楽らく浪なみ郡ぐん

楽らく浪なみ郡ぐん
各種かくしゅ表記ひょうき
繁体字はんたいじ：	樂らく浪なみ郡ぐん
簡体字かんたいじ：	乐浪郡ぐん
拼音：	Lèlàng Jùn
注ちゅう音符おんぷ号ごう：	ㄌㄜˋㄌㄤˋ ㄐㄨˋㄋ
発音はつおん：	ローランジュン
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楽らく浪なみ郡ぐん
	3世紀せいき頃ごろの朝鮮半島ちょうせんはんとう
各種かくしゅ表記ひょうき
ハングル：	낙랑군(南みなみ) / 락랑군(北きた)
漢字かんじ：	樂らく浪なみ郡ぐん
発音はつおん：	らくろうぐん
日本語にほんご読よみ：	ナンナングン(南みなみ) / ランナングン(北きた)
2000年ねん式しき：; ; MR式しき：	Nangnang-gun(南みなみ) / Rangnang-gun(北きた); Nangnang-gun(南みなみ) / Rangnang-gun(北きた)
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楽らく浪なみ郡ぐん（らくろうぐん）は、漢かん朝ちょうによって設置せっちされ、紀元前きげんぜん108年ねんから西暦せいれき313年ねんまで存在そんざいした朝鮮半島ちょうせんはんとうの郡ぐんである^[1]。真ま番ばん郡ぐん、臨屯郡ぐん、玄げん菟うさぎ郡ぐんと共ともに漢かん四よん郡ぐんと称しょうされる。東方とうほうにおける中華ちゅうか文明ぶんめいの出先でさき機関きかんであり、朝鮮ちょうせんや日本にっぽんの中華ちゅうか文明ぶんめい受容じゅように大おおきな役割やくわりを果はたした。楽らく浪なみ郡ぐんの住民じゅうみんは王おう氏しが多おおく、韓かん氏しがこれに次つぎ、この2氏しでかなりの率りつを占しめていた。

歴代れきだい太守たいしゅ[編集へんしゅう]

劉りゅう憲けん（更始こうし帝みかど23年ねん）
王おう遵（光武みつたけ帝みかど30年ねん）
崔ちぇ理さとし（光武みつたけ帝みかど30年ねん）

歴史れきし[編集へんしゅう]

前ぜん108年ねん（元もと封ふう3年ねん）、前漢ぜんかんの武たけ帝みかどは朝鮮半島ちょうせんはんとうに軍ぐんを派遣はけんし、当時とうじ朝鮮半島ちょうせんはんとう西部せいぶを支配しはいしていた衛まもる氏し朝鮮ちょうせんを征服せいふくした。その後ご、真ま番ばん郡ぐん、臨屯郡ぐん、玄げん菟うさぎ郡ぐん、そして楽らく浪なみ郡ぐんが設置せっちされ現地げんちの統治とうちにあたった（漢かん四よん郡ぐん）^[2]。ただし、漢かんの支配しはい体制たいせいは主要しゅよう拠点きょてんと交通こうつう経路けいろを支配しはいする点てんと線せんの支配しはいであり、支配しはい領域りょういきの均質きんしつな統治とうちは不可能ふかのうであった。このため四よん郡ぐんの支配しはい領域りょういきは必かならずしも隣接りんせつしておらず、特とくに遠隔えんかく地ちの真しん番ばん・臨屯郡ぐんの支配しはいは困難こんなんであったものと見みられる^[3]。

この結果けっか、四よん郡ぐんの体制たいせいは短期間たんきかんしか継続けいぞくせず漢かん本国ほんごくから見みて遠方えんぽうにあった真しん番ばん・臨屯郡ぐんは前ぜん82年ねん（始はじめ元もと5年ねん）には廃止はいしされ臨屯郡ぐん北部ほくぶの6県けんが玄げん菟うさぎ郡ぐんに編入へんにゅうされた。そして前ぜん75年ねんにはこの6県けんと玄げん菟うさぎ郡ぐんの1県けんが玄げん菟うさぎ郡ぐんから楽らく浪なみ郡ぐんに編入へんにゅうされた^[3]。楽らく浪なみ郡ぐんの下した、遠隔えんかくのこれらの県けんを支配しはいするため嶺みね東ひがし七なな県けんを管轄かんかつする東部とうぶ都と尉じょう、および南部なんぶの県けんを管轄かんかつする南部なんぶ都と尉じょうが置おかれた^[4]。玄げん菟うさぎ郡ぐんはその後ご段階だんかい的てきに縮小しゅくしょう移転いてんしている。

この時ときに編入へんにゅうされた七ななつの県けんを嶺みね東ひがし七なな県けん（領りょう東ひがし七なな県けん）といい、楽らく浪なみ郡ぐんは漢かんでも有数ゆうすうの大だい郡ぐんとなった^[3]。この拡大かくだいした楽らく浪なみ郡ぐんを歴史れきし学がくでは「大だい楽らく浪なみ郡ぐん」ともいう^[3]。『漢書かんしょ』地理ちり志こころざしによるとその戸数こすうは6万まん2,812戸こ、口数くちかずは40万まん6,748人にんあった^[5]^[3]。平壌ぴょんやん郊外こうがいの貞さだ柏かしわ洞ほら364号ごう墳ふんで発見はっけんされた「楽らく浪なみ郡ぐん初はつ元もと四よん年ねん県けん別べつ戸口とぐち簿ぼ」によると、25県けんの初はつ元もと4年ねん（紀元前きげんぜん45年ねん）の戸数こすうは4万まん3251戸こ、人口じんこうは28万まん0361人にんであった^[6]。

王おう莽による新しん朝あさが成立せいりつすると楽らく浪なみ郡ぐんは楽らく鮮郡（樂らく鮮郡）と改称かいしょうされ、諸しょ県けんも名称めいしょう変更へんこうされた^[7]。その後ごの新しん末すえ後ご漢かん初はつの混乱こんらん期きに、土着どちゃく漢かん人じんの王おう調ちょうが反乱はんらんを起おこして一時いちじ的てきな独立どくりつ勢力せいりょくを樹立じゅりつした。これを契機けいきに後こう漢かんは現地げんちの豪族ごうぞくを県けん侯こうに任命にんめいし一部いちぶは侯ほう国こくとして自治じちを認みとめた^[8]。

帯おび方かた郡ぐんの分割ぶんかつ[編集へんしゅう]

後こう漢かん末期まっきの混乱こんらん期きになると、遼東りゃおとん地方ちほうで台頭たいとうした公孫こうそん氏しが楽らく浪なみ郡ぐんにも勢力せいりょくを伸のばし、その支配しはい下かに収おさめた。

3世紀せいき初頭しょとうには公孫こうそん氏しの2代目だいめ、公孫こうそん康やすしが郡ぐん南部なんぶの荒地あれちを分離ぶんりして再さい開発かいはつし、帯おび方かた郡ぐんを設置せっちしている。ただし、名目めいもく上じょうは楽らく浪なみ郡ぐんから帯おび方かた郡ぐんを分ぶん置おけしたといっても、実際じっさいには帯おび方かた郡ぐんのほうが大おおきく楽らく浪なみ郡ぐんはそれに比くらべて主役しゅやくの座ざを譲ゆずった格好かっこうになった。

末期まっき[編集へんしゅう]


朝鮮ちょうせんの歴史れきし
考古学こうこがく	朝鮮ちょうせんの旧石器時代きゅうせっきじだい（朝鮮ちょうせん語ご版ばん）櫛目くしめ文ぶん土器どき時代じだい 8000 BC-1500 BC 無文むもん土器どき時代じだい 1500 BC-300 BC
伝説でんせつ	檀だん君くん朝鮮ちょうせん
古こ朝鮮ちょうせん			箕み子こ朝鮮ちょうせん
					燕つばめ
	辰たつ国こく		衛まもる氏し朝鮮ちょうせん
原げん三さん国こく	辰たつ韓かん	弁わきまえ韓かん	漢かん四よん郡ぐん
			馬うま韓かん	帯おび方かた郡ぐん	楽らく浪なみ郡ぐん	濊貊		沃沮
三さん国こく		伽耶かや 42- 562	百済くだら		高句麗こうくり
	新しん羅ら
南北なんぼく国こく			唐とう熊くま津つ都と督とく府ふ・安東あんどう都みやこ護まもる府ふ
	統一とういつ新しん羅ら鶏にわとり林りん州都しゅうと督とく府ふ 676-892				安東あんどう都みやこ護まもる府ふ 668-756		渤海 698-926
後こう三さん国こく	新しん羅ら -935		後のち百済くだら 892 -936	後こう高句麗こうくり 901-918			遼りょう	女おんな真しん
統一とういつ王朝おうちょう	高こう麗うらら 918-						金きむ
					元もと遼りょう陽ひ行ぎょう省しょう（東あずま寧やすし・双そう城しろ・耽ふけ羅ら）
	元朝がんちょう
	高こう麗うらら 1356-1392
	李り氏し朝鮮ちょうせん 1392-1897
	大韓たいかん帝国ていこく 1897-1910
近代きんだい	日本にっぽん統治とうち時代じだいの朝鮮ちょうせん 1910-1945
現代げんだい	朝鮮ちょうせん人民じんみん共和きょうわ国こく 1945 連合れんごう軍ぐん軍政ぐんせい期き 1945-1948
	アメリカ占領せんりょう区く				ソビエト占領せんりょう区く
					北朝鮮きたちょうせん人民じんみん委員いいん会かい
	大韓民国だいかんみんこく 1948-				朝鮮ちょうせん民主みんしゅ主義しゅぎ人民じんみん共和きょうわ国こく 1948-
朝鮮ちょうせんの君主くんしゅ一覧いちらん大韓民国だいかんみんこく指定してい国宝こくほう中国ちゅうごく朝鮮ちょうせん関係かんけい史し
Portal:朝鮮ちょうせん

三さん国こく時代じだいには魏たかしが238年ねんに楽らく浪なみ・帯おび方かた郡ぐんを接収せっしゅうし、翌年よくねん（一説いっせつには同年どうねん）倭やまと女王じょおう卑弥呼ひみこも帯おび方かた郡ぐんを通つうじて魏ぎと通交つうこうした。265年ねん魏ぎに代かわった晋すすむが引ひき続つづき支配しはいしたが、八はち王おうの乱らん以後いごは衰退すいたいの一途いっとを辿たどり、313年ねんには高句麗こうくりに滅ほろぼされ、後のちに高句麗こうくりは楽らく浪なみ郡ぐんの跡地あとちに遷都せんとした。高句麗こうくりが楽らく浪なみ郡ぐんを征服せいふくした後のち、漢人かんどの記録きろくは正史せいしに記録きろくされていない。高句麗こうくりが漢かん四よん郡ぐんと遼東りゃおとんを征服せいふくした後のち、遼東りゃおとんと楽らく浪なみ、大方おおがた郡ぐんには漢かん族ぞくは断絶だんぜつし、漢かん族ぞく式しき墓はかが発見はっけんされない。その後ご、高句麗こうくりの積せき石塚いしづかだけ発見はっけんされるようになる。高句麗こうくりが征服せいふくした中国ちゅうごく地域ちいきには朝鮮ちょうせん民族みんぞくの子孫しそんが広ひろがることになった^[9]。そして高句麗こうくりが現在げんざいの北京ぺきんと天津てんしん地域ちいきである維州地域ちいきを征服せいふくし、朝鮮ちょうせん民族みんぞくが遼東りゃおとんと幽かそけ州しゅう地域ちいきを運営うんえいすることになる^[10]。

社会しゃかい[編集へんしゅう]

楽らく浪なみ郡ぐんには漢人かんど豪族ごうぞくである王おう調ちょうが太守たいしゅを殺害さつがいして「大将軍だいしょうぐん楽らく浪なみ太守たいしゅ」を自称じしょうしたように、郡こおり県けん統治とうちに抵抗ていこうする勢力せいりょくも発生はっせいしていた^[11]。一方いっぽう、この王おう調ちょうを殺害さつがいした王おう閎は八はち代だい祖先そせんが山東さんとう半島はんとうからの移住いじゅう者しゃであり、この王おう調ちょうや王おう閎の他ほかにも王おう光ひかりや王おう旴などのように楽らく浪なみ郡ぐん治ちに土着どちゃく化かした漢人かんど勢力せいりょく一族いちぞくがいた^[11]。

楽らく浪なみ郡ぐんと帯おび方かた郡ぐんの故こ地ちには、5世紀せいきまで土着どちゃくの漢人かんどや新しん移住いじゅう者しゃの漢人かんどが住すみ続つづけた^[12]。

楽らく浪なみ郡ぐんの考古学こうこがく[編集へんしゅう]

楽らく浪なみ郡ぐん治ちは衛まもる氏し朝鮮ちょうせん国こくの都と「王おう険けん」改あらため「朝鮮ちょうせん県けん」を郡こおり治おさむとし、現在げんざいの平壌ぴょんやん直轄ちょっかつ市し付近ふきんの大同だいどう江北こうほく岸がん（現在げんざいの平壌ぴょんやん市街しがい）に郡ぐん治ちが所在しょざいしたと考かんがえられている。

平壌ぴょんやん市街しがい一帯いったいには楽らく浪なみ漢かん墓はかと呼よばれる当時とうじの墳墓ふんぼが残のこり、その数かずは2,000以上いじょうと言いわれる。楽らく浪なみ漢かん墓はかの多おおくは郡ぐんの下級かきゅう役人やくにんたちのもので、墓はか制せいは前期ぜんきの木き槨墓から後期こうきの塼室墓ぼに移行いこうしている^[13]。戦前せんぜんの日本にっぽん統治とうち時代じだいに発掘はっくつが始はじまり、腐朽ふきゅう消滅しょうめつしていない漢かん代だいの木き槨墓が初はじめて学術がくじゅつ的てきに発掘はっくつされた。墓はかからは大型おおがたの木馬もくばなど、大量たいりょうの木製品もくせいひん、漆器しっきなどが出土しゅつどした。特とくに年号ねんごう・製造せいぞう部署ぶしょが刻こくされた漆器しっきは重要じゅうようで、前漢ぜんかん始はじめ元もと2年ねんから後こう漢かん永えい平ひら14年ねんに至いたる長期間ちょうきかんの遺品いひんが出土しゅつどしている。多おおくが現在げんざいの四川しせん省しょうで制作せいさくされた漆器しっきである。その中なかで、南井みない里さと第だい116号ごう古墳こふんから出土しゅつどした「漆うるし絵え人物じんぶつ画像がぞう文ぶん筺」は特とくに有名ゆうめいである。他ほかにも銅鏡どうきょうや官印かんいん、玉たま器き、土器どき、漢かん銭ぜになどが出土しゅつどした。これらの出土しゅつど品ひんにみえる人名じんめいは王おう氏しついで韓かん氏しを姓せいとするものが多おおく、王おう氏しは楽らく浪なみ王おう氏しと呼よばれ、もとは山東さんとう半島はんとう系けいの移民いみんと考かんがえられている。また王おう氏しについで多おおい韓かん氏しは河北かほく省しょう方面ほうめんからの移民いみんと考かんがえられている。

日本にっぽんの壱岐いき市しの原はるの辻つじ遺跡いせきでは楽らく浪なみ郡ぐんの文物ぶんぶつと一緒いっしょに弥生やよい時代じだいの出雲いずもの土器どきが出土しゅつどしており、これは、楽らく浪なみ郡ぐんと壱岐いき、出雲いずもの間あいだの交流こうりゅうを示しめすとされる。姫原ひめばら西にし遺跡いせきや西谷にしたに墳墓ふんぼ群ぐんがある出雲平野いずもへいやには、強大きょうだいな国くにがあったと思おもわれ、出雲いずもが楽らく浪なみ郡ぐんと深ふかい関係かんけいを持もちながら、山陰やまかげを支配しはいしていた可能かのう性せいがあると指摘してきされている。

楽らく浪なみ郡ぐんの存在そんざいに関かんする異説いせつ[編集へんしゅう]

北朝鮮きたちょうせんの学界がっかいと韓国かんこくの在野ざいやの学者がくしゃ^[14]^[15]は、朝鮮半島ちょうせんはんとうには古代こだいから自主じしゅ独立どくりつの国くにがあったとする独自どくじの歴史れきし観かんを掲かかげるため、楽らく浪なみ郡ぐんが朝鮮半島ちょうせんはんとうにあったことを否定ひていし、中国ちゅうごくの遼東りゃおとん半島はんとう^[16]にあったものとしている^[17]。

この話はなしでは、楽らく浪なみ郡ぐんが存在そんざいしたとされる地域ちいきにあったのは「楽らく浪なみ国こく」であるとする。これは中国ちゅうごくの郡ぐんとは無縁むえんの、朝鮮ちょうせん民族みんぞくによる独立どくりつ国家こっかであるとも、馬うま韓かんを構成こうせいする国くにの一ひとつだったとも仮定かていし、戦前せんぜんに北朝鮮きたちょうせんで発掘はっくつされた中国ちゅうごく系けいの文化ぶんかを示しめす出土しゅつど品ひんは、楽らく浪なみ国こくが中国ちゅうごくから攻せめ取とった戦利せんり品ひんなのであるという。同時どうじに楽らく浪なみ国王こくおうの姓せいは「崔ちぇ氏し」という中国ちゅうごく風ふうの姓せい（『三さん国史こくし記き』に楽らく浪なみ国王こくおう崔ちぇ理さとしが登場とうじょうする。通常つうじょうは楽らく浪なみ郡ぐん太守たいしゅのことと解ほぐされる）だったともいう。『三さん国史こくし記き』によると、30年ねんの後のち漢かんによる楽らく浪なみ郡ぐんの接収せっしゅうはなく、支配しはい者しゃが王おう調ちょうから崔ちぇ理さとしに代かわっただけで、引ひき続つづき楽らく浪なみ郡ぐんは独立どくりつしていて「楽らく浪なみ国こく」となっていたとする。高句麗こうくりは37年ねんに楽らく浪なみ国こくを滅ほろぼして併合へいごうしたが44年ねんに後こう漢かんが水軍すいぐんを派兵はへいして奪還だっかん、楽らく浪なみ郡ぐんを再建さいけんしたという。

北朝鮮きたちょうせんが挑戦ちょうせんするまでは、楽らく浪なみ郡ぐんは紀元前きげんぜん108年ねんに古こ朝鮮ちょうせんを破やぶった後のちに漢かんの武たけ帝みかどが確立かくりつした郡ぐんであったことは「普遍ふへん的てきに認みとめられていた」^[18]。北朝鮮きたちょうせんの学者がくしゃは、漢かん王朝おうちょうの墓はかを扱あつかうにあたり、それらを古こ朝鮮ちょうせんや高句麗こうくりの遺跡いせきとして再さい解釈かいしゃくしている^[19]。中国ちゅうごくの漢かんに見みられる物ものとの否定ひていできない類似るいじ性せいを持もつ遺物いぶつのために、彼かれらは、それらが貿易ぼうえきと国際こくさい的てきな接触せっしょくを通つうじて導入どうにゅうされたか、または偽造ぎぞうだとし、「決けっして遺物いぶつの朝鮮ちょうせん的てき特性とくせいを否定ひていする根拠こんきょとして解釈かいしゃくすべきではない」と提唱ていしょうする^[20]。

北朝鮮きたちょうせんはまた、楽らく浪なみは2つあったとし、漢かんは実じつは遼東りゃおとん半島はんとうの遼りょう河かわの楽らく浪なみを治おさめており、一方いっぽう、平壌ぴょんやんは紀元前きげんぜん3世紀せいきから2世紀せいきまで存在そんざいした「独立どくりつした朝鮮ちょうせんの国家こっか」楽らく浪なみだったと言いっている^[18]^[21]。彼かれらによると、楽らく浪なみの伝統でんとう的てきな見方みかたは、中国ちゅうごくの中国ちゅうごく至上しじょう主義しゅぎ者しゃと日本にっぽん帝国ていこく主義しゅぎ者しゃによって拡大かくだいされた^[18]。

詳細しょうさいは「漢かん四よん郡ぐん#漢かん四よん郡ぐん否認ひにん論ろん」を参照さんしょう

その他た[編集へんしゅう]

438年ねん前後ぜんごの高句麗こうくり長寿ちょうじゅ王おうの官爵かんしゃくは「使つかい持じ節ぶし・散ち騎き常つね侍さむらい・都みやこ督ただし営平二に州しゅう諸しょ軍事ぐんじ・征せい東大とうだい将軍しょうぐん・高句麗こうくり王おう・楽らく浪なみ公こう」であった。楽らく浪なみ公こうは自国じこく領りょう以外いがいに楽らく浪なみ郡ぐんの故こ地ちを支配しはいすることを認みとめられたことを意味いみする^[22]。南朝なんちょう宋そうは楽らく浪なみ郡ぐん地域ちいきを名めい目的もくてきにはまだ中国ちゅうごくの土地とちであるとみなし、そのうえで実質じっしつ的てきに支配しはいしている高句麗こうくりに楽らく浪なみ公こうの官爵かんしゃくを授さづけることで名目めいもくと現実げんじつを調整ちょうせいしていた^[22]。
現在げんざいの平壌ぴょんやん市しには「楽らく浪なみ区域くいき」という行政ぎょうせい区くや「楽らく浪なみ線せん」という鉄道てつどうの路線ろせんがある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

^ 田中たなか 2000, p. 34
^ 田中たなか 2008, p. 52
^ ^a ^b ^c ^d ^e 田中たなか 2008, p. 53
^ 田中たなか 2008, p. 54
^ 班はん固かた『漢書かんしょ〈3〉志こころざし(下した)』筑摩書房ちくましょぼう〈ちくま学芸がくげい文庫ぶんこ〉、1998年ねん7月がつ1日にち、413頁ぺーじ。ISBN 978-4480084033。
^ 木簡もっかん学会がっかい編へん『木簡もっかんから古代こだいがみえる』岩波書店いわなみしょてん〈岩波いわなみ新書しんしょ〉、2010年ねん6月がつ19日にち、136頁ぺーじ。ISBN 978-4004312567。
^ 『漢書かんしょ』「地理ちり誌し下か」
^ 井上いのうえ 1972, p. 38
^ Samguk Yusa: Legends and History of the Three Kingdoms of Ancient Korea by Ilyon tr Grafton Mintz, Ha Tae-Hung pub Yonsei University Press (1972)
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^ ^a ^b 浜田はまだ耕こう策さく (2005年ねん6月がつ). “4世紀せいきの日にち韓かん関係かんけい” (PDF). 日にち韓かん歴史れきし共同きょうどう研究けんきゅう報告ほうこく書しょ（第だい1期き） (日にち韓かん歴史れきし共同きょうどう研究けんきゅう): p. 48. オリジナルの2015年ねん10月がつ18日にち時点じてんにおけるアーカイブ。
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^ 正確せいかくには遼りょう河かわを挟はさんだ流域りゅういき。この場合ばあい、古代こだいの「遼りょう水すい」とは今いまの遼りょう河かわではなく大だい凌しのげ河かわのことであるとする。当然とうぜん、当時とうじの遼東りゃおとん郡ぐんとは今いまの遼りょう西にしのことであり、李り址し麟は従来じゅうらい遼りょう西郡にしごおりとされてきた地ちは正ただしくは右みぎ北平きたひら郡ぐんであるとしている。こういう具合ぐあいに次々つぎつぎと西にしへ西にしへと修正しゅうせいを加くわえ、朝鮮ちょうせん民族みんぞく史学しがくの祖そ申さる采さい浩ひろしは当時とうじの上谷うえだに郡ぐんとは今いまの代だい県けん（大だい同市どうし）のことであるとする。
^ 渡辺わたなべ延のべ志こころざし (2009年ねん3月がつ19日にち). “紀元前きげんぜん1世紀せいきの楽らく浪なみ郡ぐん木簡もっかん発見はっけん”. 朝日新聞あさひしんぶん. オリジナルの2010年ねん2月がつ17日にち時点じてんにおけるアーカイブ。
^ ^a ^b ^c Ch'oe, Yŏng-ho『An Outline History of Korean Historiography』 4巻かん、1980年ねん、23-25頁ぺーじ。
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^ Ch'oe, Yŏng-ho『An Outline History of Korean Historiography』 4巻かん、1980年ねん、509頁ぺーじ。
^ Armstrong, Charles K.『Centering the Periphery: Manchurian Exile(s) and the North Korean State』 19巻かん、University of Hawaii Press、1995年ねん、11-12頁ぺーじ。
^ ^a ^b 河内かわうち春はる人じん『倭やまとの五ご王おう – 王位おうい継承けいしょうと五ご世紀せいきの東ひがしアジア』中央公論ちゅうおうこうろん新しん社しゃ〈中公新書ちゅうこうしんしょ〉、2018年ねん1月がつ19日にち、78頁ぺーじ。ISBN 4121024702。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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井上いのうえ秀雄ひでお『古代こだい朝鮮ちょうせん』NHK出版しゅっぱん、1972年ねん11月。ISBN 978-4-14-001172-0。
- 井上いのうえ秀雄ひでお『古代こだい朝鮮ちょうせん』講談社こうだんしゃ〈講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ〉、2004年ねん10月がつ。ISBN 4-06-159678-0。
田中たなか俊明としあき著ちょ「古こ朝鮮ちょうせんから三さん韓かんへ」、武田たけだ幸男ゆきお編へん『朝鮮ちょうせん史し』山川やまかわ出版しゅっぱん社しゃ〈新版しんぱん世界せかい各国かっこく史し2〉、2000年ねん8月がつ、13-48頁ぺーじ。ISBN 978-4-634-41320-7。
田中たなか俊明としあき著ちょ「古こ朝鮮ちょうせんから楽らく浪なみへ」、田中たなか俊明としあき編へん『朝鮮ちょうせんの歴史れきし』昭和堂しょうわどう、2008年ねん4月がつ、48-61頁ぺーじ。ISBN 978-4-8122-0814-4。