奇形きけい腫しゅ

奇形きけい腫しゅ（きけいしゅ、teratoma）とは2胚葉はいよう性せいあるいは3胚葉はいよう性せい成分せいぶんを有ゆうする、すなわち最もっとも高こう分化ぶんかな胚はい細胞さいぼう性せい腫瘍しゅよう。良性りょうせいの「成熟せいじゅく奇形きけい腫しゅ」と、やや悪性あくせい傾向けいこうを有ゆうする「未熟みじゅく奇形きけい腫しゅ」がある。主しゅとして性腺せいせんに生しょうずるが、発生はっせいの過程かていで卵黄らんおう嚢から性腺せいせんに移動いどうする途中とちゅうで迷入した胚はい細胞さいぼうに由来ゆらいするものが、体からだの各部かくぶ（ほとんどは正中せいちゅう面めん上じょう）に生しょうずることがある。

ヒトの卵巣らんそうに生しょうずるものはほとんどが良性りょうせいの成熟せいじゅく嚢胞のうほう性せい奇形きけい腫しゅ（せいじゅくのうほうせいきけいしゅ）で、外そと胚葉はいよう成分せいぶん、特とくに皮膚ひふと皮膚ひふ付属ふぞく器き（毛髪もうはつ、皮脂ひし腺せん、汗腺かんせん）が大だい部分ぶぶんを占しめることから「皮かわ様さま嚢腫」（ひようのうしゅ、dermoid cyst）とも呼よばれる。

ヒトの精巣せいそうに生しょうずる胚はい細胞さいぼう性せい腫瘍しゅようはほとんどが悪性あくしょうで、奇形きけい腫しゅの頻度ひんどは低ひくく、奇形きけい腫しゅが生しょうじた場合ばあいもしばしば、未熟みじゅく奇形きけい腫しゅであるか、または高こう悪性あくせい度どな他ほかの組織そしき型がたの胚はい細胞さいぼう性せい腫瘍しゅようとの混合こんごう型がた腫瘍しゅようである。

ヒト以外いがいの哺乳類ほにゅうるいについては馬うまでの報告ほうこくが多おおく、豚ぶた、犬いぬでも報告ほうこくされている。これらの動物どうぶつにおいては悪性あくせいのものは少すくない。

参考さんこう文献ぶんけん

• 日本にっぽん獣医じゅうい病理びょうり学会がっかい編集へんしゅう　『動物どうぶつ病理びょうり学がく各論かくろん』 文ぶん永えい堂どう出版しゅっぱん　2001年ねん　ISBN 483003162X

関連かんれん項目こうもく

• 腫瘍しゅよう
• ピノコ - 漫画まんが「ブラック・ジャック」のキャラクター。患者かんじゃから切除せつじょされた奇形きけい腫しゅを利用りようして作つくられたという設定せってい。