大だい区く小お区く制せい

大だい区く小お区く制せい（だいくしょうくせい）とは、日本にっぽんの明治めいじ時代じだいに施行しこうされた地方ちほう制度せいどである。

従来じゅうらいの小規模しょうきぼの町村ちょうそんでは効率こうりつ的てきな行政ぎょうせいが実施じっしできないため、町村ちょうそんを大だい区く・小お区くに再さい編成へんせいしたものであった。府県ふけんの下したに大だい区くを置おき、大だい区くの下したに小お区くを置おくことを基本きほんとするが、実際じっさいは府県ふけんによって様々さまざまである。例たとえば「第だい9大だい区く6小しょう区く」など、数字すうじで行政ぎょうせい区域くいきが表あらわされた。

法令ほうれい上じょうの沿革えんかく

• 明治めいじ4年ねん4月がつ4日にち（1871年ねん5月22日にち） - 全国ぜんこく一いち律りつの戸籍こせきを作つくるための準備じゅんびとして、政府せいふは戸籍こせき法ほうを制定せいていし編へん製せいの単位たんいとして区くを置おいた。区分くぶん法ほうに特とくに定さだめがなく、戸長こちょうと副ふく戸長こちょうが戸籍こせき事務じむを掌てのひらると定さだめているものの、それは従来じゅうらいの庄屋しょうや・名主なぬし・年寄としよりを充あてても別人べつじんを充あてても良よいとして、府県ふけんに大幅おおはばな自由じゆう度どが認みとめられていた。
• 明治めいじ5年ねん
  • 4月がつ9日にち（1872年ねん6月がつ10日とおか） - 政府せいふは江戸えど時代じだいからの庄屋しょうや、名主なぬし、年寄としより、大だい庄屋しょうや等とうを廃止はいしした。かわりに華族かぞくや士族しぞくも含ふくめて全国ぜんこく一律いちりつに、戸長こちょうと副ふく戸長こちょうを置おいた。
  • 10月がつ10日とおか（1872年ねん11月10日にち） - この区くを大だい区くと改称かいしょうし、その下したに旧来きゅうらいの町村ちょうそんを幾いくつかまとめて小お区くを置おいた。大だい区くには区長くちょう、副ふく区長くちょうを置おいた。小お区くには戸長こちょうと副ふく戸長こちょうを置おき、これには江戸えど時代じだいの村役人むらやくにん（庄屋しょうや・名主なぬし）や町役人まちやくにん（年寄としよりなど）、大だい庄屋しょうやなどの経験けいけん者しゃを任命にんめいした。これが、大だい区く小お区く制せいである。区くの名前なまえには数字すうじを用もちいた。東京とうきょう府ふにおいては6つの大だい区くを置おき、97の小しょう区くを置おいた。
• 明治めいじ11年ねん（1878年ねん）7月がつ22日にち - 地方ちほう三さん新法しんぽうの一ひとつである郡こおり区く町村ちょうそん編制へんせい法ほうの制定せいていにより廃止はいしされた。

各かく県けんでの施行しこう状じょう況きょう

まず単たん一いち区く制せいを取とってから大だい区く小お区く制せいに切きり替かえた県けんが多おおいものの、当初とうしょから大だい区く小お区く制せいを採用さいようした県けん、中途ちゅうとで単たん一いち区く制せいに転換てんかんした県けん、一貫いっかんして単たん一いち区く制せいを採とった県けんなど、様々さまざまである。また形式けいしき上じょうは大だい区く小お区く制せいを採とっていても、大だい区く、小お区く、またはその双方そうほうに役人やくにんが置おかれず、有名ゆうめい無実むじつのものとなった県けんも数多かずおおい。

大だい区く小お区く制せいには明治めいじ新しん政府せいふによる「人目ひとめ一新いっしん、旧弊きゅうへい除去じょきょ」の意図いとがあるとされているが、実際じっさいにその狙ねらい通どおりに施行しこうされたとは限かぎらず、現実げんじつには様々さまざまな妥協だきょうが行おこなわれた。旧来きゅうらいの郡ぐんを無視むしして区画くかくした県けんもあれば、郡ぐんを基礎きそとして区分くぶんした県けんもあり、さらには旧来きゅうらいの支配しはい構造こうぞう（改革かいかく組合くみあいなど）をほぼ温存おんぞんした県けんもある。井戸いど庄三しょうぞうは以下いかの3類型るいけいに分類ぶんるいできるとしている

新潟にいがた・愛媛えひめ県けん型がた

「統治とうち」優先ゆうせん。郡ぐんとは無関係むかんけいに人為じんい的てき・画一かくいつ的てきに区画くかく化かされたため、実情じつじょうとの乖離かいりを解消かいしょうするため度々たびたび改編かいへんが必要ひつようになった。区長くちょう・戸長こちょうらは官選かんせんであり、「人目ひとめ一新いっしん、旧弊きゅうへい除去じょきょ」の方針ほうしんが徹底てっていされている。町村ちょうそんには役人やくにんが配置はいちされず、行政ぎょうせい・自治じちの両面りょうめんで無視むしされた。

滋賀しが・静岡しずおか県けん型がた

「自治じち」尊重そんちょう。郡ぐんなどの歴史れきし的てき領域りょういきを継承けいしょうして区画くかくが編成へんせいされた。町村ちょうそんには民選みんせんの戸長こちょうらが置おかれ、自治じち単位たんいとしてまた行政ぎょうせい単位たんいとして機能きのうした。

愛知あいち県けん型がた

「行政ぎょうせい」優先ゆうせん。町村ちょうそんに官選かんせんの役人やくにんを配置はいちして行政ぎょうせいの末端まったんと位置いちづけるが、同時どうじに民選みんせんの役人やくにんを置おいて自治じち単位たんいとしての役割やくわりを担になわせている例れいが多おおい。

評価ひょうか

直接ちょくせつの目的もくてきとした戸籍こせき編へん製せいは壬みずのえ申さる戸籍こせきに結実けつじつしたが、大だい区く小お区く制せいは不評ふひょうであった。旧来きゅうらい地域ちいきの様々さまざまな問題もんだいを自治じち的てきに解決かいけつしてきた町村ちょうそんを否定ひていして、代かわりに中央ちゅうおうの命令めいれいの伝達でんたつと施行しこうのみを行おこなう機関きかんを設もうけたためである。近代きんだい化かを急いそぐあまり固有こゆうの慣習かんしゅうから乖離かいりした、地方ちほうの実情じつじょうに合あわない制度せいどであった。

この失敗しっぱいに対たいする反省はんせいおよび自由じゆう民権みんけん運動うんどうの高たかまりにより地方ちほう政治せいじへの住民じゅうみんの参加さんかを認みとめる必要ひつよう性せいが出でてきたことから、明治めいじ11年ねん（1878年ねん）に新あらたに郡こおり区く町村ちょうそん編制へんせい法ほうが制定せいていされ、地方ちほう制度せいどの見直みなおしが図はかられた。

関連かんれん項目こうもく

• 地方ちほう三さん新法しんぽう
• 郡こおり区く町村ちょうそん編制へんせい法ほう
• 府県ふけん制せい、郡ぐん制せい、市制しせい、町村ちょうそん制せい
• 北海道ほっかいどう区く制せい、北海道ほっかいどう一いち・二に級きゅう町村ちょうそん制せい
• 島嶼とうしょ町村ちょうそん制せい
• 樺太からふと町村ちょうそん制せい
• 地方ちほう自治じち法ほう
• 地方ちほう自治じち
• 市町村しちょうそん