんしょからの上訴じょうそもとづいて審理しんりおこなう。現在げんざいでは直接ちょくせつ訴される事件じけんは、事実じじつじょうしゅう政府せいふ相互そうご事件じけんのみといってよい。

また連邦れんぽうほうにより上記じょうき管轄かんかつけんはさらに制限せいげんされている。たとえば、ことなるしゅう州民しゅうみんあいだでの訴訟そしょうは、現在げんざいでは訴額そがくが7まん5000ドルをえる場合ばあいでなければ、連邦れんぽう裁判所さいばんしょ提起ていきできない。

1789ねん裁判所さいばんしょほうにもとづき、連邦れんぽう下級かきゅう裁判所さいばんしょだけではなくしゅう最高さいこう裁判所さいばんしょ名前なまえしゅうによってことなる)からの上訴じょうそ受理じゅり判決はんけつくだすことができる。

憲法けんぽうじょう事件じけんおよび争訟そうしょう」についてのみ裁判さいばんけんゆうし、仮定かていじょう(ムート)の事件じけんについて判決はんけつくだしたり、勧告かんこくてき意見いけんすことはできない。このてん連邦れんぽう最高裁さいこうさいは、違憲いけん審査しんさせいなかでもとく付随ふずいてき違憲いけん審査しんさせいばれるシステムをっている裁判所さいばんしょ代表だいひょうれいとして理解りかいされている[注釈ちゅうしゃく 4]。しかし連邦れんぽう最高裁さいこうさいは、具体ぐたいてき問題もんだい対処たいしょするためだけでなく、法律ほうりつ合憲ごうけんせい審査しんさ目的もくてきとして提起ていきされた事件じけんについてもしばしば審理しんりしている。プレッシーたいファーガソン裁判さいばんブラウンたい教育きょういく委員いいんかい裁判さいばんなどおおくの重要じゅうよう判決はんけつは、こうした試験しけんてき訴訟そしょうである。さらに、ローたいウェイド裁判さいばんのように、事件じけんがムートになっていても判決はんけつくだすことがある。

連邦れんぽう最高裁さいこうさい法廷ほうてい一般いっぱん公開こうかいされている。

連邦れんぽう最高裁さいこうさいは、上訴じょうそされた事件じけんすべてを審理しんりするわけではなく、連邦れんぽう地方裁判所ちほうさいばんしょからの直接ちょくせつ上訴じょうそみとめられるごくかぎられた事件じけんしゅう裁判所さいばんしょ連邦れんぽうほう条約じょうやく無効むこうとした事件じけんなどをのぞけば、上訴じょうそ裁量さいりょう上訴じょうそ(サーシオレイライ、certiorari)の申立もうしたてによらなければならない。申立もうしたては4にん判事はんじ賛成さんせいした場合ばあいみとめられる。通常つうじょう重要じゅうよう憲法けんぽう問題もんだいやその国家こっかてき重要じゅうよう論点ろんてんふく事件じけんにしか裁量さいりょう上訴じょうそみとめない。上訴じょうそされる事件じけん年間ねんかん7,000~8,000けんあるが、そのうち裁量さいりょう上訴じょうそみとめられ、判決はんけつくだされるのは100けんほどにすぎない。

口頭こうとう弁論べんろん[編集へんしゅう]

最高さいこう裁判所さいばんしょでは、10月のだい1月曜日げつようびから[3]4がつまつころまでのあいだ隔週かくしゅう月曜げつよう火曜かよう水曜すいよう口頭こうとう弁論べんろんおこなわれる。5月と6がつ判決はんけつ言渡いいわたしがおこなわれる。

通常つうじょう口頭こうとう弁論べんろん期日きじつ午前ごぜん10からと午前ごぜん11からのかく1あいだおこなわれ、必要ひつようおうじて午後ごご口頭こうとう弁論べんろん期日きじつれられることもある。かく当事とうじしゃ代理だいりする弁護士べんごし事前じぜん書面しょめん提出ていしゅつするが、口頭こうとう弁論べんろん期日きじつでプレゼンテーションをおこない、最高裁さいこうさい裁判官さいばんかんからの質問しつもんこたえる。口頭こうとう弁論べんろんおこなわれ、判決はんけつされるのは1ねんに1まんけんちょう申立もうしたてのうち100けん程度ていどである[4]

裁判官さいばんかん[編集へんしゅう]

定員ていいん[編集へんしゅう]

判事はんじ人数にんずう合衆国がっしゅうこく憲法けんぽうにはさだめがなく、連邦れんぽう議会ぎかいによる立法りっぽうゆだねられている。当初とうしょは1789ねん裁判所さいばんしょほうによって(長官ちょうかんふくめ)6にんさだめられた。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく領土りょうど拡大かくだいにともない判事はんじかず徐々じょじょ増加ぞうかし、1807ねんに7にんに、1873ねんに9にんに、1863ねんには10にんとなった。ところが1866ねんアンドリュー・ジョンソン大統領だいとうりょうによる判事はんじ任命にんめいきらった議会ぎかいは、つぎの3にん辞任じにんについては後任こうにんもうけないとする法律ほうりつさだめ、人員じんいん自然しぜんげんにより1867ねんに8にんまでった。その1869ねん再度さいど法律ほうりつ改正かいせいされ判事はんじ人数にんずうは9にんさだめられ、以来いらい現在げんざいまでつづいている[5]

フランクリン・ルーズベルト大統領だいとうりょうは、ニューディール政策せいさく関連かんれん立法りっぽうについて続々ぞくぞく違憲いけん判決はんけつした最高さいこう裁判所さいばんしょ反発はんぱつし、判事はんじ人数にんずう増員ぞういんこころみた。このコートパッキング計画けいかくは、70さいたっしても引退いんたいしない判事はんじ1にんについて大統領だいとうりょう1人ひとりあらたな判事はんじ任命にんめいする権限けんげんあたえるというもので、最大さいだい15にんまで人員じんいん増加ぞうかできるものとされた。この法案ほうあん議会ぎかい承認しょうにんることはできなかったものの、最高裁さいこうさい判例はんれい変更へんこうしニューディール政策せいさく合憲ごうけんとする判決はんけつくだした。

任命にんめい[編集へんしゅう]

大統領だいとうりょう指名しめい[編集へんしゅう]

合衆国がっしゅうこく憲法けんぽう2じょう2せつ2こうは、大統領だいとうりょう上院じょういん助言じょげん同意どういもとづいて最高さいこう裁判所さいばんしょ裁判官さいばんかん任命にんめいするとさだめている。通常つうじょうは、大統領だいとうりょう政治せいじてき立場たちばちか判断はんだん傾向けいこう法律ほうりつ最高裁さいこうさい長官ちょうかん判事はんじ候補こうほとなる。ただし、大統領だいとうりょう自分じぶん任命にんめいした裁判官さいばんかん期待きたい沿わなくてもその裁判官さいばんかん罷免ひめんする権限けんげんがないため、実際じっさい就任しゅうにんした裁判官さいばんかん大統領だいとうりょう期待きたいことなる傾向けいこうはし場合ばあいもある。有名ゆうめいれいは、ドワイト・アイゼンハワー大統領だいとうりょう指名しめいしたアール・ウォーレン長官ちょうかんで、アイゼンハワーはウォーレンが保守ほしゅてき立場たちばつことを期待きたいしてかれ指名しめいしたが、今日きょうウォーレンは最高裁さいこうさい歴史れきしなかもっともリベラルな判決はんけついた裁判官さいばんかんであると評価ひょうかするきもあり、のちにアイゼンハワーはウォーレンの指名しめいを「わたし人事じんじなかもっとおろかなものだった」と述懐じゅっかいしている。通常つうじょう大統領だいとうりょう極端きょくたん保守ほしゅてきまたは極端きょくたんリベラル判断はんだん傾向けいこう人物じんぶつ裁判官さいばんかん候補者こうほしゃとして指名しめいすると、上院じょういんではそのような人物じんぶつ警戒けいかいして承認しょうにんしない場合ばあいおおい。

上院じょういん助言じょげん同意どうい[編集へんしゅう]

最高裁さいこうさい裁判官さいばんかん候補者こうほしゃ指名しめい大統領だいとうりょう権限けんげんであるが、任命にんめいには上院じょういんの「助言じょげん同意どうい」が必要ひつようである。大統領だいとうりょう候補者こうほしゃ指名しめいすると、上院じょういん司法しほう委員いいんかい候補者こうほしゃたいする質疑しつぎ応答おうとう投票とうひょうおこなわれる。つづいて上院じょういんほん会議かいぎ投票とうひょうおこなわれ、上院じょういん全体ぜんたい過半数かはんすう承認しょうにんによって正式せいしき任命にんめいされる。2016ねんまでに上院じょういん投票とうひょうによって承認しょうにん拒否きょひした候補者こうほしゃは13めいにのぼる。上院じょういんによる承認しょうにんおおきな政治せいじてき争点そうてんとなることもおおい。近年きんねんでは1987ねんロバート・ボーク承認しょうにん否決ひけつされたほか、1991ねんのクラレンス・トーマスの承認しょうにん手続てつづきではセクシャルハラスメント疑惑ぎわく問題もんだいとなり、質疑しつぎ応答おうとうではとくにセクハラをけたという女性じょせいまで証人しょうにん喚問かんもんしてだい論争ろんそうとなった挙句あげく賛成さんせい52たい反対はんたい48でかろうじて承認しょうにんされている。また、2018ねんのブレット・カバノーの承認しょうにん手続てつづきでも同様どうようのセクシャルハラスメント疑惑ぎわく問題もんだいとなったすえに、賛成さんせい50たい反対はんたい48でかろうじて承認しょうにんされた。

最高裁さいこうさい裁判官さいばんかん候補者こうほしゃは、1990年代ねんだいのクリントン政権せいけんまでは、前述ぜんじゅつのクラレンス・トーマスの場合ばあいのぞけばほとんどが圧倒的あっとうてき賛成さんせい多数たすう承認しょうにんされており、なかにはジョン・ポール・スティーブンスサンドラ・デイ・オコナーアンソニー・ケネディなどのように上院じょういん全員ぜんいん賛成さんせい承認しょうにんされたものもいた。しかし、2000年代ねんだいのブッシュ政権せいけんからは、サミュエル・アリートの賛成さんせい58たい反対はんたい42や、ニール・ゴーサッチの賛成さんせい54たい反対はんたい45などのように、候補者こうほしゃ承認しょうにんされるさい賛成さんせいすう大幅おおはば減少げんしょうしている傾向けいこうがある。クリントン政権せいけんの1994ねんスティーブン・ブライヤー賛成さんせい87たい反対はんたい9で承認しょうにんされてから、ブッシュ政権せいけんの2005ねんにジョン・ロバーツが賛成さんせい78たい反対はんたい22で承認しょうにんされるまでの11年間ねんかんにわたり、後述こうじゅつとお最高裁さいこうさい裁判官さいばんかん交代こうたいまったおこなわれなかった期間きかんがあり、この空白くうはく期間きかんさかいに、最高裁さいこうさい裁判官さいばんかん候補者こうほしゃ承認しょうにんされるさい賛成さんせいすう従来じゅうらいよりもあきらかに減少げんしょうしている傾向けいこうられる。

大統領だいとうりょう候補者こうほしゃ指名しめいしても、様々さまざま事情じじょう上院じょういんほん会議かいぎによる投票とうひょういたらないこともあり、議事ぎじ妨害ぼうがいにより投票とうひょうおこなわれない場合ばあいや、上院じょういん司法しほう委員いいんかい否決ひけつされる場合ばあいがこのれいげられる。また上院じょういん承認しょうにん見込みこみがないと大統領だいとうりょう判断はんだんした場合ばあいは、大統領だいとうりょうみずからが指名しめい撤回てっかいすることもある。ロナルド・レーガン大統領だいとうりょうはコロンビア特別とくべつ巡回じゅんかい連邦れんぽう控訴こうそ裁判所さいばんしょ判事はんじのダグラス・ギンズバーグを指名しめいしたが、マリファナ使用しよう疑惑ぎわくけてこれを司法しほう委員いいんかいによる審査しんさまえ撤回てっかいしている。またジョージ・W・ブッシュ大統領だいとうりょうは2005ねん辞任じにん表明ひょうめいしたサンドラ・デイ・オコナー判事はんじ後任こうにんとしてホワイトハウス首席しゅせき法律ほうりつ顧問こもんだったハリエット・マイヤーズを指名しめいしたが、これには身内みうちであるはずの共和党きょうわとう右派うはがマイヤーズが独身どくしん女性じょせいでありLGBTコミュニティ理解りかいてきであることなどを理由りゆうもう反発はんぱつ、これをけてマイヤーズ自身じしんからの依頼いらいによりブッシュが指名しめい撤回てっかいしたというれいがある。

議事ぎじ妨害ぼうがいによる指名しめい拒否きょひれいとしては、1968ねんリンドン・ジョンソン大統領だいとうりょう陪席ばいせき判事はんじだったエイブ・フォータスをアール・ウォレン後任こうにん最高裁さいこうさい長官ちょうかん指名しめいしたさい上院じょういん議事ぎじ妨害ぼうがいにより承認しょうにん阻止そしした。

1980年代ねんだいまでは裁判官さいばんかん承認しょうにん比較的ひかくてきすみやかにおこなわれ、トルーマン政権せいけんからニクソン政権せいけん時代じだいには1かげつほどで承認しょうにんされていた。ところがレーガン政権せいけん以後いご承認しょうにん時間じかんがかかるようになり、これは最高裁さいこうさい裁判官さいばんかん政治せいじたす役割やくわり拡大かくだいしているためでないかと指摘してきされている[6]

休会きゅうかい任命にんめい[編集へんしゅう]

大統領だいとうりょう合衆国がっしゅうこく憲法けんぽう2じょう2せつ3こう休会きゅうかい任命にんめいけん)にもとづき、上院じょういん休会きゅうかいちゅう欠員けついんしょうじた場合ばあい上院じょういん助言じょげん同意どういなしに一時いちじてき最高裁さいこうさい判事はんじ任命にんめいすることができる。この場合ばあい判事はんじ任期にんきつぎ上院じょういん会期かいきわりまでとなり、そのについては上院じょういん助言じょげん承認しょうにん必要ひつようとなる。過去かこ休会きゅうかい任命にんめいされた2めい長官ちょうかんと6めい判事はんじのうち、のち上院じょういん承認しょうにんけることができなかったのはジョン・ラトリッジ長官ちょうかんのみである。最高裁さいこうさい裁判官さいばんかん休会きゅうかい任命にんめいには批判ひはんつよく、アイゼンハワー以後いご最高裁さいこうさい判事はんじ休会きゅうかい任命にんめいした大統領だいとうりょうはいない。

資格しかく[編集へんしゅう]

最高裁さいこうさい判事はんじとなるために必要ひつよう任用にんよう資格しかくかんする規定きていは、合衆国がっしゅうこく憲法けんぽうにもその法令ほうれいにも一切いっさいこれがない。このため、過去かこ裁判官さいばんかんとしての経験けいけんまったくないものでも最高裁さいこうさい判事はんじになりるのが合衆国がっしゅうこく最高裁さいこうさいおおきな特徴とくちょうであり、そのような判事はんじは2010ねん就任しゅうにんしたケイガン判事はんじをはじめ現在げんざいまでに36めいかぞえている。ただし、現在げんざいまでのところ、法曹ほうそう資格しかくのないもの最高裁さいこうさい判事はんじ任命にんめいされたれいはない。このてん法曹ほうそう資格しかくたない行政ぎょうせい官等かんとう出身しゅっしんしゃ任命にんめいされる日本にっぽん最高裁さいこうさい裁判官さいばんかんとはその性格せいかくことにしている。

任期にんき[編集へんしゅう]

合衆国がっしゅうこく憲法けんぽう3じょう1こうでは、最高裁さいこうさい裁判官さいばんかんは「善行ぜんこう保持ほじするかぎり、そのしょくたもつ」とさだめているが、この「善行ぜんこう」(good behaviour) は生命せいめい同義どうぎ解釈かいしゃくされている。したがって最高裁さいこうさい裁判官さいばんかん終身しゅうしんせいであり、本人ほんにん死去しきょまたはみずか引退いんたいするまで、弾劾だんがい裁判さいばんによって罷免ひめんされる場合ばあいのぞいては生涯しょうがいにわたってその身分みぶん保証ほしょうされる。しかし、弾劾だんがい裁判さいばんによる罷免ひめんはまだれいがない。裁判官さいばんかん空席くうせき平均へいきん2ねんひと発生はっせいするが、裁判官さいばんかん死去しきょまたは引退いんたい発生はっせいしない場合ばあい交代こうたいのない期間きかんながつづくこともある。近年きんねんにおいては、1994ねんのスティーブン・ブライヤー判事はんじ任命にんめいから2005ねんウィリアム・レンキスト長官ちょうかん死去しきょまで、11ねんにわたっておなじ9にん裁判官さいばんかん審理しんりたったれいがある。

その役割やくわり[編集へんしゅう]

最高裁さいこうさい裁判官さいばんかんは、かく控訴こうそ裁判所さいばんしょ判事はんじとしても任命にんめいされている。もともと1789ねん裁判所さいばんしょほうもとづき、最高さいこう裁判所さいばんしょ判事はんじが、巡回じゅんかいするかく控訴こうそ裁判所さいばんしょ案件あんけん処理しょりすることがもとめられていたためであるが、実際じっさいかく控訴こうそ裁判所さいばんしょにて審理しんりおこなあつかいは、1891ねん廃止はいしされた。現在げんざいでも、最高さいこう裁判所さいばんしょかく裁判官さいばんかんは、「控訴こうそさい最高裁さいこうさい判事はんじ (circuit justice)」としてかく控訴こうそ裁判所さいばんしょてられている。現在げんざいでは控訴こうそ裁判所さいばんしょ判事はんじとしての役割やくわりは、緊急きんきゅう申立もうしたてなどの審理しんりかぎられている。

出身しゅっしん[編集へんしゅう]

かつてはキリスト教きりすときょう白人はくじん男性だんせいしかいなかった。

1916ねんはじめてのユダヤきょうルイス・ブランダイス任命にんめいされた。1967ねんはじめてのアフリカけいサーグッド・マーシャル任命にんめいされた。1981ねんはじめての女性じょせいサンドラ・デイ・オコナー任命にんめいされた。2010ねんエレナ・ケイガン任命にんめいされてから、9めい判事はんじのうちカトリック教徒きょうとは6めいのこりの3めいはユダヤ教徒きょうとで、2017ねんにプロテスタントのニール・ゴーサッチ任命にんめいされるまではプロテスタント教徒きょうと1人ひとりもいなかった[7]

現在げんざい構成こうせい[編集へんしゅう]

2022ねん6がつ30にち現在げんざい最高裁さいこうさい構成こうせいするのは以下いかの9めい

最高裁さいこうさい判事はんじ 性別せいべつ 年齢ねんれい 人種じんしゅ背景はいけい 出身しゅっしん 指名しめいした大統領だいとうりょう 上院じょういん投票とうひょう 就任しゅうにん就任しゅうにん年齢ねんれい 在任ざいにん
クラレンス・トーマス 男性だんせい 76さい アフリカけい ジョージアしゅう
ピンポイント
ジョージ・H・W・
ブッシュ
共和党きょうわとう
賛成さんせい 52
反対はんたい 48
1991ねん10がつ23にち(43さい 33ねん
ジョン・ロバーツ 長官ちょうかん 男性だんせい 69さい ケルトけい ニューヨークしゅう
バッファロー
ジョージ・W・
ブッシュ
共和党きょうわとう
賛成さんせい 78
反対はんたい 22
2005ねん9がつ29にち(50さい 19ねん
サミュエル・アリート 男性だんせい 74さい イタリアけい ニュージャージーしゅう
トレントン
賛成さんせい 58
反対はんたい 42
2006ねん1がつ31にち(55さい 19ねん
ソニア・ソトマイヨール 女性じょせい 70さい ラテンけい ニューヨークしゅう
ニューヨーク
バラク・
オバマ
民主党みんしゅとう
賛成さんせい 68
反対はんたい 31
2009ねん8がつ8にち(55さい 15ねん
エレナ・ケイガン 女性じょせい 64さい ユダヤけい 賛成さんせい 63
反対はんたい 37
2010ねん8がつ7にち(50さい 14ねん
ニール・ゴーサッチ 男性だんせい 56さい 白人はくじんけい コロラドしゅう
デンバー
ドナルド・
トランプ
共和党きょうわとう
賛成さんせい 54
反対はんたい 45
2017ねん4がつ10日とおか(49さい   8ねん
ブレット・カバノー 男性だんせい 59さい アイルランドけい ワシントン D.C. 賛成さんせい 50
反対はんたい 48
2018ねん10がつ6にち(53さい   6ねん
エイミー・コニー・バレット 女性じょせい 52さい ルイジアナしゅう
ニューオーリンズ
賛成さんせい 52
反対はんたい 48
2020ねん10がつ27にち (48さい)   4ねん
ケタンジ・ブラウン・ジャクソン 女性じょせい 53さい アフリカけい ワシントンD.C ジョー・バイデン民主党みんしゅとう 賛成さんせい 53
反対はんたい 47
2022ねん6がつ30にち (51さい)   2ねん

判断はんだん傾向けいこう[編集へんしゅう]

2022ねん6がつ30にち現在げんざい最高裁さいこうさい裁判官さいばんかんは、6にん保守ほしゅと3にんのリベラル分類ぶんるいされている。保守ほしゅなされるのはいずれも共和党きょうわとう大統領だいとうりょうによって指名しめいされた、ロバーツ長官ちょうかん、トーマス、アリート、ゴーサッチ、カバノー、バレットの6判事はんじ、リベラルなされるのはいずれも民主党みんしゅとう大統領だいとうりょうによって指名しめいされた、ソトマイヨール、ケイガン、ジャクソンの3判事はんじである。2018ねん7がつまつまでつとめていたケネディ判事はんじは、共和党きょうわとう大統領だいとうりょうによって指名しめいされたにもかかわらず、事件じけんによって保守ほしゅり・リベラル双方そうほう判断はんだんくだしており、中間なかまなされていた。

ちゅうあいだであったケネディ判事はんじ引退いんたい保守ほしゅのカバノー判事はんじ任命にんめいされ、さらにリベラルであったギンズバーグ判事はんじ死後しご保守ほしゅのバレット判事はんじ任命にんめいされ、最高裁さいこうさい以前いぜんよりも保守ほしゅ勢力せいりょく強化きょうかされることとなった。

ただし、個々ここ裁判官さいばんかん判断はんだん傾向けいこうには保守ほしゅ・リベラルではふんできない、微妙びみょうなニュアンスのちがいがられる。保守ほしゅのうち、トーマス、アリートが保守ほしゅてき判断はんだん一貫いっかんする一方いっぽう、ロバーツ、カバノーはややリベラルりの判断はんだんをし、キャスティングボートをにぎることがおお[8][9][10]他方たほう、リベラル判事はんじなかでケーガンはコンセンサスを重視じゅうしし、とき中道ちゅうどうないし保守ほしゅてき判断はんだんをすることがあるが[11][12][13]、ソトマイヨールはリベラルしょくつよ[14]

退官たいかんした判事はんじ[編集へんしゅう]

退官たいかんした連邦れんぽう最高裁さいこうさい判事はんじのうち現在げんざい存命ぞんめいなのは、以下いかの3めいである。

存命ぞんめいもと最高裁さいこうさい判事はんじ 性別せいべつ 年齢ねんれい 人種じんしゅ背景はいけい 出身しゅっしん 指名しめいした大統領だいとうりょう 上院じょういん投票とうひょう 就任しゅうにん就任しゅうにん年齢ねんれい
退官たいかん退官たいかん年齢ねんれい
在任ざいにん 判断はんだん傾向けいこう
アンソニー・ケネディ 男性だんせい 87さい 白人はくじんけい カリフォルニアしゅう
サクラメント
ロナルド・
レーガン
賛成さんせい 97
反対はんたい   0
1988ねん2がつ18にち(51さい
2018ねん7がつ31にち(82さい
30ねん 
 4かげつ
中間ちゅうかん
デイヴィッド・スーター 男性だんせい 84さい 白人はくじんけい マサチューセッツしゅう
メルローズ
ジョージ・H・W・
ブッシュ
賛成さんせい 90
反対はんたい   9
1990ねん10がつ9にち(51さい
2009ねん6がつ29にち(69さい
18ねん 
 8かげつ
リベラル
スティーブン・ブライヤー 男性だんせい 85さい ユダヤけい カリフォルニアしゅう
サンフランシスコ
ビル・
クリントン
賛成さんせい 87
反対はんたい   9
1994ねん8がつ3にち(56さい
2022ねん6がつ30にち(83さい
27ねん
 10かげつ

引退いんたいした連邦れんぽう最高裁さいこうさい判事はんじは、完全かんぜん法曹ほうそうとしてのキャリアをえるわけではなく、連邦れんぽうほうしゅたる条文じょうぶんとしては、合衆国がっしゅうこく法典ほうてん28へんだい13しょう294じょう)のさだめによりシニア・ステイタスばれる資格しかく獲得かくとくし、じゅん引退いんたいはん引退いんたいあつかいとされる。じゅん引退いんたいあつかいとなったもと最高裁さいこうさい判事はんじには、現役げんえき同額どうがく報酬ほうしゅうける権利けんりや、秘書ひしょすくなくとも1めい以上いじょうロー・クラーク[注釈ちゅうしゃく 5]をスタッフとして雇用こようする権利けんりあたえられるとともに、連邦れんぽう最高裁さいこうさい以外いがい連邦れんぽう下級かきゅうしん裁判所さいばんしょ判事はんじポストになんらかの理由りゆう空席くうせきしょうじた場合ばあいには、すべての連邦れんぽう裁判所さいばんしょ統括とうかつする首席しゅせき裁判官さいばんかんでもある最高裁さいこうさい長官ちょうかん任命にんめいにより、後任こうにん決定けっていするまでのあいだ一時いちじてき判事はんじとして審理しんりおこな資格しかくあたえられることもある。シニア・ステイタスの付与ふよについては、ぞくに「80ねんルール」(Rule of 80) とばれる規定きてい議会ぎかいによってさだめられており、それによれば65さい以上いじょうであること、年齢ねんれい連邦れんぽう裁判所さいばんしょ判事はんじとして勤務きんむした年数ねんすうした年数ねんすうが80ねん以上いじょうであること、という2つの条件じょうけんがシニア・ステイタスの付与ふよ必要ひつよう条件じょうけんとされている。

建物たてもの[編集へんしゅう]

連邦れんぽう議会ぎかい議事堂ぎじどうないにあったきゅう連邦れんぽう最高裁さいこうさい

憲法けんぽう制定せいてい以降いこう連邦れんぽう議会ぎかい議事堂ぎじどうなかかれていた最高裁さいこうさいは、1935ねん連邦れんぽう議会ぎかい議事堂ぎじどう正面しょうめんてられた現在げんざい最高さいこう裁判所さいばんしょビルに移転いてんした。ビルは周囲しゅうい連邦れんぽう議会ぎかい議事堂ぎじどう連邦れんぽう議会ぎかい図書館としょかん調和ちょうわするよう伝統でんとうてきなスタイルで、キャス・ギルバートにより設計せっけいされ、大理石だいりせきおおわれている。最高さいこう裁判所さいばんしょビルは4かいてであり、なかには法廷ほうてい判事はんじ執務しつむしつ図書館としょかん会議かいぎじょうのほか商店しょうてん、カフェテリア、ジムなどももうけられている。最高さいこう裁判所さいばんしょ指揮しきにある独自どくじ警察けいさつ組織そしき警備けいびたっている。

最高さいこう裁判所さいばんしょビルは連邦れんぽう休日きゅうじつのぞ月曜日げつようびから金曜日きんようび午前ごぜん9から午後ごご4時半じはんまでオープンしており、展示てんじ最高さいこう裁判所さいばんしょ紹介しょうかいビデオをることができるほか、カフェテリア、みやげものてんなどもある。口頭こうとう弁論べんろん傍聴ぼうちょう可能かのうであり、口頭こうとう弁論べんろんには最高さいこう裁判所さいばんしょビルまえにはあさから長蛇ちょうだれつができていることがおおい。

判例はんれいしゅう[編集へんしゅう]

連邦れんぽう最高裁さいこうさい公式こうしき判例はんれいしゅう合衆国がっしゅうこく判例はんれいしゅう (U.S.Reports)。

最高裁さいこうさい判決はんけつ通常つうじょう、「Roe v. Wade, 410 U.S. 113 (1973).」というかたち引用いんようされる。これは、1973ねんローたいウェイド裁判さいばん判決はんけつ上訴じょうそじんロー、上訴じょうそじんウェイド)をし、公式こうしき判例はんれいしゅうである合衆国がっしゅうこく判例はんれいしゅうえい: U.S. Reports)410かん113ページに掲載けいさいされていることを意味いみする。公式こうしき判例はんれいしゅうほかひろ利用りようされている民間みんかん判例はんれいしゅうとして、最高裁判所さいこうさいばんしょ判例はんれいしゅう(Supreme Court Reporter、りゃく: S. Ct.)とローヤーズ・エディション(United States Supreme Court Reports, Lawyers' Edition、りゃく: L. Ed.)がある。

合衆国がっしゅうこく最高裁さいこうさい判例はんれい連邦れんぽうすべての下級かきゅうしん拘束こうそくする(ただし、州法しゅうほう適用てきようされる事件じけんについては、後述こうじゅつてん注意ちゅういする必要ひつようがある)。合衆国がっしゅうこく最高裁さいこうさい原則げんそくとして判例はんれい尊重そんちょうするが、判例はんれい変更へんこうすることもある。

合衆国がっしゅうこく最高裁さいこうさい判例はんれいは、連邦れんぽうほうかんして、しゅう裁判所さいばんしょ拘束こうそくする[15]。しかし、州法しゅうほうかんして、しゅう裁判所さいばんしょは、合衆国がっしゅうこく最高裁さいこうさい判例はんれい拘束こうそくされない[16]州法しゅうほうが、合衆国がっしゅうこく憲法けんぽう違反いはんして無効むこうであるとする合衆国がっしゅうこく最高裁さいこうさい判例はんれいは、連邦れんぽうほう合衆国がっしゅうこく憲法けんぽう)にかんする判断はんだんであるから、しゅう裁判所さいばんしょ拘束こうそくする[15]

なお、ぎゃくに、州法しゅうほう適用てきようされる事件じけんについて、合衆国がっしゅうこく裁判所さいばんしょは、しゅう最上級さいじょうきゅうしん判断はんだんしたが必要ひつようがある[17]。したがって、合衆国がっしゅうこく最高裁さいこうさいが、しゅう裁判所さいばんしょ先例せんれいがない州法しゅうほうじょう問題もんだいについてみずか判断はんだんくだしたが、そのしゅう裁判所さいばんしょが、その判断はんだん相反あいはんする判断はんだんくだした場合ばあい合衆国がっしゅうこく裁判所さいばんしょであっても、合衆国がっしゅうこく最高裁さいこうさい判例はんれいではなく、しゅう裁判所さいばんしょ判例はんれいしたがうべきことになる。たとえば死刑しけい終身しゅうしんけい相当そうとうかという場合ばあいは、連邦れんぽうほうはんしないかぎりしゅう裁判所さいばんしょしたがうことになる[18]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 2012ねん現在げんざいまでにおけるアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく歴代れきだい最高裁さいこうさい長官ちょうかん17めいちゅう現職げんしょく陪席ばいせき判事はんじから長官ちょうかん昇格しょうかくしたのは、だい9だい長官ちょうかんホワイト・だい12だい長官ちょうかんストーン・だい16だい長官ちょうかんレンキストの3めいのみである。そのだい2だい長官ちょうかんラトリッジとだい11だい長官ちょうかんヒューズの2めい陪席ばいせき判事はんじ引退いんたいしたのち長官ちょうかんとして再任さいにんされた。
  2. ^ ただし、合衆国がっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょ違憲いけん審査しんさけん法律ほうりつでは明文化めいぶんかされていない。
  3. ^ なお川村かわむら合衆国がっしゅうこく市民しみんけんたなかったため、作品さくひんにそのきざまれていない。
  4. ^ 付随ふずいてき違憲いけん審査しんさせいとは、憲法けんぽう裁判所さいばんしょのような違憲いけん審査しんさあつかうための特別とくべつ機関きかんもうけることなく、通常つうじょう裁判所さいばんしょ具体ぐたいてき事件じけん争訟そうしょうたいして法令ほうれい適用てきよう解決かいけつするさいに、必要ひつよう範囲はんい違憲いけん審査しんさをする方式ほうしきのことをす。対極たいきょくにある概念がいねんとして、抽象ちゅうしょうてき違憲いけん審査しんさせいがある。くわしくは違憲いけん審査しんさせいのページを参考さんこうのこと。
  5. ^ ロー・クラークは判事はんじ補佐ほさし、事件じけん審理しんり裁判さいばん必要ひつよう調査ちょうさおこなったり、判決はんけつ意見いけん部分ぶぶん執筆しっぴつすることを業務ぎょうむとしている職業しょくぎょうである。日本にっぽんでは類似るいじ職種しょくしゅとして裁判所さいばんしょ調査官ちょうさかん意見いけん執筆しっぴつすることがあるというてん注目ちゅうもくすれば、最高さいこう裁判所さいばんしょ調査官ちょうさかんもっとちかい)があるが、日本にっぽんにおける裁判所さいばんしょ調査官ちょうさかん国家こっか公務員こうむいん特別とくべつしょくのひとつである裁判所さいばんしょ職員しょくいんとしてあつかわれている(最高裁さいこうさい調査官ちょうさかんについては、現役げんえき判事はんじ判事はんじのままにんたる)のにたいし、ロー・クラークには公務員こうむいん資格しかく必要ひつようとはされず、おもロー・スクール優秀ゆうしゅう成績せいせき卒業そつぎょうしたばかりの若手わかてえらばれる場合ばあいおおい。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ べい上院じょういん、ゴーサッチ最高裁さいこうさい判事はんじ承認しょうにん トランプかぜ. ニューズウィーク. (2017ねん4がつ8にち). http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2017/04/190150.php 2017ねん4がつ11にち閲覧えつらん 
  2. ^ べい最高裁さいこうさい判事はんじ増員ぞういん検討けんとうへ、バイデン大統領だいとうりょうれい委員いいんかい” (2021ねん4がつ10日とおか). 2021ねん4がつ13にち閲覧えつらん
  3. ^ 28 U.S.C. §2
  4. ^ Visitor’s Guide to Oral Argument at the Supreme Court of the United States” (PDF). U.S. Supreme Court. 2009ねん1がつ23にち閲覧えつらん
  5. ^ 28 U.S.C. §1
  6. ^ Jack M. Balkin (2004ねん4がつ15にち). “The Passionate Intensity of the Confirmation Process”. 2012ねん2がつ9にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2008ねん10がつ14にち閲覧えつらん
  7. ^ べい大統領だいとうりょう選挙せんきょ徹底てってい分析ぶんせき(9):なぜ保守ほしゅキリスト教徒きりすときょうとエバンジェリカルはトランプを支持しじつづけるのか” (2016ねん10がつ27にち). 2018ねん10がつ8にち閲覧えつらん
  8. ^ Roberts, Kavanaugh Give Liberals Wins on Conservative Court (3)” (英語えいご). news.bloomberglaw.com. 2023ねん7がつ1にち閲覧えつらん
  9. ^ Roberts, Kavanaugh Shock With Liberal Voting Rights Victory (1)” (英語えいご). news.bloomberglaw.com. 2023ねん7がつ1にち閲覧えつらん
  10. ^ Roberts and Kavanaugh Split From Conservatives in Term's First 5-4 Ruling” (英語えいご). National Law Journal. 2023ねん7がつ1にち閲覧えつらん
  11. ^ Stern, Mark Joseph (2020ねん4がつ22にち). “Everyone Is Mad at Elena Kagan” (英語えいご). Slate. ISSN 1091-2339. https://slate.com/news-and-politics/2020/04/elena-kagan-supreme-court-conservatives-precedent.html 2023ねん7がつ1にち閲覧えつらん 
  12. ^ Gerstein, Josh (2022ねん12月30にち). “How Justice Kagan lost her battle as a consensus builder” (英語えいご). POLITICO. 2023ねん7がつ1にち閲覧えつらん
  13. ^ Associate Justice Elena Kagan, after decade on bench, emerges as Supreme Court 'bridge-builder'” (英語えいご). USA TODAY. 2023ねん7がつ1にち閲覧えつらん
  14. ^ 'I live in frustration': Justice Sotomayor on working with a conservative Supreme Court” (英語えいご). USA TODAY. 2024ねん3がつ17にち閲覧えつらん
  15. ^ a b 20 Am. Jur. 2d Courts § 147
  16. ^ 20 Am. Jur. 2d Courts § 146
  17. ^ 36 C.J.S. Federal Courts § 201
  18. ^ 36 C.J.S. Federal Courts § 210

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

原著げんちょ"The Brethren: Inside the Supreme Court” by Bob Woodward, Scott Armstrong(1979) ISBN 0-671-24110-9
ウォレン・バーガー時代じだい最高裁さいこうさいを、ロークラークの意見いけんしょ判事はんじ判決はんけつ原案げんあん内部ないぶ討論とうろんなどを引用いんようしながらえがく。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]