大だい武神ぶしん王おう

大だい武神ぶしん王おう 高だか無む恤
高句麗こうくり
第だい3代だい王おう
王朝おうちょう	高句麗こうくり
在位ざいい期間きかん	18年ねん - 44年ねん
諡号しごう	大だい武神ぶしん王おう
生年せいねん	4年ねん
没年ぼつねん	44年ねん
父ちち	瑠璃るり明王みょうおう
母はは	松まつ氏し

大だい武神ぶしん王おう（たいぶしんおう、テムシンワン、韓国かんこく語ご: 대무신왕, ラテン文字もじ転写てんしゃ: Daemusin-wang）は、高句麗こうくりの第だい3代だい王おう（在位ざいい：18年ねん - 44年ねん）であり、大だい解かい朱しゅ留とめ王おう、解かい朱しゅ留とめともいう。『三さん国史こくし記き』高句麗こうくり本紀ほんぎによると姓せいは高こう、諱いみなは無む恤（ぶじゅつ、ムヒュル）。『魏ぎ書しょ』高句麗こうくり伝でんでは如栗または莫來と記しるされている。治世ちせい中ちゅうに周辺しゅうへん部族ぶぞくへ侵攻しんこうして高句麗こうくりの領域りょういきを拡張かくちょうしており、初期しょきの高句麗こうくりにおいてその基礎きそを築きずいたと言いってもよい人物じんぶつである。

治世ちせい

先代せんだいの瑠璃るり明王みょうおうの3番目ばんめの男子だんしであり、13年ねんに高句麗こうくりが扶余から攻せめられたとき、王おうの命いのちに従したがって、無む恤は奇策きさくを以もって扶余軍ぐんを防ふせぎ、却かえって撃退げきたいした。この功績こうせきによって翌よく14年ねんに11歳さいで太子たいしに立たてられ、高句麗こうくりの軍事ぐんじ権限けんげんを与あたえられた。18年ねん10月がつに瑠璃るり明王みょうおうの死去しきょに伴ともない、王位おういを継ついだ。

22年ねん2月がつには扶余へ侵攻しんこうして帯おび素もと王おうの首くびを取とったが、帯おび素もとの弟おとうと（金きむ蛙かえる王おうの末子まっし）が扶余の残党ざんとうを取とり纏まとめ、鴨かも緑みどり谷たにで曷思王おうを称しょうして扶余の勢力せいりょくは今いましばらく存続そんぞくした。大だい武神ぶしん王おうはこの戦たたかいでの戦死せんし者しゃを弔とむらい戦傷せんしょう者しゃを慰問いもんするなどしたため、民みんは大だい武神ぶしん王おうの徳とくに感かんじ入いって身みを国くにに奉たてまつげることを誓ちかった。同年どうねん7月がつには扶余の帯おび素もと王おうの従弟じゅうていが族ぞく人じん1万まん余人よにんを率ひきいて投降とうこうしてき、26年ねん10月には蓋ぶた馬ば国こくを征伐せいばつした。同年どうねん12月がつには蓋ぶた馬ば国こくが滅ほろぼされたことを聞きいた句く茶ちゃ国王こくおうが国こくごと投降とうこうしてきた、というように次第しだいに領土りょうどを拡張かくちょうした。28年ねんに後こう漢かんの遼東りゃおとん太守たいしゅから討伐とうばつを受うけたが、尉じょう那な巌城いわきに籠城ろうじょうして数すう十じゅう日にちに渡わたって固守こしゅし、漢かん軍ぐんを功こうなく引ひき上あげさせた。32年ねんには楽らく浪なみ国こくへ侵攻しんこうして降伏ごうぶくさせ、後のちに37年ねんには改あらためて楽らく浪なみ国こくを滅ほろぼして支配しはい下かに収おさめた。しかし同地どうちに対たいして44年ねん9月がつには後こう漢かんの光武みつたけ帝みかどが海路かいろ出兵しゅっぺいして討伐とうばつ、楽らく浪なみ郡ぐんを回復かいふくし、薩水（現在げんざいの清川きよかわ江こう）以南いなんが後こう漢かんの郡こおり県けんとされた。この敗北はいぼくの後のちに王おうは44年ねんのうちに死去しきょし、大だい獣しし林りんの原はらにて葬儀そうぎを行おこなわれ大だい武神ぶしん王おうと諡おくりなされた。

史実しじつでは大だい武神ぶしん王おうに該当がいとうするかどうか不明ふめいだが、中国ちゅうごく側がわの史料しりょうによると高句麗こうくりは建たて武たけし8年ねん（32年ねん）には後こう漢かんに対たいして朝貢ちょうこうを行おこなっており、光武みつたけ帝みかどより名なを下した句く麗うらら（王おう莽によって高句麗こうくりから改名かいめいされたもの）から高句麗こうくりに戻もどされている。『後こう漢書かんしょ』に拠よれば、このとき同時どうじに爵位しゃくいを侯ほうから王おうに戻もどされたとし、『三国志さんごくし』では、このとき高句麗こうくり侯こうから初はじめて高句麗こうくり王おうに叙じょせられたとある。『魏ぎ書しょ』高句麗こうくり伝でんには「朱蒙チュモン死し，閭達代だい立だて。閭達死し，子こ如栗代だい立りつ。如栗死し，子こ莫來代だい立りつ，乃征夫おっと餘あまり，夫おっと餘あまり大敗たいはい，遂とげ統すべ屬ぞく焉」とあり、『三さん国史こくし記き』の伝つたえる系譜けいふとは異いなりを見みせる。夫おっと余あまりを攻せめたという記事きじから莫來が大だい武神ぶしん王おうとも見みられるが、井上いのうえ秀雄ひでおは如栗の古音こおんが無む恤に通つうじるとして如栗を大だい武神ぶしん王おう、莫來を慕本王おうとする（参考さんこう文献ぶんけんの東洋文庫とうようぶんこ『三さん国史こくし記き2』、45頁ぺーじと66頁ぺーじ）。

楽らく浪なみ国こくについての説話せつわ

『三さん国史こくし記き』高句麗こうくり本紀ほんぎ・大だい武神ぶしん王おう紀きには、大だい武神ぶしん王おうの王子おうじ好こう童わらわと楽らく浪なみ国王こくおうの崔ちぇ理さとしの娘むすめ楽らく浪なみ公主こうしゅの話はなしとして今いまに知しられている説話せつわが挿入そうにゅうされている。

好こう童わらわが楽らく浪なみ公主こうしゅを妻つまとするに当あたって、楽らく浪なみ国こくの宝たからである角笛つのぶえ・太鼓たいこ（敵てきが寄よせると自然しぜんと鳴なるというもの）を壊こわすことを促うながした。娘むすめがこれらを壊こわした事ことを聞きいた後のち、好こう童わらわは大だい武神ぶしん王おうに今いまこそ楽らく浪なみ国こくに攻せめ入はいる好機こうきと勧すすめ、王おうは楽らく浪なみ国こくに攻せめ入はいった。宝たから器きが鳴ならなかったために軍備ぐんびを怠おこたった楽らく浪なみ王おうは突然とつぜん城下じょうかに迫せまった高句麗こうくり軍ぐんを見みて驚おどろき、宝たから器きが壊こわされていることを知しって娘むすめを殺ころし、城しろを出でて降伏ごうぶくした。

登場とうじょう作品さくひん

• ゲーム化かもされた有名ゆうめいな漫画まんが「風ふうの国くに」の主人公しゅじんこうとなっている。
  • テレビドラマ「風ふうの国くに ～The Land of Wind～」（2008年ねん、演えんじ：ソン・イルグク）
• テレビドラマ「幻まぼろしの王女おうじょチャミョンゴ」（2009年ねん、演えんじ：ムン・ソングン）

参考さんこう文献ぶんけん

• 金富かなとみ軾撰せん 著ちょ、井上いのうえ秀雄ひでお訳注やくちゅう 編へん『三さん国史こくし記き』 第だい2巻かん、平凡社へいぼんしゃ〈東洋文庫とうようぶんこ425〉、1983年ねん。ISBN 4-582-80425-X。